田口俊樹のレビュー一覧
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★5 マフィアがハリウッド映画業界に進出?! 欲望と家族愛がマシマシで描かれる犯罪小説 #陽炎の市
■あらすじ
マフィア抗争に敗れたダニーは、わずかな仲間と共にカリフォルニアに逃走する。幼いわが子を養いつつ、隠れながら暮らしダニーたちに、FBIから取引を持ち掛けられる。その後ダニーは母親との交流を経て、ハリウッド映画界にも影響力をもたらすことになり…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 もう、めちゃくちゃ! 前作からどんな展開になるんだと思いきや、エンタメ増し増しじゃないですか~
序盤はダニーの逃亡劇から、新たな謀略と犯罪が繰り広げられる。人間の闇の部分をむしろ生き生きと描写してくれるから、キャラクターの顔が目の前に見えてくるんすよね。ヒリヒリしながらワクワクしちゃう展開も相変わらず最高なの。
このままこんな展開が続くのかなーと思いきや、中盤から場面はハリウッド映画業界に。これまで生き延びるために隠れ続けていたはずのダニーが、ド派手な表舞台で大騒ぎなんです!これが面白いのなんのって。もうノワールだったことを忘れそうになりますね。
今回も素晴らしいキャラクター陣、まず推したいのはマフィア仲間のケヴィンとショーンの二人組ですよ。中途半端なワルって、こんな感じだよねって奴ら。若いゆえの愚さを余すところなく発揮してくれてカワイイ。
彼らと映画監督のやり取りが笑っちゃうんだよな~。こんな奴らと付き合っちゃダメなんだよ、ああもう、やっぱり… 予想通り無茶苦茶になっていく。でもこの映画業界や役者のリアルを垣間見れて、ニヤニヤが止まりませんでした。
また本作ではダニーのお母さんマデリーンが大活躍。彼女も悪党ではあるんですが、苦労人で経験豊富。いつも筋が通った判断がクールだし、母性あふれる優しさに惚れちゃう。ダニーとの関係性が徐々に変わっていく様子がめっちゃ癒されたなぁ、やっぱり家族は大事だよ。
そして主人公のダニーは、すっかりボスの風格で頼りになる男になっている。でもマフィアにも関わらず非情にはなり切れない奴で、人間味に溢れてるんだよね。本作の後半では、その部分が弱点となり再び自らの急所と向き合うことになるんです。それでも彼を救ったのは、やっぱり家族への想い。もはや人間でなく動物としての本能が鬼アツで痺れました。
ノワールではありながら、見たこともないエンタメ渦巻く展開だった本作。次回で本シリーズも完結とのこと、最後までしっかりダニーの人生を楽しみたいと思います!
■ぜっさん推しポイント
本作ではもう一人重要な役回りの女性がいるんですが、めっちゃ魅力的に描かれてるんですよね。世界中の幸福と不幸を丸ごと背負ったような人物で、とてもじゃないが彼女を受け止められない。
すべてを手に入れられることと、それを受け入れられるってこととは別の話なんだよなぁ… 辛い。自分に素直に生きることの難しさを痛感させられました。 -
Posted by ブクログ
★5 生き残るのは誰か… 血肉にまみれた欲望が膨れ上がる、圧巻のマフィア抗争劇! #業火の市
■あらすじ
1980年代のアメリカ、ダニーはアイルランド系マフィアに所属し、日々シノギをこなしながら暮らしていた。先代からイタリア系マフィアとは縄張りを分かちながら仲良く共存をしていたが、ある日トラブルに見舞われる。
その諍いをきっかけに二つのマフィアは抗争に発展、ダニーはいかに生き残っていくのか…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 おもろい!
