田口俊樹のレビュー一覧
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2021年2月刊。筆者の単著を読むのは初めて。筆者は英米ミステリを中心に訳し続けて40年余りのキャリアを持つ翻訳家。その筆者が、過去に自分が翻訳を手掛けた書籍を俎上に上げて、当時の苦労などを回顧したエッセイ。筆者の訳書を、私は『刑事の誇り』『卵をめぐる祖父の戦争』、(筆者が金銭的に困窮して訳した)とある自己啓発本の計3冊だけしか読んでいないし、筆者の名前を、訳者として特に意識したこともないのだが、書名に惹かれて、本書を手に取った。
一番印象的だったのは、スパイ小説の大家ジョン・ル・カレの『パナマの仕立屋』の翻訳を担当した際、ル・カレへの質問と共に、個人的なメッセージを拙い英文で送ったら(翻 -
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ハードボイルド系だと思って敬遠していた作品。これが中々おもしろかった!
主人公はアル中の探偵スカダー。しかし、酒を飲んで立ち回るような豪快な探偵ではない。
アルコール断ちの集会に真面目に参加し、酒を飲みたいという葛藤と常に戦い続けている。
淡々とした渇いた文章、盛り上がりの少ない展開、孤独な私立探偵が主人公…ハードボイルド三拍子が揃っているが、
ハードボイルドの定義が、【暴力的・反道徳的な内容を、批判を加えず、客観的で簡潔な描写で記述する】作品であり、【感情に動かされないクールな生き方】を指すものなのだとすれば、本作はハードボイルドではないのだろう。
スカダーはまだ、暴力と無意味な死が溢 -
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かなり以前の話であるが、ハードボイルド小説を多く読んでいた時期があった。好きな作家は多かったが、ローレンス・ブロックのマット・スタガーシリーズ、マイクル・Z・リューインのアルバート・サムスンシリーズと、リーロイ・パウダー警部補シリーズは特に好きなシリーズで、その多くの翻訳を担当していたのが、本書の著者である、田口俊樹さんであった。
もちろん、誰が翻訳を担当していたかは、それらの作品を読んでいた当時は気にしていたわけではなく、ただ、田口俊樹さんという名前の翻訳家がいるということを、ローレンス・ブロックやマイクル・Z・リューインの本を多く読むことによって知っていたという程度の話であった。
そんな田 -
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平置きされているこの文庫本を手に取ると、どの本よりも厚い感触に、まず手が驚く。765ページだ。『犬の力』、『ザ・カルテル』に続くこの3部作は、ボリュームだけでも作者の執念を感じる。
主人公は今や麻薬取締局DEAの局長になっており、上巻では彼の直接的な活躍より、麻薬を取り巻く周辺(すなわち主人公の人生なのだが)の人物を描いていく。
麻薬カルテルの首領の首をすげ変えてもすぐに次の顔が現れるように、麻薬の売人から中毒者まで、次から次へと登場人物に不足はしない。また、登場人物にトランプ大統領のモデルが登場するように、この物語は現実社会に基づいている。作者の執念はジャーナリズムに根差していると強 -
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終わった。膨大な3部作。ここに書かれていたのはメキシコの麻薬の歴史であり、アメリカの麻薬の歴史でもある。
アメリカが買い続ける限り、メキシコのマフィアが儲かる。
取締を強化すれば、価格が高騰して結局マフィアが儲かる。
儲かるからマフィアはもっと儲けようとする。
効率良く運べるように、もっと効き目の強い常習性の高い製品を開発する。
設けは膨大でマフィアの規模は大きくなる。
また、取締を強化する。
ずっとそれの繰り返し。いたちごっこ。
善と悪のボーダー、アメリカとメキシコのボーダー、主人公ケラーはそのボーダーのどちら側にも存在することで物語はついに完結する。
この上下巻で、トリステーサの -
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ネタバレ短編集。個人的に外れがなく面白かったです。
Ⅰより好きです。性格の良い登場人物がいないので
彼(彼女)が失敗しても遠慮せずに笑えます。
サウンドマシン…植物の声を聴いてしまったら。
満たされた人生に最後の別れを…ロマンチックなタイトル
だけど内容は切なくもおバカな男性の末路を描いている。
偉大なる自動文章製造機…将来的にはできそうな機械。
クロードの犬…私とクロードの短編集(「ネズミ捕り
の男」「ラミンズ」「ミスター・ホディ」
「ミスター・フィージー」)。
ああ生命の妙なる神秘よ…ラミンズとクロードの話。
クロードは憎めないけど、実行力はある切れ者ではないっていう人は実際にいるし、だ -
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レイモンド・チャンドラーの生んだ私立探偵フィリップ・マーロウは、多くのミステリー作家に愛されている。本書も老境に達したマーロウが登場するパスティーシュとして書かれた。 マーロウファンとしては読むしかない。
探偵業は10年前に引退し、メキシコで余生を送る72歳のマーロウの元に、保険会社からの依頼が舞い込んだ。 溺死した富豪の件を調べて欲しいという。 久しぶりの調査に乗り出したマーロウは、若く美しい未亡人に出会うが....
チャンドラーが生前に残したのは「プードル・スプリング物語」の最初の数章までなので、その後のマーロウがどのような人生を歩んだのかはわからない。 そこは読者が自由に想像して良い