田口俊樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレオリバー・ストーン監督の映画「スノーデン」を補完しようと読んでみた。
本書の前半は、映画の香港でのシーンそのままだ。本書を読んで、スノーデンの決意、その貴重な情報をいかに効果的に世に問うかに煩悶とする<ガーディアン>陣営の苦悩が良く理解できた。本書を読んで、映画を再度見直したくなった。
映画ではジョセフ・ゴードン=レヴィットが実に人間味のあるスノーデン像を演じきっていて、実物以上の好人物と思って観ていたが、本物のスノーデンも実に知的で思慮深く、なにより覚悟が素晴らしい。
言葉のひと言ひと言が、実に深い!
「マスメディアの自由闊達な精神の保持とインターネットの自由のために戦ってください。私は政府の最も暗い一画で働いてきました。彼らが恐れるのは光です。」
「われわれは原則を強化すべきなのです。権力を持つ者がプライヴァシーを享受できるのは、一般人も同じように享受できる場合に限られるという原則を。人間の方策としてというより、自然の摂理として働く原則を。」
そして逃げ隠れせず、自ら名乗った思いも素晴らしい。
“自分が何者なのかを合衆国政府に定義させるのではなく、世界が見つめる中で自ら定義する”
情報ソースが秘匿されることで回りに及ぼす被害にも配慮したという(自分が情報を抜き出したという証拠すら残してきたというのだから恐るべしだ)。
さらに、身元を明かした上で、必要以上に、その身を晒すことはしない。それは自分がリークした情報、“真実”の中身から世間の注目を逸らしたくないからだと。 お金にもなる、保身にも、身の安全にもなる各種のメディアからの取材要請を一切拒否し、”名声を求めるナルシスト”という、合衆国政府寄りの罵倒を封じ込める。
そんな毅然とした行動を、僅か29歳のエンジニアが取れるものだろうか。余程、己が接してきた「政府の最も暗い一面」の闇が深かったと思わされる。恐るべきことだ。
本書の中盤からは、持ち出された情報の一部が紹介されるが、そこは斜め読み。その情報の重要性が正直イマイチ理解できなかった。
そして後半は、スノーデンの話題から離れて、記者として著者の身に及ぶ影響、こうした反政府的な情報を取り扱うことの危険などが語られて、それはそれで面白い
“ジャーナリストの肩書がなくなると、報道の正当性が疑われる”、
“さらに、”活動家”にされると、法的な面にも影響が出てくる“、
“いったん”活動家”の烙印を押され“、”活動自体が犯罪と見做される“
そういったことを、著者グレンは、身をもって学んだという。ジャーナリストが政府の秘密を発表するのは一般的に合法とされるが、それが重要な秘密ともなると、法ですら守ってくれないということか・・・
そんな、世界の真実に迫ろうとする記者たちの闘いの話も実に興味深いが、やはり、香港を離れてからのスノーデンのその後も、もう少し知りたかった(が、それをスノーデンが望んでいないことも理解できる)。
<ガーディアン>がスノーデンの情報を発表した時に、そのサイトの冒頭にこう記した;
“ダニエル・エルスバーグやブラッドリー・マニングと並び、スノーデンは合衆国史上最も影響力を持つ内部告発者としてその名を歴史に残すだろう”
そのスノーデンに、著者グレンが“何度も繰り返し質問した結果”、最後にたどり着いた、“本物と思える回答”、 スノーデンの本心を備忘として記しておこう。
「人間のほんとうの価値は、その人が言ったことや信じるものによって測られるべきではありません。ほんとうの尺度になるのは行動です。自らの信念を守るために何をするか。もし自分の信念のために行動しないなら、その信念はおそらく本物ではありません」 -
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暴力的な父と、気弱な母の間に生まれた聴覚障害を持つ少女のイヴ。そんな母娘の前に現れた女性”フランは、二人の生活に積極的にかかわり、二人の生活は徐々に良くなるように思えたのだが…
いくつかの犯罪が出てくるため、サスペンスといえばサスペンスですが、この小説の本質はそこではありません。この小説が描くのは不幸に負けず生きようとする女性の姿です。
聴覚障害というハンデ、道を踏み外していく父、生まれながらにして、そうした宿命を背負わされるイヴですが、運命はさらに過酷です。光が見えたと思いきや、それが理不尽に、そしてあっけなく奪われてしまうことが多々あります。
