初イーガン。どこから得たのか「グレッグ・イーガンは難解」というイメージがあって、SF歴3年目の中で読んだことがありませんでした。が、むちゃんこ面白いじゃん!!!と思いました。私好きだわこれは、と最初から思い、最後までそう思い続けられました(これは読みやすい本だということなので、この後他の本を読んでぐうの音も出なくなるかもしれませんが笑)
「適切な愛」発想が度肝を抜かれたというか、文章力と相まって度肝を抜かれた
【再読】子宮の中で夫の脳を孕む女性について。それを経ることで起きた変容。時間は流れていき、過去には戻らず、現在がある。
「闇の中へ」好きだったなー…アイディアもSFという感じでわくわく
【再読】助かるのだろうかどうかというハラハラを、そうそうこんな感じだったと思いながら読む。
…ワームホールは、生きることのもっとも基本的な真実を具現化している。人は未来を見ることができない。人は過去を変えられない。生きるとはすなわち、闇の中へ走っていくことである。だからわたしはここにいる。
…危険は増加しない
とわかっていても感じる恐怖がよく描かれている
「そう。終わったら、きっと起こしてね」
イーガンのこういう終わり方がとてつもなく好きです。映画的というか、なんというか。
「愛撫」好きでしたこちらも。
クノップフは好きな画家のひとりだし、象徴主義も好きなのだけれど、豹見つけたところからこんなエンディングになるとは…度肝を抜かれました笑
それにこの絵を選んだのもイーガン!って感じだし、他の作品でも出てくる芸術のタイトルが、イーガン結構芸術好きでしょ?って思えるものだったので、作家としてもこれは好きなタイプとなったきっかけの一作。まじで面白かった。。
【再読】改めてクノップフの愛撫を持ってきたところが100点満点で、謎に満ちた終わり方も、象徴主義らしくて好き。スフィンクスはクノップフの妹がモデルとされているが、それ自体がクノップフ自身の現身だと彼が捉えていたとしたら、自分自身でさえ「見る側の条件がごくわずかに変わっただけで、徹底した再解釈が必要になる」なのではないだろうか?これもやはりイーガンならではの、アイデンティティに対するアプローチの一つなのだなと。それは…わたしを定義づけていたなにもかもが奪われていた。顔、体、職、通常の思考形式…というときのダンにも、クローンに自分の記憶と人格の大部分を移したアンドレアス・リングイストの語りにも表れている。
「道徳的ウイルス学者」
【再読】あまり覚えていなかったので初めて読んだ際はあまり刺さらなかったようだけど、二度目は普通に面白いし、こんなこと書いてイーガン刺されないかなって少し思ったりしていました。恩寵が与えられた結果がそれ笑という、宗教なんてそんな滑稽なものだと言っているかのような。
「移相夢」これってもしかして…って気づいたときの鳥肌ですよ…
【再読】
「夢からさめてすぐの数秒間が好きなの。夢の全体が心の中でまだみずみずしくて…でも、同時にそれに脈絡をつけることができるから。そして自分がどんな夢を見たかがはっきりとわかる」同じくすぎる!
(わたしはだれなのだ?)ロボットの中で目ざめる男について、わたしがたしかに知っているといえることはんだろう?…すべては吟味してみると混乱と疑問にのみこまれてしまった…自ら美しい幻影をつむぎ、死をまったく別のなにかと誤解して。
こちらもアイデンティティの境界線の曖昧さと、夢の曖昧さとが、美しくも冷たく重ねて描かれている。再読して初読時よりもぐっときた作品かもしれない。
「チェルノブイリの聖母」トレチャコフにあるウラジミールの聖母かあ…とこれまた脱帽。話自体もこれまた面白いんだよなあ…傷がまさかそういうこと!?っていうことが分かった時もワクワクだしなあ…
【再読】オチを覚えていなかった笑
ー神は肉ではなく、情報から作られているのである
すごいなこれ。震えた笑。そして本作も終わり方がかっこよくて好きだった。
「ボーダー・ガード」悲嘆を終えて四日目の午後早く…この出だしだけで結構やられた
【再読】ここまで力強く、不死が素晴らしいといいきるのは少し抵抗を持ってしまう笑。
「死が人生に意味をあたえることは、決してない。つねに、それは正反対だった。死のもつ厳粛さも、意味深さも、そのすべては、それが終わらせたものから奪いとったものだった。けれど、生の価値は、つねにすべてが生そのものの中にあるーそれがやがて失われるからでも、それがはかないからでもなくて」理解はできているが、心の底から信じられていないこの言葉。やはり終わりがあるからこそ、この生は意味があるように思えるので。
【再読】「血を分けた姉妹」こちらはオチまでなんとなく覚えていたのに初読時にはなんのコメントもない‥笑。双子だからと言ってもちろん別の人間であり、別の人生を歩む個人なのだ。全ての作品の根底に共通するアイデンティティのテーマと、その他人生に出てくるパートナーとの問題(意地の張り合い)や病気などが軽やかに絡んでいるのが、読みやすいし面白い。やっぱイーガンすごいなあ
「しあわせの理由」幸福の境界線とは?これは時々考えることだったので、えそうそうそう!ってなりながら読んでました
【再読】↑そんなこと思ってたの?と思わざるをえませんが…笑
「音楽、気が置けない仲間、アルコール、セックス…境界線はどこにある?幸福感の理由づけが、この男のような空虚で病的なものに変わってしまう、その境界線は?」この男とというのは、宗教を信じている男ですが、確かに自分が幸せだと感じるもの/こと/ひとの境界線を見つめようとすると、相対主義に陥って、自分の足元もぐらぐらするような。
再読時によりピンときたのは、「父から、母から、そして、想像を超えた遠い過去の、人類も原人も含めた一千万の祖先からうけ継いだものだ。そこにあらたな四千人分が加わったからといって、なにが変わるというのだろう?」というもの。高校時代に生物でDNAについて学んでからこの感覚はずっとあるんだけれどな笑。人生はうまくいったり、うまくいかなかったり、幸せだったり悲しかったりいろいろあるけれど、巡り合わせでそうなっているところもあって、その中で確固としたものはやはり自分自身でしかないので、自分がどうしたいか、どう捉えるかというのが大事ということなのではないだろうか。
次のイーガン早速読んじゃいますっ