田口俊樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1998年から5年間、中東特派員として数々のニュース報道に携わったオランダ人ジャーナリストによる「報道されない真実」を赤裸々に描き出した迫真のルポタージュ。
中東という複雑に入り組んだ歴史をもつ地域において「真実を知る」ことの難しさ、また同じ事象でも見る人の立場によって全く異なる「真実」が存在するという矛盾、さらには真実よりも虚実の方がニュースバリューが高いとみなされるジャーナリズムの構造的問題、そして何時の間にかそれらに「慣れてしまっている自分」への嫌悪感…悩み抜いた著者だからこそのユーモアを交えた語り口調に、圧倒的なリアリティを感じずにいられない。
もちろん、本書が書かれた2006年当時からは、中東情勢も変化しており、著者が体験した問題が今もそのまま放置されているとは限らない。そして著者自身が述べているとおり、本書もまたひとつの物の見方であり、これを鵜呑みにすること自体、著者が恐れていることであるともいえる。いずれにせよ、ニュースの受け手の一人として、著者が捨て身で投げかけたメッセージを真摯に受け止めたいと思う。 -
Posted by ブクログ
2013年6月、香港にて本書の著者やその他数人に対し、
アメリカ合衆国NSA元職員のスノーデンが自身の良心に従って、
行きすぎたアメリカの監視体制に関する機密文書数万点を暴露したことは、
日本でも大ニュースになり、みなさんもご存じだと思います。
その機密文書の内容は、アメリカやイギリスの新聞社から記事として発信され、
スノーデンはモスクワに移動して逮捕を逃れ、
本書の著者であるグリーンウォルドも共犯者とみられる向きもあり、
ブラジルのリオデジャネイロに住んでいながらも、
アメリカに帰国した際には連行される危険性も否定できないらしいです。
そんな危険を冒してまで、
政府に屈せずに報道をしていくのが、
真のジャーナリストである、と著者は述べていて、
昨今の、政府にお伺いを立ててから記事にするような、
たとえばニューヨーク・タイムズ紙の記者などを痛烈に批判しています。
そのようなスタンスで、
本書はスノーデンのリークした機密文書の紹介や、
香港で彼と著者たちが出会うまでについてや、
なぜNSAによるインターネット世界全監視システムであるプリズム計画などが
プライバシーを侵害することがよくないのかという、
どうしてプライバシーが必要なのかについての論考や、
そしてマスメディアの現在についての批判や記事発表後の
著者自身のあまりいいとはいえない状況などについて書かれています。
僕はこのNSAによる世界監視が暴露されたことは喜ぶべきだと思いました。
アメリカのオバマ政府は、
「国民の監視や盗聴や通信の傍受はしてないよ!外国人に対してだよ!」
というような苦肉の言い訳をしていて、
それに対して、マーク・ザッカーバーグ(FBの創始者)が、
「世界を相手にしているウチの商売に気を使えよ」的な愚痴を言ったとか。
そうなんです、世界監視には、フェイスブックもヤフーもグーグルも、
いろいろな企業が協力しているそうです。
そうやって、プライバシーを盗んでいるんですね。
そうしたことが秘密裏のままだと、
本当に闇の中でもっと権力を強めてしまいかねない。
日本もそうだけれど、政府っていうものは、国民やジャーナリストが厳しく見ていないと、
なにをしでかすかわかったものではないなと感じるところです。
また、著者の主張の優れているところの一つは、こういうところです。
肉体の安全を超一級の優先事項として、
精神的な価値すなわちプライバシーの安全などを明け渡すよう迫る
「監視国家是認」の言説は考えが浅いように思われるし、
詭弁として受け取れるというようなところ。
そうなんですよね、肉体の安全すなわちケガや死に対する不安を過剰に煽って、
それらを回避するためなのだから、精神的な価値つまりプライバシーを
さしだしなさいという、強引な論法なんです。
そして、読んでいて感じたのですが、
他人と違ったままでいたかったなら、知性を磨かなくちゃいけないと感じました。
労力がいるけれど、他人と違うという理由で自分に張られるレッテルを、
それはレッテルだとして説明したり論破したりしなければならないだろうからです。
へんなもので、人と違うことをすることには説明責任があるかのように扱われる。
アメリカじゃ、あいつは人格障害だとか社会不適合者だとか
レッテルを張られる場合があるらしい、問題が大きくなると。
こういうのは健全バカだと思う。
我田引水すぎるリテラシーのせいなのかな。
人権も侵害しているでしょう。
世の中の色合いってものは、
どうしても排他的な保守の色合いだったりする証拠なのかもしれない、
人と違うことをしたときに当たり前のように説明責任を持たされるのは。
説明できないと、病気だとか障害持ちだとか、
適当にレッテルを貼られてしまいます。
この件によって、ジャーナリズムの存在価値が見直されて、
国家に対する監視という立場を堅守するようになってほしいです。
そして、言論の自由ですよね。
驚いたことにイギリスでは報道の自由みたいなのって決められていないみたいです。
本書では、アメリカ、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアを
ファイブアイズという名前でもっとも親密な同盟として、
NSAの監視盗聴の恩恵を受ける国々としていたと書かれていました。
