金子浩のレビュー一覧

  • 絶滅の牙

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    野生の象が絶滅した未来、シベリアでは遺伝子工学で復活したマンモスたちがいた。そこに象の保護に尽力したダミラの意識を一頭のマンモスに転送する。マンモスは保護区で生活しているが初期飼育は人間の手によってであり、野生では脆弱だった。そこで象ではあるが野生の生態を知っているダミラの意識を転送したのだ。しかもダミラが死んだのは1世紀前なのだ・・

    これは、ジュラシックパークばりの手に汗握る展開なのか、と思いきやとても静かな人間の、生物の、生き延びる、子孫を残す、ということに対する哲学的ともいえる内容だった。

    ダミラは群れの頭となって群れを先導する。
    また、ひとひねりある矛盾なのだが、マンモス保護区の維

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    2025年11月22日
  • 宙の復讐者

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    ネタバレ

    いわゆるリプレイもの。人類を滅ぼした異種族への復讐を目指す教練のなか、独裁者の真の姿を知りえた主人公が、あるべき未来の再構築に葛藤・奮闘する物語。クィアなどジェンダーの取扱いは今一つ効果的でなくしっくりこないし、最初のリプレイまでが詳細で、もたつき感を感じさせるかもしれないが、やり直し人生でも、前世の刷込みから脱却できてないところが新鮮。リプレイのお約束であるご都合主義もあるけれど、最後までしっかり読ませる推進力がある。まずは、オーソドックスなガジェットを活かした新世代SFとして良作と感じた。

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    2025年09月24日
  • 地下室の箱

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    ネタバレ

    ジャック・ケッチャム著、金子浩訳、『地下室の箱』のレビューです。
    むかし読んだ『隣の家の少女』よりもマイルドな(といっても普通にエグい)内容でした。
    被害者は40代前半の美しい女性、サラ・フォスター。不倫相手との子供を堕ろそうと病院に向かっている途中に拉致されます。
    モデルというか着想を得た事件があるようで、「箱」が特徴的に使われます。
    しかし、原題はRight To Lifeみたいですが、邦訳タイトルは何とかならなかったのでしょうかね。

    ―サラが徐々に壊れていくさまを想像した。時間がかかるのはわかっていたが、だからこそやりがいがあるのだった。なぜなら、いちばんおもしろいのは壊れるまでの過程

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    2025年09月15日
  • 宙の復讐者

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    著者の第一長篇にして、ヒューゴー賞長篇部門を受賞した作品だ。
    銀河系に進出した人類は、異星種族連合体〈マジョダ〉と出会う。だが、彼らの超AI〈ウィズダム〉により危険と判断されたせいで、地球は140億の人々と共に破壊されてしまう。わずかに残った人類は〈ガイア・ステーション〉を拠点にして軍事訓練を続けていたが……。
    主人公となる女性兵士キアの目線から描かれる物語は二転三転し、複雑な世界の構造が明らかになっていく。その過程で人間として大きく成長していくキアが素晴らしい。
    大興奮の1冊。

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    2025年08月31日
  • ねじまき少女(下)

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    あらゆる動植物への遺伝子操作が当たり前の世界。そんな世界で生き残れるのは、人類ではないんでしょうね
    ・遺伝子操作の弊害
    ・海面上昇による都市水没
    ・カロリー企業による経済支配
    この状況でかろうじて生き残っているタイ・バンコクを舞台に、章ごとに5人の視点から語られます。

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    2025年08月02日
  • ねじまき少女(上)

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    当時のタイム誌〈今年の十冊〉にも選ばれた名作。石油が枯渇し、チビスコシス(咳とともに肺の肉を吐く)や瘤病(皮膚が肥厚してひび割れていく)が蔓延し、エネルギー構造も農作物も激変した近未来のバンコクが描かれています。アジアンテイストのディストピアの魅力が溢れています。

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    2025年07月30日
  • 第六ポンプ

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    読みやすいSF
    でも想像力が必要かな
    細かい説明が無いところが
    スローペースで読ませる
    だからこそ頭に残る作品たち

    いろんな話が詰まってる
    読めば読むほど
    面白みの増す短編ばかり

    ひとつ読み終える度に
    その世界を その様子を想う

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    2025年07月07日
  • ねじまき少女(下)

