田口俊樹のレビュー一覧

  • 卵をめぐる祖父の戦争

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    ネタバレ

    大傑作である.
    コソ泥として捕まったレニングラードの少年が,お調子者の脱走兵とペアを組まされ,卵を1ダース手に入れてくることを命令されるのだが,折しも900日にもわたった「レニングラード包囲戦」のさなかである.飢えに苦しむレニングラード市からドイツ軍の包囲網を突破し,どこかから期限までに卵を入手してこないと処刑されてしまうのである.
    青春小説で,冒険小説で,かつ,戦争小説であり,この世の地獄とも言える光景が何度も展開されるのだが,この二人のペアが対照的なキャラクターで,軽妙なやり取りが話にスパイスを利かせているおかげで,重苦しい雰囲気にはならない.
    人食い夫婦との対決,4人の囚われの少女との出

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    2019年10月30日
  • ひとり旅立つ少年よ

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    19世紀アメリカ。12歳の少年が殺された父親の罪を償うためひとり旅に出る。奴隷運動や黒人差別が強くあるなかで様々な人たちと出会い、別れを繰り返していく。優しさに触れ、これまでにしてきたことを悔いる。そして今の自分を肯定してくれる人たち。危険な目に遭いながらも強くあろうとする少年の心がとても印象に残る。自分の罪、赦し、そしてこれから。少年の失ったものと得たもののその全てが詰まっている。

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    2019年09月03日
  • 卵をめぐる祖父の戦争

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    良いとは聞きながら何となく読んでなかったのよね。たまたま古本で見かけたのでこれも何かの縁かと思って。
    岩波新書の「独ソ戦」読んだ直後に読むと何というか同じ時代、同じ場所をテーマにしてるのに視点の縮み方がスゴい。
    まぁ「900日包囲されたが、陥落することなく解放された」って一文の裏にはいろんなことがあるんやろうけど、これまた濃いわ。そしてオッさんは恋物語にすなおにキュンキュンするのである。いや、このラブストーリーはええよ。

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    2019年08月16日
  • ひとり旅立つ少年よ

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    ボストン・テラン『ひとり旅立つ少年よ』文春文庫。

    1850年代のアメリカを舞台に、12歳の少年チャーリーを主人公にしたロード・ノベル。

    有らぬ限りの苦難が主人公のチャーリーに襲い掛かる。その苦難を知恵と勇気で次々と乗り越え、一歩一歩目的に向かって歩むチャーリーの姿が健気で清々しい。

    詐欺師であるチャーリーの父親はチャーリーをダシに奴隷解放運動の資金と偽り、教会から大金を巻き上げる。大金を狙う二人組の男たちはチャーリーの父親を殺害し、チャーリーを付け狙う。父親が奪った大金を本来の奴隷開放運動のために活かすことを決意したチャーリーは苦難の独り旅へと足を踏み出すが……

    本体価格920円
    ★★

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    2019年08月15日
  • ザ・ボーダー 下

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     小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。

     

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    2019年08月08日
  • ザ・ボーダー 上

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     小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。

     

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    2019年08月08日
  • ザ・ボーダー 下

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    『犬の力』、『ザ・カルテル』の続編。前2作と比べて激しい戦闘シーンが少なめの上巻。それでも駆け引きや計画を練るところなんかは緊張感がある。麻薬戦争の終わりが見えないアート・ケラーの日々。現場に戻りカルテルを潰そうとする計画。今作も群像劇でたくさんの人たちのことが語られる。それぞれの思惑、欲がよりわかる。静かななかにも張り詰めたものがあり徐々に膨れ上がっていく。そして下巻に入り物語は加速していく。麻薬を通してアメリカの暗部がこれでもかと描かれ権力のために麻薬を利用し金を得ようとする。ケラー対アメリカのような構図。一人の人間が麻薬に溺れていくさま、悪に染まっていくさまには絶望を感じる。ラスト近くに

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    2019年08月01日
  • ザ・ボーダー 下

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    ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー 下』ハーパーBOOKS。