冒頭のゆるくエロいバカンスシーンから始まるものの、その後とんでもないことになる犯罪小説。アイルランド系マフィアとイタリア系マフィアの抗争劇です。
誰しも一度くらいは見たり聞いたりしたことがある『ゴッドファーザー』『グッドフェローズ』『レザボア・ドッグス』なんかを思い出しますね。
ドストレートの喧嘩劇場で、次々とやり合い、化かし合い、裏切りが続く。どこまでも血肉にまみれた欲望が膨れ上がった結果、こんなにも恐ろしい泥沼になるのかと思うと怖すぎてビビる。
物語自体はもう何もいうことがないくらいの最高なんですが、私が大好きなのはキャラクターの色合いなんですよ。
まずなんといっても主人公のダニーが最高。幼い頃からの恩義がありつつも、ナンバー3,4といった立ち位置でいつも苦い汁を吸わされている。とは言え愛する仲間や妻にも囲まれ、平穏で幸せに暮らしてはいるんです。
いつも複雑な感情に苛まれる彼が、愛おしくて愛おしくて仕方がない。このえげつない抗争の中、どんどんリーダーらしく成長していくところが読みどころで、これが不謹慎ながらカッコイイんだよね。
イチ推しキャラはリアムですね、クズofクズ。こういう奴がいると、犯罪小説として引き締まります。こんな奴とは関わらないのが正解なんだろうけど、もし自分がボスや仲間だったらどうすりゃよかったんだろうか。むしろ人生勉強になるわ。
他にもいっぱい強烈キャラが登場しますが、胸に刺さるのは女性たちですね。様々な背景を経て、女として、母として、マフィアの世界で懸命に生きている。
ひとりひとりの人生劇場、特段間違ったことはしてないんだけどな… なんでこんなにも幸せを継続するのって難しいんでしょうか。
そして物語のクライマックスは超ドエンタメな展開です。これまでの悪逆なマフィア抗争だったはずが、人間同士の争いとなり、最終的には生き物の食い散らかしになっていく。この生命力とプライドのうねりが凄まじさは圧巻でしたね。
次作以降も気になる本シリーズ、楽しみに読みたいと思います!
■ぜっさん推しポイント
犯罪小説ではあるんですが、これは完全に人間ドラマです。ほんと絶対に近寄りたくない奴らなんですが、読んでると何故かイイ奴にも思えてくるんすよね… もっともっと人間の本質を知りたくなる作品でした。 -
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ついに三部作ラスト!
アダン不在、さすがに面白い?大丈夫?と思っていたけど杞憂でした。すごいボリュームだけど、飽きる暇なくぐいぐい読んだ。
『犬の力』で好きだったあの2人が再びご登場したのもテンション上がった!こんな嬉しいサプライズがあるとはね!
でもこの作品で起きる事件が事実に基づいていると知ると、手放しに面白い!と言っていいのか、後ろめたい気分にもなる。43人もの学生がバスで拉致、殺害された事件とか、残酷すぎて信じられないほど。
読書中、メキシコ市長が就任直後に首を切断されて車の上に置かれた事件もちょうどニュースで取り上げられ、小説と現実がオーバーラップして、逆に現実味を感じられなかった。この小説で描かれることは実際に起こっているんだと、肝に銘じて読み進めていかなければならない。 -
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一冊ずつ三年。書き継がれた三部作の遂に終わりを告げる本書。そしてドン・ウィンズロウが作家人生の終わりを告げてから、世に放たれた最後の作品である本書。何と言うべきか。堂々の作風で最後の大掛かりな仕掛けを完成してみせた観のあるビッグ・ストーリーに向き合って読み始めた本書。いつもの疾走感のある文体。簡潔、かつ重厚、読みやすいページターナー。さらに、衝撃的で突然すぎるアクション。やっぱりウィンズロウは個性の塊であり、才能の集積だ。興奮に包まれる一分一分という貴重で忘れ難い読書の時間。
約30年ほど昔、ニール・ケアリーというものすごく平凡なのにオリジナリティの横溢した主人公を引っ提げてスタートしたウィンズロウの作家人生は、現在、こんなにも巨きな物語を紡ぎ、そして鮮やかに閉じてゆく。その後、このウィンズロウという人はどう生きてゆくのだろうか? それは本シリーズの主人公ダニー・ライアンの終わりの章を読むと、なぜか作者の今後のイメージと重なりそうだ。それは様々な歓びも哀しみも、すべてを引き受けて人生を疾駆し、そして終焉に向かい合う。人の人生は、すべて重く、大きなドラマであるからだ。
読者ひとりひとりにも勿論、それぞれのドラマがあり、それらは大きな波のうねりのようにも見えれば、打ち上げられたビーチの砂粒のように、様々な形と色をした微細な破片たちの膨大な集積のようにも見えるかもしれない。あるいは、陽炎の如く、流星の如く、一瞬の儚さであるのかもしれない。一人の人間の誕生と成長と成熟と、そして死。それらは、スケールにこそ違いがあれ、いずれも同じような経路を辿るものだ。ましてや死んでゆくときに、生きた時間のスケールの違いが果たして問題になるだろうか?
