【感想・ネタバレ】ザ・ボーダー 下のレビュー

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ネタバレ

主人公のケラー(麻薬取締局局長)がメキシコの麻薬撲滅のためにあらゆる手段を尽くす。ケラー自身がアダン・バレーラ(最大の麻薬カルテルの首領)殺害を告白したことで、最愛の妻マリーは離れていった。孤立無援の男は孤独を噛み締めながら、40年にも及んだ苦闘を振り返り、自問する。自分の周りでは何人も死んでいった。カルテルに関与することで殺害され、一般住民は薬物パンデミックで死亡する。これまでの麻薬対策によって何が変わったか?何も変わっていない。世界中の人々を苦しめる麻薬問題に大いなる一石を投じた本書の価値は高い。⑤↑

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2022年07月05日

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15年かけてこの3部作を読み終えた。
終盤の公聴会での長い証言は40年以上に及ぶ麻薬戦争の歴史だ。
最高傑作と言っていい。
連続ドラマになったら必ず見たい。

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2021年11月05日

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犬の力から始まり「息子たち」世代の話になる麻薬戦争、三部作最後。
このシリーズを読むとメキシコについて、麻薬戦争の現状について詳しく調べたくなる。
少し調べただけでもこの小説に書かれていることは決して物語の中だけのことではないとわかる。
ラストの見解についてはびっくり。

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2020年01月11日

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 小説に圧倒されるというのはどういうことを言うのだろう。かつてドストエフスキーやトルストイの大長編作品群にぼくは確実に圧倒された。加賀乙彦の『宣告』に圧倒された。五味川純平の『戦争と人間』全9巻に圧倒された。船戸与一の『猛き箱舟』に、高村薫の『マークスの山』に、ジェイムズ・エルロイのLA三部作『ブラックダリア』『LAコンフィデンシャル』『ホワイトジャズ』に圧倒された。劇画でいえば白戸三平の『カムイ伝』に圧倒された。手塚治虫の『火の鳥』に圧倒された。そういう圧倒的なパワーに打ち倒されるような感覚を失って久しい。敢えて言えばアンデシュ・ルースルンドの『熊と踊れ』二部作がその類いだったろうか。

 読者を圧倒する小説とは、壮大なスケール感を持つ骨太な物語でなければならない。阿修羅の如き悪と、神のごとき善とを内包する人間たちの運命のぶつかり合う軋みが聴こえるようなドラマでなければならない。壮大な構想で読者を牽引してくれる力がなければならない。それらすべての困難な条件をクリアして余りある作品が、ウィンズロウのライフワークと言ってもよい巨作が、実は本シリーズであり、完結作である本書だ。

 シリーズ第一作『犬の力』が<このミス一位>、第二作『ザ・カルテル』が<このミス二位>(ちなみにこの年は『熊と踊れ』が一位だった)、そして第三作であり完結編である本書がこの夏登場となった。圧倒と言うしかない分厚さと重さと物語性を引っ提げて。世の読書子が心の底から待ち望んでいたような小説として。

 メキシコ麻薬戦争をめぐる現代史を学ぶ機会はなかなかないだろう。このシリーズがなければ闇に葬られてたかもしれない暗黒の現実。コロンビア産の麻薬がメキシコを経由してアメリカ国境を渡るという単純な構図を見ると、生産利益、運搬利益、販売利益を目的とする反社会的な受益団体の存在が見えてくるはず。メキシコは運搬と販売を司る仲介利益に群がる組織間の戦場と化してしまう。一般人やジャーナリストの犠牲者を多く出した40年という長い暗黒史にメスを入れたのが、実はこのシリーズなのである。

 麻薬捜査官のアート・ケラー、麻薬王アダン・バレーラ。二人の対立構図を描いた大河小説とも言える前二作を受けて、本書では第二世代の組織による新たな暗闘が幕を開ける。『ザ・カルテル』ではメキシコ麻薬戦争で実際に犠牲者となったジャーナリストに作品は捧げられていたが、本書では麻薬カルテルによって葬られたバス一台分の無辜の学生たちの実名が挙げられ、作品は彼らに捧げられている。

