金子浩のレビュー一覧
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エネルギーが枯渇して社会構造が激変した近未来のバンコクが舞台のSF小説。
遺伝子操作技術と、その根幹になる無傷のオリジナルの遺伝子が物語を回す主軸になっている。
遺伝子操作によって人工的に作られた歪な生物たち。
その技術とオリジナルの遺伝子を巡っての利権抗争と、遺伝子操作された生物を取り締まる人たちの努力がドラスチックに描かれている。
利権抗争も遺伝子組み換えも、すでに存在している技術の延長に過ぎないところが物語にリアリティを与えているようでだ。
遺伝子操作しなくても、交配によって自然に手を加え続けてきた人類に守るべき自然とは何なのか、進化とは何なのかを問いかけてる作品です。 -
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石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。
遺伝子組換動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物【ンガウ】を手にする。
ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。
彼とねじまき少女エミコの出会いは、世界の運命を大きく変えて行った。
(あらすじより)
このタイプのSF小説にありがちな事として、物語の前半を使って世界観や独自の文化を説明する手法がある。
最初は物語に入り込めず忍耐が必要だが、ここをしっかり読まないとその後の話にもついていけなくなるので、重要なパートでもある。
上巻はまさにその典型的なパターンだったように感じた。
洪水のような情報量。
イメージの奔流に圧倒される。
世界観、文化、人間関係、政治情勢、登場人物達の思惑が描かれ、上巻の最後のほうでようやく物語が動き出した感じだ。
下巻で一気に爆発するんだろうか。 -
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ネタバレ初長編で大きな賞を獲ったということで「『ニューロマンサー』以来の衝撃」がオビの売り文句になっているが、さらに言うと、雰囲気・手法もギブスンを意識しているみたいだ。
・遺伝子ハックやねじまきといった道具仕立ての細かい中身には立ち入らず、それらがいかにもリアルな世界で使われているという描写で世界観を描き出していく。ねじまきの性格がドMにデザインされているとか、人が錘になって動くエレベーターとか。この辺は読んでいて面白かった。
・タイを舞台にしてエキゾチックな感じをうまく出している。出てくる日本人のおかしさは相変わらず(ある意味正統的なステレオタイプ)。
・章ごとに入れ替わる多視点。語り手のバラエティも亡命中国人の爺さんとかいい感じ。
・翻訳でよく分からんところもあるが、現在形を使うところとか、章や段落の最後を印象的なセリフで区切って見せたりするのも似ているかな。
普通はねじまきの自意識が人間と同じホンモノなのかがテーマになりそうに思うが、そこはねじまき本人が語り手になっていることもあって(保守的タイ人は「カルマがない」なんて言うものの)当然ホンモノですよ、という感じでスルー。遺伝子をいじっているとは言え立派な生物だからかな。作中の世界では可愛そうに社会的にはモノ扱いではあるが、電気羊なんかと比べると、世界観的には人造人間の人権確立が進んでいる気がする。
惜しむらくは、筋の運びがぞんざいでアラッと思うところが多々ある。例えばジェイディーの最期とか、終盤のあたりかな。トントンとテンポがよろしいという評価もあるかもしれないけれど、なんか安易に思えた。バイオをSF的道具仕立てにしているが、そこらへんの描き込みも新しさは感じない。 -
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ネタバレ開始から100ページほどはコンプレックスに満ちたは30代男が、バラ色の未来を変えてしまったとクドクド、グズグズ振り返る。
事件を起こしてしまってからの100ページほどは自分が変えてしまった別の未来である別の現在で罪の意識から投げやりになったり。
自分は何をやってもダメな人間だと憐れんでみたり、起こしてしまったことの重大さと責任から自分を否定したり、ネガティブな主人公の語りが鬱陶しく感じる。
ゴールを目指して先に進む物語の真のスタート地点は本の半分を超えたあたり?何を行い、どこに戻るのか、どうやって着地させるのか、アイディアなど結構楽しめるので、前半をもう少し明るく、軽くしてもらいたかった。 -
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久々のケッチャム・・・
衝撃の胸くそ悪い(でも読んじゃう)小説オフシーズンの続編・・・
前作が衝撃的過ぎたせいで、続編の宿命で本作はその点においては劣るけど・・・
本作も安定の胸くそ悪さ・・・
例のあの一族に生き残りがいた・・・
あのヤバいヤツらが・・・
時を経て・・・
また動き出す・・・
前回の失敗を糧に・・・
さらに狡猾に・・・
狩る・・・
人間を・・・
狩る・・・
またあの悪夢の夜がやってきた!!
