【感想・ネタバレ】陽炎の市のレビュー

あらすじ

逃避行の果て、男たちの手はふたたび血に塗れる――
犯罪小説の名手が放つ、ギャング・ノワールの極致。
「ウィンズロウ作品の歴代ベスト級」――スティーヴン・キング

犯罪小説の名手が放つ、ギャング・ノワール3部作、第2弾!

1988年12月。
アメリカ東海岸を血に染めた抗争に敗れ、多くの仲間を失ったダニー・ライアンは、わずかな味方とともに西へと逃亡する。
禍根を残すイタリア系マフィアとFBIの執拗な追跡に次第に追いつめられるなか、当局から自由と引き換えに危険な仕事を持ちかけられたダニーは賭けに出るが――。
メキシコ麻薬カルテル、ハリウッドの裏側も巻き込む男たちの争い。
全米ベストセラー3部作、第2弾!
【解説】SYO(映画ライター)

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Posted by ブクログ

★5 マフィアがハリウッド映画業界に進出?! 欲望と家族愛がマシマシで描かれる犯罪小説 #陽炎の市

■あらすじ
マフィア抗争に敗れたダニーは、わずかな仲間と共にカリフォルニアに逃走する。幼いわが子を養いつつ、隠れながら暮らしダニーたちに、FBIから取引を持ち掛けられる。その後ダニーは母親との交流を経て、ハリウッド映画界にも影響力をもたらすことになり…

■きっと読みたくなるレビュー
★5 もう、めちゃくちゃ! 前作からどんな展開になるんだと思いきや、エンタメ増し増しじゃないですか~

序盤はダニーの逃亡劇から、新たな謀略と犯罪が繰り広げられる。人間の闇の部分をむしろ生き生きと描写してくれるから、キャラクターの顔が目の前に見えてくるんすよね。ヒリヒリしながらワクワクしちゃう展開も相変わらず最高なの。

このままこんな展開が続くのかなーと思いきや、中盤から場面はハリウッド映画業界に。これまで生き延びるために隠れ続けていたはずのダニーが、ド派手な表舞台で大騒ぎなんです!これが面白いのなんのって。もうノワールだったことを忘れそうになりますね。

今回も素晴らしいキャラクター陣、まず推したいのはマフィア仲間のケヴィンとショーンの二人組ですよ。中途半端なワルって、こんな感じだよねって奴ら。若いゆえの愚さを余すところなく発揮してくれてカワイイ。

彼らと映画監督のやり取りが笑っちゃうんだよな~。こんな奴らと付き合っちゃダメなんだよ、ああもう、やっぱり… 予想通り無茶苦茶になっていく。でもこの映画業界や役者のリアルを垣間見れて、ニヤニヤが止まりませんでした。

また本作ではダニーのお母さんマデリーンが大活躍。彼女も悪党ではあるんですが、苦労人で経験豊富。いつも筋が通った判断がクールだし、母性あふれる優しさに惚れちゃう。ダニーとの関係性が徐々に変わっていく様子がめっちゃ癒されたなぁ、やっぱり家族は大事だよ。

そして主人公のダニーは、すっかりボスの風格で頼りになる男になっている。でもマフィアにも関わらず非情にはなり切れない奴で、人間味に溢れてるんだよね。本作の後半では、その部分が弱点となり再び自らの急所と向き合うことになるんです。それでも彼を救ったのは、やっぱり家族への想い。もはや人間でなく動物としての本能が鬼アツで痺れました。

ノワールではありながら、見たこともないエンタメ渦巻く展開だった本作。次回で本シリーズも完結とのこと、最後までしっかりダニーの人生を楽しみたいと思います!

■ぜっさん推しポイント
本作ではもう一人重要な役回りの女性がいるんですが、めっちゃ魅力的に描かれてるんですよね。世界中の幸福と不幸を丸ごと背負ったような人物で、とてもじゃないが彼女を受け止められない。

すべてを手に入れられることと、それを受け入れられるってこととは別の話なんだよなぁ… 辛い。自分に素直に生きることの難しさを痛感させられました。

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2024年11月16日

Posted by ブクログ

ダニー・ライアンシリーズ2作目。1作目はロードアイランド、今回は90年代のハリウッドはじめ西海岸に舞台が移る。めちゃくちゃ面白いです、1作目を超えてます。もうすぐ3作目、ウィンズロウ最後の作品が発売されるはず。楽しみです。

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2024年08月26日

Posted by ブクログ

 ウィンズロウが最後の作品として世界にプレゼントしてくれる三部作は第二作。第三作は執筆中とのことなので、一年に一作、書いては出版するというけっこうリアルタイムかつ歴史的作業なのかと想像する。翻訳者も出版社スタッフも綱渡りな作業だろうが、内容的にも、作家ウインズロウのラストワークとしても、あまりに重要な歴史的三部作に携わる多くの方のGood Jobに敬意を表しつつ、大切に本書を手に取る。

