田口俊樹のレビュー一覧
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ネタバレ傑作!この小説はいい。
舞台は近代戦最長の900日に及ぶ包囲戦下のレニングラード。飢えと戦争被害に苦しむレニングラードの描写、その戦下日々を必死に生きる主人公が、ひょんなことからイケメンで下品で饒舌な脱走兵とコンビを組み、赤軍士官の命令で玉子1ダースを探すことになる。
人間ってほんま愚かで、その骨頂が戦争だと思う。生産性も幸せも食べ物すらない悲惨な状態を、人間は凝りもせず何度も何度も繰り返す。この本でも戦争の悲惨さ愚かさは繰り返し描写される。ただでさえ気候条件が厳しい冬のレニングラードで、なんでこんなバカな行為を…。
主人公レフと相棒コーリャのタマゴを探す冒険も実に愚かである。支配者の欲を満たすだけの目的、命の危機にも関わらず続く下品な会話…、アホやなぁ人間て…。でもこの愚かさは戦争のそれと違い愛すべき愚かさ。
許されざる愚かさと愛すべき愚かさ、愚かな人間の極端な両面を描くこの小説。しかしラスト1文を読めば、人間だって愚かであっても悲劇に至らない生き方はできると分かる。そう、きっと悲しい歴史を刻まないことだってできるはずなんだ! -
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とある犬と、人々の物語。
ディーン・クーンツの「ウォッチャーズ」が人を犬好きにする一番の作品って思ってましたが、そこに一石を投じられることになるとは。
も、最後の方は涙で字がにじんでたよ。
生まれた環境によって虐げられた人間が、自分の力で足で歩きだそうとする姿や、どうしようもなく傷ついた人が、やはり自分の力で再び立ち上がろうとする、そこに寄り添う犬。
純粋なものの存在は、無垢であるからこそ、シンプルに力になるのだろうか。
シンプルだからこそ、自分自身の内なるものを見つめ、結局のところ、自分自身が行動を起こすしかないのだと、悟らせる。
無垢なものの意味は、そういうことなのかもしれない。
「暴力の教義」もそうだったけれど、テランは人の根底にある暖かいもの、柔らかいもの、を信じているのだろう。そしてそれをきっと<心>と呼ぶのだろう。 -
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三種類の女がでてくる。
ナチスの迫害を生き抜いたものの、女としては致命的な傷を心身に負った孤高の女・フラン。暴君のような夫に虐げられる生活の中でも良心に根ざす信仰を失わず、障害を持って生まれた娘に無償の愛情を注ぐクラリッサ。
そんな二人に慈しまれ、銃の代わりにカメラを武器にしなやかに成長していくイヴ。
女と女の友情の話である。
イヴと名付けられた希望の種を巡る、女たちの静かで激しい戦いの記録でもある。
中でも魅力的だったのはクラリッサ。横暴な夫の虐待を耐え忍び、幾多の悲劇を乗り越え強く在ろうとした姿が感動をよぶ。
立場と性格は違えど同じ逆境を体験した者同士、相通じるものがあるフランと共に屋上で鳩を抱く場面の無垢なる美しさは言葉にできない。
文章は類稀な詩情に溢れ繊細で美しく、灰色の現実の中でも決して色褪せない真実の宝石を写真の如く切り取っていく。
撃鉄を落とすようにシャッターを押し、自分を弾圧する人生への対し方を学んでいくイヴ。
冒頭、イヴと恋人が手話で交歓するシーンに溢れた素朴な信頼と愛情は、物語を追ってイヴという少女の過酷な前半生を知ればこそ、それがどれだけ得難き価値のあるものか得心がいく。そしてイヴが撮った写真、肌の色が異なる家族が食卓で手を繋ぎ輪になる情景にこそ聖俗併せ呑む愛の核心が集約されるのだ。
本作には素晴らしいもの、尊きものが散りばめられているが、それらを脅かす唾棄すべき悪の存在もまた容赦なく描かれる。しかしだからこそ、弱き女たちが自分よりさらに弱きもののために戦いに挑む姿は、精神の気高さから生まれた崇高な美しさを保ち得るのだ。
「自由の女神が聾唖でもいいじゃないの」
これは母と子と希望の物語だ。 -
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毎年恒例、プーチン大統領が国民の質問に丁寧に答えてくれる
よという茶番劇…じゃなかった、TVショーが今年もロシアで放送
された。
