【感想・ネタバレ】時計仕掛けの歪んだ罠のレビュー

あらすじ

スウェーデン売上1位の傑作犯罪サスペンス。

15歳の少女3人の連続失踪事件を追うベリエル。目撃の通報を受けて急行するも、3度とも現場はもぬけの殻で、彼は苛立ちを募らせていた。事を荒立てたくない上司の警告をよそに、殺人事件だと確信し捜査に執念を見せるベリエルはやがて、それぞれの現場写真に映る不審な女に目をつける。緊迫の攻防、息を呑む逆転劇、衝撃の真相……。ここまで目を見張る取り調べシーンがかつてあっただろうか。ページをめくる手が止まらない、スウェーデンNo.1ベストセラーの傑作犯罪サスペンス!(2020年7月発行作品)

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Posted by ブクログ

 日本では8年前に『靄の旋律 国家刑事警察 特別捜査官』一冊しか邦訳されていないが、スウェーデン本国では大御所の作家であるようだ。複数捜査官による警察小説を得意としつつ、別名義で純文学を書き、文芸評論家であり詩人でもあるいわゆる表現のプロ。そのイメージはページを開いたところからがつんと来る筆力を見ると、なるほどごもっとも。

 冒頭、二人の少年の印象的なシーンから、いきなり犯罪現場らしき場所での警察突入シーンに視点が移る。読者はこれですぐに持っていかれるだろう。

 少女たちの連続失踪事件を追うベテラン刑事の目線で語られる一部から、マークされた怪しげな女性の事情聴取と尋問が始まるが、その辺りから本編は逆転に次ぐ逆転という驚くべき展開を見せる。すべては見た通りではなく、錯綜した裏がある。

 そう。最初に見えたのがすべてではなく、次に見えてくるものも不確かと思えてしまう捩じれた世界。事件の全体像が見えるまでの緊張はラストまで途切れることなく続くが、作中の世界は変容を重ね、真実が幾様にも姿を変え、人間たちは見たままではなく、意外な展開を見せてゆく。

 挿入される少年たち少女たちのシーンが驚きの展開を見せ、作品に重要な光を投じる。現在と過去は複雑に繋がる。フーダニットのミステリーから、プロットを楽しめる全体像となってゆく。何よりもこれは新シリーズの第一作なので、この事件のその後まで気になるという驚くべきシーンで終わりを迎える。いや、始まりを迎えるのか?

 登場人物の多さも、この後の作品への布石になるのかもしれない。予想外の死体発見シーンが読者を混乱させ、何一つ確信させてくれないところが、日本語タイトルにも反映された何ものかであるのだろうか。

 印象的な部分は、主人公と犯罪者の双方の、時計へのこだわり。各章が月日と時刻でしっかり刻まれる。仕掛けへのこだわり。組織同士の化かし合い。時に過去が入り込むこと、などなど。

 二人のヒーロー&ヒロイン像の個性とパフォーマンスが良いので、今後のシリーズに期待ができる。次作の邦訳も進められているという巻末の解説に少しほっとするし、これは二作以降も読まざるを得ない。決着のついていないことが多いように思う。次作まで持ち越しの宿題なのか? 

 全体的にエンターテインメントとして申し分のない読書時間を供給してくれた作品である。次作が待ち遠しい。

1
2020年08月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

初のアルネ・ダール。
翻訳ミステリ大賞シンジケートで紹介されていて読みたくなったので。

評判どおり、物凄く面白かった!
食傷気味だった北欧ミステリかつはみ出し刑事ものではあるけど、そんなこと吹っ飛ばすほどに面白かった。

話の入りは北欧刑事ものではあるが、特に第二部の取調室の攻防以降、印象がガラリと変わる(この攻防自体も面白い)。ここまで先が気になり、ページをめくる手が止まらない小説も久しぶりだった。

最後は、多分賛否両論なんだろうけど、個人的にはいい知れぬゾッとする感じも素晴らしいと思った。
シーズンが続くというか。

シリーズとしては5作くらい出てて、ただ翻訳は2冊目までらしい。非常に楽しみにしているので、どうか最後まで翻訳されますように。

0
2022年11月24日

Posted by ブクログ

10月25日、日曜日の朝10時14分から物語は始まる。そして、ちょうどその1週間後、11月1日の同時刻に物語は終わる。

要はたった1週間のあいだに起こる出来事なわけだけど、その間に過去の記憶と現在とをめまぐるしく行き来しながら、ものすごいスピードと濃さで事件が展開していく。(時間表記が24時間制じゃないので、「10時」とかだけあると朝なのか夜なのか一瞬分からなくなるほど。)