 旅行業をしていると本に費やす時間が実は途切れ途切れで得られにくいのだが、8月に入ってようやく連続休暇が得られたので、二日くらいで一気に読ませて頂いた本作。分厚い作品だが、『業火の市』で故郷を追われた主人公ダニー・ライアンとその一行がウエストコーストに辿り着く状況と、そこでもまた張りつめる緊張と生死を賭けた日々に瞬く間にのめり込んでしまう。

 テンポが速いせいか、ぐいぐい読み進む。とはいうものの、登場人物の多さが読みにくさに繋がるので巻頭の人物表を百万回くらいめくりなおさねばならないのは前作と同様。何せ人間関係図は、この物語にとって大変重要なものだし、それぞれの人間関係の矢印は、いつでも裏返ったり引っくり返ったりし得る信用のならないものだからだ。スリリングで緊張感いっぱいの登場人物表。

 タイトルの「陽炎」は原語では”Dreams”。ちなみに具体化するとそれはハリウッド・ドリームだ。銀幕の世界。主演女優の魅力。札びらが舞う世界。夢という名の鉱脈が眠る土地。

 売れっ子映画女優の作品撮影に燃えあがるサンディエゴ。ダニーたちが辿り着いた太平洋の岸辺にある世界。メキシコの闇カルテルやFBIの権力闘争、そしてロードアイランド州プロヴィデンスに遺してきた敗北の過去。勝者イタリアン・マフィアの追撃の恐怖。ダニーは空っぽであるかに見える。組織はばらばらに解体したかに見える。しかしダニーが持ち去ったマネー(大半は海に投棄したとは言え)への追撃網は緩まない。緊張した逃走ドラマのさなかで、ダニーたちは身を隠す。新天地カリフォルニア。

 売れっ子女優ダイアン・カーソンの描き方が独特でウィンズロウらしい。そして映画製作現場の活気も、そこに寄せられる札束の気配も、男たち・女たちの欲望も。ダニーの母親はクールでリッチで悪女だが、それでも母親であり、ダニーの守護神でもある。ダニーの腹心のアルター・ボーイズは歩く凶器みたいなもので、スリリングな存在だ。いや、すべての腹心、部下たちが同じようなものかもしれない。何しろ彼らはギャング組織。影を踏んで歩く組織なのだ。

 そしてこの三部作はギリシャ神話に基づいた物語だと言う。ウィンズロウ人生最後のチャレンジ。運命の渦に巻き込まれ錐もみ状態になったダニーの運命は未だこの作品まででは半ばまでしか語られていない。全く幸福とは別次元に転がっているかに見える主人公ダニーと彼に近づく者たちの不幸が際立つ。ダニーの彷徨の人生は、煌びやかに輝くと思うと、次の瞬間には闇に閉ざされる。血の匂い。硝煙の匂い。ドラッグの夢。命の儚さ。いつも摑みきれなかった愛。

 本作もまた読後の興奮冷めやらぬところは前作同様。本当にドラマティックなクライマックスを予感させる最終作(本シリーズだけではなく、残念ながらウィンズロウの最終作)まで一年。今日のところは終わっちゃいない。気長に待つとしよう。

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2023年08月06日

Posted by ブクログ

〈ダニー・ライアン〉3部作の2作目。抗争に負けたダニーは逃亡し、そこでFBIから取引を持ちかけられて自由を手にする。身を隠し、静かに生活していたなかで出会う1人の女性。そこからまた色々と動き出していく。今作は派手なアクションなどは少ないけれど、それでもその奥にある怒りや後悔、憎しみなどたくさんの感情が流れているのを感じることができる。ダニーの周辺がざわざわし始め、この先がどうなるのか。完結してほしくないけれど早く読みたい。

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2023年07月09日

Posted by ブクログ

ドン・ウィンズロウ『陽炎の市』ハーパーBOOKS。

『業火の市』に続く、ダニー・ライアン三部作の第2弾。

確か『業火の市』の巻末にはこの第2弾の冒頭が『虚飾の市』というタイトルで収録されていたが、『陽炎の市』というタイトルに変更されたようだ。

ドン・ウィンズロウらしいハードでストレートなギャング小説。圧倒的な面白さ。

一人の女性を巡るマフィア同士の抗争に巻き込まれたダニー・ライアンが仲間と共に自由を求め、逃亡し、家族のために全うな人生を送ろうともがき苦しむ。やっと掴んだと思った幸せな時は砂漠の陽炎の如く消えていくが、それでもダニーは諦めずに安息の時を追い求める。


