田口俊樹のレビュー一覧

  • 陽炎の市

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    シリーズ2作目。
    命からがら逃げだしたダニー一派が、サバイバルから一転する。
    映画「ゴッドファーザー」の内幕を描くようなハリウッドの虚々実々が描かれており、自身映画化作品があるドン・ウィンズロウだけに、ウィットとブラックユーモアが効いた文章でハリウッドが描きこまれる。
    映画ファンだと、実名もどんどん出てくるので実に楽しめる。
    ただ、「犬の力」などの3部作を期待すると、趣がだいぶ違って中だるみに感じるかもしれない。
    鮮やかな出だしで始まり、ラストも上手くつながっていて巧みなプロットに多彩なキャラの絡み合いを楽しめる。

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    2025年03月25日
  • マット・スカダー わが探偵人生

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    マット・スカダ―の自伝だ。
    えっ・・・あのシリーズものの主人公のマット・スカダ―?
    小説の主人公が自伝?
    御年84歳になったスカダ―がローレンス・ブロックに促されて書いたんだそうだ。
    めちゃくちゃ面白そう、楽しみ

    自伝なので幼少期の父親のこと母親のこと、幼くして死んでしまった弟が原因で、家族が少しづつ変わっていったこと。
    父の死のこと
    少年時代のアルバイトのこと、ニューヨークでの警官時代のこと、実はこの時代のことが多く語られていて、
    題名なんかは思い出せないけど、あの話に出てきたことかなとぼんやり思い当たるシーンなど出てくる。
    そのあとの結婚、離婚、エレインとの出会い、TJなども出てきて、本

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    2025年03月24日
  • 森から来た少年

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    「森から来た少年」
    タイトルからして「ジャングルブック」のような物語もおもいきや、“森”はあまり関係無かった。
    異能の持ち主による「探偵物語」といったところ。

    スピード感がありひねりも効いた展開で、あっという間に読んでしまった。

    ただ、最後まで主人公ワイルドのここまでの物語が先にあったような気分が無くならなかったのが、残念。

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    2025年03月09日
  • 業火の市

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    「ゴッドファーザー」をジャンル分けしにくいように、この作品もジャンル分けしにくい。

    NYの外れ、狭いエリアで共存していたアイルランド系ギャングとイタリア系ギャングの友情と反目、抗争を描いている。
    そのきっかけが一人の女性から、というところが話のポイント。麻薬でも金でもない。そこが話のサイズを象徴しており、従来の「犬の力」などとは大きく違う。

    長く共存していたことから、2代目達は小さい頃から一緒に育った仲間・知人で会ったにもかかわらず、やがてそれぞれのコミュニティに属するギャング(と言っても日本の小さな任侠ヤクザという感じ)になって、互いに望むことなく闘いに身を投じていくさまがリアルで、切な

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    2025年03月08日
  • 捜索者の血

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    3歳の息子マシュウを殺した罪で5年前から終身刑に服するデイヴィッド。彼にとっては身に覚えのない罪だったが、喪失感と愛する者を守れなかった後悔から無実を訴えることなく刑に服していた。しかし元妻の妹が面会に現れ、1枚の写真を彼に見せる。そこには、成長したマシュウの姿が写っていた。デイヴィッドは真実を突き止めてマシュウを取り戻すため、脱獄を決意するが……。

    安定のサスペンス。追う側に今回はFBI捜査官ペア、そしてあの弁護士もちゃんと登場します。

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    2025年03月03日
  • 神は銃弾

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    アメリカ国民に広く根付き、意識せずとも行動規範となっているキリスト教。このことは一神教を持たない日本人には理解し難いことも多々あると思うが、一方でキリスト教の教えとは程遠いモラルの中で病んでいるアメリカ。
    この作品に登場する元ジャンキーのケイス、サイコキラーのサイラスが語る言葉は、哲学的で、現代を反映した過激だが新しい宗教的な響きがある。
    それは世界中に広まったキリスト教やその他の一神教が、世の中をパラダイスにするどころか、血みどろの世界を創っている元凶なのではないかという疑念さえあるからではないか。
    心底、神を畏れ、その教えに従うものはもうアメリカには少ない。しかし一方で銃弾の力を信じ、それ

