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Posted by ブクログ
本書は著者の長編デビュー作。
しかしデビュー作にも関わらずヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞とSF界の様々な賞を受賞。
そしてそれだけに留まらず、タイム誌の「今年の10冊」で9位にランク付けされる等、SFと言う比較的ニッチな世界にとどまらない作品となっています。
簡単にストーリーをご紹介すると、
本書の舞台は温暖化効果と遺伝子工学の暴走により環境が激変した500年後の地球・タイ王国。
この舞台において、蘇りつつあるグローバル経済を主導しようとする多国籍企業とそれと敵対するタイ王国環境省及びその実働部隊、通称白シャツ隊。
そして、白シャツ隊と敵対するタイ王国通産省の三つ巴の駆け引きが展開されると言うストーリーです。
またそれだけでなく、マレーシアで起きた虐殺で家族を失うも辛うじて単身タイに逃げ延びた華人の元大物や、日本人が遺伝子工学を駆使して作り上げ、やがては捨てた新人類、通称・ねじまき少女の存在がストーリーを横方向へ展開させており、、彼らマイノリティの視線を用いる事によって一つの世界が様々な立場から描かれています。
尚、本書が描く世界は、石油資源が枯渇し、温暖化により海面が現在よりも極めて高く、その為、動力源が人力もしくは遺伝子改造された動物と言う世界です。
読者に対し、この点を改まって解説している箇所はありませんので、読みながら小説世界に対する理解を深めていく必要があります。
その点、普段、懇切丁寧に世界観を説明してくれる読者にやさしい小説か、あるいは現実とさほど変わらない設定を持つ小説しか読まない方にとっては、ちょっと違和感を抱くかも知れません。
しかし、読み進めるにつれてきちんと理解できますので、この点に関する心配は無用ではないかと思います。
いずれにせよ、各種賞を受賞しただけあってか、人々が生きる姿を見事に描き出しており、充実した読書体験を提供してくれる事と思います。
お時間のある時にでも一読されてみては如何でしょうか。
Posted by ブクログ
SFはまったく読んだことがなかったので、世界観についていけるか不安だったのですが無用の心配でした。
最初はこの世界の用語が多すぎてなにがなんだか訳が分からない状態でしたが話が進むにつれ個性的な登場人物と結構エログロかつアクティブな展開のある話に引き込まれました。
意味不明の用語も何度か使われるうちになんとなく意味が分かってきて、
普段は現代日本作家しか読まないので目新しい読書体験でした。
日本ではねじまき少女のあとに発売された第六ポンプの方が、執筆順は反対だったみたいなので、先に読んでおけばよかったかと思いました。
下巻どうなるかすごく楽しみです。
Posted by ブクログ
ずーーっと気になってた作品。
印象的な装丁と期待高まる表題(これは春樹の「ねじまき鳥クロニクル」が好きだからでもあるが)で、一体どんな作品なんだろうと思いつつ、以前読んだ著者の短編がそこまでヒットしなかったので長らく見送っていた作品でした。
古本屋で上下巻が売られていたという不純な動機で読み始めた本書ですが、これがなかなか面白い。
舞台は未来のタイ・バンコク。この時点でワクワクさせられるのですが、本書はもっと刺激的。環境破壊で海面が上昇し、ニューヨークなど世界各地の沿岸都市は水没。石油が枯渇し、伝染病が蔓延し、遺伝子組み換え作物しか栽培されない世界。バンコクでは伝染病の広がりを防ぐ環境省配下の白シャツ隊が権力を振るう一方、海外との貿易により富を稼ぐ通産省が躍進を遂げ、両省は一触即発の状況にあった。そこに日本国製造の「ねじまき少女」エミコが思わぬ形で関与し、タイは未曾有の事態に陥ってしまう…
発展途上国の政権争いが物語のメインストリームですが、結果的に誰も得しないブルーな結末にションボリ。しかし、登場人物のそれぞれが苦境の中でなんとか幸運を掴もうと足掻く様はなんだか今の自分にはないハングリーさを感じられて、ちょっと思うところがありました。
それにしても、おもしろいSF作品の特徴は確たる世界観を構築していることですよね。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、キャンベル記念賞と名だたる賞を総なめにした本書もまたその例に漏れません。
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