【感想・ネタバレ】ねじまき少女(上)のレビュー

あらすじ

石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。遺伝子組替動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物ンガウを手にする。ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。彼とねじまき少女エミコとの出会いは、世界の運命を大きく変えていった。主要SF賞を総なめにした鮮烈作

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Posted by ブクログ

(((o(*゚▽゚*)o)))
化石燃料が枯渇し、カロリー(遺伝子操作で創られた動物たちの運動力)がエネルギー主体となった世界。
遺伝子バンクと穀物の覇権を争い、しのぎを削る社会。
新人類として創られながら、その能力の高さ故に恐れられ、科学者たちに生殖能力を奪われ様々な制約を与えられた奴隷「ねじまき」。
世界観、ストーリー構成ともに秀逸!

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2014年11月03日

Posted by ブクログ

アグリビジネス、遺伝子組み換え作物、外来生物による自然破壊、伝染病の蔓延、難民、官僚の腐敗、カルト宗教...。未来のタイを舞台に現実にある様々な問題が物語に内包され、凝縮されています。
混沌とした世界でそれでも生きていく人たち。
いままで知識でしかなかったことが登場人物に共感することで実感として理解できます。下巻が楽しみです。

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2013年09月22日

Posted by ブクログ

本書は著者の長編デビュー作。
しかしデビュー作にも関わらずヒューゴー賞/ネビュラ賞/ローカス賞/キャンペル記念賞とSF界の様々な賞を受賞。
そしてそれだけに留まらず、タイム誌の「今年の10冊」で9位にランク付けされる等、SFと言う比較的ニッチな世界にとどまらない作品となっています。

簡単にストーリーをご紹介すると、

本書の舞台は温暖化効果と遺伝子工学の暴走により環境が激変した500年後の地球・タイ王国。
この舞台において、蘇りつつあるグローバル経済を主導しようとする多国籍企業とそれと敵対するタイ王国環境省及びその実働部隊、通称白シャツ隊。
そして、白シャツ隊と敵対するタイ王国通産省の三つ巴の駆け引きが展開されると言うストーリーです。

またそれだけでなく、マレーシアで起きた虐殺で家族を失うも辛うじて単身タイに逃げ延びた華人の元大物や、日本人が遺伝子工学を駆使して作り上げ、やがては捨てた新人類、通称・ねじまき少女の存在がストーリーを横方向へ展開させており、、彼らマイノリティの視線を用いる事によって一つの世界が様々な立場から描かれています。

尚、本書が描く世界は、石油資源が枯渇し、温暖化により海面が現在よりも極めて高く、その為、動力源が人力もしくは遺伝子改造された動物と言う世界です。
読者に対し、この点を改まって解説している箇所はありませんので、読みながら小説世界に対する理解を深めていく必要があります。

その点、普段、懇切丁寧に世界観を説明してくれる読者にやさしい小説か、あるいは現実とさほど変わらない設定を持つ小説しか読まない方にとっては、ちょっと違和感を抱くかも知れません。

しかし、読み進めるにつれてきちんと理解できますので、この点に関する心配は無用ではないかと思います。

いずれにせよ、各種賞を受賞しただけあってか、人々が生きる姿を見事に描き出しており、充実した読書体験を提供してくれる事と思います。

お時間のある時にでも一読されてみては如何でしょうか。

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2013年06月21日

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SFはまったく読んだことがなかったので、世界観についていけるか不安だったのですが無用の心配でした。
最初はこの世界の用語が多すぎてなにがなんだか訳が分からない状態でしたが話が進むにつれ個性的な登場人物と結構エログロかつアクティブな展開のある話に引き込まれました。
意味不明の用語も何度か使われるうちになんとなく意味が分かってきて、
普段は現代日本作家しか読まないので目新しい読書体験でした。
日本ではねじまき少女のあとに発売された第六ポンプの方が、執筆順は反対だったみたいなので、先に読んでおけばよかったかと思いました。
下巻どうなるかすごく楽しみです。

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2012年08月05日

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面白い!
ニューロマンサー以来の衝撃!
バンコクを舞台に、ブレードランナーに似た混沌とした行き場のない閉塞感がこれでもかと表現されていて、途中で止められない面白さ!

