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今から2万年後。量子グラフ理論の研究者キャスの実験は、新たな時空を生み出してしまう──それから数百年後、人類は拡大し続ける新たな時空の脅威に直面し、人類の生存圏の譲渡派と防御派が対立していた。観測拠点〈リンドラー〉号にて譲渡派のチカヤは幼なじみのマリアマと再会し動揺する……解説収録/前野昌弘
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Posted by ブクログ
グレッグ・イーガンはハードSFの極北なので一般人の私には理解できるレベルでないのだが、自分の理解への助けに概略をまとめておく。 二万年後の未来の話。人類は宇宙全域に播種し、もはや人格をデータ化しバックアップ、光速で移し替えたりでき肉体はもはや意味を持たず、肉体を持つことなく存在する人もいる。寿命も...続きを読む数千年にわたる。肉体ももはや男女の別はなく、性行為をしたい時はそれ用に性器を作り出す世界となっている。そういう世界が嫌で自らの肉体をコールドスリープし宇宙を漂流し続けるアナクロノートと言われる人類も登場、後に彼らが騒動を引き起こすこととなるのだが。 ミモサにてサルンペト則(架空の物理法則)に基づく量子力学の実験が行われる。この実験にて現在の空間とは別の新真空というものが作り出されるも、想定とは異なり新真空は一瞬で消失することなく光速の半分の速度で現在の空間を削り取り広がっていくことになる。実験を行ったキャスたちは我先にと結果を知りたく、フェムトマシン(スーパーコンピューターみたいなもの)を使用し少し先の未来を観測するも新真空に飲み込まれて自分たちが消え去ることを悟る。が、それまでに残された時間で解決策を模索しようと決断する。ここまでが第一部。 第二部はそのさらに600年後。新真空により複数の星々が飲み込まれ、その観測と対策を行う最前線、リンドラーという観測拠点が舞台となる。左手と右手と呼ばれる二対の観測箇所があり、左手は譲渡派、右手は防御派の拠点となっている。譲渡派は広がる新真空を消し去らずに拡大を止め、調査、移住を試みる勢力、防御派は拡大を止め、新真空を消し去ることを目的とする派閥。主人公のチカヤは譲渡派に属しているが、リンドラー内で期せずして幼なじみの防御派であるマリアマと出会うことになる。マリアマはいつも強気で先進的でチカヤを困らせており、数百年ぶりの邂逅となるリンドラーでも派閥が別なこともあり衝突が続く。そんな中、絶対視されていたサルンペト則が誤りであるという仮説が提唱され、仮説を元にした実験により新真空へのアクセスが可能となる。ここで譲渡派は新真空内に生命体の痕跡を発見するのだが、防御派はアクセスが可能と見るやプランク・ ワーム(自己複製、増殖、変異するウイルスみたいなもの)を送り込み新真空を破壊する方法を確立する。 防御派は生命体の存在を公表し、新真空の破壊はジェノサイドにあたるので防御派に行動を待つよう1年の猶予期間を求めるのだが、防御派の過激分子は「もし新真空に生命体が存在するのなら、彼らは拡大のスピードを加速させ我々を消し去る方法を探しているに違いない。新真空を消し去る方法があるのなら今すぐ行うべきだ」と反論を行う。その場で結果は出ず投票となる。過激な反論を行った人物はアナクロノートであり、旧人類(我々世代的なものの見方をする)なのであった。彼らは投票を待たずして防御派の一部を懐柔しリンドラーの乗っ取り、プランク・ワームの投下を試みる。これらの行動を察知した譲渡派はチカヤを中心に妨害を行うのだが、プランク・ワームは投下されてしまう。このままでは新真空が消え去る段になり、防御派ながら過激派には与しない、いつだって正しいマリアマと協力し、新真空内部への侵入、内外からの2面作戦によるプランク・ワーム殲滅を試みる。 新真空内部には、知的生命体が存在しており(と言ってもまだ原始的なレベル)、新真空に削り取られたはずのフェムトマシンが存在、予言者のように扱われていた。フリーズしていたフェムトマシンを再起動させるとキャスが現れ、ことのあらましを説明する。キャスの協力によりプランク・ワームを消し去り一件落着。 タイトルのシルトの梯子はチカヤとマリアマの関係性を示す。ベクトル曲線上を平行移動させる手法だが、同じ地点に到達しても違うベクトル曲線をたどると平行移動した接ベクトルは違う方向を向いている。 ハードSFだが、リベラルなヒューマニズム小説なのでもあった。
イーガンの描く世界を理解するのは難しいのですが、とうとう宇宙までソフトウェア化してしまったようです。
端からサルンペト則って何?と躓いて、第一部で理解の範疇外にあるかもと放置しかけたが、なんとか梯子を登り切りました。第二部に入ると良く判らないけれど、これって何かキレイだし、スゴイんじゃない?と爆発している芸術を楽しむ境地だった。^^; あとがきを読んで、判らなくても大丈夫と喜んだのだった。
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