金子浩のレビュー一覧
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ネタバレ2巻で感じたボブのゴチャゴチャ感が整理されたように感じた。
物語が収束してきて、深宇宙への探査ではなくアザーズとの決戦に話が集中してきたからだろうか。
新しい星の話はおまけ程度に挟まれているが、「メインが2〜3系統あって、時々フレーバーとして出てくる」という感じの方が把握しやすい。
3巻では人類側の主要人物、特にボブらと親しい人物が死に直面することで、人の心を持つ不死の機械と人間との境を感じさせる描写がいくつもある。
ヴァンパイアもの(他にもファンタジー)でも問題になることがあるが、人間の寿命を大きく超えて生きると、親しくなった人は必ず失うことになる。今作でもボブが感傷的になったり、人間との -
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ディストピア物のSF短篇集(SF9篇+SFではない『やわらかく』の1篇を収録)。
人口、民族対立、エネルギー、化学物質、水、食料や食品添加物など、貧富の差や環境問題を下敷きにした退廃的未来を描いています。しかし、最後は希望が持てる終わり方が多いので、想像していたよりかは読後感は悪くないです。
とはいえ、代償は有りますが、民俗文化の対立をテーマとした『パショ』を除いて、未来世界を好転させるヒーローが不在なため、どの世界もその先の未来は、暗澹たる終局を迎えることは想像出来ますが。以下、個別に。
『ポケットのなかの法』
場所は未来の四川省成都。“活建築”という生物的に増殖する市街地の路地裏で、ス -
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ネタバレお勧めされて読んだ本。
非常に後味が悪く、生理的嫌悪と恐怖に顔を顰めつつも、一気に読んでしまった。
アメリカの片田舎の平和な日常の描写から始まった物語は徐々に不穏さが滲み出ていき、「誰にも言ってはならない」というキーワードをもとに際限なくエスカレートしていく。
暴走した列車のようにどこまでも行き着くところまで行ってしまった恐怖と、ヤンチャだが気のいい仲間だと信じていた仲間たちが止まらない怪物だったときの絶望、傍観者として一部始終を眺めたデイヴィッドに対する嫌悪と憐憫。
残虐で後味の悪い作品だが、臨場感がすごく非常に読ませる力のある作品だった。 -
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一部で非常に有名な本作。文庫で400ページほどありますが、悪いことにすらすら読めてしまう。
語り手であるデイヴィッドが「いったいぜんたい、わたしはいつ堕落したのだろう?」と言った瞬間、最初っからだよ!と悪態をつきたくなるくらいには登場人物みんな嫌いになること請け合い。終盤あたりに「ママはこのごろ、ちょっとおかしいんだ」とドニーが言ったときなどどうしてやろうかと思いました。酷い描写は勿論、些細な会話も胸糞具合が秀逸です。
そして訳者あとがき。「読者が共感できる人物」としてメグ、スーザン、デイヴィッド!の名前を出し「善が悪に必死の対抗を試みる」と。
胸糞界隈では、あんなことをして最高にぞくぞくし -
J・J・アダムズ / チャーリー・ジェーン・アンダーズ / トバイアス・S・バッケル / ベッキー・チェンバーズ / ヴィラル・カフタン / ジョゼフ・アレン・ヒル / アダム=トロイ・カストロ&ジュディ・B・カストロ / キャロリン・M・ヨークム / アラン・ディーン・フォスター / カール・シュレイダー / A・マーク・ラスタッド / ショーニン・マグワイア / アリエット・ド・ボダール / リンダナガタ / ユーン・ハ・リー / カット・ハワード / ジャック・キャンベル / カメロン・ハーレイ / ダン・アブネット / 赤尾秀子 / 新井なゆり / 市田泉 / 大島豊 / 小野田和子 / 金子浩 / 小路真木子 / 中原尚哉 / 原島文世 / 細美遙子3.3 (3)
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文明が衰退・滅亡した後のオルタナティブな文明を描いたお話がつまった短編集。
荒廃した世界の過酷な境遇の中で主人公たちがそれぞれの矜恃、それぞれの希望を見出していくところに「SF的美しさ」が存在している。
挿入される造語に初めは戸惑うが、読み進めるにつれて造語に馴染みそれと共にその世界にも馴染んでいく感覚があった。
身体を所有され(改造され)支配される少女といったフェミニズム的テーマの「フルーテッド・ガールズ」、異なる種族(ポストヒューマンと犬)の間の残酷な友情が扱われる「砂と灰の人々」を筆頭に「パショ」「カロリーマン」「ポップ隊」「イエローカードマン」など脳の痺れるような傑作ばかりだった。
同 -
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ネタバレこれこれこれーーー!!
エログロスプラッターの最高峰「オフシーズン」、その続編「襲撃者の夜」、そしてシリーズ第3作となる本書、私が敬愛するケッチャム大先生の作品、This is ケッチャム!!
ここ最近、休日の度に天空図書室へ通い、空を眺め、美しい写真集等を手にしてきました。
でも、でもですね、私の中にはしっかりと存在し続けているんです。
人混みに紛れ、静かな空間でひっそりと息を潜めていたブラックヒボが(笑)
ヒィーッヒッヒッヒッヒーーーーッ(`✧∀✧´)キラーン!
