田口俊樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
過去40年間に自分が訳したミステリ作品をとりあげ、どんな誤読や誤訳、ケアレスミスがあったのかという告白録(自慢話もあり)、全20回。とても参考になる。
ケイン『郵便配達は二度ベルを鳴らす』の回では、自分を含め8人の訳者の訳文を比較している。その8人とは、飯島、蕗沢、田中小実昌、田中西二郎、小鷹、中田、池田、田口……豪華競演。
印象的だった失敗談。ジョン・ル・カレの作品を訳し終わって気分が高揚したまま、native checkを受けずに、彼にメールを送ってしまい、逆鱗に触れたことがあったという。知己でなければ、チェックなしのメールは危険。他山の石として、肝に銘じよう。 -
Posted by ブクログ
ドン・ウィンズロウは『犬の心』3部作以外読めておらず、他の作品はわたしの好きなメキシコも関係なさそうだし、どうかな…?なんて思っていたけれど、もちろん杞憂も杞憂。めちゃくちゃ面白い。読み始めたら止まらん。
今作も、誰が生き残るのか(ほとんど生き残らない)全然わからず、重要かと思われた登場人物があっけなく死亡したりして、予測のつかないエンタメを存分に楽しめる。
「みんな救ってくれると信じておまえを見ている。だったら、救ってやろうじゃないか。」とか、文章もバチっと決まってかっこいい!少年漫画のようにテンションを上げてくれる。
ラストは、ドラッグを憎む気持ちがすごく伝わってきた。次作以降も楽しみすぎる。 -
Posted by ブクログ
前作でのハリウッド篇を受けて、今回はギャングと切っても切れないラスベガス篇。
と言ってもバグジー・シーゲル以来のギャングが暗躍する世界ではなく、それらが一掃された世界で、実業家としてダニーが突き進む様子が描かれる。
主人公がアイリッシュ系ギャングという事で、ギャング物、ハリウッドやラスベガスを舞台にするから「ゴッド・ファーザー」との相違点が取りざたされるのは当然だろう
しかし、こうして3部作を読んでみると、この作品は、アイリッシュギャングのファミリーの一員として生を受け、そこで育ち、それ以外の価値観や規範を持てない男が、それ以外の世界で生き延びようと格闘し、もがく物語であり、ドラマとしての側面が強い。
最後に収まるべきところに収まり、物語は終わるが、ほぼ50年の時を経て、オープニングに戻っていく構成は見事で、ダニーの生涯、その生き方を象徴するラストには感動すらおぼえる。
(若干、後日談が不明なキャラもいるので、そこらは映像化の際に追加して欲しい)
これでドン・ウィンズロウは引退らしいが、これだけの作品を残せるのだから、正直、こんな大作出なくても、多少レベルは下がっても、まだ作品を紡いでほしい。
これだけ傑作、しかも映像化向けの作品が多いのに、そのあまりにもスケールの大きさゆえか、なかなか映像化の話が進まないのが本当に残念。 -
Posted by ブクログ
【あらすじ】
独ソ戦下のレニングラード。ドイツ軍に完全包囲された中で人々は飢餓に苦しんでいた。
ユダヤ人で皮肉屋のレフと長身の美青年だがお調子者のコーリャ。デコボココンビの2人は大佐の命令で1ダースの卵を1週間以内に探す羽目になってしまった。
荒廃したレニングラードを舞台に2人の冒険が始まる。
【感想】
冒頭から最後の最後までずっと面白い傑作小説。
主人公レフのひねくれ者で小心者な所が等身大でとても良い。一方、コーリャの完璧超人でありながら好色でお調子者な所はアメリカンヒーロー的だ。
2人の掛け合いの面白さで盛り上げつつも、冒険の中身はえげつない。
人肉食夫婦に地雷犬、慰み者にされている少女など、戦争の悲惨さを容赦なく叩きつけてくる。
戦争というものは辛く苦しく、そしてこの上なく滑稽で可笑しい。
-
Posted by ブクログ
ネタバレマイロン・ボライターシリーズで有名なハーラン・コーベンのノンシリーズ作品。
暴漢に襲われて死んだ夫ジョー。妻である元軍人のマヤは、戦時中のある行動が世界中にリークされた過去がある。葬儀を終えて友人からの助言に従い、日中のベビーシッターの行動を隠しカメラで録画するが、そこには死んだジョーが映っていた。。。
読み進めるほどに意外な事実が出てきて、誰一人信用できないストーリー…なんだけど、案外展開が遅いので中弛みするところもないではない。ただ、終盤の畳み掛けが、その辺りをどうでも良くしてくれるほど素晴らしい。
マヤの、あまりにも周りに頼らない性格が好きではなく、途中モヤモヤさせられることが多かったが、それもエピローグでぶっ飛んだ。それくらいいいラスト。ドラマ版も見てみたい。 -
