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国境、人種、階級、法、
あらゆる境界/限界(ボーダー)を超えた麻薬との戦い――
これこそが犯罪小説の完成形。
――解説:杉江松恋
エンタメ直球の疾走感と文学の重み… ウィンズロウの3部作はまさに『ゴッドファーザー』と『戦争と平和』のハイブリット版だ。
――ニューヨーク・タイムズ
グアテマラの殺戮から1年。メキシコの麻薬王アダン・バレーラの死は、麻薬戦争の終結をもたらすどころか、新たな混沌と破壊を解き放っただけだった。後継者を指名する遺言が火種となり、カルテルの玉座をかけた血で血を洗う抗争が勃発。一方、ヘロイン流入が止まらぬアメリカでは、DEA局長に就任したアート・ケラーがニューヨーク市警麻薬捜査課とある極秘作戦に着手していた――。
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Posted by ブクログ
ついに三部作ラスト!
アダン不在、さすがに面白い?大丈夫?と思っていたけど杞憂でした。すごいボリュームだけど、飽きる暇なくぐいぐい読んだ。
『犬の力』で好きだったあの2人が再びご登場したのもテンション上がった!こんな嬉しいサプライズがあるとはね!
でもこの作品で起きる事件が事実に基づいていると知ると、手放しに面白い!と言っていいのか、後ろめたい気分にもなる。43人もの学生がバスで拉致、殺害された事件とか、残酷すぎて信じられないほど。
読書中、メキシコ市長が就任直後に首を切断されて車の上に置かれた事件もちょうどニュースで取り上げられ、小説と現実がオーバーラップして、逆に現実味を感じられなかった。この小説で描かれることは実際に起こっているんだと、肝に銘じて読み進めていかなければならない。
Posted by ブクログ
小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。
読者を圧倒する小説とは、壮大なスケール感を持つ骨太な物語でなければならない。阿修羅の如き悪と、神のごとき善とを内包する人間たちの運命のぶつかり合う軋みが聴こえるようなドラマでなければならない。壮大な構想で読者を牽引してくれる力がなければならない。それらすべての困難な条件をクリアして余りある作品が、ウィンズロウのライフワークと言ってもよい巨作が、実は本シリーズであり、完結作である本書だ。
シリーズ第一作『犬の力』が<このミス一位>、第二作『ザ・カルテル』が<このミス二位>(ちなみにこの年は『熊と踊れ』が一位だった)、そして第三作であり完結編である本書がこの夏登場となった。圧倒と言うしかない分厚さと重さと物語性を引っ提げて。世の読書子が心の底から待ち望んでいたような小説として。
メキシコ麻薬戦争をめぐる現代史を学ぶ機会はなかなかないだろう。このシリーズがなければ闇に葬られてたかもしれない暗黒の現実。コロンビア産の麻薬がメキシコを経由してアメリカ国境を渡るという単純な構図を見ると、生産利益、運搬利益、販売利益を目的とする反社会的な受益団体の存在が見えてくるはず。メキシコは運搬と販売を司る仲介利益に群がる組織間の戦場と化してしまう。一般人やジャーナリストの犠牲者を多く出した40年という長い暗黒史にメスを入れたのが、実はこのシリーズなのである。
麻薬捜査官のアート・ケラー、麻薬王アダン・バレーラ。二人の対立構図を描いた大河小説とも言える前二作を受けて、本書では第二世代の組織による新たな暗闘が幕を開ける。『ザ・カルテル』ではメキシコ麻薬戦争で実際に犠牲者となったジャーナリストに作品は捧げられていたが、本書では麻薬カルテルによって葬られたバス一台分の無辜の学生たちの実名が挙げられ、作品は彼らに捧げられている。
例えば2014年のケラーの嘆き。「メキシコではバスに乗った四十九人の学生が亡くなった。アメリカでは二万八千六百人がクスリで亡くなった。誰ひとり復活しない。おれにはやるべき仕事がやれていない」