やり場のない怒りや無力感に負けそうになるイヴ。それでも彼女はフランに支えられ、そして成長していくに従い、自分と同じような境遇の女の子を支える側にも回り、強く生きようとします。その姿の力強さこそが、ミステリやサスペンスの枠を超えて評価されたのだと思います。
イヴを支えるフランも、戦争の際、心身に深い傷を負った女性です。だからこそこの二人が、親子の絆をこえて、より深く結び付いていく姿も、心に迫ってきます。
文章は少しクセがあり、読みにくく感じることもあったのですが、そのクセが女性たちの生きざまを凛々しく魅せてくれていることも確かだと思います。
2011年版このミステリーがすごい! 海外部門2位 -
Posted by ブクログ
プレイボーイに掲載されていたというロアルド・ダールのエロティック・ショート・ストーリー集。稀代の漁色家、オズワルド叔父さんの性遍歴「来訪者(The Visitor)」、お互いの妻を交換して楽しもうと企む「夫婦交換大作戦(The Great Swicheroo)」、未亡人が旅先で初恋の男と再会してコトに及ぶ「やり残したこと(The Last Act)」、人騒がせな媚薬をめぐってオズワルド叔父さんが再登場する「雌犬(Bitch)」の4編を収める。
いずれも言うほどはエロくはなく、艶笑譚といった感じ。ダールらしい皮肉は効いているが、ヒネリはまあよくあるレベルで、ゾッとするような不気味さはほとんどない。まあ、週刊誌読者相手の手遊びといったところか。
オズワルド叔父さんのホラ話っぷりが小気味よく「セルボーン博物誌」も読みたくなった。 -
Posted by ブクログ
『狂信的な養蜂家、浮気を隠蔽する妻、骨董品をだまし取ろうとする偽神父などなど、一癖ある登場人物に訪れる皮肉で残酷な結末! ブラックユーモアたっぷりで贈る、傑作短編集』
ロアルド・ダールと言えば代表作の「チョコレート工場の秘密」の他、「マチルダは小さな大天才」や「おばけ桃の冒険」など、映画の原作にもなった名作を多数生み出した、いわば児童文学の巨匠とも言える存在です。彼の描く作品は、勇気と知恵を持った子供たちが生き生きと描かれており、頭の固い大人たちへの痛烈な皮肉が魅力でした。
本書はその皮肉を全面に出した、"黒"ダールを存分に味わえる作品集です。ゾッとする悲劇や、ニヤニヤ笑える喜劇など、児童文学では味わえなかったブラックな笑いがてんこ盛りです。 -
Posted by ブクログ
作者であるロアルド・ダールは、「チャーリーとチョコレート工場」など児童文学の作家だと思っていた。
表紙にイラストの描かれたこの本を読み始めた時、シニカルな笑い(正直笑えないのだが)に驚いた。
確かに映画の「チャーリー・・・」は、子供じみてエキセントリックな感じのするオーナーのワンカさんが強烈に印象に残ってはいるけれど、小説自体もおもしろく、子ども達にずいぶん人気のようだ。
それと比較すると、辛口。
こずるい人や嫉妬深い人。儲け話に躍起になる人。
他人を疑うあまり、その感情に絡め取られ、自滅の道を突き進む人。
それらが乾いた調子で描かれている。
ざらついた後味が残る短編集。
読んでいるときから、眉をひそめてしまうような出来事があれこれ起こる。
訳の妙味というか、どこか外国の生活感が漂っていて、第三者の目線で読んでいけるのがありがたいとすら思う。
ドッグレースでひと稼ぎしようと企む男たちが仕組んだ悪巧みとその周りにいる抜け目のない男たちとの駆け引きとその顛末を描いた、第4話『クロードの犬』。日々の生活の中で出くわす悪意に気づいても、ふたをすることへのためらいのなさ。
植物と話す術を身につけたと信じる男が周りの人たちとの間に巻き起こす出来事を書いた、第1話『サウンドマシン』
今、ちょうど読んでいる梨木香歩さんの『家守奇譚』の善良な登場人物とはずいぶん造詣が違っている。
日本の風土や歴史など、思考の土台となっているものからすると、『家守』の方がなじみやすい。そう思うのは私だけではないと思うけど。
ちょっと困った人たちに対するストーリーは、落語のように、「おまえらほんとに困ったヤツだね。おれもその一人だけどさ」というのが、聴き手も含めて根底にあり、その困ったところを笑いながらも、滋味のある語りで全部まとめてOKを出してくれるから、じんわりしたり元気になったり。そういうどちらかというと、救いのあるオチを求めてしまうのかも。
一見「うわー、ヒドイ!」と思いながらも、いや待て、この毒がもう少し薄まったら、似たようなこと、あるんじゃない?。
私から見たあなたとばかり思って読んだが、『あなたに似た人』とは、あなたから見た私のことなのではないか?はたと気づいて、自分の中のブラックな一面の存在に、ドキッとした。