そこに登場したのが誰あろう、エドワード・スノーデン氏である。
そう、アメリカ政府の情報監視活動を暴露した、元NSA(米国
国家安全保障局)の元職員だ。
アメリカ政府による監視活動んいついて述べた後、ロシアも
同じような監視活動をしているのかというのがスノーデン氏
からの質問だった。
プーチン閣下曰く「情報収集に関しては法律を順守して行って
いるが、アメリカみたいに豊富な予算し、技術的能力もないさ」。
あぁ…元KGBがこんな答えですよ。なんたる茶番。
さて、本書である。ある日、著者は1通のメールを受け取る。署名
には「キンキナトゥス」。古代ローマで独裁官に指名されながらも、
反乱軍を鎮圧したのちに独裁官をあっさりと返上して、平民に
戻った伝説の人物。
このメールの差出人こそ、エドワード・スノーデン氏である。
本書は大きく3つのパートに分かれている。第1パートは著者と
スノーデン氏との接触から、スノーデン氏が持ち出した秘密文書
をいかにして公開するか。スクープを掲載することになった英紙
「ガーディアン」との駆け引き。
第2パートは実際にスノーデン氏が著者に託した文書の一部を
掲載し、どんな監視方法が取られていたかを詳しく解説している。
そして、第3パートは報道後のアメリカ大手メディアの反応と、
著者が考える報道の役割である。
アメリカ政府の世界規模の監視活動の内容も、報道当時と同様、
ショッキングだ。だが、それ以上に衝撃だったのはアメリカの大手
メディアが行ったスノーデン氏及び著者に対するネガティブキャン
ペーンだ。
ペンタゴン・ペーパーズやウォーターゲート事件を報道したアメリカ
のメディアは、いつから政府の提灯持ちへと変身したのか。
9.11後、アメリカは「テロが起きたらどーするんだよ」と国民の恐怖
を煽り、愛国者法などという悪法を通して来た。NSAはアメリカ人に
対する監視活動は行わないと約束していたが、それさえもテロの
脅威の名の下、なし崩しになった。
アメリカ政府が言うように、テロを未然に防ぐ為に必要であるので
あれば、ボストンマラソンでの爆破テロは未然に防げたはずだった
のではないか。
日本でも特定秘密保護法案が出来、国家安全保障会議が誕生
した。将来、アメリカと同じことをしないとは言い切れない。
他人事ではない。こうしてネット上に、ああだこうだと書いてる
ことが、どこかで秘密の目に監視されているのだから。キャー。
尚、アメリカがドイツのメルケル首相の携帯電話を盗聴していた
との報道があった後、「安部首相の携帯電話は大丈夫」と官房
長官が胸を張って断言していた。
それって…盗聴に値しない人物ってことですけど。 -
一般市民に対する集団監視とは?
一般市民に対する盗聴、盗撮の拡大による実害は、最近ネット上で散見する『集団ストーカー』というものにも関係しているのでは?と思っています。この本でのスノーデンファイル序文には次の文章が記載されています。 『・・・社会から爪弾きにされた若者が 軽微な違反を犯し、世界最大の監獄制度の中で耐え難い結果に苛まれようと、私たちは社会全体として見て見ぬふりを決め込んでいます・・・』 そして2014年、NBCニュースで のスノーデンのインタビューでは『・・・he called it ,could get inside your thought process・・・』と言っています。
また例えばウィキリークスにある文章『 エネルギー武器(DEW)、神経作用兵器、そし て100通りの組織的ストーカーの拷問とその乱用についての要約 』ウィキリークスサイト (http://wikileaks.org/gifiles/docs/ 16/16811_fw_impeach_these_criminals_please_with_100 _attached_torture.html) ここでは、世界各国のターゲットにされた被害者の情報が載っており、またこのようなことは恐ろしいことですが、日本でも行われていると思います。なぜその兵器の情報がメディアから出てこないのか法整備はされないのか疑問です。 技術的なことではアメリカの特許 である脳活動監視についての研究(2000年4月.A.Mardirossian博士、US Patent 6011991 )など他の特許も色々あり、(1994年 Donald York神経学、Thomas Jensen 言語学)両博士による脳波による言語変換を成功させている例もあり、信憑性はあるのではないかと思っています。
