あらすじ
『犬の力』『ザ・カルテル』
40年に及ぶ血と暴力の連鎖が行き着く先は――!?
クライムサーガの金字塔、ついに完結!
やられた、それも完膚なきまで。これ以上、熱く訴えかけてくるエンタテイメントがあっただろうか。
――スティーヴン・キング
歴史に残るクライムフィクション。
――BOOKLIST
メキシコでは再び恐怖が街を支配していた。熾烈を極める抗争、凄惨さを競ってSNSで拡散する虐殺映像。終わりなき血と暴力の連鎖に、ケラーは米国国内からカルテルへの金の流れを断つべく、囮捜査官を潜入させる。やがて見えてきたのは、アメリカ政財界とメキシコの巨額ドラッグマネーが絡む腐敗の構造だった。大統領をも敵にまわしたケラーが最後に下す決断とは――。解説・杉江松恋
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Posted by ブクログ
麻薬戦争3部作、堂々完結!!
とんでもないページ数を読んだのだけど、面白かったのであっという間に駆け抜けたように感じた。
ていうか、ニコとフロル、ニコのいた少年拘置所の仲間たちのその後や、ノーラとカランのエピソードももっと知りたく、こんなに読んだのにちょっと消化不良なくらいだった。すごく現実に即した、時事的な要素がある小説だから、出版が急がれたのかもしれない。
『ザ・ボーダー』については、ラストの「麻薬合法化」というケラーの主張を伝えたいがために書かれた物語なのだろうと思った。
以前、各国で禁止されている食べ物や飲み物を味わうトラベルエッセイ『悪魔のピクニック』を読んだ際、作者がドラッグについて「精神を変化させる薬物は商品として扱ってはならない」「非商品化」するのがいいのではという結論に達していたのを思い出した。真剣に考えていくと、ドラッグでは儲からない社会を作っていく必要があるというところにみんなたどり着くようだ。
エンタメ的に楽しんだのはもちろん、すごく勉強になったシリーズだった。
いつかまた『犬の力』から読み直したい。
Posted by ブクログ
主人公のケラー(麻薬取締局局長)がメキシコの麻薬撲滅のためにあらゆる手段を尽くす。ケラー自身がアダン・バレーラ(最大の麻薬カルテルの首領)殺害を告白したことで、最愛の妻マリーは離れていった。孤立無援の男は孤独を噛み締めながら、40年にも及んだ苦闘を振り返り、自問する。自分の周りでは何人も死んでいった。カルテルに関与することで殺害され、一般住民は薬物パンデミックで死亡する。これまでの麻薬対策によって何が変わったか?何も変わっていない。世界中の人々を苦しめる麻薬問題に大いなる一石を投じた本書の価値は高い。⑤↑
Posted by ブクログ
ケラーの戦争が終わった。
最後は合衆国大統領まで敵に回し、孤独になり、そして独白して終わる。
良い小説を読むと、読後も予熱みたいなものが続くが、読み終わって一週間以上経つというのに、その熱が冷めない。
正義とは何か?
常にその問いを突きつけられているような気がしてならない。
ケラーのように自らの正義を貫き通すことができるのか。
それとも生きるため、正義に目をつぶるのか。
人は人の弱みにつけ込み、ビジネスは弱い人を飲み込んでいく。
現実はケラーのようには生きられない。
命が大事だし、生きていくことに精一杯だからだ。
だからケラーの生き方が物語になる。
ラスト、ケラーに安息の地を用意したのは、作者のささやかなプレゼントのように思えた。