あらすじ
『神は銃弾』で「このミステリーがすごい!」第1位。
『音もなく少女は』で「このミステリーがすごい!」第2位。
名匠ボストン・テランが帰ってきた。
犬を愛するすべての人に贈る感涙の傑作。
傷ついた人々のそばに、いつもその犬がいた。
GIV――ギヴ。それがその犬の名だ。その孤独な犬の首輪に刻まれていた三文字だ。傷だらけで、たったひとり、山道を歩んでいた犬の名だ。彼はどこから来たのか。どこで、なぜ、こんなにも傷だらけになったのか。彼は何を見てきたのか。どこを歩んできたのか。
犯罪が、天災が、戦争が、裏切りがあった。世界が理不尽に投げてよこす悲嘆があり、それと戦い、敗れる者たちを見守ってきた一匹の犬がいた。
この世界の不条理と悲しみに立ち向かった人たちに静かに寄り添っていた気高い犬。
『神は銃弾』でみせた荘厳な世界観、『音もなく少女は』でみせた崇高な人間の強さ、そしてボストン・テランにしか生み出せない乾いた詩情をたたえる文体。傷ついたひとたちの悲劇と救済を描く感動の最新作。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
戦争や貧困で傷ついたアメリカ人の再生の物語なので、アメリカ人の愛国心や反骨精神は興味深く読めたけど、復活のアイテムに犬を使わないで欲しい。
最後には犬がヒーローみたいな感じでハッピーエンドにしても、犬はそんなもの求めてないと思う。
と、辛口で評価しても面白かったことは否めない。ミステリーと言うほどの謎はない。どちらかと言えばロードムービー的。
作者のボストンテランは覆面作家で性別すら謎だけど、最後に書評の人が「おそらく60代の女性」と推測してて、私は絶対男性だと思ったので、この人の他の本も読んでみようと思った。
Posted by ブクログ
原題「Giv: The Story of a Dog and America」が示すとおり、ある犬-Givが人から人へと旅するのを追うことでアメリカという国、そこで起こった悲劇の歴史、そこに住む人々の魂を描いたロードムービーのような物語です。
プロローグに「この物語は伝統的なやり方では語られない」とあるように、初めて読む構成でした。とは言っても難解ではなく心にすっと入ってくる。最後には全て回収されるので途中でやめずに読んでほしいと思います。
ディーンとギブが出会うシーンや登場人物の大半は作者の実体験や実在の人物がヒントになっているそうです。帰還兵が身近にいる国、アメリカを知ることができる作品です。
重厚
重厚なスリルと感動。
かわいそうで顔をしかめてしまう箇所もあった。
犬の善良さがひしひしと伝わる。
残酷だけど下品さがない。
素晴らしい本を読んだ。
Posted by ブクログ
初読の作家さん。2018年のこのミスの8位だったのですが、ミステリ要素はあまりなかった。
ギヴという犬をめぐってのストーリーだが、擬人化されておらず、犬目線でもなく、それがかえってギヴの存在を際立たせていたように思う。。特に犬好きではないけれど犬の存在が人類にとって素晴らしいものだと思えてくる。
さほど重要でも無い登場人物でも印象に残る描かれ方がされている。
そして文章がとても美しかった。ところどころ読み返してしまった。これは作家さん個性なのか訳者さんの翻訳が素敵なのか…。別の本を読んでみたいと思う。また新たな出会いに感謝を!