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2012年06月17日

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当時のタイム誌〈今年の十冊〉にも選ばれた名作。石油が枯渇し、チビスコシス(咳とともに肺の肉を吐く)や瘤病(皮膚が肥厚してひび割れていく)が蔓延し、エネルギー構造も農作物も激変した近未来のバンコクが描かれています。アジアンテイストのディストピアの魅力が溢れています。

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2025年07月30日

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世界観が好き。カタストロフィも。アンダースン、エミコ、ギブソン、マイ、ジェイミー、カニヤ。みんなキャラが良いね。

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2020年09月20日

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ずーーっと気になってた作品。
印象的な装丁と期待高まる表題(これは春樹の「ねじまき鳥クロニクル」が好きだからでもあるが)で、一体どんな作品なんだろうと思いつつ、以前読んだ著者の短編がそこまでヒットしなかったので長らく見送っていた作品でした。
古本屋で上下巻が売られていたという不純な動機で読み始めた本書ですが、これがなかなか面白い。

舞台は未来のタイ・バンコク。この時点でワクワクさせられるのですが、本書はもっと刺激的。環境破壊で海面が上昇し、ニューヨークなど世界各地の沿岸都市は水没。石油が枯渇し、伝染病が蔓延し、遺伝子組み換え作物しか栽培されない世界。バンコクでは伝染病の広がりを防ぐ環境省配下の白シャツ隊が権力を振るう一方、海外との貿易により富を稼ぐ通産省が躍進を遂げ、両省は一触即発の状況にあった。そこに日本国製造の「ねじまき少女」エミコが思わぬ形で関与し、タイは未曾有の事態に陥ってしまう…

発展途上国の政権争いが物語のメインストリームですが、結果的に誰も得しないブルーな結末にションボリ。しかし、登場人物のそれぞれが苦境の中でなんとか幸運を掴もうと足掻く様はなんだか今の自分にはないハングリーさを感じられて、ちょっと思うところがありました。
それにしても、おもしろいSF作品の特徴は確たる世界観を構築していることですよね。ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、キャンベル記念賞と名だたる賞を総なめにした本書もまたその例に漏れません。

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2019年12月08日

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上巻読み終わり。この世界がようやく分かり始めて、楽しくなってきた。
本当は嫌いなキャラであるはずのホク・センを応援してしまうのはなぜ?

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2019年06月11日

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さすがに賞を総なめしているだけはある。希望はないが、非常に現実味のある設定と、それを読ませる筆致がすごい。遺伝子操作が行くつく先はこれなのかと暗くなってしまうが、なんとかならないのか、という一縷の希望を持ちながら読んでいる。

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2018年11月12日

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遺伝子組み換へなんとかが世界を席巻し、象が頑張る世界の、タイで、なんか「原種の果実」とかが出るので、それを調査するコーカソイドの人とか、お国を守るためにがんばるをっさんとか、マレーシアで地獄を見た支那のぢぢいとか、温帯専用の人造人間が、いろいろする。
 作者のご両親はヒッピーで、先生は支那へ行っていろいろやってたさうであるが、遺伝子組み換への品種で「近所の雑草を枯らすイネ」と言ふのが出てくる。
 アメリカはどうだったか忘れたが、ヨーロッパでは除草とかにウェイトかけないので、かう言ふのは欧州では異常に見えさう。

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2018年03月09日

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遺伝子組換SFで前半は分かりにくいが後半の展開は早くすべてはエピローグのためにある
表紙   8点鈴木 康士  田中 一江・金子 浩訳
展開   7点2009年著作
文章   7点
内容 690点
合計 712点

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2018年03月08日

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 2010年SF賞総なめの作品。邦題はオタク受けを狙って『ねじまき少女』なのかと思いきや、原題もきっちりThe Windup Girl。
 
 化石燃料が枯渇し、遺伝子改変動物を使役して生み出す力学的エネルギーを小型高性能のゼンマイにため込むというのが、この時代のエネルギー事情だ。よってすべてのエネルギーの源は家畜が食べる飼料のカロリーにたどり着くことになり、農業こそがが最重要産業なのだが、バイオテクによって生じた疫病や害虫で植物もまた壊滅的となっている。
 舞台はタイ王国。農作物の遺伝情報を握るカロリー企業の支配に屈せず独自の繁栄を築いている。物語はアニメ風のねじまき少女の冒険ではない。この起こりそうな暗い未来における群像劇である。

