田口俊樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
実は著者の翻訳した作品をほとんど読んだことがなかった。それでも本書は面白く、一気に読み終えた。たぶんその理由は、著者がやらかしたエピソードや失敗エピソードが惜しげもなく書かれており、こうしたエピソードが著者と読者の距離を一気に縮めてくれるからではないだろうか。もちろん翻訳にまつわるエピソードも興味深く、なんだか翻訳本に対して肩の力を抜いて接することができるようになった気がする。
特に印象深いのは、原作者であるジョン・ル・カレにコンタクトをした際に怒らせてしまい、ダメージコントロール会議をエージェントや編集者と行ったという話。翻訳者でもこんなことあるんだなとか「ダメージコントロール」という言葉を使っているところに、なんだか翻訳者の存在がぐっと身近になった気がした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ名前は知っていたけれど、初読みの作家。
解説は北上次郎氏、訳は田口俊樹氏というキャストからして実力作家なのだろうけど、たぶん最初はこれじゃない方が良かったんだろうなと。
パンデミック到来後の世界の未来を描いたディストピア小説。
第一章の出だしは「おっ、かっこいい家族小説か?」とも思ったのだけれど、その後は主人公の老人家族以外ほとんど登場人物が出てこない。
そしてインターネットはおろか、テレビ、新聞、口コミですら情報の流入がない世界を生きる物語。
どこまで行っても息苦しく、希望が薄い。
まぁ、こんな世界にしてはいけないという思いばかりは強く感じた。
訳者あとがきで、主人公の老人のやさしさを称えて、”やさしくなれないようじゃ、私など息をしている値打ちもなくなる”と、かのハードボイルドのレジェンドも言っていた、と引用を用いるが、「ん?これって彼のセリフだと思うけどなんか違和感」
と思ったら最近創元推理文庫で出た新訳は田口俊樹氏だたのですね、納得。(ひっそりと宣伝が含まれていて笑) -
購入済み
続編・映像化前提?
話がテキパキ進むのと、前回のように人がバンバン死なないのは良かったかなー
でも、主人公とその周辺の人たちが超人で、やる事全て上手くいくし
タイムリミットがあっても、サクサク新事実が出てくるので「あと何分」とか出てきてもイマイチピンと来ず…
結構な生い立ちの主人公が出てくるのに、浅ーい感じで終わったので、これは続編があったり、映像化を前提にしてるのかなーと思いました
最近、そういう小説が多いですよねー -
Posted by ブクログ
アメリカの作家ローレンス・ブロックの長篇ミステリ作品『八百万の死にざま(原題:Eight Million Ways to Die)』を読みました。
『殺しのリスト』、『殺しのパレード』、『頭痛と悪夢―英米短編ミステリー名人選集〈4〉』に続き、ローレンス・ブロックの作品です。
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〔マット・スカダー・シリーズ〕
アームストロングの店に彼女が入ってきた。
キムというコールガールで、足を洗いたいので、代わりにヒモと話をつけてくれないかというのだった。
わたしが会ってみると、その男は意外にも優雅な物腰の教養もある黒人で、あっさりとキムの願いを受け入れてくれた。
だが、その直後、キムがめった切りにされて殺されているのが見つかった。
容疑のかかるヒモの男から、わたしは真犯人探しを依頼されるが…。
マンハッタンのアル中探偵マット・スカダー登場。
大都会の感傷と虚無を鮮やかな筆致で浮かび上がらせ、私立探偵小説大賞を受賞した話題の大作。
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1982年(昭和57年)に刊行されたマット・スカダー・シリーズの第5作… アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作で、『東西ミステリーベスト100』で海外篇の21位にランクインしている作品です。
足を洗った直後に惨殺されたコールガールのキム… アル中探偵スカダーはヒモのチャンスが殺したと確信したが、彼には確固たるアリバイがあった、、、