で、捕らわれた人々のやり取りが今回は違う・・・
狩られる側に一人ゲスがいて、一族たちに感じるものとは違う種類の胸くそ悪さが味わえる・・・
現実的な胸くそ悪さだから、こっちの方が読んでてイヤになるかも・・・
で、最後の展開は・・・
物足りなさを感じる人もいると思うけど・・・
拍子抜け感はありつつも、ホッとしているボクもいました・・・
胸くそ悪いのに読み始めたら止まらない感じは本作も健在・・・
続編なのに、さすがのケッチャム・・・
この胸くそ悪さ・・・
なんだかんだ、と・・・
たまーーーーーに読みたくなっちゃうんだよなぁ・・・
もちろん取り扱い注意だけども・・・ -
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多分、設定は面白いんだろう。
だがこれは手法の違いかもしれないが、きちんと時代や世界の背景、いろんな設定が明示されない展開にイライラする。
言葉一つにしても、それを普通に知ってるでしょう前提で言われても、もちろん読み進める内に多分と判るのだけど、多分で終わるのが居心地悪い。
別にこの作品だけでなく、そう感じる作品が多いと感じてて、もう、価値観とか世界観とか、少なくともSFがずーっと好きデスみたいな人だけが読んでくれればいいみたいな本が、好きではないのだな。
で、文体は嫌い。
人物はあんまり浮かび上がって来ないな。
ぼくにとっては、そう、いい小説ではなかった。 -
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ありゃりゃ。ジャック・ケッチャムとラッキー・マッキーのコンビでイヤミスに走ったのか。『ザ・ウーマン』の出来が非常に良かっただけに期待を大きく裏切られた。ケッチャムの序文に寄れば、映画化を前提とした短編であるようだ。
表題作の『わたしはサムじゃない』と『リリーってだれ?』の二つの短編で一つの作品となっている。『わたしはサムじゃない』の解決編が『リリーってだれ?』である。幸せな結婚生活を送るパトリックとサムが見舞われた悲劇。或る日、突然、妻の検死医・サムがリリーと名乗る幼い少女になってしまう…
物語の冒頭に妻のサムがスティーヴン・バックマンを解剖するくだりがあるのだが、もしかしたら、スティーヴン・キングを茶化しているのだろうか。リチャード・バックマンは確かスティーヴン・キングの別名だったはず。
以上の2作に加え、『イカレ頭のシャーリー』を収録。こちらはケッチャムらしさが窺える作品。 -
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ネタバレ前巻のラストもキツい展開だったけれど、物語はさらに鬱々してきて最終的にかなり疲労感を覚える読書となった。
ジェイディーと対話するカニヤの姿の痛ましさ。
虐げられ続けてきたエミコの暴発。
大きな不運と少しの幸運に振り回されるホク・セン。
図らずも急転直下の事件の引き金を引いた形になってしまったアンダースンの失敗。
…それぞれの行動が一気に絡み合いながら迎えた大流血の惨事。
決してバッドエンドではないのだろうけど、結局最後の勝者となるのは新人類であることが示唆されていて、何とも言えない気分になる。
この過酷な世界を生きる上では当たり前なのだろうけど、登場人物たちはかなり即物的な生き方を強いられていて、その苦しさを想像してもなお感情移入は難しかった。見るべきは、ジェイディーの勇敢な死や、ホク・センがマイに見せる優しさ、アンダースンが最期にすがったもの、その中にある血の通った心なのかもしれない。けれど、 どうにもそこに気持ちを合わせていくことができなかった。
生存にかけてのエミコの欲求の強さに、心底ビビッてしまったというのも大きいかもしれない。 -
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「オリバーストーンが語る…」全三巻を読み通した。
第一次世界大戦から始まる二十世紀=戦争の世紀から二十一世紀のオバマ政権まで、世界においてアメリカの果たした役割でありながら、アメリカ国内における歴史認識とはいささか異なる面を語る。
日本人にとってわかりやすいのは、ヒロシマ、ナガサキの原爆投下の話だろう。現在のアメリカの一般的な歴史認識では、百万人以上の死傷者を生んだであろう言われる日本本土決戦を回避するために必須であったとされる事が多い。しかし、実際に当時のアメリカ、トルーマン政権は日本は既に戦争継続の国力を欠いており、ソ連へ終戦交渉を始めている事知っていながら、戦後の冷戦時代を見越して、ソ連への牽制として原爆を使用した。原爆投下は戦争の終結には全く不要なものであり、本土決戦の被害規模は後付けて作られた話だというところだろう。
※その話は有名な話なのだが、アメリカにおいては、本土決戦回避のためには原爆の使用は必要であったとする論が強いと言われている。
おしなべて、ケネディあたりまでは大統領の人柄などにも踏み込んだ話が多く、読む方も引き込まれる。しかし、カーター以降になると、そういう部分が薄くなり、事実や当時の記事などを追うだけになる感じで、歴史を読んでいるという感じが薄れる。
クリントン政権を殆ど取り上げないのに対し、やはりブッシュ批判が強いのは、ブッシュの一般的な評価から見て当然と思うが、ブッシュこそ父と子の対立など、大統領個人の視点からもっと踏み込んだ内容を期待したかった。
1、2巻に対して3巻の評価の星が一つ少ないのはそんなところからだ。 -
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インターネットの物理的な場所を辿ったルポ。
IXから、光ケーブル、データセンターまで、自分は仕事上ある程度は意識しているが、たぶん多くの人はインターネットを使っていてもほとんど意識をしないインターネットのその「場所」とさらには歴史的な意味での「時間」をその足で世界中訪ねている。
面白かったかと言われると何とも言えない。分かるが、何を読ませようとしているのかが伝わってこないんだ。せっかくいい題材に目を付けたっぽいんだけれど。
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ロンドンのテレハウスが「ヒースロー空港のインターネットビル版」とまで言われているとこの本で紹介されているのは驚いた。KDDIが1990年に開設した、と書かれているが、もちろんその当時はKDDだった。
「あるエンジニアが、テレハウス・ノースを〝ヒースロー空港のインターネットビル版〟といったが、その意味がわかった。ただし、ここはとんでもなく重要だった。世界でもっとも接続されているビルという現状が、床材の剥がれを埋めあわせていた。この点についていえば、ここはそういうところだった――改善することはほぼ不可能だった。ロンドンは通りが狭すぎると文句をつけるようなものだった。」
テレハウスで銅の採鉱をすればひと財産築けるというのが定番のジョークになっているとのこと。本当かな。
日本も大手町がハブになっていて、それは歴史的な経緯があり不可逆的だ。ニューヨークの話もとても似ている。