【感想・ネタバレ】こうして世界は誤解する――ジャーナリズムの現場で私が考えたことのレビュー

あらすじ

――「BBC」「CNN」「ニューヨークタイムズ」からは見えない「リアル」――
911、イラク戦争、そしてアラブの春……
オランダで「最も影響力のある国際ジャーナリスト40人」に選ばれた著者が
中東特派員の5年間で考えた、今を生きる人のための「メディアリテラシー」

オランダで話題騒然となったベストセラーがついに邦訳!

1998-2003年のあいだ、私は「報道特派員」として中東に滞在した。
スーダンの紛争、9・11テロとその後につづくイラク戦争、
長期独裁政権が続くエジプトやシリア、そして永遠に思われる泥沼状態のエルサレム。

世界中から"注目"を浴びる最前線にいながら、月日とともに
実感したのは「自分が真実を伝えていない」ということだった。
国際的な西欧のメディアはいつも同じ情報源から得たネタを流す。
特派員の私は本部が用意した原稿を読むためにカメラの前に立つ。
視聴者の「見たいもの=ステレオタイプ」にそぐわない記事は却下され、
そして反対意見を取材しようにも、独裁政権下では誰もが口を閉ざし、嘘をつく。

しかし、取材をうけることのない一般の人々は、いつも西欧のことを敵視していたり、
あるいは紛争や弾圧の恐怖におびえたりする人ばかりではない。
私たちと同じような楽しみや悩みを持ち、ジョークを言い合い、
多種多様な生活をおこない、そして誰にも語れない物語を持っている。
私たちが触れる情報は、いったいどこまでが真実なのか?
報道をするとは、その役割とは、どういうことなのか?
2012/1/19~1/21著者ヨリス・ライエンダイク氏が来日!私たちに求められる「メディアリテラシー」とは何かを語る!

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Posted by ブクログ

"中東、アフリカにある独裁国家に住む肌感覚やイスラエルとパレスチナの日常を知ることができる。
1998年から2003年にかけてオランダからの特派員としてエジプト、シリア、イスラエルでジャーナリストとして過ごして記事を送り続けていた著者が、伝えきれなかった部分を補ってくれているのが本書だ。
イスラエルとパレスチナの関係も見方ががらりと変わる。見る視点が変わることで、いろんな気づきを得ることができる。

本書を読んで、メディアからの情報を鵜呑みにすることの怖さにも気がつく。
情報を自由に閲覧できて、個人が発信できる日本にいると、独裁国家の日常は想像すらできない。

様々な視点を与えてくれた良書。"

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2018年10月21日

Posted by ブクログ

オランダ人である著者が、新聞社時代に特派員として赴いたエジプトやイスラエル、イラクの取材を通じて感じた報道の実態を明らかにしている。

報道する側やされる側、受けとる側の三者が抱える不条理が、著者の徹底した中立的な視点で語られているところが興味深い。

イスラエルやイラクでも、ボスニアのようなPR会社が暗躍していたのだろう。財政難のパレスチナは欧米諸国のメディア戦に翻弄される、儚い存在なのだろうか。
イスラエルやパレスチナでも「我々は和平を望んでいる」としながらも、「相手は我々を憎んでいる」と民衆は口を揃えて言うのだとか。僅かな解決の糸口はここにあるような気がする。しかし、独裁政権は身の安定こそが重要で、メディアは都合の良いプロパガンダのためのツールであった。

メディアの中立性が存在しない世界に生きる人は、溢れる情報を無意識的に真実であると錯覚し、誤解どころか物事の本質に全く気付かぬまま一生を終わるということだろう。

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2012年12月05日

Posted by ブクログ

中立な報道をするand知るためには条件があるが、それが忘れられているのか、気づいていないのか、条件なんてないと思っているのか。
この本はそれを教えてくれる。

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2012年09月04日

Posted by ブクログ

オモシロカッタ。

ジャーナリストって最前線にいるから、
その他大勢には、
どんなことが書かれてても『事実』と思って読んじゃうのだ。

これ読むと、
リテラシィわかんねぇよ、ってなる。

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2012年05月30日

Posted by ブクログ

「真実ってなんだ?」――本書を読み終わってまず思ったことだ。「真実」を報道するのがメディアの仕事だと思ってたから、その実態を知って驚いたし悲しくもなった。ある人が「真実を伝えなければ」と思っても、自分一人の力ではどうにもできないことがある。そうゆう人がいるかもしれないのに、できない。そうゆう人たちのことを思うと、やるせなさを感じる。

本書で初めて知ったわけではないけれども、一つの物事に対して様々な角度からの見方があることは忘れてはならないことだろう。そうでないと、偏った見方しかできなくなるし、それでは物事の全体を理解することができない。ある意味「現実」を見ていないことになるからだ。

とまあ、内容については全然触れませんけど、メディアリテラシーに興味のある方(もちろんそうでない方も)はぜひご一読を。「リアル」を知ることができると思います。

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2014年10月08日

Posted by ブクログ

なかなか文庫にならないのでハードカバーで購入。

真実の報道などというものが、テレビや新聞の紙面に存在するというナイーヴな考えを持つ人は(2010年代も終盤の今となっては)かなり少ないと思うのだが、自分はそれでもかなり「信頼」はしているような気がする。

本書を読み通すと、その考えが甘いことに気がつかされる。報道とは「現実をそのまま描写したもの」ではないし、仮にそのように表現できたとしても、あくまで取材者の主観や知識、先入観、宗教観、世界観などなど、その他諸々に支配された「現実」を描写しているものにどれだけ現実を伝える力があるのか、疑問しかない。

