金子浩のレビュー一覧
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中華の雰囲気漂うディストピアSFもの。
「カロリーマン」が一番印象に残った。
鉱物資源が枯渇した社会で、さらに植物がニッポン・ジーンハック・ゾウムシという害虫によって遺伝子に異変が起き、ソイプロというハイカロリー植物しか育たなくなった荒廃した世界。全てのエネルギー源をソイプロに依存し、またそのソイプロはアグリジェン社という企業に独占されているというディストピアな世界観がかなり良い。
遺伝子操作された動物のグロテスクな描写や、ゼンマイを回して動力を作ったりPCの操作が足踏み式だったりと、近未来感とアナログ感が上手く合わさり、資源が枯渇した後の荒廃した未来社会が暗く面白く描かれている。
また表題作「第六ポンプ」も救いようがなさすぎて面白かった。出生率の低下と痴呆化が進み、崩れた建物からコンクリートが降るニューヨークで下水処理というインフラの仕事についている主人公。痴呆化が進んだ結果、町にはトログという動物と化した人間が溢れかえる中、未だに文字が読める異端な天才主人公。第六ポンプの故障をきっかけに現在の人間社会の限界に徐々に気づいていく描写にゾッとした。誰も直せないインフラ設備、足りなくなっていく食料、閉鎖された大学……。その後がとても気になるディストピアだった。
アイディアも世界観も素晴らしいから是非長編でも読んでみたいと思った。 -
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結局、アザーズから現住生物を守れなくて
落ち込むボブたちですが
それどころか次の標的が地球であると判明。
今までよりさらに早急に移住しなくては!
なのに、相変わらず人類は
移住した先でまた権力闘争をはじめ
ボブたちを壊そうとまでしてくる。
…残念ながら、根本は変わらないのかな。
でも、ボブたちの味方でいてくれる
メンバーとの協力も描かれているので
そこは希望もある。
最後は往年のスペオペっぽく
地球脱出の方法やら
アザーズを撃退する計画やら
いつのまにか500体になってた
ボブたちが考えだしてくれて大団円。
なんかちょっと変わったSFで
おもしろかったです。
2巻巻末の「ボブ、コピーの系図」表に
担当編集者さんの親切心を見た。 -
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あらすじは「銀河帝国の興亡」ぽいのに
ノリがオタク…トレッキーだし(笑)
ふざけすぎって思う人もいるかもですが
読みやすいし、私は好きな脱線具合。
冷凍睡眠を申し込んで事故死したら
目覚めた時代はすっかり未来で
なんと「生身」の体はなくなって
「データ」として生き返らせられたボブ。
地球の移住先を見つけるための
恒星間探査機の頭脳として組み込まれたものの
対立国から壊されかけて急ぎ地球圏脱出。
指揮系統をぶっ壊し、自分の意志で
移住先探索の旅に出るのだった。
最初のボブだけでは手が足りないので
どんどんデータコピーしていって
それぞれのボブの物語へと広がっていく。
同じ人物のコピーのはずが
何故か少しずつ性格も違っていて
たぶんそれは「どの面」が
強く出るかによるんでしょうね。
「おそ松くん」的分裂と思って読みました。
一隻は見つけた惑星で先住民観察始めたり
地球圏に戻った一隻は移住計画に関わったり
さて今後どうなることやら。 -
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人新世SFということで、当然、地球環境の危機的状況をテーマにした作が多い。けれども、ハード面よりもソフト面にスポットを当てた作がほとんどを占める。環境危機への対応策なんて分かりきってる、問題は社会がそれを実行しようとしないことなのだ、ということなのだろう。ただ、そのアイデアが案外とナイーブ。全体に理想化されたコミュニティの登場が目に付くのだが、その描写がまるでカウンターカルチャー全盛の頃のヒッピーコミューンなのだ。「菌の歌」なんかは、あの頃のSFそのまんまである。こんな感じの話、いっぱい読んだなあ。まあお話の中とは言え、この問題に簡単に答えなんかが出るわきゃないってことなんでしょう。
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近未来を舞台にした連作短編集。シベリアの永久凍土でクララが見付けた3万年前の少女。その身体から未知のウィルスが世界に広がり、人々が次々と亡くなっていく。時代が進みながら登場人物が少しずつ他の物語に出てきます。
SFの世界でありながら、命の話や女性の生き方の話になっています。
病気の子供のために、楽しみながら安楽死させてくれる遊園地。(こう書いていて恐ろしくなりますが、読んでいると否定できない)
亡くなった妻の声を吹き込んであるロボドッグの話。
知能を持ち始めた心臓移植用の豚の話。
亡くなった人たちが闇の中から高みを目指して救う命の話。
そして最後に意外なストーリーで、最初の話に繋がっていきます。
物語の世界に入りすぎると泣いていまいそうなので、気持ちをセーブしながら読みました。
なんだか疲れた。とっても疲れた。 -
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下巻。
ちょっとヒロインがなんでも自分でやりすぎじゃない?と思いながら読み終えました。後少しでページが尽きるのに、これ解決するのかなとちょっとハラハラしながら読み終えました。もう一人のヒロインもかっこいいですね。というか彼女が一番強いんじゃなかろうか。ヒロインの義妹ちゃん。
コロナ禍で、国際的に人的な交流はストップしたものの、物質は止まらなくて本当に良かったな、と思いました。なにせ日本は食料自給率低いですしね。そういう意味でネットワークが落とされたら情報も取れないし阿鼻叫喚の地獄絵図だろうなぁ…と読んでいてぞっとしました。数年前の台風直撃後の千葉はまさにインフラが壊滅的にやられて、復旧まで時間がかかり被害が大きくなった訳ですが。それが人口過密地域や世界規模で起きたら…と思うと悪夢ですね。
とりあえず庭の空いている部分でも耕そうかな、とちょっと思いました。 -
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さすが古典SF作家の短編集と思わせる一冊!
作品の多彩さもそうなのですが、最近のSFの傑作たちに通じるアイディアも随所に見られ、普遍的なSFの血脈を感じました。
もっとも印象的だった短編は表題作の「無伴奏ソナタ」
音楽を愛した天才が、国家から音楽をはじめ多くのものを奪われていく姿を描いた短編。
国に逆らうと分かっていながらも音楽を創ろうとする主人公の静かな熱意と過酷な人生に思いをはせるとともに、ラストシーンの素晴らしさが強く印象に残ります。文章が主人公から距離をとった冷静な語り口なのですが、その分深く静かな感動がゆっくりと押し寄せてきました。
SF作品でありながらもホラーの雰囲気を感じる作品も多く、その不気味さも相まって面白い作品も多かったです。
「王の食肉」は人間を食べる外来生物とその生物に仕えた〈羊飼い〉と呼ばれる人間の物語。ぱっと読んだ雰囲気ではB級ホラーっぽいあらすじになるのですが、そこを描写の気味悪さで引っ張ります。そしてラストの展開でまったく味わいのちがう作品に変わり、アイディアとテーマの見せ方の巧さを感じました。
「ブルーな遺伝子を身につけて」もSFにホラーの雰囲気をまとった作品。化学戦争で地球から逃れた人類。それから数百年。宇宙飛行士たちが再び訪れた地球には、生き残った人類が生活していたが……
地球で生き残った人類とともに生活しているアメーバ状の謎の生物。その正体が分かったときの不気味な感じと衝撃の一方で、どこか説得力もある奇妙さもあり印象に残りました。
他にもSFだけでなく怪奇小説の雰囲気の強い作品も多数収録されていて、著者の多彩な一面を垣間見ることのできる短編集でした。