田口俊樹のレビュー一覧
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仲間を売ったネズミにまで堕ちたニューヨーク市警特捜部「ダ・フォース」のマローン刑事部長。ダーティなお巡りがどこまで堕ちていくのか、人は自分のためにどこまで他人を犠牲にできるのかが問われているかのようだ。
最初はマローンの意志だったかもしれない、それがいつの間にか自分では制御できなくなるまで深刻になる。悪いことはできないなあと思う反面、現場では綺麗事だけですまないことも事実。それは自分達の身の回りで起こっていることからも分かるだろう。マーロンは最終的に正義を貫いたと思う。彼なりの正義だけれども。
クライマックスは、そのまま映画の脚本になりそうで、カット割りやBGMまで聞こえそうなくらい芸術的だった。 -
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コンカッションとは脳震盪の意味。ナイジェリア移民のピッツバーグの検死医のノンフィクション・ストーリー。アメリカン・フットボール選手が、プレー中の度重なる衝撃からアルツハイマー症候群を発症することを発見する。NFLの組織的な隠蔽・サボタージュに屈せず真実を追求する。ウィル・スミス主演の映画の原作。
衰退した鉄鋼の街であるピッツバーグの歴史、ナイジェリアの内戦の話、主人公オマルの長年の鬱病との闘病記、オマルのナイジェリアと米国の家族の物語、というストーリーが複層的に重なっており、まったく飽きない。
東京→京都→大阪→DC→ダラス→NYの移動中に読破。 -
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ネタバレ米国人気TVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の共同プロデューサーで脚本家・小説家でもあるデイヴィッド・ベニオフが書いたベストセラー小説。
ベニオフが自分の祖父から聞いた戦時中の体験談という体裁になっているがフィクションだそうである。
ドイツの包囲攻撃を受けているレニングラードに住む17才の少年レフ・ベニオフ(デイヴィッド・ベニオフの祖父)は、仲間と共に街に落ちたドイツ軍パイロットの死体から備品をとっているところを軍に見つかり捕まってしまう。
彼は収監された刑務所で背の高い金髪碧眼の脱走赤軍兵士コーリャと出会う。
軍の大佐が娘の結婚式の料理に使うからという理由で、レフと
コーリャは免罪(死刑)と引き換えに卵1ダースを見つけてくるという任務を与えられる。
レフとコーリャが下ネタ満載のトークを交わしながら卵を求めて極限の物資欠乏状態のレニングラード市内からドイツ軍の占領下の村や町を旅していくロードムービーの様な内容で、コミカルな雰囲気をまとっているが、彼らの目にしたり体験する戦争の現実は凄惨なものばかりで恐ろしさがよけい引き立つ。
けれども戦争の恐ろしい状況下にあっても正気を失わず前向きに生きていく人たちの物語でもあるので暗さや陰鬱さは無い。
登場人物達が本当に魅力的である。
特に主人公レフの相棒となる青年脱走赤軍兵コーリャは、下ネタ満載のトークが面白すぎてまったく飽きさせない。
個人的には話中の会話が面白い作品は、成功する作品だと思っているがこの作品も例に漏れない。
コーリャの設定がまた面白い。
金髪碧眼の長身で整った容貌をしており、文学に造詣が深いが性欲が強すぎて我慢できなくなり脱走してしまったという人物。
性格めちゃくちゃだが、勇敢であり友人の為であれば危険も冒す。
もう一人は、パルチザンの女性スナイパー ”ヴィカ”
最初は、非常に冷静で冷徹なプロフェッショナルな雰囲気で登場する。
この物語はレフとヴィカのボーイ・ミーツ・ガールの物語でもあり、レフとヴィカの親密度が増すにつれ彼女の魅力がだんだん出てくるところが素晴らしい。 -
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ネタバレ傑作!この小説はいい。
舞台は近代戦最長の900日に及ぶ包囲戦下のレニングラード。飢えと戦争被害に苦しむレニングラードの描写、その戦下日々を必死に生きる主人公が、ひょんなことからイケメンで下品で饒舌な脱走兵とコンビを組み、赤軍士官の命令で玉子1ダースを探すことになる。
人間ってほんま愚かで、その骨頂が戦争だと思う。生産性も幸せも食べ物すらない悲惨な状態を、人間は凝りもせず何度も何度も繰り返す。この本でも戦争の悲惨さ愚かさは繰り返し描写される。ただでさえ気候条件が厳しい冬のレニングラードで、なんでこんなバカな行為を…。
主人公レフと相棒コーリャのタマゴを探す冒険も実に愚かである。支配者の欲を満たすだけの目的、命の危機にも関わらず続く下品な会話…、アホやなぁ人間て…。でもこの愚かさは戦争のそれと違い愛すべき愚かさ。
許されざる愚かさと愛すべき愚かさ、愚かな人間の極端な両面を描くこの小説。しかしラスト1文を読めば、人間だって愚かであっても悲劇に至らない生き方はできると分かる。そう、きっと悲しい歴史を刻まないことだってできるはずなんだ! -
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とある犬と、人々の物語。
ディーン・クーンツの「ウォッチャーズ」が人を犬好きにする一番の作品って思ってましたが、そこに一石を投じられることになるとは。
も、最後の方は涙で字がにじんでたよ。
生まれた環境によって虐げられた人間が、自分の力で足で歩きだそうとする姿や、どうしようもなく傷ついた人が、やはり自分の力で再び立ち上がろうとする、そこに寄り添う犬。
純粋なものの存在は、無垢であるからこそ、シンプルに力になるのだろうか。
シンプルだからこそ、自分自身の内なるものを見つめ、結局のところ、自分自身が行動を起こすしかないのだと、悟らせる。
無垢なものの意味は、そういうことなのかもしれない。
「暴力の教義」もそうだったけれど、テランは人の根底にある暖かいもの、柔らかいもの、を信じているのだろう。そしてそれをきっと<心>と呼ぶのだろう。