『集団ストーカー』の問題は権力に対する邪魔者を排除すること、また大衆を動かす心理技術的な洗練(コインテルプロなど)という意味で、別の問題としてみえる,原発の不利な情報をもみ消す力、平和活動に対しての圧力など源は同じところから来ているのではないか?と思います。それはつまるところ、真実の情報が一般にはなかなかおりてこず、権力者の都合の良い情報しかもらえないということに尽きると思います。 -
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ネタバレ●海事大学は私に”規律”を教えてくれたー当時の私に一番必要だったものだろう。そして真面目に生きることの重要さも学んだ。船上ではその場ですべえを解決する必要があり、ふざけてなどいられない。意味のない仕事などなく、すべての仕事が重要な価値を持つ。
●人は怒鳴り散らされると逆に従う気が失せるだけだという事を私自身、身に染みてわかっていたからだ。完璧をめざしたところで、やろうとしてもできない者は必ずいる。歩くことより、とにかく這ってでもまえに進むことをめざすべきだ。そうすれば、いずれ走ることも考えられるようになる
●船長がひとつのことだけにーたとえば乗組員がビールを一本か二本飲んだかどうかなどということだけにー固執するようになると、あっという間に乗組員の信頼を失う。
●怒鳴ることにエネルギーを費やすべきではない。
●この船長は船会社の顔色ばかり窺っていて、船が沈むことより本社の人間の不興を買うことを恐れていた
●もしかしたら、優秀な船長よりひどい船長から学んだ方が多かったかもしれない。
●ただひたすら乗組員をレーザービームのように集中させていた。恐怖をいっさい顔に出さないことで。~。とても無口な人だったが、彼がそばにいるだけでなんとか切る抜けられると信じられた。そんな船長だった。
●不言実行。その言葉を聞くと、私はいつもジミー船長を思い出す。海で命を落としそうな時でさえ、ゲイリー・クーパーのようにクールにブリッジに立っていた彼の姿を。
●私は船長として仕事をしているときも、乗組員がひどく奇妙なことをしたとしても誤りを正すようなことはしなかった。なぜそんなふうにしたのかをまず聞いた。他人の動機、彼らが世界をどのように見ているかに興味を持つことで、のちに直面する危機を予期することが出来た。
●私達はみな自分の忍耐力を過小評価して、恐怖心から失敗してしまう。 -
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数年ぶりに再読した。
初めて読んだのはまだ高校生か大学生の頃だった。ずっとこのマット・スカダーシリーズを読んできていたからか、ラストシーンで泣いたのを覚えている。
その頃、マットのように「いきつけのバー」で「いつもの席でいつものもの」を頼めるような大人になりたいと思っていた。ちょうど、マットとダニー・ボーイの会話のように。
そして今、マットと同じようにお酒を飲む大人になった。
お酒を飲んでいない時にはわからなかった、マットが酒に浸る気持ちが少しづつ分かり始めている。
キムという娼婦が殺された。
ほんのちょっとすれ違い、ほんのちょっと人生の後押しをしてあげただけの、たったそれだけの関係の女性。だけどマットは彼女の事件を追い続ける。何故なのかは自分でもわかっていないようだ。
ニューヨークの暗い部分を歩き続け、最終的に見つけたキムを殺した犯人。キムが殺された理由。
事件が終わって手にしたバーボンのグラス。11日も禁酒していたのに「鉄くずが磁石に吸いつけられるように」酒を頼んでいた自分に気づいて、そして迎えるラストシーン。
今度は泣かなかった。
胸にこみ上げてくるものがあるのは変わらない。ニューヨークという街とそこに生きる人たちの描写がうまいのは変わっていない。マットがアル中だったことも変わらない。
ただ変わったのは自分がマットと同じお酒に魅せられた人間になっているということだけ。
泣く代わりに、カウンターの上のバーボンを飲んだ。
お酒を飲む人なら、きっとマットの気持ちに近づける。 -