命と無。この広大過ぎ、わかりにくい永遠の命題の中で、ウィンズロウという作者も、ダニー・ライアンという本三部作の主人公も、ともかく目の前の人生を生きざるを得ず、最後には死なざるを得ない。そんな命の重要さと儚さとつまらなさとおかしさと、様々な生を展開して、巨大な街を語り、世界と時とを語ってみせる、この作家の最終作が本書なのだと、意識しながら読んだ本作。
序論が長すぎたが、頂戴な本三部作の構成を振り返ってみよう。ロードアイランドで形成されたアイリッシュ・マフィアの組織の戦いと成熟?ぶりが一部、イタリアンマフィアとの間で激化する抗争と、敗走を描く二部。ウエストコーストに辿り着いた主人公たちが、ウエストコーストに身を隠し合法的商売に鞍替えしてラスベガスで再生を果たしつつある主人公とその後の経済抗争を描く本書第三部。
全体を振り返ると、アイルランド移民たちとイタリアン・マフィアがアメリカ史で果たした舞台裏的役割を、壮大な支配絵図を基に、数々の個性的なキャラクターを配置して、経済支配に誰が到達するのかを描いた暗黒史と言えるのが本三部作なのである。三作目の本書では誰もが若者から卒業し、そして成熟し、合法的な経済マフィアとして、ベガスの支配闘争に浸かっている構図である。最早、若きマフィアたちの殺し合いで片が付く世界ではなく、経済支配と組織連携によるマウントの取り合いといった様相を呈している。もはや暴力や闘争ではなく、合法的な経済闘争である。複雑に絡み合うこうした人間絵図が、本三部作では簡潔でスピーディな語り口で描かれてゆく。
マフィアという過去を隠し去りながらアイリッシュもイタリアンも、ベガスを舞台に金を積み上げて、これでもかというほどの小競り合いを繰り広げる。過去を引きずってきた戦士たちが金のなる大都会を舞台に、互いにしのぎを削るなか、闇から闇へと蠢き、やがて葬り去られゆく男や女の数は大変なものなのであり、一部と二部で登場してきた古い戦士たちは暗闇のなかで次々と命を捨ててゆく。後半部分、彼ら多くの馴染みのキャラクターが破滅してゆくシーン。その展開のスピードとスケール。人間の経済闘争が生む犠牲者や家族の不幸が何ともやるせない。アメリカ暗黒史の傑作がまた一つここに誕生したのだ。
巨大な国家の経済が生む大きなうねりを、個々のキャラクターの行動で描き切ることで、作者が展開してみせた移民闘争の地獄絵図。それを乗り越えられ生き延びることのできた者は少なく、そのために失われた命は計り知れない。ギリシア悲劇を底本にしたという、新大陸アメリカが完成(?)するまでの人間悲喜劇。それを個人という人間の、活きた目線で描いた大宗教画のような三部作がここに終わりを告げる。ウィンズロウは最後のペンを置く。半世紀近くに愛読してきたこの作家。その全作品に触れられた幸せに、ただただ感謝したい。 -
Posted by ブクログ
戦前のニューヨーク・ブロードウェイのヤクザ達を描いた軽妙な短編集。一人称の語り手が一体何者かわからないが、ギャンブル好きや酒好きの仲間、密売や禁酒時代の密造酒?を出すバーの仲間達ととにかくつるんでいるという内容である。映画さながらの悪事(気に入らないと鉄砲をぶっ放して逃げるとか、酒の密売で設計を立てている人がやたら多いとか。でもってアパートでは豪奢なパーティーが繰り広げられたり)の連続だが、きっと昔のニューヨークはこんな感じで混沌としていたんだろうなあ。
原作は現在形の語り口だそう。訳は「〜だ、だけども」という倒置が頻繁でちょっと疲れるが、でも内容が面白く引き込まれるのでそのうち気にならずに読めるようになる。原文でも読んでみたいかも。 -
Posted by ブクログ
あぁ、読みだせばあっという間だったな。
分厚さを感じさせないのは流石のドン・ウィンズロウと言ったところか。
70歳か。パスコよりまだ若いんじゃない??笑
アルター・ボーイズの友情、美しかったなぁ。
自分も友情に対してはかくあるべしと思ったよね。
生き死にの話はともかく、似たシチュエーションはありうるよ。
いやぁ、やはり真骨頂はリカタが乗り込んできてからだよね。
そうそう、これを待っていたと。
