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Posted by ブクログ
文句を言いたいわけじゃないが、5年待った。『ハローサマー、グッドバイ』のあとがきに触れられていた続編のようやくの登場である。
続編というのはいささか語弊があって、直接的な続きというより、同じ舞台を使った作品である。しかも、『ハローサマー』の主人公、ドローヴとブラウンアイズは伝説の人物となっていて、その実在すら定かではなくなっている未来の話。スティルクと自らを呼ぶこの星の知的生命は人間とそっくりなのだが、『ハローサマー』では機械文明初期にあったのが、この未来の話では産業革命以前のような狩猟・農耕社会に退行している。
しかもスティルクたちはこの何百年かのあいだに『ハローサマー』にはなかった能力を身につけている。それは同性の祖先の記憶をアーカイヴのように残しているということである。父が自分を受胎させるまでの記憶、祖父が父を受胎させるまでの記憶、というようにずっと遡っていけるのだ。ただそれを思い出すには、それ相応の努力がいる。そしてもっとも長く祖先の記憶をたどれる家系が、村の長となるのだ。記憶が女系と男系に分かれているせいか、コミュニティも男性集落と女性集落に分かれており、男の子は一定年齢になると母から離されて、男性集落の父のもとで過ごすようになる。
「ぼく」ヤム・ハーディは、男が狩猟、女が農耕を営むヤムの村の男長の甥である。彼の父の弟が男長だ。年少の兄弟のほうが父の記憶をより多く持っているから長になるのである。折しも、年々寒さが強まり、獲物がとれにくくなり、作物も実りにくくなっている。だいたい『ハローサマー』と同じような状況になっていると読者にはわかるわけだ。このため、ヤムの村では漁を営む沿岸のノスの村に援助を求めることになる。そこでハーディはノスの女長の娘ノス・チャームと出会い、恋に落ちる。美しくて、利発で、意志の強い女の子が主人公と相思相愛になるのはマイクル・コーニイの常。
『ハローサマー』の時代よりあと、この惑星には地球人がやってきていて、鉱物を採掘している、というのも、新たな設定。地球人ミスター・マクニールはハーディのよい助言者である。
ハーディの父ブルーノはリーダーの才覚のある人だが、その資質を欠く弟のスタンスが男長を務めており、ブルーノはスタンスを保佐して村を運営している。しかし、ある日、父ブルーノは殺されて発見される。祖先の記憶を有するスティルクたちは、殺人のような不名誉な記憶を子孫に残すのを嫌って、恐ろしく犯罪は少ないはずなのに。
基本的には『ハローサマー、グッドバイ』と同じ話といってもいい。この星の人たちが、40年続く凍期をどうやり過ごすのかという話だ。そして『ハローサマー』を読んでいる人はその答えもすでに知っている。そこで作者は上記のような新たな設定を投入して、似ているけどぜんぜん別の話、でも『ハローサマー』をもうひとつ読みたいという読者のわがままをかなえてくれる本を書き上げたのだ。登場人物たちが『ハローサマー』の舞台だったパラークシ(今では聖地とされている)での出来事の記憶にたどり着けるかどうか、殺人事件の真相はどうなのか、スティルクたちはどうしてこんなに人間に似ているのか、などなど。
そして、あとがきには次のお楽しみが。傑作だったということしかもう記憶にない『ブロントメク!』が本文庫で復刊予定だというのだ。
Posted by ブクログ
『ハローサマー、グッドバイ』の続編。
続編、とは言っても前作から数百年単位であとの世代の話。だけれど、その数百年の“記憶”が上手く話に生かされているので、前作を読んでから読んだ方が絶対に楽しめる。
記憶遺伝子をもつ人間型の種族で、世代間に記憶が継承されていく(制限はあるし、自主的に制限をかけることもできる)という設定がとても面白かった。
それにしても、前作のドローヴとブラウンアイズのいちゃつき具合も大概だったけど、今作のハーディとチャームもなかなかのものでした…(笑)まあ、どちらも愛は世界を救うというところなので。良い青春恋愛SFでした。
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