Posted by ブクログ
★5 かつて殺害された息子、成長した姿が写真に撮られて… 超怒涛のサスペンススリラー #捜索者の血
■あらすじ
三歳の息子マシュウを殺害した容疑で逮捕され、終身刑となって五年間も服役しているバロウズ。守ってあげることができなかった後悔を胸に、日々刑務所の中で暮らしていた。ただ実は… 彼は殺害していない。
そんなバロウズの元へ、元妻の妹レイチェルがバロウズに面会にやってくる。彼女はバロウズにある写真を見せるためにやってきたのだ。その写真には、殺害されたはずのマシュウの成長した姿が写っており…
■きっと読みたくなるレビュー
これぞサスペンス、これぞスリラー、これぞエンタメ! おもろいっ ★5
まさにハリウッドドラマのようなストーリー、次々と物語が展開してワクワクドキドキがとまらないという作品。
いきなり序盤から引き込まれます。息子が亡くなってしまったことについて後悔しまくりの終身刑の男の元に、実は生きてるかもっ!て、情報が与えられたら、そりゃもう大騒ぎですよ。
とは言え刑務所から出ないとどうしようもない。主人公バロウズはいきなり人生賭けた大勝負に出る、そしてそれを支援する仲間、妨害する敵たちがワラワラ現れて、早くもクライマックスなんですよね。
中盤以降は、息子が殺害されたときの証拠や証言を追求することになる。しかし彼は逃亡者の身、差し迫る追手からいかに逃げきるかってのも読みどころでして、あーもうサスペンスが止まらねぇ。そして登場人物の物語への関わり方が上手なんだよな~、人とバックグランドを繋ぐのが映像で入ってくるんですよね。
お気に入りのキャラクターはFBIの二人、彼らがナイスコンビなんですよ。彼らの鋭い推理で少しずつバロウズを追い込んでいくんですが、いやーこれがまたヒリヒリしておもろいの!超エリートの頭脳派なんだけど、煮ても焼いても食えない奴らで、もはや事件捜査の変態マニアなんですよね。絶対関わり合いたくない人種だと思った。
いよいよ終盤、一連の事件の真相が明かされるのですが… この事件の動機、そして亡くなっていた子どもは誰だったのか。これがもうね、なんも言えない状態ですよ。自分が想像していた以上の出来事で、もう脳みそが完全に沸騰しました。読んでいただき、同じ気持ちになって欲しい。
さて息子マシュウは生きているのか、会えるのか、会えたとしても父バロウズのことを覚えているのか。これも何も言えません、ぜひ読んでいただき、同じ気持ちになって欲しいです。
本作は「人を愛するために、どんな行動が必要なのか」を描いている作品だと思います。主人公バロウズはどういう行動をするのか、そして犯人はどういった行動をしてきたのか… 結果は物語のラストで感じることができると思います。
■ぜっさん推しポイント
本作はセリフ回しが超カッコイイんですよ。ほんと映画やドラマで見たそのまま、映像が目に浮かんじゃうんです。
本書引用---殺人犯の受刑者のセリフ
「いいか、俺が殺すのは赤の他人だ。他人なんてものは人生の小道具にしか過ぎない。舞台の装飾品だ。自分が作り出す内なる世界にとってはただの背景にしか過ぎない。」
痺れるーーー!
こんなのは序の口で、主人公バロウズ、元妻の妹レイチェル、FBI二人が吐き出すセリフは書き留めておきたいくらいCoooolなの! 本作、NetFlix映像化もされるらしいので、絶対に見てやろうと思っています! -
Posted by ブクログ
麻薬捜査官アート・ケラーの長い長い闘いの物語は遂に終わりを告げた
だが、現実世界での麻薬との闘いは尚続いている
ではアート・ケラーが我々が麻薬と闘い抜くために、そしていつかは勝利するために残してくれたものとは何だったのか
ケラーは言う
麻薬の密売人が存在するのは、密売人たちが縄張り争いを繰り広げのは、巻き込まれ無辜の人々が殺され続けるのは、麻薬の密売がとてつもなく儲かるからだ
当然だ
ではなぜ麻薬の密売がとてつもなく儲かるのか?
この答えも恐ろしく簡単だ
それは麻薬が違法だからだ
暴論には違いないが、真実でもある
そしてもうひとつ麻薬を求める人がいるからだ
消費者がいなければ商売はなりたたない
そして当然ながらこの問いも生まれる
ではなぜ人々は麻薬を求めるのか?
この答えも恐ろしく簡単だ
芥子畑を焼き払うこと
密売人を一掃すること
中毒者を刑務所や更生施設に送り込むこと
根本的な解決にはほど遠い
麻薬に逃げ込まなければ生きられない社会を変えること
誰もが生きやすい社会に作り変えること
そしてそれが不可能だと思わないこと
-
Posted by ブクログ
ネタバレ麻薬戦争3部作、堂々完結!!