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    上下巻まとめての感想。

    タイの首都バンコクを舞台にした近未来ディストピア小説。

    最初は少し世界に入り込むのに時間がかかったけど、この世界に慣れてくるとだんだん面白くなっていった。

    ディストピア小説でありながら、政治劇であり、尚且つ複数の登場人物を描いた群像劇でもある。

    国家規模の物語と、個人の物語が同時に描かれていて、はっきりした悪人や善人がいるわけでもなく、それぞれがそれぞれの目的のために行動しているのが面白い。

    最終的にそれらの人物が一つに集結する感じもワクワクした。

    そして、なんと言っても人工生命でタイトルにもなっているねじまき少女の存在が良いアクセントになっている。

    ブレ

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    2025年05月11日
  • ねじまき少女(下)

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    ネタバレ

    バチカルビという名前、舞台がタイ、ヒューゴー・ネビュラ受賞、バイオSFと聴いて、「ひょっとしてアド・バード的なSFか?」と思い手に取ってみた。半分正解といったところだった。

    水位上昇で沿岸核都市が水没している近未来、石炭石油は枯渇してゼンマイが主力のエネルギーとなっている。遺伝子操作の動植物や人造人間が闊歩している、魑魅魍魎なタイの都市の政変劇を複数視点で描く。

    主人公の一人、秘書型アンドロイドが表題の「ねじまき。少女」のエミコ。
    環境省直属のパトロール隊「白シャツ隊」の副隊長で笑わない女カニヤ。
    この二人の後半の活躍が、この物語の核心読ませ処。

    正直、前半は世界観を把握するのに時間がか

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    2025年05月07日
  • シリコンバレーのドローン海賊 人新世SF傑作選

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    昨年買った本のなかでベスト1
    あたしは映画のためにスペオペすきですがこんなおバカな本(のちはいい本かも)もあるね笑
    きょう読んだ本のなかでもウケる本です(泣)

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    2025年04月28日
  • 冬の子 ジャック・ケッチャム短篇傑作選

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    家族や人間の繋がりを奇怪な世界観で描く! ホラーの巨匠、ジャック・ケッチャムの短篇集 #冬の子

    ■きっと読みたくなるレビュー
    ホラー作家、ジャック・ケッチャムの短編集です。恐怖で震えあがるって作品というより、じわっと心に沁み広がっていくような作品ばかり。

    奇怪な世界観を背景にはしているものの、描かれているのは家族や人間の繋がり。全部で19編、読みやすく日本人好みのお話でバラエティに富んでます。余韻深くジーンとする作品もあれば、切れ味が鋭くスパっと突き放される作品もある。きっと最後まで読み飽きずに楽しめると思いますよ!

    ■おすすめ作品
    ○冬の子
    山奥の村、父と二人暮らしの僕、ある日見知らぬ

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    2025年04月26日
  • 隣の家の少女

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    1950年台のアメリカ
    隣に引っ越してきた両親を亡くした少女が養親の女と子どもたちに虐待され虐殺されるまでの日々を、隣に住み少女に恋しながら見続ける少年の目を通して描いている。
    ホラーなんだけど心のどこかに恋の気持ちが滲む。
    不思議と読み進めてしまった。

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    2025年04月19日
  • 冬の子 ジャック・ケッチャム短篇傑作選

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    ゾクっとするホラーではない。
    非現実的というわけではなく、日常の延長にありそうな、ちょっと嫌な感じ。
    とくに好きだったのは、最後の「炎の舞」。
    森の中でいろいろな動物たちが弱肉強食の摂理に反し、焚き火を囲んで輪になって踊っている。
    恐怖を抱いた男たちが銃に弾を装填するけれど、子どもと女たちが輪に加わって踊り出す。
    やがて、男たちも諦めたように輪に加わる。
    原始の人間がそうしたように。
    動物たちは、火を受け入れ、互いを受け入れ、踊る。
    新たな自然の始まり。
    人間が特別だった自然の終わり。
    これが、平和な王国なんだと、はっきり言えない。
    ここからどんな自然が始まるのか。
    火の破壊性になぐさみを感じ

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    2025年03月30日
  • 冬の子 ジャック・ケッチャム短篇傑作選

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    スティーブン・キング好きならとオススメされた初ケッチャム。ホラーやバイオレンス、ゾンビ、サスペンス、ミステリーなどいろんなジャンルの作品集が19もあるので感情が忙しかった。一番のミステリーは、著者のポストカードが特典?で入っていたこと。

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    2025年03月19日
  • 冬の子 ジャック・ケッチャム短篇傑作選