ドン・ウィンズロウの小説はヒリヒリしながら読みたいんですよ。笑
さっきまで笑ってた人がページめくったら死ぬ可能性あるって頭のどこかで準備しながら読みたいし、この人殺さないでって人が殺されていくところを、読みたいんですよ。笑
大満足でございました。
ロードアイランド、行ってみたいねぇ。
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Posted by ブクログ
ドン・ウィンズロウ『終の市』ハーパーBOOKS。
ダニー・ライアンを主人公にしたギャング小説、三部作の完結篇。
またまた、しばらく本棚で寝かせていた。最近は本を読む力が衰えたのか、読み易い国内作品ばかり先に読む悪い癖が付いてしまった。
前作『陽炎の市』の巻末に収録されていた本作の一部抜粋は、タイトルが『荒廃の市』だったのだが、またも『終の市』にタイトル変更されたようだ。気になるのは、帯に踊る『犯罪小説の王ドン・ウィンズロウ、最後の大作!』の文言。本当だとしたら、余りにも悲しい。
やはりウィンズロウの小説は面白い。ダニー・ライアンの激動の人生をその結末までをじっくり描いてくれた。そういう意味では、この最終巻は単なるギャング小説ではなく、人生訓めいたものまで感じさせる深い物語であったと言えよう。
東海岸で一人の女性を巡るマフィア同士の抗争に巻き込まれたダニー・ライアンが仲間と共に自由を求め、逃亡する。仲間たちと麻薬カルテルから隠し金を強奪したダニーはラスヴェガスに王国を築き、カジノホテル業界の陰の大物にのし上がる。
しかし、ダニーの飽くなき欲望から取った強引な手段が、商売敵のホテル王であるヴァーン・ワインガードとの関係に禍根を刻み、平穏な生活は終わりを告げる。FBIとマフィアにつけ狙われ、仲間を惨殺されたダニーは、再び血の抗争に身を投じていく。
果たして、ダニー・ライアンに安息の時は訪れるのか……
本体価格1,680円
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Posted by ブクログ
【ポアロ】
ポアロ最終話。もうすごかった…。
こんなに予想を超えてくるとは…。
言葉にならない。
この本を読み終わって完全にアガサ・クリスティにはまってしまった。
もう本当に読んで良かった!
これから読む人にもぜひ情報ゼロで読んで欲しい。だから何を書いてもネタバレになりそうで怖い。
読み始めから最終話の雰囲気が漂っていて、今までと全然違う。どうして小説なのにこんな不穏な雰囲気が出せるのか。Audibleのナーレターさんも良かった。
100年もの年月を超えて国も違うのに、こんな気持ちにさせてくれるなんて、やっぱりさすが世界のミステリー女王だ。
アガサ・クリスティのことをもっと知りたくなった。一体どんな人なのか、アガサ関連の本も読みたい。
まだまだ未読のポアロシリーズがたくさんあるので嬉しい。はまってしまったのでAudibleのライブラリーが全部ポアロになってしまった(^^)
次は『五匹の子豚』を読もう。楽しみ。
Audibleにて。
★10 -
Posted by ブクログ
『森から来た少年』は、奇想天外なアイディアで生まれた、いかにもコーベンらしい奇作であった。森に棲んでいた非文明的少年ワイルドは、40代にさしかかっている。彼は超奇妙な私立探偵存在として現代文明の中に沸き起こる現代的事件を解決に導いてゆく。解決できていないのが彼の正体。彼はなぜ独り森で育つことになったのかという謎。
またワイルドとダブル主人公的に活躍するのが、何作ものシリーズや単発作をまたいで登場する女性弁護士ヘスター・クリムスティーンである。そう。このシリーズは続編である本書と併せてワイルドの出生の秘密に迫るのが本書なのである。なので『森の中の少年』を読んだ人はこれを読まなくては完結しない。そう言われて読まない人がいるだろうか? 一方でヘクターの家族の歴史が重要な分岐点を迎える物語でもある。ヘクターおばちゃんのファンであってこれを読まないなんていう読者が果たしているだろうか?
