田口俊樹のレビュー一覧
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映画と合わせて面白い!!
ノベライズというより完全版だ߹ㅁ߹)♡
まず、映画を観ました。
シャロン・テート殺人事件に関する映画だと思っていたので、事前にチャールズ・マンソンファミリーが関わる事件の概要を軽くおさらいしてから鑑賞しました。
いつものタランティーノ独特のタッチで描かれる世界観が大好きで、うんちくと長セリフと音楽を堪能しました。
——が、シャロン・テート事件は、映画のほんの片鱗にすぎず、この映画は主人公リック・ダルトンの為の映画です。
この架空のキャラクター(リック・ダルトン)は年齢を重ね、俳優としての岐路に立っていた。
バカにしていたイタリア西部劇(マカロニ・ウエスタン)への出演の話に落ち込むリック。
専属スタントマンの相棒クリフ・ブースは、元軍人。
妻殺しの噂を持つ魅力的で強いブロンドの男。
隣人のシャロン・テートは、夫のロマン・ポランスキーと共に、リックの隣に越してくる。
時は1969年。
ベトナム戦争真っ只中、ヒッピーがごろつくハリウッドで起きた話である。
小説は、映画と結末が違います。
映画の見せ場は、なんと言ってもラストのエグい格闘シーン。
小説にはありません。
ひとことで言うと、タランティーノのこだわりが詰まった小説です。
映画はリック、クリフ、シャロンの様子が同じくらいの配分で描かれていますが、小説は断然リック愛が濃厚。
『対決ランサー牧場』という映画でリックが演じるケイレブ・デカトゥーが「つけ髭」を付ける演出がどんなに深い意味をもち、影響を及ぼすのか、映画の中の些細な一面と思っていた小さな拘りをタランティーノ独特の深掘りトークでお腹いっぱいになります。
なんと言っても共演の可愛い女の子役、トゥルーディとのやり取りが重要で、彼女の存在でリックが自信をつけていく様子が、たまらない。
ここがメインの映画だと思う。
映画と違い、クリフのクソ男っぷりな描写が多く、愛犬ブランディとの出会いや、猟犬としての実績などが詳細に描かれていて、小説を読んだ後映画を見直しましたが、最初と印象が全然違いました。
マンソンら、ヒッピー達のからみで、この後どんな事件が起こるか……という意味ありげな様子も、好きな流れでした。
この時代の映画や俳優の名前がバンバン出てきて、観たくなります。
『対決ランサー牧場』ももちろんだが、ロマン・ポランスキーの映画『ローズマリーの赤ちゃん』は観たことがないので、是非観たい。
場面に出てきた鑑賞の仕方を確認したい。(寝室の中で電話をしている老婦人をローズマリーがちらっと見るシーン。ロマンが指示したカメラ角度だと、カスタベット婦人の全身は映らず、ドア枠の左部分に体が隠れてしまった。シャロンは、何故ロマンが角度を変えたのかわからない。上映の際理由が判明するのだが、シャロンがロマンの事を天才だと再確認した瞬間だった。)
タランティーノの映画への愛が伝わる一冊でした。
小説を読んでいる最中も世界観に浸り、幸せな読み心地でした。映画を流しっぱなしにしておきたい。大好きです!!(〃´-`〃)
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力強く、わかりやすい文体。そして、ウイットに富んだ会話。私立探偵フィリップ・マーロウは、たまたま出会ったテリー・レノックスと友人になった。ある日、マーロウはテリーにメキシコに行くのを手伝ってほしいと頼まれる。ここから、マーロウは事件に巻き込まれて行く。かなり難関な事件が二重三重になってマーロウに襲い掛かる。しかし、マーロウは怯むことなく立ち向かっていく。マーロウの中心にあるのはテリーとの友情かもしれないけれど、真実を曲げない姿勢にぐっと来る。そして、この本に惹き込まれた、もう一つの理由は田口氏の訳文がとても魅力的だった点だ。何度でも読み返したくなるページが何ヶ所もある。