    『犬の力』『ザ・カルテル』に続くシリーズ第3弾。完結編に相応しく、上下巻で1,500ページを超える超大作。読み応えが充分過ぎるほどある。

    壮絶、凄惨極まるメキシコの麻薬戦争はアメリカ国内へも連鎖する。このメキシコ麻薬戦争三部作を読むと、メキシコに対するイメージが大きく変わってしまう。また、アメリカがメキシコとの国境に壁を作ったのは麻薬の流入防止が理由の一つであろうとも考えたりする。

    腐敗したアメリカ政財界とメキシコの麻薬カルテルとが結び付き、アート・ケラーの命を賭けた麻薬カルテル撲滅の闘いは無駄となる。アメリカからの麻薬資金の流

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    2019年07月24日
  • ザ・ボーダー 上

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    ドン・ウィンズロウ『ザ・ボーダー 上』ハーパーBOOKS。

    『犬の力』『ザ・カルテル』に続くシリーズ第3弾。完結編。 上下巻で1,500ページを超える超大作。

    まるでノンフィクションのような麻薬戦争の実態。面白い。冒頭から麻薬の利権を巡る血煙と硝煙が漂う暴力と殺戮の世界が描かれる。人間の欲望は果てしなく、留まるところを知らない快楽への欲求が愚かな人間たちを麻薬の世界へと向かわせるのだろう。

    メキシコの麻薬戦争はアート・ケラーが望む結果とはならず、アメリカへのヘロインの流入は止まらない。麻薬の利権を巡り、次々と新たな麻薬カルテルの支配者が生まれていく。麻薬取締局の局長に就任したアート・ケラ

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    2019年07月22日
  • 卵をめぐる祖父の戦争

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    まるで凸凹コンビの卵をめぐる戦争の話。辛いこと苦しいこと、残酷な描写は当然あるけれど、友情や恋、そして全体を包むユーモアが決して悲壮なものにしていない。戦争の愚かさをやさしく訴え読後感はさわやかでもある。多くの人に読んで欲しい。

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    2019年07月08日
  • 短編画廊 絵から生まれた17の物語

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    楽しめた!
    知ってる作家も知らない作家も、1枚の絵から広げる想像力の半端なさをまざまざと見せつけられた思い。キング御大、ジョイス・キャロル・オーツ、ローレンス・ブロックなどはさすがの出来で、中でもジョー・R・ランズデールがダントツ。ウォーレン・ムーア、クリス・ネルスコットが発見だった。

    しかしそれぞれヴァラエティに富みながらも、全体としてはダーク寄りの傾向なのは、そもそもエドワード・ホッパーの絵の中にある「孤独感」「空虚感」の為せる技だろう。

    読む前、読みながら、読んだ後、何度もホッパーの絵を見返したことよ。

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    2019年06月24日
  • キス・キス〔新訳版〕

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    全11編からなる短編集。どのような落ちになるのかとハラハラさせるものもあり、皮肉なラストが多い。「女主人」「天国への道」「牧師の愉しみ」「ミセス・ビクスビーと大佐のコート」が好き。

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    2019年05月24日
  • その犬の歩むところ

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    ギヴ(GIV)という名の犬を巡る奇跡のような物語。テロ、戦争、災害等で疲弊したアメリカで、語り手である青年が気付く小さな、でもとても素敵なこと。数奇な運命に翻弄されながらも、誇り高く生きるギヴ。彼らを取り巻くやさしい人達。途中、何度も目頭が熱くなった。今は猫を3匹飼っているが、もともとぼくは犬派だった。やっぱり、犬もいいなあ……。

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    2019年05月22日
  • ダ・フォース 上

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    圧倒的な迫力の警察小説だ。あくまで現場にこだわり、汚辱にまみれながらも理想を目指す主人公デニー・マローンの生きざまは強烈だ。

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    2019年05月12日
  • キャプテンの責務

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    旅客や乗組員等、船内にいる人すべての避難が済むまで船長は船舶を
    去ってはならない。