 タイでエネルギー工場を営むアンダースン。実はタイの種子バンクの情報を狙っているらしい。そして植物遺伝子にまつわる重要な情報をみぎっているらしいギ・ブ・センないしギボンズという男を捜している。
 アンダースンの側近として働く、中国難民の老人ホク・セン。かつて大企業主であった彼は、再起を図って、アンダースンを出しぬき、地元のギャング「糞の王」と接触する。
 ねじまき少女エミコ。遺伝子操作で作られた「新人類」。人間と区別するため、わざとぎこちない動きをするように作られていて「ねじまき」と蔑まれているが、ゼンマイで動いているわけではないようだ。日本で作られ、日本の企業家の秘書兼愛人としてタイに連れてこられたが、主人が帰国する際、経済的理由から捨てられ、見世物小屋で働く。
 タイの繁栄を守っているのが環境省、通称、白シャツだが、役人は賄賂を取り、腐敗している。賄賂を取らず、不正を暴く、環境省の役人ジェイディーはやり過ぎてしまい、政争に巻き込まれる。

 章ごとに別の登場人物の視点に切り替えつつ進む語りは、ひとりの登場人物への感情移入を妨げつつ、全体的な状況をゆっくりと明らかにしていくが、それは登場人物たちみながそこから駆け出すことができるように、慎重にゼンマイのねじを巻いているかのようだ。

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2016年02月05日

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近未来のバンコクを舞台にした物語ですが、現在私たちが映像などで知っているバンコクとあまり違わないように思えます。違うのは、市場にありとあらゆる遺伝子組み換え植物が並んでいたり、象を組み替えた動物がいたり、日本で作られたアンドロイドが出てくるところでしょうか。遺伝子組み換え植物は新たな病気をもたらし、人間には対抗策がありません。しかしアンドロイドなどつくられた生き物たちは、そうした病気と無縁です。必要から生まれたアンドロイドのエミコは、日本では大切に扱われていたものの、ここバンコクでは敬意を払われず、蔑まれています。主人(持ち主)に服従することを教育されているため、不満があっても逆らうことはありません。このあたり、日本の女性が置かれた社会的環境を示唆しているようです。バンコクには不穏な空気が満ちており、その中で登場人物たちは思い思いに行動します。エミコは課せられた拘束を解き、自由になりたいと思っていますが、上巻ではまだ答えは出ていません。

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2015年03月20日

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初めは馴染みの無い単語も多く状況を把握する事だけでも大変だったが、いつしかその独特の世界観に没頭してしまっていた。
登場人物の個性も豊かで、読者を惹きつける要素も満載だ。

石油に換わるエネルギー源としてのゼンマイ、蔓延する遺伝子操作、人々に暗い影を落とす疫病、発展途上を思わせる混沌とした都市、そしてねじまき少女の存在。

世間では本作について賛否が分かれているようだが、私的には非常にSFらしくワクワクできる良作だった。

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2013年02月25日

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90ページほど読んで、1年以上積んであった。

石油が無くなり、常に変異する疫病群で多くの動植物が絶滅している世界で、タイを舞台に、遺伝子改造食料メジャーの西洋人アンダースン、ホロコーストを逃れた老中国人難民ホク・セン、試験管から製造された工業製品である日本の女の子エミコ。

改良された象とゼンマイが動力源の世界で、タイの固有名詞に馴染めなかったのと、悪いやつ二人と奴隷が一人、個別視点で語られて、感情移入できなくて。

で、先週続きを読み始めたら、あっという間に上巻終わり。
あと数ページ先から面白い展開が待ってるとは思わなかったよ。

実はバンコクも水没の危機下にあって、タイ環境省の実力行使チームが出てきて急に面白くなった感じ。(たぶん4人めの主人公)
で下巻を読み始め

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2013年01月16日

Posted by ブクログ

そこかしこで散見される訳の拙さはさておき、散文的にばらまかれる現在形による描写にまず打ちのめされる。いわゆる普通の文体に慣れた身にはほんと辛かった。

そんな読み手の困惑を無視してしょっぱなから話はぐいぐい進む。今我々が住む世界とは似ても似つかないとんでもない近未来世界へ何の前知識もなく放り込まれるものだから、もうたまったものではない。帯の惹句につられて軽い気持ちで本書を手に取った読み手の多くは下巻を手に取ることなく書を閉じているに違いない。
かくいう私もこりゃ無理だわ。