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    2025年02月10日
  • ジキルとハイド

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    ネタバレ

    2024/10/30

    読み始める前に、裏表紙に「なんとジキルが薬を使ってハイドになっていたのだ!」って書いてあっておい何ネタバレしてくれてんねん!って思ったけど、読んでみてわかった。メインテーマはそこではなく、二重人格の代名詞とも言われるジキルとハイドの二面性や内なる野望とそれを抑えようとする理性の葛藤が読んでいて面白かった!
    短いから割とサッと読めるしスティーブンソンの代表作なので非常におすすめ。
    ミステリーでもあり怪奇小説でもあり所々イギリスゴシックの雰囲気も読み取れるし、良作。1冊で楽しめる

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    2025年02月08日
  • 狩られる者たち

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    北欧ミステリー。最初は訳がわからなかったけどだんだんと引き込まれていった。海外ミステリーはまりそう。

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    2025年01月29日
  • その犬の歩むところ

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    邦題は詩的で印象的なタイトルである。
    原題は簡潔にGiv(ギヴ)。物語の軸となる犬の名である。副題はThe Story of a Dog and America、1頭の犬と「アメリカ」の物語。
    原著発行は2009年。つまり、9・11の同時多発テロを経たアメリカだ。心を病んだ多くの帰還兵を抱え、ハリケーン・カトリーナの甚大な被害にも見舞われたアメリカだ。
    そのアメリカを1頭の犬が流転する。犬はあるときは奪われ、あるときは自ら選んだ人に寄り添う。犬は時に人を救い、時に人に救われる。
    彼の数奇な運命は人と人とをつなぎ、奇跡と言ってもよいような希望をもたらす。

    物語の語り手はディーン・ヒコック。

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    2025年01月20日
  • ジキルとハイド

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    有名だが、二重人格モノということ以外知らず初読。
    ハイドになるために薬を使用し、姿形まで変わってしまうというので驚いた。
    多重人格というよりは、素面の時は常識人だが酒飲むと性格が豹変する人に近い。
    序盤は推理モノのようでもあるが...。
    自身の快楽を満たすために生み出したハイドと、ロンドンの名士としての威厳を保ちたいジキルの間で揺れ動く葛藤が読みどころか。面白い。
    古典だが、2014年の訳でとても読みやすかった

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    2025年01月07日
  • マット・スカダー わが探偵人生

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    84歳になったマット・スカダーが、出生から35年間の人生を振り返る自伝。
    本書においてスカダーは実在の人物であり、これまでにブロックが書いてきたシリーズは彼の経験を基にした小説という設定のメタ・フィクションだ。実際にブロックとスカダーがやりとりする場面もあるからややこしい。
    シリーズではあまり触れられていなかったスカダーの両親、生後すぐに亡くなった弟の存在、学生時代、警察官としてのエピソードなどが淡々とした筆致で描かれている。
    『八百万の死にざま』を刊行直後に読んでから約40年の付き合いだが、どうやら本書で読み納めとなりそうだ。

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    2025年01月05日
  • ジキルとハイド

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    ネタバレ

    本書は全ての人間に秘められた2面性を題材に話が進んでいく。本の裏書でジキルとハイドは同一人物だと明かされており、その事を知った上で読んだのだが、最後に書かれた博士の独白を読んで全ての謎が解けた。
    無秩序な自由や快楽を求める悪(ハイド)と、それを抑圧する善(ジキル)が1つの肉体で交錯し、最後には死を持って終わりを迎えてしまう。
    訳者のあとがきも面白かった。

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    2025年01月02日
  • あなたに似た人〔新訳版〕 I

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    久しぶりに読み返した。
    ブラックユーモアというか、人間のちょっと悪い部分、あまり意識せずに人に見せて「うわっ」と思われる一面が描かれていてとても面白い。
    『皮膚』が好きかな。自分に似ているのは『ギャロッピング・フォックスリー』かもしれない。

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    2025年01月02日
  • 終の市

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    ドンウインズロウ最後の作品。
    後半のたたみかけるような展開、疾走感。ラストよかったけど、終わってほしくなかったなあ。
    今作ではダニーの仲間ではネッド・イーガン、敵役ではクリス・バルンボがクールでカッコいい。ダニーの母親マデリーンもいいんだよな。
    ウインズロウ復帰してくれないかなあ。

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    2025年01月02日
  • 神は銃弾

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    初期(「音もなく少女は」まで)のボストン・テランの小説でわたしが読みたいのは、繊細で美しく複雑で荒々しい、とにかくカッコいい文章とそこに幾重にも厚くかけられる比喩のベール。シンプルなストーリーの上で語られる窮地に陥り人生を解決しようとする人々それぞれにある、こだわり、理、世界をどう観ているかの視点。そして、女性が、虐げられたものが、自らに手で独立を、尊厳を取り戻す物語だ。