メディア経由の現実とは、外国語のようにも感じる。どれだけ外国語に精通していても、その言葉の意味自体にはなかなか近づけない、ものにできているように感じても、あとから誤解混じりの理解だったことに気がつく、というような感じだろうか。

どのようにメディアからの情報に接するかを考えさせられる一冊。

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2019年01月15日

Posted by ブクログ

1998年から5年間、中東特派員として数々のニュース報道に携わったオランダ人ジャーナリストによる「報道されない真実」を赤裸々に描き出した迫真のルポタージュ。

中東という複雑に入り組んだ歴史をもつ地域において「真実を知る」ことの難しさ、また同じ事象でも見る人の立場によって全く異なる「真実」が存在するという矛盾、さらには真実よりも虚実の方がニュースバリューが高いとみなされるジャーナリズムの構造的問題、そして何時の間にかそれらに「慣れてしまっている自分」への嫌悪感…悩み抜いた著者だからこそのユーモアを交えた語り口調に、圧倒的なリアリティを感じずにいられない。

もちろん、本書が書かれた2006年当時からは、中東情勢も変化しており、著者が体験した問題が今もそのまま放置されているとは限らない。そして著者自身が述べているとおり、本書もまたひとつの物の見方であり、これを鵜呑みにすること自体、著者が恐れていることであるともいえる。いずれにせよ、ニュースの受け手の一人として、著者が捨て身で投げかけたメッセージを真摯に受け止めたいと思う。

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2015年06月07日

Posted by ブクログ

オランダのジャーナリストによる中東に関する報道論。
大手新聞社の敏腕記者といえばすごいエリートかと思えば、最初はごく普通の、右も左もわからない兄ちゃんだったんだなあ。考えてみれば当たり前なのだけど。
「独裁体制・政治とは何か」に対して、民主主義のこちら側で普通に考えてたってわからないんだ、と明瞭に述べていることに感銘を受けた。
イスラエルとパレスチナの問題ではとくに。
ジャーナリストだってわからない、そのことがストンと理解できる本。

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2013年02月16日

Posted by ブクログ

作者が体験を通して感じた報道が持つ危うさや矛盾。
熱量を含んだ文章の中に誠実さがかいま見えていい本だと思う。

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2012年08月23日

Posted by ブクログ

-大学生のハゼムと雑談している時-
「信じられませんよね?私たちの政府はどれほど警戒していなければならないか。これであなたもわかったでしょう?エジプトにはどれだけ大勢の敵がいるか。そんなこと知りたくもないですよ。最近聞いた話だと、イスラエルの若い女たちがシナイ半島の砂漠でエイズを広めてまわってるそうです」
私はハゼムを見て思った。“私はエジプトで実際に起こっていることだけを書くべきだろうか、それとも、ここの人々が実際に起こっていると思っていることも書くべきなのだろうか?”。
しかし、ここで振出しに戻る。信頼できる世論調査の結果を入手できなくて、どうしたら平均的なエジプト人の考えなどわかる?

-イラクでの取材旅行-
翌朝のためにタクシーを頼んだ。夜のうちは、戦利品を警察と山分けにする無法者たちが国境へのルートを支配しているからだ。荷物をまとめ、
滞在を切り上げるために法外な金額の支払いを済ませようと、夕方の遅い時間に最寄りの情報省に向かった…略…
「アラブ人ならきっとこう言うでしょうね」イラクを出たところで、ヨルダン人の
運転手が言った。
「ハミハ・ハラミハ---あなたを守る者があなたから奪う」

オランダで警官の姿を眼にすると安心できる。彼ら彼女らは私たちのために働いてくれているからだ。アラブ人は警官の姿を眼にすると逃げ出す。
ハミハ・ハラミハ。

この本は、オランダで「最も影響力のある国際ジャーナリスト40人」に
選ばれた著者が、特派員として訪れた中東での五年間に考えたことを書いたもの。読んでみて印象に残る事は沢山あったが、その中でも特に印象深かったところを引用した。今、日本でも、似たようなことが起こっている
と思うから。物事にはそれを見ている人の数だけ面がある。声を荒げたくなる時、慎重になる必要はある。でも、それを判断するのに、何の思惑も含まれていない、多面体を展開したような都合のいい情報がすぐに出てくるなんてことはない…と常に思っておかなくてはならない、という事なのかな?

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2012年05月12日

Posted by ブクログ

著者はオランダにある新聞社のアラブ諸国特派員。アラブというとどっかの国旗を燃やして強気を誇る市民戦士やアラブの春などが印象的であるが、それは極端な一面。実際の庶民の生活は独裁者にしいたげられ、極度の貧困と監視される世界に生きている。
著者はテレビというメディアは、作り上げられた世界であり、真実の世界は何も伝えられていないことを訴える。

もし自分が北朝鮮やシリアのような独裁政権下に生まれていたらと思うと、日本にいて何かあったときに警察などの頼れる存在があるだけで、どんなに幸せなことかと痛感するのである。(独裁政権では警察も国家の一部であり、国家に不利益な場合は助けるどころか監獄送りになる。)
そして仮に何らかの応援でアラブ諸国などに行こうとしても、ありえないくらい無力であることを思い知った。(実際にはそのような動機はないですが)

表には見えない世界(特にアラブ諸国)を知りたい人にはオススメです。

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2012年03月18日

Posted by ブクログ

混沌とした何が事実で正しいのかも分からない中東情勢について語った貴重な本。日本人でこれを書ける人はなかなかいない気がする。独裁制の恐ろしさを読み如何に日本が超平和か改めて感じ入る。でも平和は皆望んでいること。利権やお金が如何に人や国家を腐敗させるか。アメリカのダークサイドな真実も知りたいと思う。

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2012年01月09日

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