田口俊樹のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
なかなか文庫にならないのでハードカバーで購入。
真実の報道などというものが、テレビや新聞の紙面に存在するというナイーヴな考えを持つ人は(2010年代も終盤の今となっては)かなり少ないと思うのだが、自分はそれでもかなり「信頼」はしているような気がする。
本書を読み通すと、その考えが甘いことに気がつかされる。報道とは「現実をそのまま描写したもの」ではないし、仮にそのように表現できたとしても、あくまで取材者の主観や知識、先入観、宗教観、世界観などなど、その他諸々に支配された「現実」を描写しているものにどれだけ現実を伝える力があるのか、疑問しかない。
メディア経由の現実とは、外国語のようにも感じる。どれだけ外国語に精通していても、その言葉の意味自体にはなかなか近づけない、ものにできているように感じても、あとから誤解混じりの理解だったことに気がつく、というような感じだろうか。
どのようにメディアからの情報に接するかを考えさせられる一冊。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ”ネズミ”となり追い込まれて行く、主人公。
ここから冒頭の牢屋のシーンに辿り着くのかと思いきや、話はドンドン加速していく。
”汚れた”代償として次々に命を狙われ、利用される主人公が周り全てを巻き込みながら疾走する熱いドラマは圧巻で、下巻は一気に読み終わる迫力だった。
が、やはりいくら主人公の論理では正義であっても、既に一線を何歩も超えた正義は肯定できず、それが読後感に響いている。
しかし、ドン・ウィンズロウの筆力は衰えるどころかますます熱くなってくる。「カルテル」以降、「報復」「失踪」と少し軽めだったがここに来て本領発揮。
しかも「カルテル」の続編もあるらしい!
何より、リドリー・スコットで「犬の力」「カルテル」が映画化もあるらしい。楽しみ!
(マイケル・マンで撮って欲しかった気もするが)
今作も映画にすれば、優秀な監督であれば相当な傑作になりそう。このジャンルでは「セルピコ」や「プリンス・オブ・シティ」などもあるしね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ待ちに待ったドン・ウィンズロウの新作。
しかも上下2巻の厚さ。
今回は汚職刑事が主人公で、汚職故に留置されているところから物語が始まる。
・・・という事で、ここからいつもの作品と違う。
正義を実行するための手段として”汚職”という世界に足を踏み入れた、という訳だけでもないし、ひたすら主人公の言い訳めいたモノローグが多く、今一つキャラに共感できない。
しかも、まるでニューヨーク賛歌でもあるがごとく、街の裏表を含めた様々なエピソード紹介が多い。確かに興味深く読めるエピソードは多いし、作者の博識ぶりはよくわかるが、その分、物語のリズムがそがれ、名作「犬の力」や「カルテル」のような物語のダークな疾走感がない。
”転落”が始まるであろう後半に期待。 -
購入済み
面白かったです。
そんなに下ネタばかり話さなくてもいいかなと途中でうんざりしましたが。
金髪でハンサム、おしゃべりな方を絶対違うとは思いながら、「ダンケルク」のジャック・ロウデンに脳内変換してずっと読んでいました。 -
Posted by ブクログ
映画を先に見てしまってたので、読んでいてシーンが画像となって読めたのは良かったかな。ただ、映画ではほんの一瞬の出来事のようで、実際にも短い時間だったらしいけど、人間の記憶って曖昧なんだなと思いましたね。そして彼ら3人の小さいころからの繋がりや、テロにあった旅行での不思議な引き寄せ?偶然?何でもない日常が突然とんでもない出来事に巻き込まれるんだって、これは他人ごとではないんでしょうね。日本も決して安全な国ではなくなっているから・・でも、そうなったとき自分は彼らのように立ち向かえるか・・無理だね。
事件後の彼らを取り巻く異常な光景は、どこの国も同じなんだと思いました。
メディアはいい加減だし、一般人の考えも随分身勝手でもあるし、なんでもない善良な市民が突然巻き込まれて事件で英雄扱いされて、考え方も日常も変わっていく。何もないことがどれだけ幸せなのかってつくづく思いましたわ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレゴーストマンシリーズ第2作。1作目が結構オモロかったので、翻訳出て比較的早く(俺にしては)読んでみた。名前は偽名以外一切名乗らない主人公が、相変わらずカッチョ良い。名前も名乗らない癖に、行動の説明がいちいち細かくナルシスティックなんがカッチョ良い。実際にこんなん聴いたらきっとカッチョ良くないはずなんだけど、アクションハードボイルド小説にはとてもよくマッチする。
アクションも壮絶、敵もなかなかに規模がでかかったり、主人公に負けないくらいナルシストだったりで良い。美学に溺れて最後ヤラカすのはお笑いだが(あそこは銃撃やろ…とか)
ヒロインとの再邂逅も期待できる次回作…と思ったら、なんと作者急逝により、本シリーズはここまでだとか。こんだけ読ませるアクションシリーズがたったとは2作勿体ない。しかも、作者の死因が「急性薬物中毒」だとか。創作に集中するあまりヤクに頼り過ぎたのか、はたまたヤバい筋に盛られたか…。そんなことまで気になるが、とにかく残念。 -
Posted by ブクログ
読む前は、もう少し犬を全面に出したというか犬目線の物語なのかと思ったが、あくまで語り手は人たちであり、その人間たちの強さや弱さ、幸せや不幸せ、素晴らしさやどうしようもなさ等を描き出すためのギミック、触媒として犬が使われているような類の作品だと、読後は思いを新たにした。
作者が言いたいところの本質的な部分は、大戦後の朝鮮戦争やヴェトナム戦争、近年では湾岸戦争や911にイラク戦争、それにカトリーナ等といった個人の力では抗しきれない災厄を体験したアメリカ人しか理解できないような気もするが、それらを潜り抜け翻弄されてきた人たちの間でまた、物言わぬギヴが運命の流れに翻弄されながらもジッと耐え続けている様には素直に感動を覚える。
ギヴが、犬たちがいなければ再生できなかったであろう人たちが、確かにいた。
全編まるで回想かダイジェストかのような著者独特のスピード感溢れる簡素で淡々とした文体も、変に物語に湿り気を与えず良かったように思う。