 例えば2014年のケラーの嘆き。「メキシコではバスに乗った四十九人の学生が亡くなった。アメリカでは二万八千六百人がクスリで亡くなった。誰ひとり復活しない。おれにはやるべき仕事がやれていない」
 「二〇〇〇年から二〇〇六年までは、とオブライエンはケラーに説明する。ヘロインの過剰摂取による死亡者数は横ばいで、一年に約二千人だった。二〇〇七年から二〇一〇年までは、約三千人に増加した。それから急激に増え始め、二〇十一年には四千人、二〇一二年には六千人、二〇一三年には八千人になった。」
 「二〇〇四年から現在までに、イラクとアフガニスタンで失ったわが国の兵士の総数は七千二百二十二人だ」
 「同じ期間に、十万人以上のメキシコ人が麻薬戦争で殺され、二万二千人が行方不明になっています。ちなみにこれはひかえめな数字です」

 この数字の規模でシリーズは進んできたのだ。そしてケラーが取り組んできた長い麻薬との闘いの人生でもある。本書はその総括ともなる大作で、何と上下巻併せて千五百ページを軽く超える重量級のクライム小説である。凄い厚みと重みだが、それを読ませてしまう推進力こそが、ドン・ウィンズロウという作家の持ち味である。

 それぞれの章に登場する複数主人公が良い。潜入捜査官として苦闘するボビー・シレロ。ビリー・ザ・キッドの異名を持つ殺し屋ショーン・カラン。グアテマラからアメリカへの国境越えを図る少年ニコと少女フロルの運命。そしてメキシコのファミリーたちのそれぞれの狂気の個性。またも犠牲になるジャーナリストの悲惨。前作までの覇者と死者とその子供たち。刑期を終えて再登場する古き麻薬王たち。

 何よりも時代は変わり、ドナルド・トランプを思わせる新手の大統領がアメリカと現代とを掻き回す。麻薬戦争はメキシコからアメリカに移る。さらに過激に残酷になり地下に潜ってゆく薬物戦争に対峙するケラーの運命。

 多くの人間の運命を乗せた重機関車のように物語は疾走する。ケラーのラストの法廷での証言が彼の辿った四十年を振り返る。まさに現代の『戦争と平和』と言える本シリーズ。できれば一作目『犬の力』から辿って頂きたい。そして本作の持つ圧倒的な力に、是非とも魂まで揺さぶられて頂きたい。

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2019年08月08日

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『犬の力』、『ザ・カルテル』の続編。前2作と比べて激しい戦闘シーンが少なめの上巻。それでも駆け引きや計画を練るところなんかは緊張感がある。麻薬戦争の終わりが見えないアート・ケラーの日々。現場に戻りカルテルを潰そうとする計画。今作も群像劇でたくさんの人たちのことが語られる。それぞれの思惑、欲がよりわかる。静かななかにも張り詰めたものがあり徐々に膨れ上がっていく。そして下巻に入り物語は加速していく。麻薬を通してアメリカの暗部がこれでもかと描かれ権力のために麻薬を利用し金を得ようとする。ケラー対アメリカのような構図。一人の人間が麻薬に溺れていくさま、悪に染まっていくさまには絶望を感じる。ラスト近くにあるケラーの語りは著者の声のようにも思えトランプ大統領への批判とアメリカへの想いが強く込められている。終わりの見えない麻薬戦争と今作で完結したケラーの物語。残酷な暴力に支配されたなかにある未来を見据える目があったことが救いになっている。本当に面白い作品だし圧倒されっぱなしの3部作でした。

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2019年08月01日

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 著者が20年をかけて表現した世界は、暴力に満ちていた。「犬の力」、「ザ・カルテル」では麻薬供給元のメキシコの情勢を、最終章の「ザ・ボーダー」では、顧客となるアメリカの情勢が描かれている。

 密売人や中毒者も描かれているが、その背景に筆は至り、固定化された階級社会であったり、麻薬をしのぎとして利用する公職者も描かれている。トランプ前大統領がモデルの人物も登場する。

