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Posted by ブクログ
上手くまとまった面白い短編集、というよりかは「ちょっと面白い設定とかSF考えたからちょっと見てくれや」みたいな、発想博覧会的な趣がある。
量子サッカー(フィールド全体に波動関数としてボールが存在しており、プレイヤーたちが自由に動きそのエネルギー状態を遷移させることで、相手のゴール内にボールの存在確率を50%以上に収束させるスポーツ)とかその典型例だと思う。
もちろん人情的な話もあり、悲劇もあり、かなり幅広い短編sが収められている。
ディアスポラとかゼンデギとかその辺の長編から始めるよりかはこういう短編から読み始めた方が、グレッグ・イーガンの作風と振れ幅を知れていいのかなとは思う
Posted by ブクログ
短編集。イーガンはハードSF作家として有名でなかなか手に取り難い。
本書は表題作「しあわせの理由」の設定(感情が脳の化学物質によって左右されてしまう)に興味を抱いて読んだ。
期待に違わず表題作はとてもおもしろかった。廃人のような時期と多幸感に溢れた時期が躁鬱病患者のようであるが、冷静な分析がそれに骨格を与えていて、ただの情緒不安定な人ではなく、ちゃんと希望が0の人と4千人の幸福を持った人として説得力がある。ただし、ストーリー最後はあまりにも「まとめ」的な形で、安っぽく思えてしまう。それほど直接的に語る必要はあっただろうか。
しかしこの直接的な、ある種の説教臭さは他の短編にもかなりある。とくに血を分けた姉妹は人間の命の功利主義への猛烈な批判で、寓話的であり、あまりに主張が激しすぎて(イーガンは病院で働いていたそうなので、説教臭さはそこに由来していると思う)、その主張のためにキャラクターを設定しているように感じた。私は読んでいて全然面白くなかった。
その他の短編はチェルノブイリの聖母・ボーダーガードを除いてどれもなかなか良い。
適切な愛はその中でも設定が良い。愛撫もスリラーで面白い。
Posted by ブクログ
手塚治虫の漫画のような、毎回示唆に富んだテーマを近未来を舞台に展開した小説です。本作は極めて高度な科学考証を基盤とする「ハードSF」であり、私としては専門的な文章が難しく、毎回テーマとしているところを汲み取れず、WEBで解説を読む始末でした。だいぶ難しいイソップ童話といったところでしょうか。内容を追うので精一杯でした。その中でも医療サスペンスの枠組みに近く、ストーリーがわかりやすかったのは「チェルノブイリの聖母」や「血を分けた姉妹」ですかね。
純粋にSF要素を楽しむべく読むやりかたのほうがよかったのかな。何かを得ようとする読み方への限界を感じてしまった。またいつかリベンジしたいですね。
Posted by ブクログ
イーガンはもっと難解で何のこっちゃわからん感じかと思っていたが、文章自体が思いがけなく読みやすかったので、理系の専門知識部分以外は問題なく理解できた。ただ、1篇ごとに舞台設定を理解するのに体力がいるので、読む前に気合いが必要。
読んでいると人間という存在の悲哀を感じて、自分の人生を含めたこの世界をとても切ない気持ちで見てしまうようになる。人間は「自分のしたことは間違っていない」と思わないと生きていけない、という真理を感じる話が多かった。
確かに解説にあったようにアイデアが主役でストーリー展開やオチは二の次という感じの作品もあったが、『しあわせの理由』は本当によかった。
Posted by ブクログ
グレッグ・イーガンはハードSF好きの自分としては外せない作家。
のはずなのにもしかしたら所有したのは初めてかもしれない。今までは何かの短編集的なもので読んだだけだったのかも(嘘でした。『クロック―ワーク・ロック』三部作を持っています。難しすぎて忘れていた)。
本短編集、SFなのだが、突拍子もない設定やかけ離れた未来の作品はそれほど多くはなく、時間軸としてもとても現代に近い設定のため、「あれ? これってSF?」となる作品も多い。
表題の作品『しあわせの理由』なんて、SFではなく人間を描いており、その設定のためにSFを利用していると言ってもいいくらい。というか、多分そう。それはタイトルに現れている通りで、自分が感じるしあわせも少し懐疑的に見てしまいそうになる。
現実の自分の認識を疑いたくなるという意味では、『移送夢』も怖い。自分の世界は自分の認識によってのみ構成されているんだよなと思うと、全てが信じられなくなる。
