田口俊樹のレビュー一覧

  • 卵をめぐる祖父の戦争

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    ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している
    作家のデイヴィッドは、祖父レフの戦時中の体験を取材していた。ナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた十七歳のレフは、軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された。
    饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索を始めることになるが、飢餓のさなか、一体どこに卵が?
    逆境に抗って逞しく生きる若者たちの友情と冒険を描く、傑作長篇
    (あらすじより)

    かなり重厚な読み応え
    気合入れて読むタイプの本です!

    帯を書いた人はこの本を読んだか疑わしい。
    胸キュン要素より戦争の悲惨さ要素のほうが多いぞ。

    共産党政権下のソ連で略奪で逮捕と脱走

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    2019年08月07日
  • 短編画廊 絵から生まれた17の物語

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    エドワード・ホッパーという画家がいる。現代アメリカの具象絵画を代表する作家で、いかにもアメリカらしい大都会の一室や田舎の建物を明度差のある色彩で描きあげた作品群には、昼間の明るい陽光の中にあってさえ、深い孤独が感じられる。アメリカに行ったことがないので、本物を目にしたことはないが、アンドリュー・ワイエスと同じくらい好きなので、ミュージアム・ショップでカレンダーを買って部屋の壁にかけている。

    深夜のダイナーでカウンターに座るまばらな客を描いた「ナイトホークス」に限らず、ホッパーの画には、その背後に何らかの物語を感じさせられるものが多い。作家のローレンス・ブロックもそう考えた一人だ。彼は、これは

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    2019年08月07日
  • その犬の歩むところ

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    ネタバレ

    完璧なまでに善良で無垢なるものギヴ。どんな困難にも諦めず立ち向かい希望を失わない。
    そんなアメリカンスピリッツの象徴としてのギヴが飼われていたモーテルに宿泊に来た兄弟の兄の悪意により盗まれるところから始まり、カトリーナによる喪失、9.11およびその後のイラク出兵によるゆがみを抱えた人々を癒しながら物語は進んで行く。
    どこまでも真っ直ぐで、ハッピーエンドに向かっていく直球の物語であるにもかかわらず、語られる言葉の神々しさ、善良な熱意により、変な嫌味は全くなく、アメリカなる物語として楽しめた。
    ただ、ミステリ生はほぼ無く、クライマックス直前でのなるほどね止まりのためその筋の話と思って読むと退屈かも

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    2019年07月07日
  • ダ・フォース 下

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    ネタバレ

    等身大の登場人物たちが、正義の境界線を徐々に超え、戻れなくなる。

    俺たちはやってる。平和に貢献している。
    毎日命を張り、悪いやつらを刑務所に送り込んでいる。
    だから、多少のことは、少しぐらいの小遣い稼ぎぐらいはいいだろう。
    家族のためだから。

    一線を超えると次は正義ではなく家族のためになる。
    そして元に戻れなくなり、何でもやるようになる。
    本来であれば正義のために行わなければならない行為も。。

    警官としてかっこよく生きたかったのに。
    正義のために命を張っているからこそ超えてしまう境界線。

    主人公デニーを通し人の弱さと正義について叙事詩のように歌い上げるウィンズロウの手腕に脱帽。

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    2019年03月09日
  • 悪魔の赤い右手 殺し屋を殺せ2

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    ネタバレ

    シリーズ第2弾。殺し屋のヘンドリクス。だけどムダな殺しはやりたくなくて理由があって殺す。だから戦闘シーンでもとどめを刺さない時もある。今回の相棒キャメロンへの不器用な優しさや、ヘンドリクス自身の生き方、心情、殺しを生業としながらも仕事以外のところでは狂気も怖さもない。スイッチが入ると冷徹に仕事をする。今作もヘンドリクス以外にも魅力的な人物がたくさんいて面白い。3弾、4弾と続いて欲しいシリーズ。

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    2019年02月22日
  • 八百万の死にざま