ナタリー・フレーデンの尋問辺りまでは、いちいち色々冗長な気もしてたのだけど、その後一気に物語が花開いていく感じ。そこまでは、回りくどい言い回しとか無駄な罵詈雑言にちょっと辟易しちゃったりもするのだけど、まぁ我慢かな。
なお、被害者の名前がなかなか覚えられなくて最初焦るけど、特に覚えてなくても支障なく最後まで読み進められるので心配御無用。

ヴィリアムの人間性や反抗に至るまでの経緯みたいなものは、もっとしっかり丁寧に説明してほしかった気がする。(そうでないと都合が良すぎる展開で、やや納得しづらい。)…が、それはもしかしたら次作で明かすために敢えてハッキリさせすぎないようにしたのかも??

個人的には、このタイプの作品できちんとエンタメ路線で終わらせられるのはむしろ好印象。俗っぽいって感想の方もいるだろうけど、楽しみは続いた方が嬉しいし謎も解ききらない方が余韻に浸れる。早速続編を購入してみた。

0
2025年10月05日

Posted by ブクログ

北欧サスペンスって感じの、重く湿ったストーリー。展開が面白く、飽きない。
カラッとした感じのが好きな人は、余り適さないと思う。
そして続きが気になる…。

0
2025年09月12日

Posted by ブクログ

最初、設定が4MKシリーズに似てるなと思っていたけど、途中から、もう一人の主人公が現れて、とても面白い展開になる。
雨のシーンが執拗に書かれ全体的に暗いムードなのは北欧ミステリぽっい。
読んで、ぐいぐいと引き込まれて行く。読み応えがある作品。

だけど、読み終えて驚愕の事実を知る。これ続くんだよ!いわゆる3部作らしい。
ところがだよ、この続き「狩られる者たち」は出版されているのに、その先が無い!
アネル・ダールはすでに、このシリーズを5作品、出版してるけど日本では2作目までしか、出版されていないんだ。

これ最悪!2冊目を読むかどうかも迷って、さらにイライラするのが嫌なので、次の作品を読むのを躊躇してる。

小学館文庫!最後まで責任もって出版しろよ!
結構、面白いのに売れ行きが悪かったのか?でもさ、でもさ、この気持ちをどうしてくれるんだ。

0
2024年11月21日

Posted by ブクログ

「怒涛の展開」
こんなにこの言葉が似合うミステリーは、滅多にない。

どんな感想を書こうとしても、全てネタバレになるような気がして、書けない。

北欧ミステリーは好物だけど、またひと味違う。
印象的なのは「雨」……。

でも、最後だけは気に入らない。
次を「読まなければいけない」のと、「読みたくて仕方ない」は、違う。
だからちょっと残念。
なぜそう思うかは、やっぱりネタバレ。

0
2023年10月04日

Posted by ブクログ

 今までに経験した事がないストーリー展開。一体どんな結末をむかえるのか。そして次作へと引っ張るその嫌らしさww。北欧ミステリーはこうでなくっちゃ!!

0
2022年08月10日

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北欧モノの例にもれず、陰鬱なトーンが全体を支配している。そして残酷な殺人事件…。

文章が細密で、序盤の取り調べシーンの濃厚な描写は迫力満点。しかもそこからのプロットの展開も見事で、ラストまで一気に楽しめる。
比喩や暗喩が多いうえに緻密な文章で読み応えあり。

しかし、完全に事件は解決しておらず続編に続く、かな?

0
2021年12月08日

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一年七ヵ月の間にスウェーデン国内で起きた、三件の十五歳の少女失踪事件。ストックホルム警察犯罪捜査課のサム・ベリエルは同一人物による連続殺人だと主張するが、上司はそれを否定しまともに取り合おうとしない。しかしベリエルの主張の裏には、彼だけが知っている根拠があった。そしてついに彼は、容疑者へと辿り着く。だが尋問に臨んだベリエルを待ちかまえていたのは、予想を遥かに超える驚愕の事実だった―。『靄の旋律 国家刑事警察特別捜査班』が印象に残る作品だったので、翻訳が途絶えのを残念に思っていた。新シリーズはツイストがやや効き過ぎ。しかも次作に続くとは。楽しみである。

