田口俊樹のレビュー一覧
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異常な暴力性と猟奇性を持つカルト教団に拉致された娘を救い出すべく、デスクワーク組の警察官の父親と、元教団の麻薬中毒者の女がタッグを組み、彼等の足取りを追い、復讐を挑む。
プロットはシンプルながら、文体が簡潔かつ切れ味良く、独特の魅力がある。強烈な暴力・性描写の洪水で、その点パルプ小説的ではあるが、前述した文体や、主人公二人の間の精神的な交流を描くことによる叙情性が、下品になりすぎないバランス感がある。
作中の登場人物の女性の多くに、非情ともいえる過酷な仕打ちが何度となく降りかかるのだが、主人公のケイスを含む多くの人物の精神的な強さが救いとなって、悲壮感はあれどなんとか読み進めることができた。 -
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ドン・ウィンズロウ『業火の市』ハーパーBOOKS。
新しい3部作の第1弾。
ドン・ウィンズロウらしいハードでストレートなギャング小説という感じだ。角川文庫の『犬の力』とか『フランキー・マシーンの冬』に雰囲気は近いだろうか。まだ第1弾なので壮大な物語の発端に過ぎないのだろうが、大いに期待出来そうだ。
1986年のアメリカ東海岸の通称ドッグタウンを仕切るアイルランド系マフィアのファミリーの中で、ダニーは昔からの仲間と共に平穏に暮らしていた。ダニーに不満があるとすれば、ファミリーのドンの娘と結婚しながら地位が上がらないことだった。
ある日、ダニーが所属するファミリーの一員がイタリア系マフィア -
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テリー・レノックスという酔っぱらい男と友人になった私立探偵フィリップ・マーロウは、頼まれて彼をメキシコに送り届けることになった。メキシコからロスに戻ったマーロウは警官に逮捕されてしまう。レノックスが妻殺しの容疑で警察に追われていたのだ。しかし、レノックスが罪を告白して自殺したと判明。マーロウのもとにはレノックスからの手紙が届いた。ギムレットを飲んですべて忘れてほしいという手紙だったが……。
久しぶりにチャンドラーの作品を手に取った。
清水訳は若い頃に読んだが、村上訳は未読。
一連の「沢崎」ものを思い出させるのは、当然ですね。翻訳は違えど、こちらがオリジナルですから。 -
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前作『ランナウェイ』の主人公サイモン・グリーン、またこちらも前作に登場した女性弁護士ヘスターのTV番組収録シーンが序盤に展開する。ヘクターおばあちゃんは、本作では何と、そのままダブル主人公の一翼を担ってしまう。サイモン・グリーンの事件『ランナウェイ』と、本書は時期的にかぶっているらしい。
連作ではないのだろうが、ファンサービスか、作者の遊び心なのだろう。ちなみにハーラン・コーベンのノン・シリーズ2001年作品『唇を閉ざせ』では50代のへスターが登場するらしい。へスター・ファンとしては、件の作品は早速取り寄せねばならないだろう。
前作に続き、本書も全編に渡って作者の遊び心に満ち溢れてい -
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レニングラード、スターリングラード、「ソビエト連邦」を作った「革命家と独裁者」の名前を付けた二つの町と、革命、その後の戦争。
レニングラードはロシア帝国時代ピョートル大帝(一世)により建設された帝都で文学や音楽の豊かな文化都市。
大帝にちなんでサンクトペテルブルグと呼ばれていたが、革命時に首都のモスクワ移転とともに革命家レーニンの名がつけられた。
第2次世界大戦では2年半にわたるドイツ軍による徹底した包囲網と砲撃でロシア市民を含めた死者は100万人ともいわれるが、その大半が“餓死”という。
「市を消滅せよ」というヒトラーの命令と、市民を「人間の盾」として監視し弾圧を強める赤軍とのはざまで、な -
購入済み
アガサ・クリスティー作品といえば、読んだことはないけどトリックだけは知ってるといういわゆるネタバレ率が高いことで有名で、恐らくは世界中で一番ネタバレされている作者と言っても過言ではないでしょう。本作もポワロ最後の事件ということで、色々なところでネタバレされていますが、ただ単純な犯人当てでもないので、犯人の名前だけ分かっても読後の衝撃度はそれほど損なわれないという内容ですので、そういった理由で読むのを躊躇されている方がいらっしゃいましたら、ぜひ読んでもらいたい作品です。この作品は発表こそクリスティーの晩年である1975年ですが、実際に執筆されたのは1943年ということで、出版をそこまで待ったのは
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前作のラストから物語が始まる。
今回も意表をつく展開の連続。
冒頭からの、まるで断片のような逃亡シーンから煙に巻かれる。
描写は実に細かいのだが、何が起きてるのが理解できないように話が進められ。それが突然全景が見えたかと思うと、一瞬で真相が変わって行く。
実に見事に話が練られていて、事件を追う刑事と公安捜査官の二人組と共に、真相を求めて事件の迷宮を巡ることになり、ラストまで濃厚なサスペンスを堪能できる。
早くも次の作品が読みたくなる。
実に映像化向けの作品で、映画ではなく6話くらいのTVシリーズにしてほしい。
しかし、北欧物は登場人物の名前が憶えられない…
(丁寧で工夫の跡がうかがわ -
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「まったく人間っていうやつは、愚かで自分勝手でときどき突拍子もないことを仕出かす」……あなたに似た人……そう、読んでいる私にもどこかにそんな要素を含んでいる。
クスっと笑うかもしれない
結末に啞然とするかもしれない
なんだか嫌な気持ちになるかもしれない
頭のなかが???だらけになるかもしれない
作者の名前は知らなくてもジブリ映画「紅の豚」の中にある「飛行士たちの墓場」のエピソード短編『彼らは齢をとるまい』や、映画「チャーリーとチョコレート工場」の原作もこの人。
この本にある短編は、どれもむかしのTVドラマ「トワイライトゾーン」を思わせる素朴なゾクゾク感がたっぷりで、楽しかった~(たん、た -
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1882年に生まれ、1967年に亡くなった、エドワード・ホッパーというアメリカの画家の17の作品を題材にして、17人の作家が、それぞれの絵に対しての短編物語をつくるというコンセプトの本。要するに、エドワード・ホッパーの17の作品に対して、17編の短編が書かれ、本書はそれを収めた短編集だ。
アイデアを思いつき、物語をつくることに参加を呼びかけたのは、ローレンス・ブロックである。ローレンス・ブロックは私の最も好きな作家の一人なので、読んでみることにしたのだが、ローレンス・ブロックが書いた短編だけではなく、面白い短編が多かった。ローレンス・ブロック以外にも、マイクル・コナリー、ジェフリー・ディーバー