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    代表作。
    足を洗いたいのでヒモと話をつけてくれ、というコールガール・キムの依頼は円満に済んだはずだったが、キムはホテルの一室でナタでめった刺しにされて殺害される。元ヒモ・チャンスには強固なアリバイがあったが、彼が人を使ってやったのだろう、と警察もスカダーも考えていた。しかし、チャンスはスカダーに捜査を依頼してきた。

    本筋とは全く関係ないが、ヒモって言葉のイメージが違う…こういうのは女衒っていうべきなんじゃ。
    スカダーは相変わらずのアル中。

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    2019年02月17日
  • ラブラバ〔新訳版〕

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    いやー良かった。クールだわ。「オンブレ」が意外な面白さだったので、新訳版だという本書を読むことに。エルモア・レナードはずいぶん前に何か読んだような気がするが、あまり覚えてない。きっとこの乾いた味わいがわからなかったんじゃないかな。これはまったく大人の読み物だなあ。

    全篇が実に映画的。ヒロインはかつての銀幕スターだし(脇役だけど)。ずっと頭の中にスクリーンが浮かぶ。ラブラバ(主人公のカメラマンの名前)は誰がいいかな。今の若手スターを知らないので、若い頃のポール・ニューマンとかハリソン・フォードとかを脳内配役してみる。かつてダスティン・ホフマン主演で映画化の話があったが頓挫したそうだ。いやいやダ

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    2019年01月29日
  • もつれ

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    ネタバレ

    主人公の検察官がかなりクセの強い人物なので、ダメな人にはまったく受け入れられないと思うが、「怒り」に続いてかなり好き。真ん中の作品も読めますように(祈り)
    ワルシャワが舞台なのもポイント高い。謎ときは後から説明する部分が大きくわかりにくかった。

    3部作のラストが先に翻訳されたのはもったいなかったかな

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    2019年01月23日
  • こうして世界は誤解する――ジャーナリズムの現場で私が考えたこと

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    なかなか文庫にならないのでハードカバーで購入。

    真実の報道などというものが、テレビや新聞の紙面に存在するというナイーヴな考えを持つ人は(2010年代も終盤の今となっては)かなり少ないと思うのだが、自分はそれでもかなり「信頼」はしているような気がする。

    本書を読み通すと、その考えが甘いことに気がつかされる。報道とは「現実をそのまま描写したもの」ではないし、仮にそのように表現できたとしても、あくまで取材者の主観や知識、先入観、宗教観、世界観などなど、その他諸々に支配された「現実」を描写しているものにどれだけ現実を伝える力があるのか、疑問しかない。

    メディア経由の現実とは、外国語のようにも感じ

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    2019年01月15日
  • その犬の歩むところ

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    盛り上がりにはかけますが、犬を中心とした人々の群像劇的な?
    ちょっと訳が独特で最初は読むのに入り込みにくかった。

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    2019年01月07日
  • 飛行士たちの話〔新訳版〕

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    とてもきれいな文章で語られる戦争の話。日常の会話、妄想、ちょっとした時に見せる表情、考え方。現実離れしているのに、現実だったんだろうと感じる。「昨日は美しかった」は最後が衝撃的で、読み終わってからまた読み直してしまった。とても悲しいものがたりで、リアル。

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    2018年12月26日
  • ダ・フォース 下

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    ネタバレ

    ”ネズミ”となり追い込まれて行く、主人公。
    ここから冒頭の牢屋のシーンに辿り着くのかと思いきや、話はドンドン加速していく。
    ”汚れた”代償として次々に命を狙われ、利用される主人公が周り全てを巻き込みながら疾走する熱いドラマは圧巻で、下巻は一気に読み終わる迫力だった。

    が、やはりいくら主人公の論理では正義であっても、既に一線を何歩も超えた正義は肯定できず、それが読後感に響いている。

    しかし、ドン・ウィンズロウの筆力は衰えるどころかますます熱くなってくる。「カルテル」以降、「報復」「失踪」と少し軽めだったがここに来て本領発揮。
    しかも「カルテル」の続編もあるらしい!