0
2020年10月08日

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三人の15歳の少女の失踪から始まる物語。三人はどこへ消えたのか。主人公のベリエルの捜査と途中で挿入される一つの挿話。緊張感や不安感が伝わってくる展開と徐々に犯人の姿が見えてくると同時に増していく狂気。シリーズの一作目としてすごく面白く、ラストの展開で次作が非常に楽しみになった。

0
2020年09月27日

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調子良過ぎる感があるけど、迷路に誘われ置いてきぼりにされた様な感覚の内容。章ごとに入れ替わる不思議感。他の方も書いていらしたが、先入観なしで読んで頂きたい。

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2020年09月23日

Posted by ブクログ

ネタバレ

スウェーデン。少女失踪事件の有力な手掛かりを得て現場に踏み込んだべリエルたちだが,すでにそこには誰もいなかった。これは連続殺人事件なのか。当日撮影した写真の中に,あるヒントを見つけたが。

またも北欧ミステリ。森林が多くて寒くてという感じが不気味さを盛り上げております。冒頭から,べリエルが時計大好きぽいことがわかるのですが,タイトルの意味と,なぜべリエルがこの事件に執着しているのかと,途中でえっまさかそっち・・・と思いきや展開がまた二転三転するのとで,読んでいてちょっと疲れます笑 いや,面白いけど。

そして最後・・・事件解決のカタストロフィーは持たせつつも,最後・・・。
続きものだったのか・・・。

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2020年08月23日

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ネタバレ

監禁ものはつらいな、と思いつつ、

もう一人の主人公の登場の仕方、それがバチバチ後相棒になっていく過程がかなり意外で面白い。

早く次作を読みたい。

0
2020年08月15日

Posted by ブクログ

 巻末の解説にある如く『型破りなミステリ・シリーズ』である。
勘による捜査。ネットワークを駆使した現代的調査。警察のみではなく、よりグローバルに広安警察が絡む。随所に描かれる主人公・ベリエルの心象風景。
 
 次作が楽しみな展開の結末に、
ジェフリー・ディーヴァーやジョー・ネスボに推薦される作家、アルネ・ダールと出会えた幸運を思う。

0
2025年07月18日

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仄暗い雨の描写と執念。信じられるのは自分だけ。幼い頃の体験から逃れられない彼ら…しかし一連の事件は序章にすぎない。この一冊がまるまるプロローグかのような驚愕のラスト。

0
2025年06月29日

Posted by ブクログ

ネタバレ

序盤は、何が起きているのかも各キャラクター像も掴みきれないまま展開していく。どうやら主人公のベリエルたち警察は少女の誘拐・監禁事件を追っていて、ベリエルだけがこれは連続した事件だと睨んでいるらしい。そして彼はすべての現場に写り込む一人の女性の存在に気付き、その女性ブロームを特定して尋問する。ところがそこから物語はひっくり返る。追っていたはずのベリエルはまんまとブロームの罠に嵌ったのだった。
ベリエルとブロームの二人は同級生で、まだ10代だった遠い昔、彼らの学校にヴィリアムという奇形の転校生がやってきた。ヴィリアムはその容貌から酷いいじめを受けていたことから、ヴィリアムは特定の年代の少女に恨みを抱き、無差別に誘拐・殺害していると二人は推理した。
北欧ミステリらしいダークな雰囲気がクセになる。日本でもスウェーデンでも、公安という存在は興味を掻き立てる。

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2025年04月27日

Posted by ブクログ

続きは気になる。
でも、主人公ベリエルがどうにも肌に合わない。
全体が湿った感じの暗さ全開なのも合わなかったなあ。
モリー・ブロームが出てきてからが読みやすくて面白かった。

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2025年01月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

いっちばん最後の最後でうわぁ〜って声が出てしまった。あぁああ。こわぁ〜。。

他の方のレビュー見たら、どうやらシリーズは5作出ていて、そのうち2作目までは翻訳されることが決まってるらしい。

アレックス読んだ時も思ったが…翻訳モノは苦手かもしれないなぁ。というか、ジェフェリーアーチャーとかスティーブンキングとか、ほとんどアメリカの作家さんしか読んでないからかも…アガサクリスティは読んだけど、数十年前で昔の訳って感じあるし。
あ、そもそも非英語→英語→日本語 って訳されてるのね。え、これどういう意味?みたいなことが多々あってなかなか読み進むのに骨が折れた…

ベリエルが何を感じて何を考えているのか?
主人公の過去や感情が伏せられたままで話が進むパターンはたくさんあるけれど、それが作者の意図なのか、私が文章読みきれてないからなのか、掴みかねたままだった。。