Posted by ブクログ
ギヴ(GIV)という名の犬を巡る奇跡のような物語。テロ、戦争、災害等で疲弊したアメリカで、語り手である青年が気付く小さな、でもとても素敵なこと。数奇な運命に翻弄されながらも、誇り高く生きるギヴ。彼らを取り巻くやさしい人達。途中、何度も目頭が熱くなった。今は猫を3匹飼っているが、もともとぼくは犬派だった。やっぱり、犬もいいなあ……。
Posted by ブクログ
犬の物語。ではない。
犬のギブと運命を共にした人たちの物語。
彼ら彼女らの人生は様々。ギブと歩みながら、時に傷つき、癒され、助け合う。悲惨で過酷。困難が待ち受けている。
奇跡の物語である。ラストは涙が溢れてくる。犬の純粋さ。不屈の意志。そして愛。
ギブは素直に行動する。読者はその姿に胸を打つ。
ボストン・テランはミステリ作家として括るには難しい。
この詩的な文体で、また感動してしまった。他の作品も早く読まないと。
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ギブという名のワンコのお話…
題名買いというか、ジャケ買いしたものの積読にしてたのを読んじゃいました。
ワンコが傍にいる生活が恋しいよ~(´Д⊂ヽ
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深い愛情を根底にした、爽やかな物語。
ギブが引き寄せた人々が見事に絡み合い、紡がれる。犬と人間の不思議な出会いは大きな運命、目に見えない力から放たれた糸のよう。
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とある犬と、人々の物語。
ディーン・クーンツの「ウォッチャーズ」が人を犬好きにする一番の作品って思ってましたが、そこに一石を投じられることになるとは。
も、最後の方は涙で字がにじんでたよ。
生まれた環境によって虐げられた人間が、自分の力で足で歩きだそうとする姿や、どうしようもなく傷ついた人が、やはり自分の力で再び立ち上がろうとする、そこに寄り添う犬。
純粋なものの存在は、無垢であるからこそ、シンプルに力になるのだろうか。
シンプルだからこそ、自分自身の内なるものを見つめ、結局のところ、自分自身が行動を起こすしかないのだと、悟らせる。
無垢なものの意味は、そういうことなのかもしれない。
「暴力の教義」もそうだったけれど、テランは人の根底にある暖かいもの、柔らかいもの、を信じているのだろう。そしてそれをきっと<心>と呼ぶのだろう。
Posted by ブクログ
読みながら 泣けてくるエピソードたち。それでも残るのは絶望ではなく 明日への希望。
親子2代の犬の名前はGiv。彼は犬としての精一杯を生きている。人として精一杯生きている人、生きようとしている人々と共に。辛さや悲しさ苦しみや痛みをその身の内に持っていてなお他者を愛する心を忘れない彼らには “人” と “犬” の区別は無い。ひたすらに思いやり続ける彼らが幸せに生きていける社会であってほしい。
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邦題は詩的で印象的なタイトルである。
原題は簡潔にGiv(ギヴ)。物語の軸となる犬の名である。副題はThe Story of a Dog and America、1頭の犬と「アメリカ」の物語。
原著発行は2009年。つまり、9・11の同時多発テロを経たアメリカだ。心を病んだ多くの帰還兵を抱え、ハリケーン・カトリーナの甚大な被害にも見舞われたアメリカだ。
そのアメリカを1頭の犬が流転する。犬はあるときは奪われ、あるときは自ら選んだ人に寄り添う。犬は時に人を救い、時に人に救われる。
彼の数奇な運命は人と人とをつなぎ、奇跡と言ってもよいような希望をもたらす。
物語の語り手はディーン・ヒコック。
イラク帰りの退役軍人だ。分隊でたった1人の生き残りである彼は、心に大きな傷を負い、生きる意味を見失っている。
雨の中、車を走らせていた彼は、道路で1頭の死にそうな犬を見つける。その犬、ギヴを助けたことで、ヒコックの人生は動き出す。
物語はギヴの「犬生」を追う形で進む。
最初の飼い主はハンガリーからの移民の女性。次の飼い主はミュージシャン志望の兄弟。それから兄弟の弟の恋人となった娘。そして帰還兵。
移民の国であり、映画や音楽の国でもあるアメリカを、ギヴは旅し、さまざまな人々と出会う。
物語はどこか寓話めき、時に神話のようにも映る。
物語の鎖には、欠けている部分もある。エンデの『はてしない物語』で「けれどもこれは別の物語、いつかまた、別のときに話すことにしよう」と語られるように、物語はところどころ、完結しないのだ。
ギヴがいかにして悪徳業者に虐待されるに至ったのか。また、ギヴの父親がどのような人々と出会い、どのように彼らに寄り添ったのか。
語り手であるヒコックはいずれその物語に辿り着くのかもしれないし、辿り着かないのかもしれない。
それもまた1つの余韻となっている。
著者は作中人物の多くについて、実在の(時には行きずりの)人々からヒントを得たという。彼らの多くに血肉が通っていると感じられるのは、そのためだろう。彼らの視点はよくも悪くもアメリカの外へは向いていないとも感じるのだが、一方で、本作に描かれるような「よき隣人」がいるのもアメリカの美点ではある。
悲惨な事件が描かれないわけではない。だが、一方で、多くの善意の人々もいる。そしてそこに寄り添うまっすぐな犬もいる。
そんな世界で生きていくのは、案外悪くはないかもしれない。
Posted by ブクログ
読み始めは「何?この読みにくさ!」と思ったけどギヴという犬と彼に関わる人間の温かなドラマ、そしてその後の悲劇に引き込まれた。読むのが辛くなるような展開もあるけれど、先が気になってやめられない。馳星周の「少年と犬」のように、ギヴを現実離れした奇跡の存在にせず、リアルな犬らしく描いていて犬への愛おしさが増したい。
Posted by ブクログ
GIVが助かったから良かったけれど、助かってなければ、本を破り捨てていたかもしれない。それくらい、この本を通じてGIVは、自分にとって愛しい犬になった。
どこまでもアメリカンな所、どこまでもアメリカンな描写にはついていけなかったけれど、面白かった。
それにしても、どうして一部の人間は、人間のために犬を犠牲にするのだろう?