    何より、リドリー・スコッ

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    2018年11月17日
  • ダ・フォース 上

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    ネタバレ

    待ちに待ったドン・ウィンズロウの新作。
    しかも上下2巻の厚さ。

    今回は汚職刑事が主人公で、汚職故に留置されているところから物語が始まる。

    ・・・という事で、ここからいつもの作品と違う。
    正義を実行するための手段として”汚職”という世界に足を踏み入れた、という訳だけでもないし、ひたすら主人公の言い訳めいたモノローグが多く、今一つキャラに共感できない。

    しかも、まるでニューヨーク賛歌でもあるがごとく、街の裏表を含めた様々なエピソード紹介が多い。確かに興味深く読めるエピソードは多いし、作者の博識ぶりはよくわかるが、その分、物語のリズムがそがれ、名作「犬の力」や「カルテル」のような物語のダークな

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    2018年11月14日
  • ダ・フォース 下

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    なんとか現状から抜け出そうと、もがき続けるマローンに、更なる圧力をかける連邦検事とFBI。
    本来なら保護されなければならないマローンの供述調書が、何者かによってギャングに流され、四方八方から追い詰められる。

    上巻から続く緊張感に読んでいて脳が酸欠になりそう。
    行きつく先は見えているのだから、いっそひと思いにやってくれー!とマローンの代わり叫びたくなる。

    ベストな終わり方だったと思う。
    願わくば最後の会合に出席したすべてのメンバーが彼以上の苦しみを味わいますように・・・。
    そしてナスティ・アスが安らかに眠れますように。

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    2018年10月18日
  • ダ・フォース 上

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    麻薬に汚染された街、マンハッタン。
    ギャングと警察がイタチごっこを繰り返す。
    デニー・マローンは悪辣な刑事だと思う。
    でも悪辣な中にも彼なりの正義があると私は思っていた。
    その彼が仲間を売る『ネズミ』へと落ちていく。

    一つ階段を踏み外すと、そこから這い上がることは出来なくなってしまうのだろうか。
    正義を語るFBIも、連邦検事も、誰もかれもがマンハッタンの街のように汚染されている。

    読んでいて息苦しい。
    でも読むのをやめられない。
    これがドン・ウィンズロウなのか!

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    2018年10月18日
  • その犬の歩むところ

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    原題が「The Story of a Dog and America」という通り、「アメリカ」というところが強調されている。9.11、イラク戦争、ハリケーンカトリーナ、暴力…と現実のアメリカの諸問題が背景。登場人物はみんな何かを失って傷ついているのだけど、それでも善意や夢を失わずに生きようとする。そこに寄りそうのが犬。この物語では「ギヴ」という名前の犬だけど、辛いときに犬に寄り添ってもらう人は世界にたくさんいるだろう。やっぱり犬は人類の友。テーマは重いけど、読後感は良い。

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    2018年09月27日
  • ダ・フォース 下

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    作者は警察関係者に綿密に取材しているようなので、本書の内容は相当程度現実を反映していると思われるが、正義というか治安維持を実現するために悪徳に手を染めなければならないというのが現実だとすれば、かなり絶望的状況ということになるが、多分にウィンズロウ的世界ということなのか。

    とはいえ人は絶望的な現実から目を背けつつ、一方で現実と折り合いを付けながら生きていくしかないのだが。

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    2018年09月18日
  • ラブラバ〔新訳版〕

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    少し読みづらかったが,内容は面白く映画に向いているような,作品の中で映画を見ているような感じがした.元シークレットサービスや現在カメラマンということをうまく生かしてラブラバを動かしている.会話も洒落ていて,ストーリーは途中でわかってしまったけれど,それでも会話などの面白さで最後までハラハラした.

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    2018年09月13日
  • ダ・フォース 上

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    腐敗した敏腕刑事。

    そう言う主人公は数多あるが、これもその一つ。ちょっとしたことで歯車が狂い、敏腕刑事と言う立場から転落していく様が描かれていく。

    下巻では、どんな展開が待ち受けているのか。

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    2018年08月02日
  • 怒り 下

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    面白かった!一人ひとりキャラが立ってて、陰惨な事件ながらも随所にユーモラスな感じもあり暗くならず、読みやすい。しかし最後のオチは如何なものか…もっとスッキリ終わって欲しかった。

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    2018年07月27日