とんでもないページ数を読んだのだけど、面白かったのであっという間に駆け抜けたように感じた。
ていうか、ニコとフロル、ニコのいた少年拘置所の仲間たちのその後や、ノーラとカランのエピソードももっと知りたく、こんなに読んだのにちょっと消化不良なくらいだった。すごく現実に即した、時事的な要素がある小説だから、出版が急がれたのかもしれない。
『ザ・ボーダー』については、ラストの「麻薬合法化」というケラーの主張を伝えたいがために書かれた物語なのだろうと思った。
以前、各国で禁止されている食べ物や飲み物を味わうトラベルエッセイ『悪魔のピクニック』を読んだ際、作者がドラッグについて「精神を変化させる薬物は商品として扱ってはならない」「非商品化」するのがいいのではという結論に達していたのを思い出した。真剣に考えていくと、ドラッグでは儲からない社会を作っていく必要があるというところにみんなたどり着くようだ。
エンタメ的に楽しんだのはもちろん、すごく勉強になったシリーズだった。
いつかまた『犬の力』から読み直したい。 -
Posted by ブクログ
鬼★5 もはや犯罪小説の大河ドラマ、ラスベガスのカジノホテル経営が商売敵との抗争に発展… #終の市
■あらすじ
ハリウッドからラスベガスへ流れてきたダニーは、今や新進気鋭のカジノホテル経営者となっていた。既に成功を収めていた彼だったが、さらなるカジノ王国を築くために商売敵とホテル買収を争うことになる。
ただ強引な手段で事を進めていくうちに、過去のマフィアの亡霊やFBIたちが追いかけてくる。さらに利益に群がる新たなマフィアが彼の前に立ちはだかり…
■きっと読みたくなるレビュー
東海岸のマフィア抗争から始まった犯罪小説の三部作ラスト『終の市(ついのまち)』、堂々の完結です。
犯罪小説って欲望にまみれた汚い物語なんて思ってません? きっとあなたが思う以上にエモいし、深く深く胸を打つ物語なんです。今年イチオシの犯罪小説ですね、凄かった…
さて本作のダニーはカジノホテル経営者として物語が始まる。犯罪小説ということを忘れるくらいビジネスマンとして手腕を発揮。これまで切った張った人生を繰り返している彼にとっては根回し、交渉、強み弱みを見抜く力なんてお手の物。しかも経営者としてのセンスもいいし、行動力もあるし、筋も通っていて、もはや理想の経営者なんすよね。
しかしながら過去の悪事、人脈は幽霊のように彼についてまわる。どれだけクリーンに生きようとしても、周りがそうはさせてくれないんです。敵対する組織はもちろん、本来応援すべき警察すら悪役に見えてくる。人間ってどこまでも業が深いし、遺恨ってのはどれだけ洗ってもぬぐい切れないんだよなぁ、許してやってくれよと何度思ったことか…
そう、やっぱり本書の一番の読みどころは主人公ダニーの人間性なんです。愛する女性を大切できる男であり、我が子を守る父であり、困っている仲間たちを助けてあげられる。友人を大事に思い、強欲でも自分勝手でもない、頭脳明晰でリーダーシップのある優しい男。完全に惹かれっぱなしですよ、こんなの目の前にいたら男でも惚れちゃうよ。
他の登場人物もクールなんですよ、もう脳天が痺れっぱなし。商売敵のワインガードも筋の通ったビジネスマン、逃亡中だったクリスも頭脳派として光る、ケヴィンとショーンの二人組も若者ギャングらしく華々しい。
今回のイチ推しはネッドだなぁ。これまで父、ダニー、息子を三世代にわたって守ってくれた彼。人を守るとは「どっしりと構える」こと、終盤のクライマックスは今年読んだ本の中でもっともクールなシーンだったわ。
また本作のもうひとつの読みどころとして、法廷シーンもあるんですよ。かつてマフィアのドンと自身の母を殺害してしまった人物の刑事裁判。もうこれだけで一本長編を書けるんじゃねーのって内容で、重厚感と緊迫感ありまくり。鬼アツなんです!
この裁判の結末、そして未来への選択が、本作に出てくる全ての登場人物を癒してくれてるようでしたね。
東海岸のマフィア抗争『業火の市』、ハリウッド映画業界『陽炎の市』、ギャンブル街『終の市』。広大なアメリカをまるっと描いた犯罪小説でありながら、人間が持ち合わせている純粋な愛情に光を照らした作品です。
控え目にいって名作、今年ぜったい読むべき三部作なのでお時間をとってゆっくりどうぞ。
■ぜっさん推しポイント
『終の市』---終わりの街とは何処だったのか、そこには誰がいるのか。
彼が残してきたことの答えがそこにあり、ちっぽけな私の生き様なんかではとてもじゃないが受け止めきれません。私にも家族がありますが、同じ境遇だったらどこまでできたのだろうか…
こんなにも壮大な人生劇場でなくてもいい。それでも大切に思う人に対しては、自分ができることを精いっぱいやり尽くさなければいけませんね。