80点(100点満点)。

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2012年09月18日

Posted by ブクログ

石油の枯渇した近未来のバンコック、外国人の工場では遺伝子操作したゾウを動力として海草タンクを用いて新型エネルギーであるゼンマイを製造している。最初80ページ位はタイトルと小説の世界観が上手くなじまずちょっと読み進むのに抵抗があった。ちなみに昨年このあたりで一回挫折w

そしてタイトルでもある日本製のアンドロイド、ねじ巻き少女が成人向けの描写とともに登場し、通産省と環境省の争いなどぐいぐい引きつけられ下巻に続きます。

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2012年08月19日

Posted by ブクログ

石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。遺伝子組替動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物ンガウを手にする。ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。彼とねじまき少女エミコとの出会いは、世界の運命を大きく変えていった。主要SF賞を総なめにした鮮烈作

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2012年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

舞台は近未来のタイ、バンコク.石油は枯渇し、ねじまき(ぜんまい)が主な動力源となっている.温暖化のためか海面は上がりバンコクも水没の危機に瀕している.また新たな疫病もはびこっている.カロリー企業や通産省、環境省の役人、軍人はそれぞれの勢力を伸ばそうとして暗躍する.エミコは日本製のねじまき少女だがタイにつれてこられてそのまま不正滞在をし、裏社会のSMショーや売春をして生活していたがカロリー企業の経営者アンダーソンと出会う.

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2012年06月26日

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「カロリー企業」「ねじまき」突然乱雑なタイの雑踏に落とし込まれたようで、物語の設定を理解するのに時間がかかった。ネットで誰かの用語解説サイトでやっと状況と対立軸を把握。
誰もがカロリーを摂取してエネルギーを確保するのに必死な世界で、白シャツの暴力に怯えながら、どのように生き残るのか思考を巡らせる、泥に塗れた汚くも弱肉強食の世界観。

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2022年08月19日

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複数巻を平行に読破月間。

遺伝子改変とハックが当たり前になり、他国の作物をジーンハックゾウムシによって壊すことで、エネルギー機器に陥らせる時代。独自の種子バンクを持つタイでは西洋由来のカロリー(エネルギー)企業に負けない食文化を構築した。そこで藻類を研究するアンダーソン、通産省で闇カロリーを駆逐するジェイディー、日本製の遺伝子改変"ねじまき"少女のエミコの人生が交錯していく…。

クールなアンダーソン、自分がうまく制御できないエミコ、熱く衝動的なジェイディーに、得体のしれないホク・センと、サイバーパンクというか、アニメ的な登場人物の視点でそれぞれ進む序盤。状況の説明と、やや支離滅裂なストーリー展開がほとんどのため、上巻前半はなかなか読みすすめるのが難しい。

裏表紙に書かれているストーリーも、何となく全体にずれていたり、表現が誤っていたりするような感じで、出版社も上巻だけでなんともならないように思える。

そういう滅裂感が、上巻の後半にやや動き出してくる。的だと思っていたジェイディーが事件に巻き込まれ、エミコは北を目指す。

ヨーロッパから見たアジアの混沌とした世界観、特に通産省とは名ばかりの、日本のヤクザをベースにしたと思われるネチネチした陰湿な組織形態、得体のしれない敵国としての日本など、そういう風景が見えるようになってくると、理解が深まっていくだろう。

でもまあ、まだ序盤である。ようやく話が始まろうというところなので、後半に期待。

余談。
吾妻ひでおの『不条理日記』に出てくる「ミルクちゃん」の元ネタかと思って読み始めたのだが、2009年の作なのね。不条理日記って1979年頃よね。

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2021年08月25日

Posted by ブクログ

石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。
遺伝子組換動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物【ンガウ】を手にする。
ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。
彼とねじまき少女エミコの出会いは、世界の運命を大きく変えて行った。
(あらすじより)

このタイプのSF小説にありがちな事として、物語の前半を使って世界観や独自の文化を説明する手法がある。

最初は物語に入り込めず忍耐が必要だが、ここをしっかり読まないとその後の話にもついていけなくなるので、重要なパートでもある。

上巻はまさにその典型的なパターンだったように感じた。

洪水のような情報量。
イメージの奔流に圧倒される。

世界観、文化、人間関係、政治情勢、登場人物達の思惑が描かれ、上巻の最後のほうでようやく物語が動き出した感じだ。

下巻で一気に爆発するんだろうか。

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2018年12月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初長編で大きな賞を獲ったということで「『ニューロマンサー』以来の衝撃」がオビの売り文句になっているが、さらに言うと、雰囲気・手法もギブスンを意識しているみたいだ。