しっかし、世界をこういう感じで眺めてみると、
情報の暴露一つにしても、物騒だなと思いました。 -
Posted by ブクログ
スノーデンが著者に接触するところから現在(当時)に至るまで、時間を追って物語風に記されているので話にどんどん引き込まれました。最初TVでこのニュースを見たとき、とても表に出てきそうもない情報を暴露するとはなんて勇気のある若者だ、それにその事が色々な妨害もなく(屈せず)世間に出てきたなと衝撃を受けた事から、詳しい詳細に漠然と興味がありました。アメリカNSAが個人の通信の全ての情報(インターネット閲覧情報•電話通話記録等)を漏らさず取得しようとしていた事は驚きです。言われていたように、要注意人物や主要人物はそのターゲットになりうるという認識はありましたが、反政府的な芽を摘むという意味でも一般市民余すことなくとはそこまでやっていたのか、と。いまやネットは個人情報の宝庫でそれを盗まれ管理•操作されてしまうことがどれだけ自由と安全と人権を脅かすか、また見られてるかもという被害妄想によって行動が制限されてしまう、人間の心理による弊害については深く考えさせられました。無意識のうちに管理•洗脳されることが日々の生活の中でも確かにあると。反政府的な思想を少しでも持つものは芽を摘むがごとくに管理工作されつぶされる。筆者は政府のいいなりになっているような現在のジャーナリズムをも問題視しています。これは日本でも同じことかと。最後に、大きな組織•力であっても、論理的に考えて自ら意思決定する小さな人間ひとりひとりが、抵抗し挑戦し変えていく事ができると言っていて、まず意識を十分もって監視•行動することが大事だとおもいました。ちなみに筆者はその後アメリカに入国出来たのか気になるところ。ここまで大きな話題になったら簡単に逮捕とか出来ないと思うけど。
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Posted by ブクログ
ネタバレずっと読みたいと思ってたロアルド・ダール。
本当は『あなたに似た人』を読みたいと思ってたんだけど、本屋でちょうど発売したてだったのか平積みされてて、その帯に『喪黒福造ものけぞるような妖しい魅力』と書かれてたのが目に入ってすぐさま購入してしまった。
別に喪黒福造が好きなわけではないんだけど、あぁいう話は好きなので。
結果ブラックユーモアがきいててとても面白かった。
最後にゾッとする感じ。
『ロイヤルゼリー』みたいに現代に読むと違和感を感じてしまうところはあるにしても、文章の巧さでそれをあまり気にさせない。
『ウィリアムとメアリー』『天国への道』を妻の方に思いっきり感情移入しながら読んだら最後がスカッとして面白かったんだけど、夫の立場で読んでみるとすんごい厭だし恐ろしい。
『ジョージー・ポージー』『豚』は途中まではふんふんと何気なく読みながらもなんだか嫌な予感…と思ってると最後ゾッとする。
最初読んだ時は「えっ?」となっただけだったが思い返してみると怖い。
『始まりと大惨事』も途中までは両親が可愛そうだなくらいなんだけど、生まれた子が誰かがわかると…。
確かに解説にあったようにこれはイヤミスだなぁ。
もっとダールの作品が読みたくなった。 -
Posted by ブクログ
マットスカダー五作目。
八百万の死にざま(英題:eight million ways to death)、
というタイトルがまず目を引く。
年々悪化する犯罪に対する警官の愚痴がまた興味深い。
"八百万の死にざま"とは上手く言ったものだと思う
名前のミスリードはちょっと捻っていて面白い。
これはアルファベットだからできると感心。
これまで以上にアルコールに対する
スカダーの葛藤が書かれており、
ファンなら面白く読めると思うが
純粋にミステリとして読むのであれば蛇足と感じるのだろうなぁ。
でもこれが無いとアル中探偵マット・スカダーじゃない。 -
Posted by ブクログ
久々のバイオレンス小説。そうと知らなくて読み始めたから最初は本当に胸糞悪かったけど、アメリカの悪や矛盾を、成功や豊かさの下敷きになっている、必ずひずみに生まれてしまう犠牲者のそれぞれの姿を描き出している。単純なハードボイルド的な楽しみよりもそちらに目を奪われる作品。
ストーリーは至極単純。
とある中流階級家庭がカルト集団によって両親と飼い犬は殺害、少女は誘拐され、薬を打たれてレイプて連れまわされる。その少女の父親(あまりデキのよくない警官)が元ジャンキーでカルト集団に昔所属していたケイスという女性とともに追いかけるというストーリー。
展開がわかりきっているのに惹きつけられるのはハードボイルドならではかなと思う。 -
Posted by ブクログ
期待せず読み始めたのですが、面白かったです。
元妻を殺され娘を攫われた警官・ボブと、元カルト集団員のジャンキー・ケイス。
二人はお互いに嫌悪感を抱いています。ぜんぜん違う世界に生きてきたのだから当然です。
しかし、ふたりで死と隣合わせのギリギリの綱渡りを続けるうちに信頼のようなものが芽生えていきます。
このふたりの距離感がなんとも素敵です。
ギャビについて、もうちょっと掘り下げてくれれば嬉しかったのですが……うーん。
彼女はこれからどうなるのか。強く生きていけるのか。
原文がかなりクセのある、抽象的で難解な文章だったようで、
とくに序盤は微妙な言い回しがいくつか見られ、日本語訳を作るのに四苦八苦している様子が伺えます。
ですが読み進めるうちに作品の世界にぐいぐい引きこまれ、気にならなくなりました。