 主人公の公聴会での証言をクライマックスに物語は完結する。読み応え十分、現実の一つを見せつけられたシリーズでした

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2021年10月17日

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終わった。膨大な3部作。ここに書かれていたのはメキシコの麻薬の歴史であり、アメリカの麻薬の歴史でもある。

アメリカが買い続ける限り、メキシコのマフィアが儲かる。

取締を強化すれば、価格が高騰して結局マフィアが儲かる。
儲かるからマフィアはもっと儲けようとする。
効率良く運べるように、もっと効き目の強い常習性の高い製品を開発する。
設けは膨大でマフィアの規模は大きくなる。
また、取締を強化する。
ずっとそれの繰り返し。いたちごっこ。

善と悪のボーダー、アメリカとメキシコのボーダー、主人公ケラーはそのボーダーのどちら側にも存在することで物語はついに完結する。


この上下巻で、トリステーサの虐殺、グアテマラの貧困から抜け出すためのメキシコを通り越してアメリカへの密入国。国をまたいでのギャングの暗躍跋扈。
などなどを知ることになる。

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2021年07月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ケラーの戦争が終わった。

最後は合衆国大統領まで敵に回し、孤独になり、そして独白して終わる。

良い小説を読むと、読後も予熱みたいなものが続くが、読み終わって一週間以上経つというのに、その熱が冷めない。

正義とは何か?
常にその問いを突きつけられているような気がしてならない。

ケラーのように自らの正義を貫き通すことができるのか。
それとも生きるため、正義に目をつぶるのか。
人は人の弱みにつけ込み、ビジネスは弱い人を飲み込んでいく。
現実はケラーのようには生きられない。
命が大事だし、生きていくことに精一杯だからだ。

だからケラーの生き方が物語になる。

ラスト、ケラーに安息の地を用意したのは、作者のささやかなプレゼントのように思えた。

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2020年02月11日

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麻薬戦争に絡む群像劇がくりひろげられ、これはあとこれくらいで収集するのだろうか?とおもいますが、見事に終わっています。
ドラマ化の話しかあるようなので、楽しみです、

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2020年01月16日

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まぁ、一応、“正義は勝った”感じにはなりますが、スカッとスッキリという感じでも無いですねぇ。最終的に、アート・ケラーは、自爆したわけでもありますから。

劇中に出てくる、大統領がなんとも・・・。かの大統領にも、様々な疑惑があるので、この作品で描かれている事も、途中まで「マジか・・・」と思っていました。モチーフ的には、ロシア疑惑だったみたいですが、これも無い事でも無いかな。

『ザ・ボーダー』と言うタイトルですが、色んな意味がありますね。文字通りのボーダーであり、アート・ケラーのやっている事だったり、彼の立っている立場であったり。

上巻は中々読みにくかったのですが、下巻に入ると面白くて一気に読み進んでしまいました。

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2019年12月23日

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『犬の力』は麻薬カルテルが第一世代から第二世代に引き継がれるまで。『ザ・カルテル』はその後日談で、前作のような二項対立ではなく、闘争劇を掘り下げる。そして完結編となる本作品は、第三世代が主役となる話ではあるが、領土の奪い合いに終始するわけではなく、第一世代と第三世代の対立の構図が重要な意味を持つ。そこに闘いを挑むケラーはついにDEA長官となり、その権力をフルに発揮し、自己否定ともとれる大胆な作戦でアメリカ側からカルテルを追いつめていく。

ストーリーは、メキシコ側とアメリカ側に分かれ、場面展開を繰り返しながら並走していく。ケラーが長官になったことで、政治的色合いの濃い完結編となったが、熾烈な跡目争いとなるメキシコパートの熱量は流石と言うべきか。また、前作以上に多くの人物が登場し、ケラーと犯罪組織の闘いの合間に、麻薬戦争の犠牲となったジャンキーや少年ギャングのドラマが描かれるのが印象的でもある。​

濃密で重厚で壮大な物語には間違いないのだが、この完結編は作者の主張がやや強すぎた感もある。ケラーがウィンズロウのスポークスマンのように見えるシーンも少なからずあり、そこが余計でもあり残念でもあった。読後、いろいろと考えさせられた。怒りと虚しさの長い長い物語──ウィンズロウ、ありがとう。

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2019年09月15日

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