「二〇〇〇年から二〇〇六年までは、とオブライエンはケラーに説明する。ヘロインの過剰摂取による死亡者数は横ばいで、一年に約二千人だった。二〇〇七年から二〇一〇年までは、約三千人に増加した。それから急激に増え始め、二〇十一年には四千人、二〇一二年には六千人、二〇一三年には八千人になった。」
「二〇〇四年から現在までに、イラクとアフガニスタンで失ったわが国の兵士の総数は七千二百二十二人だ」
「同じ期間に、十万人以上のメキシコ人が麻薬戦争で殺され、二万二千人が行方不明になっています。ちなみにこれはひかえめな数字です」
この数字の規模でシリーズは進んできたのだ。そしてケラーが取り組んできた長い麻薬との闘いの人生でもある。本書はその総括ともなる大作で、何と上下巻併せて千五百ページを軽く超える重量級のクライム小説である。凄い厚みと重みだが、それを読ませてしまう推進力こそが、ドン・ウィンズロウという作家の持ち味である。
それぞれの章に登場する複数主人公が良い。潜入捜査官として苦闘するボビー・シレロ。ビリー・ザ・キッドの異名を持つ殺し屋ショーン・カラン。グアテマラからアメリカへの国境越えを図る少年ニコと少女フロルの運命。そしてメキシコのファミリーたちのそれぞれの狂気の個性。またも犠牲になるジャーナリストの悲惨。前作までの覇者と死者とその子供たち。刑期を終えて再登場する古き麻薬王たち。
何よりも時代は変わり、ドナルド・トランプを思わせる新手の大統領がアメリカと現代とを掻き回す。麻薬戦争はメキシコからアメリカに移る。さらに過激に残酷になり地下に潜ってゆく薬物戦争に対峙するケラーの運命。
多くの人間の運命を乗せた重機関車のように物語は疾走する。ケラーのラストの法廷での証言が彼の辿った四十年を振り返る。まさに現代の『戦争と平和』と言える本シリーズ。できれば一作目『犬の力』から辿って頂きたい。そして本作の持つ圧倒的な力に、是非とも魂まで揺さぶられて頂きたい。
Posted by ブクログ
ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー 上』ハーパーBOOKS。
『犬の力』『ザ・カルテル』に続くシリーズ第3弾。完結編。 上下巻で1,500ページを超える超大作。
まるでノンフィクションのような麻薬戦争の実態。面白い。冒頭から麻薬の利権を巡る血煙と硝煙が漂う暴力と殺戮の世界が描かれる。人間の欲望は果てしなく、留まるところを知らない快楽への欲求が愚かな人間たちを麻薬の世界へと向かわせるのだろう。
メキシコの麻薬戦争はアート・ケラーが望む結果とはならず、アメリカへのヘロインの流入は止まらない。麻薬の利権を巡り、次々と新たな麻薬カルテルの支配者が生まれていく。麻薬取締局の局長に就任したアート・ケラーはニューヨーク市警麻薬捜査課と共にある極秘作戦に着手するが……
本体価格1,296円
★★★★★
Posted by ブクログ
平置きされているこの文庫本を手に取ると、どの本よりも厚い感触に、まず手が驚く。765ページだ。『犬の力』、『ザ・カルテル』に続くこの3部作は、ボリュームだけでも作者の執念を感じる。
主人公は今や麻薬取締局DEAの局長になっており、上巻では彼の直接的な活躍より、麻薬を取り巻く周辺(すなわち主人公の人生なのだが)の人物を描いていく。
麻薬カルテルの首領の首をすげ変えてもすぐに次の顔が現れるように、麻薬の売人から中毒者まで、次から次へと登場人物に不足はしない。また、登場人物にトランプ大統領のモデルが登場するように、この物語は現実社会に基づいている。作者の執念はジャーナリズムに根差していると強く感じる。
さあ、3部作の長大な大河小説は最終巻を迎える。読み終えたくない気持ち半分、読み急ぐ気持ち半分で、秋の夜長にもぐり込む。
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