読み応えのある本です。 -
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ウィンズロウが最後の作品として世界にプレゼントしてくれる三部作は第二作。第三作は執筆中とのことなので、一年に一作、書いては出版するというけっこうリアルタイムかつ歴史的作業なのかと想像する。翻訳者も出版社スタッフも綱渡りな作業だろうが、内容的にも、作家ウインズロウのラストワークとしても、あまりに重要な歴史的三部作に携わる多くの方のGood Jobに敬意を表しつつ、大切に本書を手に取る。
旅行業をしていると本に費やす時間が実は途切れ途切れで得られにくいのだが、8月に入ってようやく連続休暇が得られたので、二日くらいで一気に読ませて頂いた本作。分厚い作品だが、『業火の市』で故郷を追われた主人公ダニー・ライアンとその一行がウエストコーストに辿り着く状況と、そこでもまた張りつめる緊張と生死を賭けた日々に瞬く間にのめり込んでしまう。
テンポが速いせいか、ぐいぐい読み進む。とはいうものの、登場人物の多さが読みにくさに繋がるので巻頭の人物表を百万回くらいめくりなおさねばならないのは前作と同様。何せ人間関係図は、この物語にとって大変重要なものだし、それぞれの人間関係の矢印は、いつでも裏返ったり引っくり返ったりし得る信用のならないものだからだ。スリリングで緊張感いっぱいの登場人物表。
タイトルの「陽炎」は原語では”Dreams”。ちなみに具体化するとそれはハリウッド・ドリームだ。銀幕の世界。主演女優の魅力。札びらが舞う世界。夢という名の鉱脈が眠る土地。
売れっ子映画女優の作品撮影に燃えあがるサンディエゴ。ダニーたちが辿り着いた太平洋の岸辺にある世界。メキシコの闇カルテルやFBIの権力闘争、そしてロードアイランド州プロヴィデンスに遺してきた敗北の過去。勝者イタリアン・マフィアの追撃の恐怖。ダニーは空っぽであるかに見える。組織はばらばらに解体したかに見える。しかしダニーが持ち去ったマネー(大半は海に投棄したとは言え)への追撃網は緩まない。緊張した逃走ドラマのさなかで、ダニーたちは身を隠す。新天地カリフォルニア。
売れっ子女優ダイアン・カーソンの描き方が独特でウィンズロウらしい。そして映画製作現場の活気も、そこに寄せられる札束の気配も、男たち・女たちの欲望も。ダニーの母親はクールでリッチで悪女だが、それでも母親であり、ダニーの守護神でもある。ダニーの腹心のアルター・ボーイズは歩く凶器みたいなもので、スリリングな存在だ。いや、すべての腹心、部下たちが同じようなものかもしれない。何しろ彼らはギャング組織。影を踏んで歩く組織なのだ。
そしてこの三部作はギリシャ神話に基づいた物語だと言う。ウィンズロウ人生最後のチャレンジ。運命の渦に巻き込まれ錐もみ状態になったダニーの運命は未だこの作品まででは半ばまでしか語られていない。全く幸福とは別次元に転がっているかに見える主人公ダニーと彼に近づく者たちの不幸が際立つ。ダニーの彷徨の人生は、煌びやかに輝くと思うと、次の瞬間には闇に閉ざされる。血の匂い。硝煙の匂い。ドラッグの夢。命の儚さ。いつも摑みきれなかった愛。
本作もまた読後の興奮冷めやらぬところは前作同様。本当にドラマティックなクライマックスを予感させる最終作(本シリーズだけではなく、残念ながらウィンズロウの最終作)まで一年。今日のところは終わっちゃいない。気長に待つとしよう。 -
