読み終えて改めてタイトルを見返すと、また背筋がゾクゾク。
可愛らしい少女の表紙絵からは想像だにしなかった展開と結末にもう虜。久々に眠気に打ち勝って徹夜で読み耽ってしまった作品。
まず冒頭まえがきの〈作者より〉から既に面白いし、これが紹介するのに最適。
「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF
...続きを読む小説であり、さらにもっとほかの多くのものでもある。」
これがまた本当にその通りで、これだけたらふく盛り込んでいながら全てが完成されていて、青春小説としても身分違いの恋とか少年少女らの微妙な関係性とかが漂う夏の海の気配とも合わさって実にもどかしくも爽やかに描かれる。グルームワタリ鳥の光景だけで夏を感じられる程にのめり込んでしまった空気感にもう夢中さ。
対極的に、少年少女らに忍び寄る戦争の気配やら大人たちが隠している’秘密’についてとかを察知するに及び、物語は一種のヒーロー譚のような様相をも纏い出す。
が、終盤に差し掛かってからの転調が最高にキマっている。あれよという間に世界が一変し、それまでの空気がほぼ全て入れ換わり、からの、衝撃のラストで〆!本当にこの終盤の変わり身は凄い。「この夏のあと、ぼくたちはだれひとり、前と同じじゃなくなってる」(p283)ってさり気なさ過ぎる一文が今思えば恐ろしい。
いや、変わらなかったのは少なくとも二人いるのか。そうだったらいいな。
個人的にはオチについて物凄く語り合いたい!
「俺はこう思ったんだけど、どう?」みたいのをやりたい!
けど自分なりの解釈に満足してるしそれはそれでその方が良いのか。
…p368の10行目から13行目の3行がアレよね?
7刷
2022.8.14