前半もしかして犯人はベリエルの過去絡み?と思っていたら、怪しかった女が実は子供の頃の同窓生ででも公安警察で、でもさらにもう一枚あったのが、個人と組織の力の違いが見せつけられてよかった。

タイトルの「時計仕掛け」はどういうことなのかな?英題「Watching You」。えええ?って感じ。それってヴィリアムが、ベリエルを、てこと?タイトル知ってたら読んだ感じもまた違ったかも。

でも前半と後半で展開が変わった後も、ベリエルの性格パターンが今ひとつわからないのでなかなか感情移入できなかったんだよな…

前半の歯車や、ベリエルの不安定さや、ちょいちょい挟まってる何かの過去の記憶?、後半は違う意味での不安(誰が敵か?)、全体的に不安要素がいっぱいで、最後に彼が死んでも何も明確にならず(文字通り、何も!明確には)
モヤモヤが続いたままラストでアレ。。。。

やっぱりコレ、ちょうどこの間まで見てたエルピスで、関係者が口封じに殺されるアレかな??っていう。。。

でもラストのあれのおかげで続きが読みたくなった。ISとかイスラムとか出てきてたし、なんか壮大な話になるのかな…

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2023年01月04日

Posted by ブクログ

北欧のミステリを続けて読むと同じ作家の本かと錯覚し、物語も錯綜してしまう。
北欧の小説から独特の気候を感じる。日本の小説では一度も思った事がない。凄い!

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2022年08月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

始まりは3人の連続誘拐事件を追う、スウェーデンミステリーの少し暗い話かと思ったが、途中から一変。
暗い、もの悲しい雰囲気はそのままにサスペンスミステリーへ。
なかなか面白くはあったが、動機等納得がいかないところもいくつかあり。次作ではっきりするのか。
あんな終わり方をされると次作を読まざるをえない。

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2021年05月03日

Posted by ブクログ

映画っぽい。主人公は男性と女性のビジネスパートナー。脇役はすっと出てきてさっと消える。捜査の流れで地味なところは削って、映える瞬間だけを切り取って見せる。ISとかあるので映画はちょっとアレかもですが。文体はややくどい。

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2021年04月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

CL 2021.1.5-2021.1.12

出だしとラストは全く違う様相。
前半は好きになれなくて、終盤面白くなってきたと思ったのに、あのラストはまた好きじゃないなー

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2021年01月12日

nao

ネタバレ 購入済み

えーっ嘘でしょー!

嘘でしょ、が最後を読んだ感想です

現場を見て何かを感じるとどこかに行ってしまうか思考の深みにはまって動かなくなるか、という大変迷惑な主人公で、いかに有能でもこんな上司を持った部下は大変だーとウンザリしながら読んでいました。
自分だけわかっている独り言が多く、挫折しそうな時に第二部の後半で新たな展開になります。
結局、私は犯人が誰か分からなかったのですが、それは今後明らかになるんですかね?
モヤモヤしながら最後まで行くとかなりの衝撃が待っています
私はすごくショックでした
あー、気が進まないけれど続きは気になるー
全部シリーズが終わってから読みたかったです

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2020年10月25日

Posted by ブクログ

久々のアルネ・ダール。前作は若干モヤモヤした感じの読後感だったので、過剰に期待しないよう読んでみた。

トラップ、歯車、連続失踪事件と、どうしてもジェフリー・ディーヴァーを連想してしまう序盤の展開に自然と不安感が増していったが、容疑者との尋問で不安な気持ちは吹っ飛んだ。ここまでのプロセスもいいし、だからこそのこの緊迫感は期待以上。十分すぎるページ数を残しての展開に浸っていたら、実は二重底のさらに奥にストーリーの素顔が隠されていたという驚愕の構成。

犯人像もいいし、謎解きの部分も面白く読めたけど、事件の背後にあるものがパーソナルな事柄だったのが肩透かし。前半は警察小説で、後半は人間ドラマのような印象。でも続編に繋がる鋭い切り込みに食指を動かされたので、多分読むのだろうと思います。

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2020年10月17日

Posted by ブクログ

待望の新シリーズ第一弾。本当の敵(黒幕)に対峙?する二作以降を期待させる出だし、という感じ。雌雄コンビを結びつける過去のエピソードが唐突に明らかになるのは我田引水の感があるが、熟成していくであろう二人の連係とは別に、鹿の目をした「弟子」との関係がどうなっていくのか楽しみ。

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2020年09月03日

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