さて本書。主人公ワイルドがDNA鑑定を通じて近親者を探していたところ、DNAが50%マッチした人物がいることを知るが、特定には至らない。一方、ワイルドにメールを送ってきていた人物が母方の血縁者と知り、こちらでもDNAのマッチ確立を探るが、その人物がTV番組で名が知られた挙句、ネット内で追われ失踪中とワイルドは知る。ワイルドの追う人物がリアリティ番組の参加者がネット世界で怒りや攻撃の的となり炎上したと言う。そんななか、ワイルドは警察官らの悪辣な暴力に曝され瀕死の状況に追い込まれる。彼をも巻き込む闇ネットの存在は何か? スリルと謎の深さが半端ではなく、ジェットコースターなみのストーリー展開と、錯綜の複雑さが混乱とミスリードを呼ぶ。
読み進むにつれもつれた人間関係がほどけてゆくのだが、真偽や正邪の判断もつきにくい過去と現在の状況がネット情報とリアルの隔たりの狭間に溢れ、ワイルドとともに読者も混乱に突き落とされてゆく。何よりも見た目通りではない人物の多さと、何層もの虚実を剥いてゆくストーリーの複雑さが混乱を呼ぶ。
一気読みに近いが、登場人物が多く複雑に互いが絡み合っていることもあってキャラクター表での確認作業が読書中とても大変であった。リアルとバーチャルの多次元的ストーリー進行もあまりに現代的なので、コーベンの作品中最も難読度の高い作品であるように思う。森で育ったこどもが大人になってこれほどの多次元バーチャル化した世界に対応してゆく才能とその知性には驚かされるが、ワイルドという個性の持つたっぷりと溢れかえるヒューマニティが作品の殺伐さを根底で救っている物語であるとも言える。
いずれにせよ、設定も進行も奇才ハーラン・コーベンならでは個性に満ちている。語り口は平易で、場面転換も豊かで相変わらずのリズミカルなミステリーである。魅力的なヒーロー&ヒロインの悲劇と喜劇の多重構造の謎で構築されたこの世界。それらをしっかりと味わいながら是非とも丁寧に読んで頂きたい力作である。 -
Posted by ブクログ
映画と合わせて面白い!!
ノベライズというより完全版だ߹ㅁ߹)♡
まず、映画を観ました。
シャロン・テート殺人事件に関する映画だと思っていたので、事前にチャールズ・マンソンファミリーが関わる事件の概要を軽くおさらいしてから鑑賞しました。
いつものタランティーノ独特のタッチで描かれる世界観が大好きで、うんちくと長セリフと音楽を堪能しました。
——が、シャロン・テート事件は、映画のほんの片鱗にすぎず、この映画は主人公リック・ダルトンの為の映画です。
この架空のキャラクター(リック・ダルトン)は年齢を重ね、俳優としての岐路に立っていた。
バカにしていたイタリア西部劇(マカロニ・ウエスタン)への出演の話に落ち込むリック。
専属スタントマンの相棒クリフ・ブースは、元軍人。
妻殺しの噂を持つ魅力的で強いブロンドの男。
隣人のシャロン・テートは、夫のロマン・ポランスキーと共に、リックの隣に越してくる。
時は1969年。
ベトナム戦争真っ只中、ヒッピーがごろつくハリウッドで起きた話である。
小説は、映画と結末が違います。
映画の見せ場は、なんと言ってもラストのエグい格闘シーン。
小説にはありません。
ひとことで言うと、タランティーノのこだわりが詰まった小説です。
映画はリック、クリフ、シャロンの様子が同じくらいの配分で描かれていますが、小説は断然リック愛が濃厚。
『対決ランサー牧場』という映画でリックが演じるケイレブ・デカトゥーが「つけ髭」を付ける演出がどんなに深い意味をもち、影響を及ぼすのか、映画の中の些細な一面と思っていた小さな拘りをタランティーノ独特の深掘りトークでお腹いっぱいになります。
なんと言っても共演の可愛い女の子役、トゥルーディとのやり取りが重要で、彼女の存在でリックが自信をつけていく様子が、たまらない。
ここがメインの映画だと思う。
映画と違い、クリフのクソ男っぷりな描写が多く、愛犬ブランディとの出会いや、猟犬としての実績などが詳細に描かれていて、小説を読んだ後映画を見直しましたが、最初と印象が全然違いました。
マンソンら、ヒッピー達のからみで、この後どんな事件が起こるか……という意味ありげな様子も、好きな流れでした。
この時代の映画や俳優の名前がバンバン出てきて、観たくなります。
『対決ランサー牧場』ももちろんだが、ロマン・ポランスキーの映画『ローズマリーの赤ちゃん』は観たことがないので、是非観たい。
場面に出てきた鑑賞の仕方を確認したい。(寝室の中で電話をしている老婦人をローズマリーがちらっと見るシーン。ロマンが指示したカメラ角度だと、カスタベット婦人の全身は映らず、ドア枠の左部分に体が隠れてしまった。シャロンは、何故ロマンが角度を変えたのかわからない。上映の際理由が判明するのだが、シャロンがロマンの事を天才だと再確認した瞬間だった。)
タランティーノの映画への愛が伝わる一冊でした。
小説を読んでいる最中も世界観に浸り、幸せな読み心地でした。映画を流しっぱなしにしておきたい。大好きです!!(〃´-`〃)