Posted by ブクログ
その犬の名前はGIV。「その犬とアメリカの物語」という原題のとおり、GIVの辿る数奇な運命と彼を巡ってリレーする命の物語。もっと早く読めば良かった。
登場人物が脇役一人一人に至るまで人間味があふれてる。そして転がり続ける物語。生と死。戦争と殺人。天災と事故。
たくさんのグッとくるエピソードが詰まった素晴らしい小説。4.5
Posted by ブクログ
完璧なまでに善良で無垢なるものギヴ。どんな困難にも諦めず立ち向かい希望を失わない。
そんなアメリカンスピリッツの象徴としてのギヴが飼われていたモーテルに宿泊に来た兄弟の兄の悪意により盗まれるところから始まり、カトリーナによる喪失、9.11およびその後のイラク出兵によるゆがみを抱えた人々を癒しながら物語は進んで行く。
どこまでも真っ直ぐで、ハッピーエンドに向かっていく直球の物語であるにもかかわらず、語られる言葉の神々しさ、善良な熱意により、変な嫌味は全くなく、アメリカなる物語として楽しめた。
ただ、ミステリ生はほぼ無く、クライマックス直前でのなるほどね止まりのためその筋の話と思って読むと退屈かもしれない。
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原題が「The Story of a Dog and America」という通り、「アメリカ」というところが強調されている。9.11、イラク戦争、ハリケーンカトリーナ、暴力…と現実のアメリカの諸問題が背景。登場人物はみんな何かを失って傷ついているのだけど、それでも善意や夢を失わずに生きようとする。そこに寄りそうのが犬。この物語では「ギヴ」という名前の犬だけど、辛いときに犬に寄り添ってもらう人は世界にたくさんいるだろう。やっぱり犬は人類の友。テーマは重いけど、読後感は良い。
Posted by ブクログ
言葉を話さない犬ではあるけれど、その存在によって、出会った人の人生をつむいでいく、一種の神話のような物語。
それにしても犬の人生があまりにも波瀾万丈すぎて、もう少し平穏にすごさせてやってくれと、作者に訴えたくなったよ。
Posted by ブクログ
読む前は、もう少し犬を全面に出したというか犬目線の物語なのかと思ったが、あくまで語り手は人たちであり、その人間たちの強さや弱さ、幸せや不幸せ、素晴らしさやどうしようもなさ等を描き出すためのギミック、触媒として犬が使われているような類の作品だと、読後は思いを新たにした。
作者が言いたいところの本質的な部分は、大戦後の朝鮮戦争やヴェトナム戦争、近年では湾岸戦争や911にイラク戦争、それにカトリーナ等といった個人の力では抗しきれない災厄を体験したアメリカ人しか理解できないような気もするが、それらを潜り抜け翻弄されてきた人たちの間でまた、物言わぬギヴが運命の流れに翻弄されながらもジッと耐え続けている様には素直に感動を覚える。
ギヴが、犬たちがいなければ再生できなかったであろう人たちが、確かにいた。
全編まるで回想かダイジェストかのような著者独特のスピード感溢れる簡素で淡々とした文体も、変に物語に湿り気を与えず良かったように思う。
Posted by ブクログ
読んでいる時も読み終わった後も、ハラハラドキドキして、けれども、心が温かくて…。ギブを抱きしめたくて、優しく撫でたくて…。「ありがとう」って言いたくて…。それが出来なくて、その代わりに、本にそっと頬寄せて…。
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モーテルの女主人アンナの元から盗まれたギブ.暴力に支配された兄弟の間でどうなるかとハラハラしていたら素敵な女の子ルーシーが現れ,ギブも一緒に幸せになるのかと思ったらまさかのハリケーン,でもこのギブの善良でしかも諦めない不屈の魂は,最後にすごい奇跡を呼び起こす.人間と犬の信頼の物語.