・遺伝子ハックやねじまきといった道具仕立ての細かい中身には立ち入らず、それらがいかにもリアルな世界で使われているという描写で世界観を描き出していく。ねじまきの性格がドMにデザインされているとか、人が錘になって動くエレベーターとか。この辺は読んでいて面白かった。

・タイを舞台にしてエキゾチックな感じをうまく出している。出てくる日本人のおかしさは相変わらず(ある意味正統的なステレオタイプ)。

・章ごとに入れ替わる多視点。語り手のバラエティも亡命中国人の爺さんとかいい感じ。

・翻訳でよく分からんところもあるが、現在形を使うところとか、章や段落の最後を印象的なセリフで区切って見せたりするのも似ているかな。


普通はねじまきの自意識が人間と同じホンモノなのかがテーマになりそうに思うが、そこはねじまき本人が語り手になっていることもあって(保守的タイ人は「カルマがない」なんて言うものの)当然ホンモノですよ、という感じでスルー。遺伝子をいじっているとは言え立派な生物だからかな。作中の世界では可愛そうに社会的にはモノ扱いではあるが、電気羊なんかと比べると、世界観的には人造人間の人権確立が進んでいる気がする。

惜しむらくは、筋の運びがぞんざいでアラッと思うところが多々ある。例えばジェイディーの最期とか、終盤のあたりかな。トントンとテンポがよろしいという評価もあるかもしれないけれど、なんか安易に思えた。バイオをSF的道具仕立てにしているが、そこらへんの描き込みも新しさは感じない。

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2018年11月09日

Posted by ブクログ

SF。エコSF。バイオSF。
説明不足で分かりにくいところもあるように思うが、先に『第六ポンプ』を読んでいたおかげで、すんなりと物語に入っていけた。
アンダースン、エミコ、ジェイディー、ホク・センと、複数の視点から物語が進む。
ジェイディーとホク・センのパートが好きではないが、エミコのパートが良い。ねじまき少女は何を考えて生きているのか?

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2017年06月16日

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未来のタイを舞台に、ねじまきと呼ばれるアンドロイド少女や野心満々な外国人たち、何もかも失い再起を期す元中国人実業家、激しい権力闘争を繰り広げるタイの官僚たち、と多彩な登場人物それぞれの視点から物語が進んでいきます。
物語の設定は興味深いものなんですが、今ひとつピンきませんでした。翻訳が下手くそなのか元々の文章がそうなのか知りませんが、文章がとても読みにくいし、物語の背景が複雑すぎてゴチャゴチャになりすぎている感じがしました。下巻でスッキリすることを期待したいと思います。

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2013年04月25日

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読むのに時間をかけすぎたせいで、ちょっと全体像を掴み損ねてしまった。
細かいモチーフとかは、非常に好みだったので、また読み直したい。

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2012年11月04日

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エネルギー資源がゼンマイと遺伝子組換動物に変わった後の世界、様々な遺伝子操作の結果、食の安全も崩壊した世界。タイ・バンコクを舞台にした群像劇。
汚染されていない植物の謎を追う欧米人、失った富を取り戻そうと機会を狙う老中国人、不正を許さないが故に身内からも狙われるタイの役人、そして日本製の新人類である「ねじまき少女」。
湿度が高く、不快指数の高いアジア特有の空気感がどんよりした世界の雰囲気と良く合う。そしてどん底の状態でも精一杯、したたかに生きようともがくそれぞれの姿も興味深い。

ただ、状況が見えにくい上に独特の語彙が多く、入り込み辛くもあった。下巻に期待。

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2012年10月03日

Posted by ブクログ

登場人物表がないせいでややごっちゃになってしまいますが、SFなのに設定や世界観がリアルすぎるのですいすい読めます。エミコ、幸せになってほしいな…。

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2012年07月03日

Posted by ブクログ

前半の終わりにきて少し面白くなりかけた。なかなか新しい世界の言葉に理解が及ばず、登場人物も整理しにくく、訳が悪いのか原作自体の分かりづらさかその辺は分からないが、もう少し工夫が欲しいところ。
後半に期待する。

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2012年06月24日

購入済み

お薦めできません

あくまでも、個人の感想ですが、SFやファンタジーのカテゴリーではない気がします。また、残虐な描写が度々あり、途中で読む気が失せました。子供達には読ませない方が良い気がします。

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2015年05月18日

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