田口俊樹のレビュー一覧
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舞台は無数の殺人事件の起こるニューヨーク。「裸の町には800万の物語があるのです」というテレビ番組の決まり文句をを殺人課刑事が「800万の死にざま」と皮肉る。この「腐りきった」町の中でアル中の私立探偵がコールガールの殺人事件を追う。
ミステリーとしては派手な展開はない。賭けボクシング、場末の酒場、ひも、モーテル、謎の黒人、おかま、タレこみ屋というハードボイル世界の中で、主人公が地味な探偵活動を行い、犯人を探し出してゆく。
この小説は純粋なミステリーというよりも、主人公が欲望を抑え、いかに自らのアルコール中毒に折り合いを付けていくかという過程を描いた一種の教養小説として読むと面白い。主人公が毎晩通うセント・ポール教会でのアル中の集会で主人公が聞いたこと、自分の発言のシーン、禁酒して8日目の出来事は非常に印象的。特に、最後の2段落は長い間、余韻が残った。 -
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「飲まない日はいつもいい日だ。正気でいられるからね。でも、それが、飲まないで正気でいるってことが、アル中にとっては何よりも辛いんだ。」
わたしはそうでもなかった。退院して九日か十日経つが、あと二三日素面でいたらまた飲もうと思っていた。
アル中探偵、マット・スカダーの登場である。
ニューヨーク、マンハッタンを舞台にした探偵小説シリーズの第四作。
実在のビルや街角が出てくるので、グーグルアースでチェックすればニューヨーク通にもなれる、ちょっと古いけど。
このシリーズのなかで、主人公のアル中が少しずつなおって健康になっていくんだけど、話はだんだんおもしろくなくなっていく。
そりゃあそうだ、身を持ち崩したアル中探偵だから共感できるのに、お金持ちになって健全な倫理観などを持ち始めるとろくなことはない。
アル中で苦しんでいるシリーズ途中でやめておこう。
もちろん小説の中のお話。 -
Posted by ブクログ
-大学生のハゼムと雑談している時-
「信じられませんよね?私たちの政府はどれほど警戒していなければならないか。これであなたもわかったでしょう?エジプトにはどれだけ大勢の敵がいるか。そんなこと知りたくもないですよ。最近聞いた話だと、イスラエルの若い女たちがシナイ半島の砂漠でエイズを広めてまわってるそうです」
私はハゼムを見て思った。“私はエジプトで実際に起こっていることだけを書くべきだろうか、それとも、ここの人々が実際に起こっていると思っていることも書くべきなのだろうか?”。
しかし、ここで振出しに戻る。信頼できる世論調査の結果を入手できなくて、どうしたら平均的なエジプト人の考えなどわかる?
-イラクでの取材旅行-
翌朝のためにタクシーを頼んだ。夜のうちは、戦利品を警察と山分けにする無法者たちが国境へのルートを支配しているからだ。荷物をまとめ、
滞在を切り上げるために法外な金額の支払いを済ませようと、夕方の遅い時間に最寄りの情報省に向かった…略…
「アラブ人ならきっとこう言うでしょうね」イラクを出たところで、ヨルダン人の
運転手が言った。
「ハミハ・ハラミハ---あなたを守る者があなたから奪う」
オランダで警官の姿を眼にすると安心できる。彼ら彼女らは私たちのために働いてくれているからだ。アラブ人は警官の姿を眼にすると逃げ出す。
ハミハ・ハラミハ。
この本は、オランダで「最も影響力のある国際ジャーナリスト40人」に
選ばれた著者が、特派員として訪れた中東での五年間に考えたことを書いたもの。読んでみて印象に残る事は沢山あったが、その中でも特に印象深かったところを引用した。今、日本でも、似たようなことが起こっている
と思うから。物事にはそれを見ている人の数だけ面がある。声を荒げたくなる時、慎重になる必要はある。でも、それを判断するのに、何の思惑も含まれていない、多面体を展開したような都合のいい情報がすぐに出てくるなんてことはない…と常に思っておかなくてはならない、という事なのかな? -