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ネタバレ初のハーラン・コーベン。
90年代に出版されたマイロン・ボライターシリーズのスピンオフで、ワトソン役のウィンザー・ホーン・ロックウッド3世が主役。
本シリーズの方は流石に絶版状態で手に入らず。著者のことも寡聞にして今回初めて知りました。
スピンオフ作品ということで付いていけるか不安だったが、そんな心配は全くなく、冒頭から主役のウィンに惚れ込んでしまう。
いや、容姿端麗、超がつくほど大金持ち、冷血王子と言われていたほどのクールさ。それでいて狼のような獰猛さも垣間見える。こんなん惚れるやろ。
作者と訳者の方の力か、ウィンの匂い立つような色気が読んでいても感じられた。
富裕層用のビルで死体が発見されるところから始まり、フェルメールの絵の盗難事件、学生運動家が引き起こした事故、“恐怖の小屋”と呼ばれた暴行事件など、時代を跨いだ事件が複雑に絡み合うことになる。
若干後出しジャンケンなところはあれど、意外な事実がこれでもかというテンポで提示され、登場人物のキャラ立ちもあってあっという間に読み終えた。
個人的には、おすすめの一冊。続編も期待しつつ、そもそものマイロンシリーズの復刊もお願いしたい。 -
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『カムバック・ヒーロー』を読んで間もなく『WIN』を読む幸せ。もちろん偶然。それも、なぜか神がかり的な偶然! 何と25年の時を経て刊行されたのは、スポーツ・エージェントのマイロン・ボライターを主人公にしたシリーズのスピンオフ作品。マイロン・シリーズに欠かせない相棒のウィンザーホーン・ロックウッド三世にしっかりと齢を重ねさせ現在形の主人公として起用あいなったのである。Wao!!
ウィンはマイロンのシリーズでも相当魅力的な主人公であるばかりでなく、とても重要でインパクトのある仕事を果たす。知のマイロン。力のウィン。よくある私立探偵ハードボイルド・シリーズのコンビネーションを、そのままなぞったような、いわばアメリカン・スタンダード。
どちらかと言えば無口な主人公であるウィンのなのに、なぜか本作は彼の一人称で語られる。減らず口の得意なマイロンですら与えられなかった叙述法。感情を示さない(感情が希薄と言った方が正解かな?)ウィンの一人称。これは、ある意味、謎めいた存在でもあるウィンの内面が改めて覗けるという点で、とても興味深いのだが、作者がこの手法を敢えて取ったこの作品。コーベン・ファン、さらにはウィン・ファンの関心を、強烈に惹きつけること請け合い。何せタイトルそのものまでが、”WIN”。
あまり感情が動かない様子、プラス、ウィンの生きる方程式のようなものは、随所で本人によって語られるから、ウィン・ファンの読者には相当そそられる作品になるだろう。無論、ぼくもその一人。
さて事件そのものは、けっこう時間枠でも空間枠でも大スケールなもの。1970年代に世界を騒がせながら、誰一人としてその後の行方がわかっていないテロ・グループ6人組のジェーン・ストリート・シックス。テロ行為の結果である某バス襲撃事件では、かつて多くの被害者が出ている。世界中が彼らを探し回ったのに、その後の行方は、一人として杳として知られぬまま。
本作では、まず謎の「貯蔵家」の遺体が、発見される。事件現場では、ロックウッド家から失われた二枚の名画のうち一枚が発見される。フェルメール『ピアノを弾く少女』。もう一枚ピカの名画は『本を読む人』は何処?
