田口俊樹のレビュー一覧
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終わった。膨大な3部作。ここに書かれていたのはメキシコの麻薬の歴史であり、アメリカの麻薬の歴史でもある。
アメリカが買い続ける限り、メキシコのマフィアが儲かる。
取締を強化すれば、価格が高騰して結局マフィアが儲かる。
儲かるからマフィアはもっと儲けようとする。
効率良く運べるように、もっと効き目の強い常習性の高い製品を開発する。
設けは膨大でマフィアの規模は大きくなる。
また、取締を強化する。
ずっとそれの繰り返し。いたちごっこ。
善と悪のボーダー、アメリカとメキシコのボーダー、主人公ケラーはそのボーダーのどちら側にも存在することで物語はついに完結する。
この上下巻で、トリステーサの -
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ネタバレ歴史が苦手な私が第一次世界大戦から第二次世界大戦の背景をちょっぴり齧った状態で読むのにちょうど良い具合の本でした。
ストーリー自体に複雑な点はないからです。司令を受けて、道行く先で色んな体験をする。ラストもきっちり収まります。
そのシンプルな展開の中に順番に陳列されているかのようなエピソードたちが、戦争の残忍さ、愚かさ、理不尽さを伝えています。
それが全編とおして生活感や肌感覚を用いた表現で描かれている点が重要だったと思います。
戦争中に軍の司令を受けたところから始まる話とはいえ、主人公が戦闘経験がほぼゼロの思春期の少年なので、人種やイデオロギーの話も出てくるけどほとんど下ネタとか生活の -
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ネタバレ短編集。個人的に外れがなく面白かったです。
Ⅰより好きです。性格の良い登場人物がいないので
彼(彼女)が失敗しても遠慮せずに笑えます。
サウンドマシン…植物の声を聴いてしまったら。
満たされた人生に最後の別れを…ロマンチックなタイトル
だけど内容は切なくもおバカな男性の末路を描いている。
偉大なる自動文章製造機…将来的にはできそうな機械。
クロードの犬…私とクロードの短編集(「ネズミ捕り
の男」「ラミンズ」「ミスター・ホディ」
「ミスター・フィージー」)。
ああ生命の妙なる神秘よ…ラミンズとクロードの話。
クロードは憎めないけど、実行力はある切れ者ではないっていう人は実際にいるし、だ -
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レイモンド・チャンドラーの生んだ私立探偵フィリップ・マーロウは、多くのミステリー作家に愛されている。本書も老境に達したマーロウが登場するパスティーシュとして書かれた。 マーロウファンとしては読むしかない。
探偵業は10年前に引退し、メキシコで余生を送る72歳のマーロウの元に、保険会社からの依頼が舞い込んだ。 溺死した富豪の件を調べて欲しいという。 久しぶりの調査に乗り出したマーロウは、若く美しい未亡人に出会うが....
チャンドラーが生前に残したのは「プードル・スプリング物語」の最初の数章までなので、その後のマーロウがどのような人生を歩んだのかはわからない。 そこは読者が自由に想像して良い -
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父はチンピラギャング ロメイン、世間知らずでロメインの暴力に耐えてきた母クラリッサ、聾唖の娘イブの成長譚。母娘の姉にして聖母的存在のフランはナチスにより子宮摘出を受けた傷を腹に刻まれている。聾唖でなくても女たちには「音(声)」はなく、守ってくれるはずの男達も父(ロメイン、そしてミミの父ロペス)はむしろ攻撃者として立ちはだかり、ベトナムから生きて帰還したチャーリーはブロンクスでロペスの手下に銃殺される。
誰も守ってくれなければ、最後は自ら逆襲するしかなかった女たちの物語でもある。
弱者に寄り添いながらも予定調和ではなく現実感のあるハードな人生を、ボストン・テランは情緒を排したクールな文体で切り取