    「そう、神は白人で、男なんだよ。だけど、あたしの意見を言えば、それこそ、そもそもの罪だ。それでもう先例ができちまったんだから。神性ー完璧ーは男だって言っちまったんだから。それこそ息子に引き継がれるべき白人の文化で、だから、

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    2024年12月31日
  • ダ・フォース 下

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    「一本の通りを歩いているだけで五つの言語が聞こえ、六つの文化のにおいが漂い、七つの音楽が聞こえ、百もの人種とすれちがい、千もの物語が存在する。そのすべてがニューヨークだ。」

    「そうしておまえは略奪者になった。純然たる犯罪者に。それでも自分は犯罪者じゃないと自分に言い聞かせた。奪う相手は銀行ではなく、ヤクの売人なんだから。ヤクを奪うのに人を殺したことはないんだから、と。」

    上巻はニューヨーク、マンハッタン、その街、“City”の話。街の名所やそこにあるカルチャー、エピソード、ヒーロー刑事、あるいは貧富の差や人種差別、ドラッグ、そして警察、市政の汚職。綺麗な部分も汚れてみえる部分もどちらも詳細

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    2024年12月27日
  • 飛行士たちの話〔新訳版〕

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    とても良かった。本の中で、たくさんの人が死んでいるので、良かったなんて言ってはいけないのだが ほんとうに良い本だったと思う。読みながら、ところどころで涙が滲んだ。戦争の時代に生まれる命と そうでない命の選別は、一体誰がおこなっているのだろう。考えても 分からないことをたくさん考えながら読んだ。言葉にならない感情も 幾度か浮かんできた。飛行機の中で ひとりで死ぬことはたぶん とても寂しいことなんだと思った。空の上で操縦桿を握っていた強ばった手が 女の柔肌を夢見る。誰かが死ぬ間際 同じ視界に小さな花を捉える。遥か上空で見つけるちっぽけな人間の命の重さを やがて 手遅れになった場所で問い掛ける。累々

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    2024年12月11日
  • 時計仕掛けの歪んだ罠

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    最初、設定が4MKシリーズに似てるなと思っていたけど、途中から、もう一人の主人公が現れて、とても面白い展開になる。
    雨のシーンが執拗に書かれ全体的に暗いムードなのは北欧ミステリぽっい。
    読んで、ぐいぐいと引き込まれて行く。読み応えがある作品。

    だけど、読み終えて驚愕の事実を知る。これ続くんだよ!いわゆる3部作らしい。
    ところがだよ、この続き「狩られる者たち」は出版されているのに、その先が無い!
    アネル・ダールはすでに、このシリーズを5作品、出版してるけど日本では2作目までしか、出版されていないんだ。

    これ最悪!2冊目を読むかどうかも迷って、さらにイライラするのが嫌なので、次の作品を読むのを

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    2024年11月21日
  • 終の市

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     主人公ダニー・ライアンがラスヴェガスで実業家として成功した姿から最終章は始まる。

     ラスヴェガスでカジノ事業を展開する実業家にマフィアの影は禁忌だが、ダニーがマフィア出身であることが色々なほころびから見えてくる。また、ライバルのホテル王ワインガードのマフィアとの関係も露になる。ライバル関係は抗争を呼び、ダニーの古くからの仲間や、ビジネスパートナーも犠牲になる。第2部の陽炎の市では、なりを潜めていた暴力要素が爆発だ。

     最終章ではダニーの子供イアンが事業を引継ぎ、発展させている様子が描かれる。世代交代がマフィアとの関係をロンダリングしたかのようだ。

     ラスヴェガスでのカジノビジネスの、公

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    2024年11月20日
  • ジキルとハイド

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    新潮文庫の100冊で購入しました。
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    紳士と悪魔、
    ふたつの人格。
    ホラーの古典!
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    ロンドンの紳士、
    ジキル博士は薬を飲むと邪悪なハイドに変身してしまう。
    どちらが本当の自分なのか。
    葛藤と苦悩のなか、自分が自分でいられなくなる感覚。

    130年前の作品ですが、
    翻訳のせいか全く古さを感じず。

    ミステリー要素もあって、
    最後まで一気に読みました。

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    2024年10月20日