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Posted by ブクログ
残酷描写といえば、で、もうひとつ。
オーソン・スコット・カードの短編集。ジャンルはSF。
作者自身があとがきで「これらの短篇すべてで繰り返されているモチーフがある──残酷なまでの苦痛と、グロテスクなまでの醜悪さだ」というだけあって、そういった描写はかなり多いです。
一方、1970年代までに書き上げられた作品群(寄稿の序文が1980年)は、心理的に歪んだところが少なく、凄惨であってもどこか素直で、不思議と読みやすい。複雑なコード進行やアレンジに頼らなくても名曲は名曲、そんな感じ。
好きな作品
「エンダーのゲーム」
良く出来てる!同じタイトルの長編もある(映画にもなった)のは知ってるけどまだ読んでません。この短編で十分完璧じゃない?と思えるくらい好き。
「王の食肉」
羊飼いの造形がうっとりするほど美しい。でも、その対岸に際立つ残酷さ。彼がすることの、そしてその運命のおぞましさ。「Kingsmeat」という原題も「Kingsmen」を下敷きにしたであろうオシャレ感で、その洗練がまた、酷い。
「無伴奏ソナタ」
それがなくては生きられないものを求めて、求める度に罰される。それでも幸福だと言わなければいけない。そんな人生、そんな社会。
作中に響く音や歌の美しさと、次々に降りかかる残酷さ。対比の中で主人公の一生が描かれる。
悲しい話だけど、最後の一ページにわずかな救いがあり、そして、かすかな響きに耳をそばだてるような息遣いだけを残して、終わり。
珠玉です。
目新しくてカッコいいSFはどんどん出てくるけど、こういう、ある種ノスタルジックなものも、かなり好きです。
Posted by ブクログ
『エンダーのゲーム』の前身と思われる同名タイトルの短編を含む11の短編集。もしかしたらこの作家は短編の方が上手かもと思うような、クオリティの高いものばかりでした。
本のタイトル作について。
生後6ヶ月で受けたテストで見せた音楽への“天才性”により、クリスチャンは音楽の<創り手>となることを定められる。
彼は両親から引き離され、自然の中で聞こえる鳥の歌や風の歌、雷の音、つららから落ちる水滴の音、リスの鳴き声といった音楽を与えられた<楽器>のみで奏で、そして<聴き手>はそれらに聴き入る。
<創り手>であるクリスチャンは<聴き手>になることは許されないのであるが、ある時一人の<聴き手>がクリスチャンにバッハを聴かせる。
クリスチャンの音楽に変化を感じ取った<見張り手>から、彼は音楽を禁じられ、他の仕事に就くこととなる。歌うことも、奏でることも、手拍子を取ることも禁じられたクリスチャンはどうなるのか。
と、こんなところであるが、この短編集を出版するにあたっての編集者から作者への書簡が前書きとなっており、それもまた味があっておもしろかった。
Posted by ブクログ
「SF好きならどう?」と同僚に勧められたのが
この人の「エンダーのゲーム」という作品。
長編と短編があるようですが、
バトル物SFに興味があまり向かなかったので
短編版のこちらを選択しました。
で…
エンダーのゲームに関しては
ガンダムみたいなロボット系のSF好きなら
長編版のほうが楽しめるかもしれません。
その他、短編もなかなか面白い作品が多かったです。
単に「面白い」というより
数年後「あれ…なんか、こんな話どこかで読まなかったっけ…」って
忘れた頃にウズウズしてしまうような、
何か知らないうちに妙な種を植え付けられるような内容が揃っています。
個人的には
・王の食肉
・深呼吸
・四階共用トイレの悪夢(←独りでトイレに行けない怖さ)
そして
・磁器のサラマンダー
です。
磁器のサラマンダーは泣いてしまった…
Posted by ブクログ
まず、この文庫本の最初に『はじめに---作者への公開書簡---』が置かれています。この文章が書かれた時代のアメリカにおけるSF作品への状況が透けて見えてきます。
その上でこの短篇集を読むと、なかなかドロッとキテるな、というのが第一印象。『はじめに…』にも書かれている「”本格”SF以外に目を向けようとしない狭い範囲の読者のためだけの作家ではないのだ。」がよくよく分かってきます。
作者のあとがきにはこう書かれています。
---これらの短編すべてで繰り返されているモチーフがある---残酷なまでの苦痛と、グロテスクなまでの醜悪さだ。繰り返しあらわれる主題もある---死の愛好、喜びに対する支払いきれないほど高い代償、因果応報への非現実的な信頼だ。
この文章が全てを語っています。確かに”本格”SFを愛好する私のような人にはチト辛い短篇集でした。
Posted by ブクログ
さすが古典SF作家の短編集と思わせる一冊!
作品の多彩さもそうなのですが、最近のSFの傑作たちに通じるアイディアも随所に見られ、普遍的なSFの血脈を感じました。
もっとも印象的だった短編は表題作の「無伴奏ソナタ」
音楽を愛した天才が、国家から音楽をはじめ多くのものを奪われていく姿を描いた短編。
国に逆らうと分かっていながらも音楽を創ろうとする主人公の静かな熱意と過酷な人生に思いをはせるとともに、ラストシーンの素晴らしさが強く印象に残ります。文章が主人公から距離をとった冷静な語り口なのですが、その分深く静かな感動がゆっくりと押し寄せてきました。
SF作品でありながらもホラーの雰囲気を感じる作品も多く、その不気味さも相まって面白い作品も多かったです。
「王の食肉」は人間を食べる外来生物とその生物に仕えた〈羊飼い〉と呼ばれる人間の物語。ぱっと読んだ雰囲気ではB級ホラーっぽいあらすじになるのですが、そこを描写の気味悪さで引っ張ります。そしてラストの展開でまったく味わいのちがう作品に変わり、アイディアとテーマの見せ方の巧さを感じました。
「ブルーな遺伝子を身につけて」もSFにホラーの雰囲気をまとった作品。化学戦争で地球から逃れた人類。それから数百年。宇宙飛行士たちが再び訪れた地球には、生き残った人類が生活していたが……
地球で生き残った人類とともに生活しているアメーバ状の謎の生物。その正体が分かったときの不気味な感じと衝撃の一方で、どこか説得力もある奇妙さもあり印象に残りました。
他にもSFだけでなく怪奇小説の雰囲気の強い作品も多数収録されていて、著者の多彩な一面を垣間見ることのできる短編集でした。
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