田口俊樹のレビュー一覧
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-大学生のハゼムと雑談している時-
「信じられませんよね?私たちの政府はどれほど警戒していなければならないか。これであなたもわかったでしょう?エジプトにはどれだけ大勢の敵がいるか。そんなこと知りたくもないですよ。最近聞いた話だと、イスラエルの若い女たちがシナイ半島の砂漠でエイズを広めてまわってるそうです」
私はハゼムを見て思った。“私はエジプトで実際に起こっていることだけを書くべきだろうか、それとも、ここの人々が実際に起こっていると思っていることも書くべきなのだろうか?”。
しかし、ここで振出しに戻る。信頼できる世論調査の結果を入手できなくて、どうしたら平均的なエジプト人の考えなどわかる?
-イラクでの取材旅行-
翌朝のためにタクシーを頼んだ。夜のうちは、戦利品を警察と山分けにする無法者たちが国境へのルートを支配しているからだ。荷物をまとめ、
滞在を切り上げるために法外な金額の支払いを済ませようと、夕方の遅い時間に最寄りの情報省に向かった…略…
「アラブ人ならきっとこう言うでしょうね」イラクを出たところで、ヨルダン人の
運転手が言った。
「ハミハ・ハラミハ---あなたを守る者があなたから奪う」
オランダで警官の姿を眼にすると安心できる。彼ら彼女らは私たちのために働いてくれているからだ。アラブ人は警官の姿を眼にすると逃げ出す。
ハミハ・ハラミハ。
この本は、オランダで「最も影響力のある国際ジャーナリスト40人」に
選ばれた著者が、特派員として訪れた中東での五年間に考えたことを書いたもの。読んでみて印象に残る事は沢山あったが、その中でも特に印象深かったところを引用した。今、日本でも、似たようなことが起こっている
と思うから。物事にはそれを見ている人の数だけ面がある。声を荒げたくなる時、慎重になる必要はある。でも、それを判断するのに、何の思惑も含まれていない、多面体を展開したような都合のいい情報がすぐに出てくるなんてことはない…と常に思っておかなくてはならない、という事なのかな? -
Posted by ブクログ
著者はオランダにある新聞社のアラブ諸国特派員。アラブというとどっかの国旗を燃やして強気を誇る市民戦士やアラブの春などが印象的であるが、それは極端な一面。実際の庶民の生活は独裁者にしいたげられ、極度の貧困と監視される世界に生きている。
著者はテレビというメディアは、作り上げられた世界であり、真実の世界は何も伝えられていないことを訴える。
もし自分が北朝鮮やシリアのような独裁政権下に生まれていたらと思うと、日本にいて何かあったときに警察などの頼れる存在があるだけで、どんなに幸せなことかと痛感するのである。(独裁政権では警察も国家の一部であり、国家に不利益な場合は助けるどころか監獄送りになる。)
そして仮に何らかの応援でアラブ諸国などに行こうとしても、ありえないくらい無力であることを思い知った。(実際にはそのような動機はないですが)
表には見えない世界(特にアラブ諸国)を知りたい人にはオススメです。 -
Posted by ブクログ
名手ロアルド・ダールの短編集。
「あなたに似た人」が有名に、童話も多く「チョコレート工場の秘密」の原作者でもあります。
これは9編収録。ハズレ無し!です。
読みやすく、興をそそり、スマートで、笑えて、ちょっとだけ毒がある。
「ヒッチハイカー」は、作家が乗せた男が絡んできて、それに答えつつ困惑する。まさか犯罪者では?
と妙なことになりそうになるが…笑える結末。
「アンブレラ・マン」は雨の日、傘を巡って。急な雨の降った日、母娘に上等な絹の傘を差しだした品のいい老人は?妙な男性の行動を目撃する二人。
「ボティボル氏」はアスパラガスそっくりで性格も内気なボティボル氏。音楽が好きな変人がある楽しみを見つける。
器量はあまり良くないが音楽好きな女性との出会いが楽しい。
表題作は、大人の童話といった趣き。
17歳の誕生日、王女マメーリアは、鏡に映った顔に愕然とする。不器量な少女が一晩で美女に変身していたのだ。そして…?