グロテスクと感じる作品もいくつかあった。『適切な愛』で表現されている愛は私の感覚からするとグロテスク。
その他『愛撫』『道徳的ウイルス学者』など、その発想はSFと呼ぶには自由すぎる。解説者はイーガンの小説は「哲学小説」と定義していたが、それに賛同するかどうかは置いておいて、そう言いたくなるのも理解できる。
さて。
早速だが本作の前に出版された『祈りの海』を注文した。
しばらくはイーガンの世界に浸ろうと思う。
Posted by ブクログ
★4.4
SF界の巨匠グレッグ・イーガンが贈る、9篇のの短編集。
神経系の異常により“幸福”を感じられなくなった少年が、治療の果てにたどり着く「しあわせ」のかたち。感情操作を通じて再び幸福を手にしようとすることは、果たして“本人の意思”と言えるのか。(表題作『しあわせの理由』)
タイトルだけ見ると、宗教や自己啓発本に見えてしまう本書。中身は紛れもないハードSF、もっと言えばPF[Philosophy Fiction:哲学小説]だ。
生体操作・記憶・倫理・宗教・国家といった多様な領域を横断しながら、科学の視点で「人間とは何か」**を徹底的に解剖していく。
思考実験の連続は、めまいをもたらす。
特筆すべきは、すべての短編に“読む価値”があること。中にはとんでもなく難解なものがあったり、設定が主役のような短編もあるのだが、それすらも含めて思考に深く切り込んでくる。
脳が拒否反応を示しても、問いや雰囲気だけ持ち帰るのも一興だ。
「しあわせとは何か。」
普遍的で、断続的に起こる問いの一つだ。
イーガンはこの問いを、表題作『しあわせの理由』で鋭く突きつける。
テクノロジーによって感情すら再定義されるうるなら、自由に選べる幸福には本質はあるのだろうか。あるいは、テクノロジーというフィルターを通すからこそ拒否感が生まれるだけで、元来人間は能動的に幸福を選んでいるのだろうか。
その他の短編にもそれぞれ異なる哲学的問いが内包されている。
愛と記憶の再構築を扱った『適切な愛』は、本書の中でも異色の“ロマンチックな”一編。愛が科学で制御できる世界で、それでもなお揺らぐ人間の情動を描く。
芸術の創造と遺伝子工学が交錯する『愛撫』では、「美とは何か?」という審美的な問いが思いがけない形で浮かび上がる。
宗教と遺伝子倫理が衝突する『道徳的ウイルス学者』では、信仰と科学が皮肉な形で融合するさまが描かれ、ブラックユーモアの効いた倫理劇となっている。
『ボーダー・ガード』『血をわけた姉妹』では、ハードSFの枠を超えて倫理と哲学を深くえぐる内容で、イーガンの「哲学SF作家」としての一面が際立つ。
死の意味を冷ややかに照射する『闇の中へ』。不可逆の闇は、人生そのもののメタファーだ。数理的・哲学的というより、存在論的ヒューマニズムの色が濃い。
『移相夢』は日々別の身体に宿る男の視点を通し、「自己とは何か」「意識の一貫性に意味はあるのか」を問う。”テセウスの船のよう”といえばとっつきやすいだろうか。記憶だけが繋がる存在は、果たして自分と言えるのか? 自分の人生は、自分だけが覚えていれば、それで足りるのか?
巻末の解説も必読で、本書の構造や背景、イーガン作品に通底するテーマを理解するうえで大きな助けになる。むしろ読前に目を通すことで、本編の理解が一層深まるだろう。
“しあわせ”を感じるとは、どういうことか?
“しあわせ”を選べるとは、どういうことか?
その問いを胸に、しばらく余韻に浸ろう。
Posted by ブクログ
12歳の誕生日をすぎてまもなく、ぼくはいつもしあわせな気分でいるようになった…脳内の化学物質によって感情を左右されてしまうことの意味を探る表題作をはじめ、仮想ボールを使って量子サッカーに興ずる人々と未来社会を描く、ローカス賞受賞作「ボーダー・ガード」、事故に遭遇して脳だけが助かった夫を復活させようと妻が必死で努力する「適切な愛」など、全九篇を収録した日本版オリジナル短篇集。
あらすじを書こうとして難しすぎてそのまま引用してしまった……。
SFではあるけれど、世界観がその形をとっているだけで、読んだ後に心に残ったのは自分の持っている価値観のゆさぶられだった。
なにが面白かったかを説明しようとすると難しい。
だけれども確実に読んでいてページをめくる手が止まらなかった。
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小説・文芸
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