ウィルの父、亡き叔父など、ロックウッド財閥を巻き込むために、ウィルの家族、過去の謎めいた事件などが、この作品では改めて明らかになってゆく。中でも、森の中の小屋で監禁放置状態で汚物まみれになりながらも脱出を果たした従妹パトリシア・ロックウッドの存在は、最近のコーベン作品によく似た独特の奇妙さを有して不気味だ。この森の少女連続監禁事件では、パトリシアの脱出とともに他にも多くの少女が遺体で発見された。パトリシアは唯一の生き証人であった。しかし、それも22年前の未解決事件である。
現在のフェルメール殺人事件が、過去の未解決事件とどうやって繋がってゆくのか。ウィンの捜査や冒険により、様々なもつれが徐々に解かれてゆく。その真実たるや、なかなかに重厚で複雑な人間絵模様とも言える。ウィンの視点で、彼自身の運命をも象ってゆく真実を、どちらかと言えば淡々とユーモアすら交えつつ(本人が意図しているかどうかはともかく)描かれ、読まされてしまうのはいつもながらのコーベン節。ウィンの性格をよく活用しているとも言える作品である。
一ヶ月ほど前に読んだばかりの『カムバック・ヒーロー』ではラストシーンがウィンの行動で終わるのだが、これについては本作p494でウィン自身が振り返っているので、いわゆるネタバレ。なので未読の方は『カムバック・ヒーロー』を先に読んで頂いてから本書にかかるのはどうだろう。それ以外のマイロン・シリーズのどれか一冊でもよいのでそれを読んで頂いてからでもよいと思う。これを単体で読むよりもずっと深く、楽しく、ウィンの現在の物語を重層構造的に読むことができる。
何であればウィンの個性を、この作品の後にマイロンのシリーズで追尾してみては? 楽しみは単なる二倍はなく、十倍にも二十倍に、いや百倍にも膨らむはずである。 -
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ネタバレ初のアルネ・ダール。
翻訳ミステリ大賞シンジケートで紹介されていて読みたくなったので。
評判どおり、物凄く面白かった!
食傷気味だった北欧ミステリかつはみ出し刑事ものではあるけど、そんなこと吹っ飛ばすほどに面白かった。
話の入りは北欧刑事ものではあるが、特に第二部の取調室の攻防以降、印象がガラリと変わる(この攻防自体も面白い)。ここまで先が気になり、ページをめくる手が止まらない小説も久しぶりだった。
最後は、多分賛否両論なんだろうけど、個人的にはいい知れぬゾッとする感じも素晴らしいと思った。
シーズンが続くというか。
シリーズとしては5作くらい出てて、ただ翻訳は2冊目までらしい。非常に楽しみにしているので、どうか最後まで翻訳されますように。 -
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第二次大戦、ドイツに占領されたデンマークとノルウェー、微妙な中立を保ったスェーデン、たったひとりで侵入者であるソ連に抗戦したフィンランド
北欧諸国はヨーロッパ強国の趨勢に左右される。
凄惨な殺人事件と、埋められていた三体の白骨死体から始まり、並行して語られる第2次世界大戦前後の物語が、次第に交差していく。
二つの時代の出来事が1ページごとに繰り広げられる描写は、圧巻。
オスロ警察本部所属刑事の主人公トミー・ハーグマンは、北欧ミステリーの主人公刑事として定石どおり私生活ではダメ人間、でも捜査には妥協がない。
警察小説ではあるも、第二次大戦下のスカンディナヴィア半島での双方の諜報活動の様子は、ミステリーであることを忘れてのめりこんでしまった。
あっという間の上下巻でした。 -
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現代アメリカ文学を代表する作家の1人であり、私自身も邦訳作品は8割方読んでいるポール・オースター。彼がオースターとしてのデビュー前にポール・ベンジャミンという名前で発表したハードボイルド探偵小説が本作である。
オースターファンを自称しながらも、本作の存在を全く知らず、書店で見つけて勢いこんで買ったが、これが本当に面白くてたまらない一流の作品であった。私の中でのハードボイルド探偵小説といえば何と言ってもレイモンド・チャンドラーなわけだが、それに匹敵する作品といって何ら過言ではないと思う。
実際、日本におけるアメリカ文学界の重鎮・奇才である若島正先生自ら「ある意味でショッキングな作品である。つまり、これをあのオースターが書いたとはなかなか信じられないくらい、完璧なハードボイルドなのだ」と語っており、そのクオリティの高さはお墨付きと言える。
何ら難しいことを考えずに、最上質な作品世界に耽溺できること時間が過ごせること請け合いの傑作である。