生まれつき不器量な人間に対する共感や、頭を使って工夫する人への人間愛が感じられますね。本人はなかなかいい顔をしているし、女優と結婚しているんだけど、すごく細長いアスパラガスみたいな頭なので、あだ名は付けられたでしょうね。
イギリス育ちだが両親はノルウェイというから、そのせいか? -
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本当は感想を公開する場ではこう書くのを憚られるのだが、この作品はいい。なぜ「いい」と書くのを憚られるのかというと、この種の小説に接したことのない読者が安易に手を出すと非常に危険だと思える作品だからだ。日本だったら馳星周や花村萬月の作品を思い出すが、本書はそれらよりはるかに心ねじれた悪意と残虐さを秘めている。そんな作品を「いい」と言ったら人間性を疑われるかもしれないと思うほどだ。物語は、壮絶なノワール小説。娘が、「ドラッグと血と精液と愛液の世界」を作り出している狂気の集団に連れ去られた。刑事である父親は娘を取り戻すため、かつてその悪の集団に属していた女を相棒に、戦いの旅に出る。読み始めてすぐに疲労困憊してしまった。これ以上ないと思えるくらいの邪悪にあたってしまったからだ。しかし、もしそんな邪悪を秘めたストーリーに耐えられる読者ならば、相手を切り刻もうとするかのような辛辣な罵詈雑言の応酬の中に、一瞬であれ心を捉えられる言葉を見出すかもしれない。汚濁した言葉の中に、真理をつくものが紛れ込んでいるように感じられたからだ。それを証明するかのような一節があった。「ことばは信念の赴くところを定義するわけじゃない」あたかも日蝕のように、真昼間を闇にかえる邪悪。その暗黒世界から抜け出し、ようやく冷静に考えを巡らせることができたとき、この作品の凄みを思い知ることとなった。本書は、新人作家の衝撃的デビュー作であり、CWA新人賞受賞作。恐怖に隠された詩情の豊かさに、味わったことのない驚きを感じた。
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ナイジェリア出身の法医学者ベネットがNFL選手マイクウェブスターの脳を解剖したことから始まる。アメフト選手として活躍したウェブスターだが引退後は性格の変化、認知低下などで家族と不和になり自殺をしてしまう。そんな中ベネットはウェブスターの脳解剖からタウ蛋白の異常集積を見出しアメフトの激しい頭部外傷が早期の認知機能低下を引き起こす可能性を見つける。その後も同じような境遇を辿ったアメフト選手の解剖から裏付けられ発表するもNFLはこれを否定。度重なる妨害や噂があったが最終的に多くのアメフト選手、その家族がNFLに対して裁判を起こし和解となった。
今では当たり前ではあるがひと昔は脳震盪してもすぐ競技復帰したりして選手の安全は担保されてなかったんだなと、そんな中よそ者であるベネットが文化を変えるのはとてもすごいこと。
ベネットの生い立ちから描かれているが少し長く感じた、 -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間というものは最終的に、それぞれ異なる
多種多様な独立した住人たちの住む純然たる集合体
として理解されるようになるだろう。
抑制が利かず、汚辱にまみれる私も、白日のもと、
知識の蓄積や、人の悲しみや苦悩の救済に勤しむ私も
「どちらも同じ私」だった、と振り返るジキル。
ここの部分を読んで
平野啓一郎さんの分人主義を思い出した。
平野さんは「人間が複数の人格の集合体である」
と捉えることを前向きに捉えていたと思うけど、
逆にジキルはこれが悩みの種になっている。
「相容れない二本の薪がひとつの束に
くくりつけられていることこそ、
人類の呪いなのではないか。
悶え苦しむ意識という子宮の中で、
北極と南極ほどにもへだたった双子が
ひっきりなしに取っ組み合っていることこそ。」
二つの両極端な人格を切り離せる薬、
一時的にジキルの人格を抑える薬を
ついに作ることができた。
純粋な悪だけを備えているハイドに良心は無い。
体が軽く、何でも欲望のままにできる気分だった。
実際、通りすがりの子供を踏みつけ、
高齢の紳士の骨を杖で粉々に砕き、殺してしまう。
憎悪が心身を支配している。
しだいにジキルにとって変身のための薬は、
薬物やたばこやアルコールのように
手放せないものとなっていく。
だんだんジキルに戻るのが難しくなる、
薬がなくてもハイドに変身してしまう、
引き返せない、引き返し方が分からない、
確実に破滅に近づいていく様子が恐ろしかった。
誰にでもある良心と欲望だけど、
どちらか一つではたぶん苦しくて
バランスをとって生きるのが良いのかもしれない。
ジキルの隠し持っていた欲望は、
社会で受け入れられないものだった。
でも欲望自体を無理やり消したら
それはジキルではなくなってしまうとも思う。
アタスンは、凶器がジキルの杖だったり
ハイドの筆跡がジキルに似ていて明らかに怪しくても、
ジキル自身が悪というよりは
あくまで一時的におかしくなっているだけ、
と信じているようだった。
救われてほしかった。
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Posted by ブクログ
プロローグ
“神は銃弾”
神のような絶対的存在ですら、たった一発の銃弾の前には成す術がないのであろうか!?
人間は、絶対的な暴力の前には無力なのか!?
その答えは……
本章
『神は銃弾』破壊的な★3.5
アメリカ探偵作家クラブ賞 ノミネート
英国推理作家協会賞新人賞受賞
このミス1位
ゼロ年代ベストミステリー3位
ボストン・テランの錚々たる賞を引っさげた、
輝かしいデビュー作である
ドラッグ、セックス、ヴァイオレンス、猟奇的殺人、エログロ…アメリカの闇を全て詰め込んだ作品だ
これは、傑作なのか!?
それとも、只のヴァイオレンスなだけの作品なのか!?
私は後者をとる
そう感じた!!!
エピローグ
本書が刊行されたのが2001年である
“羊たちの沈黙“に代表されるハンニバルシリーズや
タランティーノやたけしの初期の作品にみられる、猟奇的で暴力的な特異なキャラクターを配したヴァイオレンス作品が一世を風靡していた時代の影響なのかこういった作品がもてはやされたのかもしれない
20年以上経過した現在では通用しないし流行らない
何かが足りないのだ
大切な何かが!
その答えは……
プロローグとエピローグの答えは、結局見つからなかった
いったい銃弾は何処に行ってしまったのか!?
そう思った(¯―¯٥)8v♪
完