プロローグ。1991年4月、カリフォルニア州アンザ・ボレゴ砂漠。仲間と共に捕まったダニー・ライアン最後のシーンが描かれる。この物語の結末はこんなに悲しいものなのか。結末は変わることはないのだろうか。

1988年12月、ロードアイランド州。アメリカ東海岸で起きたイタリア系マフィアとの血塗られた抗争に破れたアイランド系マフィアのダニー・ライアンは残された仲間と共に西へと逃亡する。

ダニーたちが持ち逃げしたヘロインを奪還しようとイタリア系マフィアとFBIが執拗に追跡し、次第に追い詰められていく。

危機を感じたダニーはラスベガスの郊外に住む母親のマデリン・マッケイに助けを求め、母親の家に身を潜める。しかし、そこに麻薬取締局の捜査官が訪れ、ダニーに取引を持ち掛ける。

その取引とはメキシコの麻薬カルテルに痛手を与えるために、彼らの隠し金を強奪する代わりにFBIの追跡を止めさせ、仲間と共に新しい人生を与えるというものだった。

仲間と共に麻薬カルテルの隠し金を強奪したダニーたちだったが……


またも巻末には来年の夏に刊行予定の三部作の最終幕『荒廃の市』からの一部抜粋が特別先行公開されている。

『荒廃の市』の内容に触れてしまうと完全なネタバレになるので触れないが、全く予想外の驚愕の展開が描かれていることだけ述べておこう。

来年の夏が楽しみだ。

定価1,440円
★★★★★

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2023年07月05日

Posted by ブクログ

シリーズ2作目。
命からがら逃げだしたダニー一派が、サバイバルから一転する。
映画「ゴッドファーザー」の内幕を描くようなハリウッドの虚々実々が描かれており、自身映画化作品があるドン・ウィンズロウだけに、ウィットとブラックユーモアが効いた文章でハリウッドが描きこまれる。
映画ファンだと、実名もどんどん出てくるので実に楽しめる。
ただ、「犬の力」などの3部作を期待すると、趣がだいぶ違って中だるみに感じるかもしれない。
鮮やかな出だしで始まり、ラストも上手くつながっていて巧みなプロットに多彩なキャラの絡み合いを楽しめる。

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2025年03月25日

Posted by ブクログ

「業火の市(CITY ON FIRE)」での抗争に敗れて西へ向かったダニー・ライアンの物語の第2弾(「陽炎の市(CITY  OF DREAMS)。西には”Dreams”があったが陽炎のように....。
映画的で(ハリウッドが舞台の1つ)、スピード感にあふれており、さすがのウインズロウ&田口俊樹の世界でした。ダニーの部下のアルターボーイズ、ネッド・イーガン、親友マック、母親マデリーン、ハリウッド女優ダイアン....。「犬の力」...シリーズのように上下巻ではないので、もう楽しみが終わってしまう...と思ってしまいました。
来夏刊行予定の「荒廃の市(CITY IN RUINS)」が待ち遠しいですが、ウインズロウのラストとなるのなら刊行はまだまだ先でも良いなあとも思います。

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2023年11月19日

Posted by ブクログ

CL 2023.8.25-2023.8.28
中盤万事うまく行き始めたダニーを信じてはいなかったけど、ラストは捻りもあり、よかった。
次作「荒廃の市」が楽しみだけど、ドン•ウィンズロウがそこで引退するのはやめてほしい。

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2023年08月28日

Posted by ブクログ

すごく読ませるし面白いけど、待ってたモノとちょっと違った。
おまけに巻末についてる次回作の冒頭は何なんだ!!
すっかり表舞台の話になっちゃうの??

いやあ、ヒリヒリしたギャング同士の戦争が読めるもんだと思ってたからね。
メキシコのカルテルがいつハリウッドに乗り込んで来るのかと思ったら全然だったな。。。
かと思ったら変なヒッピーからは一発でつながるし、こんなん笑わせる気か!

まあ3巻も出たら買うだろうけど。

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2023年08月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ロードアイランドから逃げてきたライアンたちが、カリフォルニアで人生を立て直す。
しかし、簡単にはいかない。
そこでスーパーウーマンであるダニーのママが一発逆転のお膳立てをする。

原題は “City of dreams” 。ハリウッド進出まで果たしてしまうダニーたちに、いささか出来すぎた感は否めないが、そこは一作目とは対象的なダニーを描くことによってファミリーのリーダーとしての成長を描く。

3作目はまた抗争劇に戻るのだろうか。
今作でもダニーは人を殺さない。仲間から非難を浴びようが殺さない。なるべく。
そして母は強い。ダニーの安全弁にもなっている。
この2点が崩れることによってダニーに本当の危機が迫り、ラストへ向かっていくのではないか。

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2024年05月11日

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