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ボストン・テランはエエはなし書かはるなぁ。
「その犬」の名前はギヴ(give)。人がギヴに寄せる愛や、ギヴが人に感じさせる優しさが通底する、ギヴとギヴに関わる人たちの物語だ。語り手は湾岸戦争の復員海兵隊員で、戦場で追った心の傷をギヴの物語を追体験する中で和らげ、かつての自分を取り戻してゆく。
アメリカは第2次大戦以降も世界で戦争を続ける好戦国ではあるが、市民生活は至って平穏な面を見せる。本書は古き良きアメリカの善意に包まれていて、悪意の現れも一部あるが、全体に古いアメリカ映画を観ているような気分に浸れる。最近のアメリカ大統領が振っている旗印に反吐が出る思いを感じるなか、包容力あるアメリカの復興を願わずにはいられない。
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2018年このミス海外編8位、本屋大賞翻訳小説部門3位。
この作者の「神と銃弾」が読みにくかったのを思いだしてテンション下がったけど、今回はそれほどでもなかった。
犬(ギブ)の一生が話の中心でいろいろな人と出会いながら流転の生涯を過ごす。出会った人たちがそれぞれ主役級で、その生き様が個性的かつドラマチックであり、ギブとの振れ合いが生き生きと描かれている。お話の流れが予想できず展開していき最後につながっていく構成もよい。
犬に興味がない自分も楽しめた。
ただ、少し文章が難解で読み進めるのが若干しんどかった。
Posted by ブクログ
まるで聖書を物語にしたようなお話で、構成が面白い。
実話を元にいしていてそれなりのアメリカンな感動物語なんだろうけど、なんとも救われなさ過ぎてなかなかに辛い。
動物モノをアメリカ人が書いたらこうなるんだろうなといういい見本小説。
筋書きが見えすぎているので読みやすいがぐっとくるほどではなかったかな。
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GIVと呼ばれた犬の物語。
人間の都合で連れ去られたり、虐待を受けたり、
しかし「生きる」気力で親切な人に助けてもらって元の持ち主へ
犬しか持ち得ない不屈の愛。
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犬のギヴが主人公の物語。ギヴの最初の飼い主はモーテルを経営する女性のアンナ。モーテルに止まった兄弟のうち、兄がギヴを盗む。そして、弟と知り合った女性のルーシーの手にギヴが渡る。しかし、ルーシーはハリケーンのカトリーナの被害に遭い死亡する。ギヴは様々な困難を乗り越えながら、物語の語り手のディーン・ヒコックに出会う。そして最後は、・・・。読んでいて悲しくもなり、微笑ましくもなり、様々な感情を味わえる。犬好きであれば、ギヴの一挙手一投足に共感を覚えるだろう。ギヴが主人公であるが、犬の視点で語られることはなく、あくまでも人間が物語を綴る。小説として面白い試みであるし、それが成功している。本屋大賞の翻訳部門に入賞したのも頷ける。
Posted by ブクログ
犬より猫派なのに、去年は本も映画も犬にとことん泣かされ、その勢いで本作にも手を出しました。各節の冒頭にある太字の部分がとっつきにくく、読むのに難儀しそうな気配。訳者のあとがきから読めば、それも払拭されます。
ギヴと名付けられた一匹の犬をめぐる物語。飼い主のもとから盗み出され、それでも次の優しい飼い主に出会うことができたのに、降りかかる不幸。
訳者が言うように、著者はギヴをまったく擬人化しません。ギヴの気持ちを推し量ったりしなくても、ギヴの行動をそのまま記せば、それだけで何もかもわかるのだというように。
やはり犬ものの『容疑者』に比べると、私には没頭しにくい文体ではありましたが、それでも涙が出そうになったところがいくつも。犬好きにはたまらないだろうと言うけれど、猫好きでもたまらん。
Posted by ブクログ
海外文学の和訳本は初めてだったため、独特の比喩や言い回しが新鮮だった。
犬という純粋な存在の強さ、また人間に対してもたらす情愛の深さを感じられた
Posted by ブクログ
ある犬と、そこに関わる人間たちの姿を描いたロードムービー的小説、
犬が中心に据えられてはいるが、物語は決して犬の視点で語られることはない。
ほのぼのとした話でないところが、戦争を経験しているアメリカの物語だなと思う。
Posted by ブクログ
やや困惑。訳者が伝えるように清々しい物語だが、どこをどう行けばどうなるのか全く先の読めない展開で、せっかちな私としては一貫した興味が持続しなかった。