    でも、ティレニア海で座礁・転覆したコスタ・コンコルディア号は
    さっさと船外に逃げ出して塩害警備隊から「船に戻れ。船にはまだ
    人がいる」と叱責された。

    コスタ・コンコルディア号のように座礁も転覆もしなかったが、船に
    乗組員全員を残したまま、船を離れた船長がいた。

    アメリカ船籍の貨物船マークス・アラバマ号は、ソマリア沖を航行中に
    海賊に拿捕された。リチャード・フィリップス船長は船と乗組員を守る
    為に、自ら海賊たちと共に救命艇に乗り込み、貨物船を離れた。

    2009年4月に発生したソマリア海

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    2019年02月06日
  • 偽りの銃弾

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    ネタバレ

    「ステイ・クロース」が面白かったので、ハーラン・コーベンの他の作品も読んでみようと、手に取った作品。

    いやーこれは上手い小説だ。謎また謎の積み重ね(解説の堂場瞬一さんに曰くたまねぎ小説)その重ねようにページを繰る手が止まらない。
    詐欺の手法で、次から次に説得力のあるような根拠のあるような逸話挿話ショートメッセージを怒涛のようにしゃべりたて、返事する間を与えずいつの間にか聞き手の意思を操る手法があると聞いたが、まさにそれ。

    テンポよく次から次へ、不可解な事件や不審な登場人物やあれやこれや出てきて衝かれるように、読み進める。ちょっと余裕が出てきて疑問符が浮かんで、その疑問符を持ち込んだまま、ク

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    2019年01月22日
  • ダ・フォース 下

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    重厚が半端ない上巻に比べ下巻は、マローンの進退がきになってほぼ一気読み。
    ニュヨークを愛し警官という仕事を愛し、一緒に働く仲間を家族を愛している、悪徳ヒーロー警官マローン。
    綺麗事では済まさせない腐敗しきった現実を生き抜く汚職警官マローン。巷には正義など何処にも無く、誰もが権力や富を欲しがり、そして悪に落ち犯罪に手を染める。それでも…人種差別、ドラック、銃、ドアの向こうには死が待っているかもしれない町で、身体を張り住民を守る警察官一人一人への敬意が感じられる。

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    2019年01月02日
  • ダ・フォース 下

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    ネタバレ

    汚職警官の自滅していく過程かと思いきや……最後まで目が離せなくなりました。
    汚れながらも街を守る警察官への敬意が、この作品を単なるクライムノヴェルでない、奥の深いものにしています。
    もう、圧巻と言うしかない警察小説です。

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    2018年12月08日
  • キャプテンの責務

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    "2009年にソマリア沖で海賊に襲撃された船の船長の物語。大型の貨物船の船長が、海賊から乗組員を守り、自らが人質となって過ごした数日間を赤裸々に語られる。その時、家族がどんな思いで過ごしたのかも知ることができる。
    生と死のはざまでは、本当に強い精神力が無いと心が折れてしまう。
    そんなギリギリの状況が語られる。
    そして、海軍特殊部隊SEALsが人質を奪還して日常生活に戻れる旅は感動に満ち溢れている。
    映画化されたのも当然だろう。映画は見ていないが、必ず見てみたいと思っている。"

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    2018年10月28日
  • こうして世界は誤解する――ジャーナリズムの現場で私が考えたこと

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    "中東、アフリカにある独裁国家に住む肌感覚やイスラエルとパレスチナの日常を知ることができる。
    1998年から2003年にかけてオランダからの特派員としてエジプト、シリア、イスラエルでジャーナリストとして過ごして記事を送り続けていた著者が、伝えきれなかった部分を補ってくれているのが本書だ。
    イスラエルとパレスチナの関係も見方ががらりと変わる。見る視点が変わることで、いろんな気づきを得ることができる。

    本書を読んで、メディアからの情報を鵜呑みにすることの怖さにも気がつく。
    情報を自由に閲覧できて、個人が発信できる日本にいると、独裁国家の日常は想像すらできない。

    様々な視点を与えてくれ

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    2018年10月21日