本書は本筋となる「ザ・ウーマン」とその後を描いた短編「カウ」の2部構成。
「ザ・ウーマン」はホラー映画の鬼才ラッキー・マ -
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ネタバレ衝撃的。
時代とお国柄の違いがあるため、違和感を覚える箇所もありますが、人が狂っていく様を見事にストーリー化していると思いました。
『ゲーム』と称して虐待がエスカレートしていく様子、思考停止状態の傍観者、コントロールしているはずのルースがもともと精神を病んでいるため、歯止めがきかなくなる様子…
ノンフィクションかと思うほど、説得力がありました。
主人公は最後に自我を取り戻せてよかったと思いますが、消えない心に傷はずっとずっと残ります。
ルースも結局は自分自身の問題をメグに押し付けてしまっていました。事件後に生きていたら、どんな運命を辿るのか気になりましたが、幸か不幸か裁かれることなく -
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これぞディストピア・オブ・ディストピアって感じ。「こんな未来は嫌だ」の大喜利のような暗い設定ばかり。絶対にこんな世界で生きたくはないが読み物としては好みだ。
特に『イエローカードマン』の世界が一番暗くて嫌だったなー。
『ポップ隊』の設定は映画化されそう。
特に“科学技術による生命倫理への挑戦”みたいなテーマが好きな作家さんっぽい。
人格をデータ化して小さなキューブに保存したり、楽器のように改造したり、遺伝子操作で不死身にしたり。
環境破壊のせいで新たな格差社会が生じたり、人々が痴呆化したり。科学技術が部族間の争いに繋がったり。
各短編の翻訳を中原尚哉さんと金子浩さんの2人が別々に担当されて -
購入済み
AIの感情表現とその周辺技術
AIはもし感情を持ったらという表向きのストーリー設定とその展開もさることながら、もしシンギュラリティポイントを超えた場合どんな科学的技術がそれを支えることになるのかかなり面白い想像力が発揮されてます。そして、それはないだろうと思えない点ばかりなのが恐ろしい気持ちにもさせます。続編を読み続けたいと思うかなりの傑作だと思います。
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ネタバレこれは本当に読むのがしんどくて、途中までは数ページずつ細切れにしか読むことができなかった。
文章が難しいわけではなく、逆に文章は読みやすく、クリアに状況がイメージできてしまうからこそ、辛くてしんどくて読み続けることができなかったのだ。
語り手は12歳の少年。
自然に囲まれた郊外で、近所に住む友達と毎日遊び戯れることが日課だったデイヴィッド。
彼の隣の家に、両親を交通事故で亡くしたメグとスーザン姉妹が引き取られてきた。
3歳年上の美しくて勇敢なメグにデイヴィッドはすぐに惹かれたのだけど。
隣と言っても日本の家のように建物が密集しているわけではないので、家は一種の密室になる。
隣の家には夫に逃 -
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なんだか「今」と似ていないかい?
今、お互い画面の中の「画像」でコミュニテーションを取って仕事している在宅ワークの様子は、主人公の「ボブ」同士が、VR空間の中で相談してそれぞれの「課題」に対処する様子と……。
会社が望むものは睡眠も食事も不要で時間の感覚すら自由に調整できる「ボブ」。
まあ、そのとき経営者は真っ先に「人間」個体じゃないでしょうけどね。
AI(人工知能)とは違った「レプリカント」
それも記憶と思考回路のみ機械に移植することで、“AI“の限界を超える“ヒラメキ”の能力が期待され、気の遠くなるほどの期間を要する宇宙船の「船長」となる。
どの場合も成功するとは限らず「僕は人間なの -
購入済み
誤字、脱字があまりに多すぎる。
全体的に割と良くできていて、リョナ耐性が備わってさえいればそこそこ楽しめる作品です。主人公の計画力の無さや登場人物のモラルの欠如具合等、設定があまい部分は作中所々見受けられますが、ギリギリ読み手の自己解釈で何とかなる程度なので、作品を楽しむ上では邪魔にならないです。しかし…誤字脱字、翻訳ミス等があまりにも多く、感情移入の妨げになります。エディターは本当に仕事をしているのでしょうか?どうであれ、読んでいて気持ちの良い物では無いので、早く直す事をお勧めします。
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Posted by ブクログ
ネタバレこんな衝撃的な本を読んだのは初めてです。
デイヴィッドを通して事細かに語られる物語は、実話なのかと思うほど生々しく痛々しく、顔を顰めながら読んでしまうほどでした。
日に日に残虐さを増していくメグへの虐待を見ることから逃げ出したい・助け出したい気持ちと見ることを辞めたくない気持ちが葛藤して、全てが終わった現在では人生で1番後悔し懺悔しているデイヴィッド。
私たち読者も文章を通してデイヴィッドと同じように、日に日に残虐になっていく虐待の様子を少しずつ読み進め、終わったときには後味の悪さ、時には読んだことへの後悔が残るかもしれません。
とにかく残虐でグロテスクで吐き気を催す描写も少なくなく、