Posted by ブクログ
著者はオランダにある新聞社のアラブ諸国特派員。アラブというとどっかの国旗を燃やして強気を誇る市民戦士やアラブの春などが印象的であるが、それは極端な一面。実際の庶民の生活は独裁者にしいたげられ、極度の貧困と監視される世界に生きている。
著者はテレビというメディアは、作り上げられた世界であり、真実の世界は何も伝えられていないことを訴える。
もし自分が北朝鮮やシリアのような独裁政権下に生まれていたらと思うと、日本にいて何かあったときに警察などの頼れる存在があるだけで、どんなに幸せなことかと痛感するのである。(独裁政権では警察も国家の一部であり、国家に不利益な場合は助けるどころか監獄送りになる。)
そして仮に何らかの応援でアラブ諸国などに行こうとしても、ありえないくらい無力であることを思い知った。(実際にはそのような動機はないですが)
表には見えない世界(特にアラブ諸国)を知りたい人にはオススメです。 -
Posted by ブクログ
名手ロアルド・ダールの短編集。
「あなたに似た人」が有名に、童話も多く「チョコレート工場の秘密」の原作者でもあります。
これは9編収録。ハズレ無し!です。
読みやすく、興をそそり、スマートで、笑えて、ちょっとだけ毒がある。
「ヒッチハイカー」は、作家が乗せた男が絡んできて、それに答えつつ困惑する。まさか犯罪者では?
と妙なことになりそうになるが…笑える結末。
「アンブレラ・マン」は雨の日、傘を巡って。急な雨の降った日、母娘に上等な絹の傘を差しだした品のいい老人は?妙な男性の行動を目撃する二人。
「ボティボル氏」はアスパラガスそっくりで性格も内気なボティボル氏。音楽が好きな変人がある楽しみを見つける。
器量はあまり良くないが音楽好きな女性との出会いが楽しい。
表題作は、大人の童話といった趣き。
17歳の誕生日、王女マメーリアは、鏡に映った顔に愕然とする。不器量な少女が一晩で美女に変身していたのだ。そして…?
生まれつき不器量な人間に対する共感や、頭を使って工夫する人への人間愛が感じられますね。本人はなかなかいい顔をしているし、女優と結婚しているんだけど、すごく細長いアスパラガスみたいな頭なので、あだ名は付けられたでしょうね。
イギリス育ちだが両親はノルウェイというから、そのせいか? -
Posted by ブクログ
本当は感想を公開する場ではこう書くのを憚られるのだが、この作品はいい。なぜ「いい」と書くのを憚られるのかというと、この種の小説に接したことのない読者が安易に手を出すと非常に危険だと思える作品だからだ。日本だったら馳星周や花村萬月の作品を思い出すが、本書はそれらよりはるかに心ねじれた悪意と残虐さを秘めている。そんな作品を「いい」と言ったら人間性を疑われるかもしれないと思うほどだ。物語は、壮絶なノワール小説。娘が、「ドラッグと血と精液と愛液の世界」を作り出している狂気の集団に連れ去られた。刑事である父親は娘を取り戻すため、かつてその悪の集団に属していた女を相棒に、戦いの旅に出る。読み始めてすぐに疲労困憊してしまった。これ以上ないと思えるくらいの邪悪にあたってしまったからだ。しかし、もしそんな邪悪を秘めたストーリーに耐えられる読者ならば、相手を切り刻もうとするかのような辛辣な罵詈雑言の応酬の中に、一瞬であれ心を捉えられる言葉を見出すかもしれない。汚濁した言葉の中に、真理をつくものが紛れ込んでいるように感じられたからだ。それを証明するかのような一節があった。「ことばは信念の赴くところを定義するわけじゃない」あたかも日蝕のように、真昼間を闇にかえる邪悪。その暗黒世界から抜け出し、ようやく冷静に考えを巡らせることができたとき、この作品の凄みを思い知ることとなった。本書は、新人作家の衝撃的デビュー作であり、CWA新人賞受賞作。恐怖に隠された詩情の豊かさに、味わったことのない驚きを感じた。