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外務省のHPによると2003年以降の世界全体の海賊事案発生件数は200〜450件の間で推移しており、そのうちシージャックの発生は10〜20件程度だったのが2008年から2011年までは50件ほどのシージャックが発生した。この間増えたのはほぼソマリア沖、アデン湾のもので海賊事案全体の半数、そしてシージャックの8割ほどを占めていた。国際的な取り組みにより2012年以降は海賊の発生を抑えており、2014年の場合9月までの累計で事案が10件、シージャックは0となっている。現在海自の護衛官2隻が派遣され1隻はアデン湾を往復しての護衛を行い、もう1隻は割り当てられた海域の警戒活動を行っている。ほかにP−3C哨戒機も2機派遣されており不審な船舶の情報提供を行っておりこの活動は同海域における警戒活動の6割を占めている。現在では最も海賊事案発生が多いのはマラッカ海峡を中心とする東南アジアであり、ついでギニア湾、ソマリア沖という順だ。
2009年3月30日リチャード・フィリップスは船長としてオマーン南岸の港町サラーラに停泊中のマースク・アラバマにキャプテンとして乗り込んだ。インド洋に面するサラーラからアデン湾の奥、紅海に入る手前のジブチを経由しそこからソマリアをぐるっと回ってケニアのモンバサまで3ヶ月間がリチャードの仕事場となる。この航路はいつも天気がよく、停泊する港も興味深い場所ばかりでお気に入りの航路だった。このときもこのルートの仕事が回ってきて運がいいと思った。1092TEU(20フィートコンテナ換算で1092本)の積載量のマースク・アラバマは全長155m、全幅25m、最高時速18ノットのよくあるコンテナ船だ。17トンの積み荷の内5tは国連世界食糧計画によるルワンダ、コンゴ、ウガンダ向けの支援物質で全てケニアのモンバサかタンザニアのダルエスサラームを経由して陸路で運ばれる。最近ではルワンダは復興し経済成長率がアフリカの中でも高くなっている様だが、90年代にはソマリアもルワンダも激しい内戦が繰り返されたところだ。ソマリアの海賊は元漁師が貧困のために海賊化したと言う話もあるが2008年以降は成功率の高さに眼を付けた組織的な海賊が主流となっている。高速モーターボートに機関銃と対戦者ロケットRPGを装備と言えばソマリア内戦での「ブラック・ホーク・ダウン」が思い起こされる。ソマリアは現在でもまともに政府は機能しておらず、国内にプントランドやソマリランドという国家らしきものもできている。ここらの話は高野秀行の「謎の独立国家ソマリランド」に描かれている。
学生時代はどちらかと言えば悪ガキでタクシーの運転手をしているときに一番チップの払いのいいのが船乗りだったと言うのがリチャードが船乗りになったきっかけだった。海事学校で規律を叩き込まれ、そしてリチャードは口うるさく手強いボスになった。ある甲板長がリチャードに最高の賛辞を贈ったことがある。「あんたは面倒くさい上司だけど、おれにはあんたが言うことが言われる前にわかるんだよ」
マースク・アラバマでのリチャードの最初の仕事はビールを求めて先を急ぐ船員を捕まえきちんと船の様子を聞いておくことだ。次いで乗船して初めの数時間船内を点検して回ると船中の扉と言う扉が開きっぱなしで侵入柵にも鍵がかかっていない。セキュリティが少し緩んでいた。4月2日リチャードは1等航海士のシェーンに「今日は抜き打ちで海賊対策訓練をやろう」と言った。たいていの航海士なら「ええっ、船長、それ、やらないといけませんか?」と言うところだがシェーンは違う「抜き打ち訓練ですか、いいですねえ」
5日にジブチについて6日に出航し海賊の影が見えたのがこの日だった。そして8日ついに海賊のボートにおいつかれ放水もむなしくはしごを用意した海賊4人が乗り込んできた。リチャードと二人の船員が人質になるが、シェーンや機関長のマイクは訓練通りに船内に隠れ船の機関と運行は渡さない。他の乗組員の捜索に行く中で一人の乗組員はうまく隠れ、続いて海賊のリーダーを逆に仲間が捕えた。そしてここからがリチャードの粘り強い戦いが始まりだった。ここからが物語のクライマックスだ。
キャプテンの責務とは何か?リチャードのモットーは「われわれはみな船のためにここにいる。われわれのために船があるわけではない。」だが実は続きがある。「ただ、船長は乗組員のためにここにいる」だからリチャードは仕事となったら面倒くさいと言われようととことんやる。おそらく見習うべきなのは海賊に襲われるまでのところなのだろう。