感傷と虚無の街ニューヨークを舞台に、スカダーの執念の捜査を描く哀感漂うハードボイルド… アメリカ私立探偵作家クラブ賞受賞作。
一般的に、ハードボイルド作品って、凝ったトリックや意外性のある結末が用意されているわけじゃないので、主人公が魅力的かどうか、感情移入できるかどうかが、面白いかどうかのポイントなんですよねー そういう意味では、マット・スカダー・シリーズは大好きだし、面白ですね、、、
ニューヨーク市警時代に武装強盗を狙った銃弾のひとつが跳弾となり8歳の少女を即死させてしまったことをきっかけに警察を辞め、アルコールに依存するようになり、現在は過去の事件に苛まれながらアルコール中毒から抜け切れず無免許探偵として日銭を稼ぐ生活… 弱いところのある主人公の方が気持ちがシンクロできるんですよね。
本作品はやや冗長な感じがして、中盤はやや集中力を欠きそうになりましたが… 自分の価値観・掟・信念を貫きながら、真犯人を追い詰めていくスカダーの姿勢に共感しつつ、最後まで読み切りました、、、
次もマット・スカダー・シリーズを読んでみようと思います。 -
Posted by ブクログ
現在も深刻な麻薬問題を抱える米国の実態を凄まじい暴力の中に描いた一大叙事詩「犬の力」(2005)/「ザ・カルテル」(2015)/「ザ・ボーダー」(2019)。作家人生の集大成ともいうべき、この渾身の三部作によって、ウィンズロウは紛れもなく頂点に達した。アクチュアルでラディカル。麻薬に関わる者は全て死する運命にあるという暗鬱なる黙示録。現在進行形の鋭利な文体を駆使して生々しい諸悪を抉り出した現代ノワールの境地。どの作品もページを捲る手が白い粉と紅い血に染まっていくような錯覚に陥ったほどだ。現時点での最終作「ザ・ボーダー」に取り掛かる前に構想した本作は、馴染みの〝ウインズロウ節〟が炸裂する犯罪小説の延長線上にあるが、根幹に麻薬戦争を置いており、三部作を補完する作品といっていい。
「ダ・フォース」では、米国/麻薬取締局(DEA)とメキシコ/カルテルは登場しない。フォーマットは悪徳警官物だ。舞台はニューヨーク。物語は、ここから一歩も離れることはない。それだけに分厚い。富裕/貧困という歴然とした格差社会保持の潤滑油としても機能/蔓延する麻薬。吹き荒れる暴力の嵐。ウィンズロウは、通り名や店名などの固有名詞を執拗に列挙してリアリティを高め、汚れた街に生きる者どもの生態を克明に描写する。
主人公はNY市警マンハッタン・ノース特捜部(通称〝ダ・フォース〟)部長刑事デニス・マローン。叩き上げの刑事で、荒々しく狡猾。不条理な犯罪を憎みつつも、男を突き動かすのは、徹底して打算的なエゴイズムだ。そのために小さな綻びから破滅を招くこととなる。マローンは、冒頭で既に何もかも失った男として姿を現す。つまり長大な本篇は、男がいかにして転落の道を辿ったのかという記録なのである。
この街を浄化したいというマローンの理想/清廉さは、ニューヨーク最下層の現実を前に脆くも崩れ去り、体内から腐り切る利己主義へと変転する。焦燥と居直り。私利私欲を貪り、掴んだ権力を過信した果てに堕ちてゆく泥沼。すべては偽善と虚構であった、とマローンが気付く時には、何もかもが手遅れになっている。
本作で特に印象に残るのは、独善的な正義と悪を主人公と共有し、常に行動を共にする「マローン班」各々の関わり方だ。そこには仲間意識よりも、おれたちの縄張り/特権を守るためには不正/暴力を辞さないという閉鎖的で排他的な帰属意識がある。平然と大物麻薬ディーラーを殺し、莫大なカネに代わるヘロインを掠め取り、懐に捩り込む。共犯関係にあるマローン一味は、限界を超えた傲慢に起因する事件を機に崩壊し、強固であったはずの信頼/愛情から、不信/裏切りへと急転直下し、互いを憎悪する最悪の結果へと至る。己の命を捨ててでも〝友〟を守り抜くと誓った男たち。マローンは、それが幻想に過ぎなかったことを、追い詰められ、易々と国家権力に屈する己の甘さを前に痛感するのである。終盤で延々と続く羞恥心の吐露。アンチ・ヒーローの末路は憐れではあるが、敢えて読み手の共感を拒むが如く、作者は主人公を突き放し、正義と悪に境界など無いことを示唆して、物語を断ち切る。
快楽に通じる歪んだ自愛こそが人生の麻薬である。ウインズロウの達観は、さらに深まっている。