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    これだけ旺盛に短篇も仕上げていたのだから本国には当然、我々の目に触れていない未邦訳の作品もたくさんあるのだろう。中には結末で首を傾げるような作品もあるが、目につくのはオフビートな日常に突然起こる暴力と、気づくと地獄にいるような展開である。表題作はそれが特に際立っている。
    死後、皆がケッチャムの事を忘れない(忘れられない)のはその作品が強烈なまでの存在感を発揮しているからだ。改めて、惜しい人を亡くしたのだと悲しくなった。

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    2025年02月02日
  • 黒い夏

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    何年かぶりに再読したが、しんどい作品である。
    銃撃事件の被害者が死亡し、中年刑事が犯人と目していた若者に圧力をかけていくが。
    この事件の加害者が暴力と性を衝動的にしか解消出来ず、圧力をかけられた事で狂気をさらに加速させていく様がじわりと怖い。言ってしまえば、感情と衝動、暴力だけが人の皮を来て歩いているだけの人間なのだ。
    歴史的事件とオーバーラップさせて事件の陰惨さを描く手法も見事で背筋が凍りつく。これぞケッチャム。残酷小説の星である。

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    2024年07月21日
  • 第六ポンプ

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    ディストピアSF短編集。一話ごとに人体改造、食糧危機、資源枯渇、渇水、痴呆化など、さまざまな状況が設定されています。
    情景が目に浮かびそうな近未来世界観と、厳しい環境下でしぶとく生き伸びようとする庶民の姿が気に入りました。

    ■ポケットのなかの法
    四川省成都を舞台にしたサイバーパンクっぽい物語。路地裏の少年が偶然手に入れた外部記憶媒体の中身とは。

    ■フルーテッド・ガールズ
    フルートにされた少女たちが秘密のパーティーの舞台に立たされる妖しい物語。映像で見てみたい作品。

    ■砂と灰の人々
    食糧危機に陥った人類は、腹の中にゾウムシを飼って砂を喰らっている世界。そこに生身の犬があらわれる。

    ■カロ

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    2024年06月23日
  • 第六ポンプ

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    全体的に資源を際限なく使いまくり成長し切った世界の後、様々な物質や資源が枯渇した世界を描くお話が多く占めるSF短編集になります。

    全話通して救われないような展開が多いですが、そういうのが好みの方には刺さります。(僕は大好物です)

    中でも好きだった作品は以下
    ・「砂と灰の人々」 
    ・「カロリーマン」
    ・「ポップ隊」
    ・「イエローカードマン」
    ・「やわらかく」
    ・「第六ポンプ」

    第六ポンプは表題であることもあり、群を抜いて良かった気がします。ポップ隊も引けをとらないくらい好みでした。

    その他はサイバーパンクと雨が似合うような作品多数。映像化されたら間違いなく好きな作品ばかりでした。

    「ブ

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    2024年05月21日
  • 闇の中をどこまで高く

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    ネタバレ

    パンデミックでSFと聞いて興味をもって読んでみた。面白かった。解説でも言われていたが、登場人物がモザイク状に繋がっていて面白い。逆に、キャラが出てくるたびに、これは出てた?初出?とちょっと悩む。それくらいキャラが多くエピソードが多彩。

    北極病という、内蔵が別の内蔵になる病気。怖すぎ。別の何かになるという変身モノでもある。最後まで読んで、やっぱお前(異星人)のせいか!となった。

    パンデミックでSFではあるが、テーマとして家族の死別がある。いろいろな死別。いろいろなお別れの仕方。感情の後始末の話。泣いた。

    「三万年前からの弔辞」
    娘(クララ)を亡くした父親(クリフ)の話。孫娘はユミ、妻はミキ

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    2024年04月30日
  • 隣の家の少女

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    嫌悪感、不快感、胸くそ悪さ、吐き気を欲しければケッチャムを読むべし!


    メグとスーザン姉妹は両親を交通事故で亡くし、三人の息子を女手ひとつで育てているルースに引き取られる
    両親を亡くした姉妹はそこで心の傷を癒やし幸せな生活を送る、、、





    はずがあるかーい!!!


    だって、この物語を書いているのはケッチャムですよ!
    ケッチャムがそんな心温まる話を書くはずがあるかい!


    なぜ!?なぜ!?なぜーーーーっ!?
    メグが一体何をしたの!?
    なぜこうなるの!?


    可哀そう、、、
    耐えられない、、、
    とかいうレベルの話でないです


    監禁、虐待、暴行のオンパレード
    少女の身も心もボロボロになっ

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    2024年04月23日