田口俊樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ポール・オースターが、デビュー前に書いていた、しかもハードボイルドという、いわくつきの珍品。しかも、1978年に脱稿したが、6年後の1984年にペーパーバックで刊行という執念の一作である。ポール・オースターをぼくは読んでいないが、彼の書いたものとは思えないくらい作風が異なる正統派ハードボイルド作品が本作であり、彼の手になるハードボイルドはこれ一作きりである。
そうしたハードボイルド書きではない作家による渾身のハードボイルド小説という舞台裏を思うと、もったいないほどの秀作が本書である。主人公のマックス・クラインは、もちろん私立探偵。キャラクターが立っているのでシリーズ化されてもおかしくないくらいのだが、残念なことにポール・ベンジャミンは幻の作家であり、そのハードボイルド作品はこれ一作だそうである。
探偵は元大リーガーのスターで、交通事故で片足を失ったチャップマンからの依頼を受ける。少しすると、暴力専門の二人組がやってきて探偵をぼこぼこにして、依頼のことは忘れろと脅迫して去ってゆく。探偵は減らず口、あきらめの悪さ、一握りの幸運を携えて、元プロ野球選手を包む闇に挑む。
見事なほどのホンモノのハードボイルド。何より一人称の文体と藪にらみの視線。ジョークとメタファーの切り口。美女と悪党たち。業界のプロたちと、見上げるばかりの豪邸に住むこれ以上ないほどの大金持ちの鼻持ちならさ。
そして二重三重に逆転してゆく真実と、死体の数々。有象無象の男と女とが交錯するニューヨークの闇。汚れた街をゆく高潔な騎士譚。これぞ忘れ去られているあのハードボイルドの極致。そういわんばかりの作品なのに、シリーズにもなることがなかった。ポール・ベンジャミンは、ポール・オースターに名を変えて、別の偉大な作家になり、探偵はニューヨークの街角に姿を消してゆく。
それにしても懐かしくも楽しい一作だった。しかし、これも彗星の如き作家の腕による一瞬のハードボイルドのきらめき、とでも言うしかないだろう。 -
Posted by ブクログ
たまたま「プエルトリコ477便」のあとに読んだのですが、
どちらも"強い女性"が主人公で、夫が富豪一族、そしてキーパーソンがクレア!
(一方は主人公、一方は主人公の姉)。
しかし内容は全く違い、こちらの主人公マヤは元特殊部隊パイロットという実戦型の強い女性。最後の数十ページまで結末が見えずどうなるんだろうと思っていたが、きれいに伏線が回収されていくのはベストセラー作家の力量ですね。
アメリカは戦争と縁の切れない国、そして銃社会。アメリカンミステリーには必ずと言っていいほど元軍人やPTSDの話、そして身近に銃を持っている人が登場するが、
この作品はそれが女性であるというところが切ない。。