田口俊樹のレビュー一覧
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アメリカ東海岸の港湾都市を仕切るアイルランド系マフィアとイタリア系マフィアの対立を描いた小説で、3部作の第1作にあたる。作者のドン・ウインズロウが本シリーズをもって筆を絶つ宣言をしているので、心して読まねばと意気込むが、巻頭の登場人物一覧表と、人物相関図を見ると、憶えきれるかどうか不安が沸き起こる。
不安は杞憂に終わり、読み始めこそ相関図を確認するが、キャラクターが立っているので自然に全体が把握できる。アイルランド系マフィアの一人が主人公となり、悪徳FBI捜査官と組んだイタリア系マフィアに追われる形で、彼らのシマである東海岸の港湾都市を追われることになる顛末が魅力的に描かれている。いろいろな事件、エピソードが連鎖し、あっという間にストーリーが展開していく。小説の力だ。
妻をがんで亡くし、まだ赤ん坊の息子と、かつて有力者であった父親と少数の仲間とともに西海岸に向かうまでが本作だ。残る2作も楽しみだ。 -
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人には出来ることと出来ないことがある
出来ないことを努力して出来るようになることは素晴らしいことだ
そうやって人は成長していくのだ
あるいはそれが生きるということなのかもしれない
だがしかし
どうしても出来ないことというのはある
残念ながらある
向き不向きというものがある
努力では覆すことができない才能というものもある
残念ながらある
どうしても乗り越えられない壁に出会ったとき
無理に超えようせず
迂回して別の道を進むことも必要だ
あるいは壁の向こう側に行くことをあきらめ
引き返したっていい
人生にはそういった壁が存在する
例えばハーラン・コーベンをどうしてもハーラン・ベーコンと読んでしまうといったような
はい、ハーラン・ベーコン(おい)初読でございますよ!
さすがの全米ベストセラー作家のベーコン、プロットが巧み
いやーこれがこう繋がるのかーと度々
面白かった
面白かったんだけど、主人公の元女性兵士マヤがどうしても好きになれない
たぶん友だちになれない
なんていうか、傲慢?なのよね
なんでも自分で出来ると思っている
なわけ無いだろ!と思う
これだから女って奴は!って思う
言いたくないけど、言っちゃう
自信家の女は扱いづらいから友だちになれない(はい女性蔑視発言ね)
友だちになれそうにない人が主人公だとやっぱりちょっと隣を歩きたくなくなってしまう
これもひとつの壁なのかもしれない
それでも終わらせ方がものすごいわい好みだった
このエンディングを書く人だったら、ものすごい相性のいい作品とも出会えそうな気がする
もちょっと何か読んでみたいです
ベーコン -
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1930-40年代のブロードウェイを舞台にした粋なショートストーリー集。中でも素敵なのはやはり恋の話で、生粋の大物ギャンブラーのスカイが惚れたのは魂の救済のため布教活動をする清廉な美女サラ・ブラウンだった。賭場でギャンブラーに声をかけて金を賭けて勝ったら相手に布教活動を手伝わせようとするスカイを、賭場に乗り込んでたしなめ、同じ条件で賭けようと言い出すサラ。その恋の行方は…、名作「ミス・サラ・ブラウンの恋の物語」。愛に多額の金を使いまくるブレインが死を前にして選んだ相手は「ブレイン、わが家に帰る」、荒んでいた俺を立ち直らせてくれた親父さんと少女リリーのために「サン・ピエールの百合」などビュアな気持、あるいは自己犠牲が真ん中にテーマとしてある。愛する人の幸せのために全てを犠牲にする男たち。こんな愛すべき人が現代にいるか!?そして照れ隠しのようにラストでヒネったジョークやオチを入れる。どれも素敵な全14篇。
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ネタバレポール・オースター没に合わせて、なぜかここから手を取ってしまった。
事故で選手生命を失った野球選手が、政治家に転身しようという最中に脅迫状を受けて、それを調査する途中で死んでしまう…という話。ハードボイルド。
ハードボイルドをよく知らないので、メモしておくと、登場人物みんな人生に苦労しているので、タクシーの運転手や雇われのゴロつきもなんかカッコいい台詞を言っていく感じのミステリー小説です。
個人的には真相よりも、主人公を痛めつけてきたボスが、実は依頼人が野球賭博をしていたんじゃないか、という怒りが明かされることが衝撃。もちろん個人的な利害もあるが「野球はアメリカの偉大なスポーツなんだ」というボスと、主人公親子が野球の試合を見に行って真相を考えるシーンを思うと、公認ギャンブル化して日本人選手の通訳が大スキャンダルに巻き込まれた現状は対比的。ちなみに、犯人はボスではありません。
あと主人公がボコボコに殴られるので読んでて痛そうだった。これがハードボイルドなんだなって。 -
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1969年、ハリウッド。
俳優リック・ダルトンは人生の岐路に立っていた。
キャリアが下り坂の彼に大物エージェントがイタリア製作のウェスタン映画に出ないかという話を持ちかけてきたのだ。悩みを抱えながらTVドラマの撮影に出かけたリックが現場で出会ったのは……
リックの長年の相棒、クリフは謎の多い男だった。
妻を殺したが罪を逃れ、戦争中には大勢殺したと豪語する男。
今日もリックの車でハリウッドを流していたクリフはヒッピー娘を拾い、彼女らがチャーリー・マンソンなる男と暮らす牧場へと向かう……
女優シャロン・テートは気鋭の映画監督ポランスキーと結婚し、リックの隣に住みはじめたところだった。
折しも自分の出演作〈サイレンサー/破壊部隊〉が劇場でかかっているのを目にした彼女は、うきうきとチケット売り場の女の子に声をかけ……
アカデミー賞2部門受賞、ゴールデングローブ賞3部門受賞した
〈ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド〉をタランティーノ自ら小説化!
映画にはない場面、映画にはない物語、映画とは異なる結末――
本書はノベライズではない。同じ種子から誕生したもうひとつの物語、堂々たる一編の長編小説なのである。オフビートな小説を愛し、自身の映像言語としてきた巨匠がみせるグルーヴィな語りの才能に瞠目せよ!
マックイーンに匹敵する才能を持ちながら、酒や運の悪さで落ち目にいるリック・ダルトンの苦悩、戦争などで血に染まっている過去を持つクリフ・ブースの暴力性や社会的に不適合さのエグさ、チャーリー・マンソンの売れないミュージシャン時代の過去、クリフ・ブースとブルース・リーのバトルの理由、リック・ダルトンとリック・ブースのヨーロッパ滞在中のエピソードなど、映画では描かれていないエピソードが満載な小説版。 -
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比較的最近コーベン・ファンとなったぼくとしては、まだ数作の読み残し過去作品が残っている状況にやきもき。シリーズ作品が中途で未訳となって以来、すっかりスタイルを変えたシリアス系ミステリの単発作品が続くコーベンだが、中にはお馴染みキャラクターを語り継いだセミ・シリーズ作品や、コーベンワールド地続きと言えるような単発作品も見受けることができる。しかし、本書はそんな単発作品の中でも他のシリーズ・キャラクターは一切登場しないというかなり一作完成度に拘った作者の拘りが感じられる。
主人公が、単独でしかも女性、というだけでも珍しいかなと思えるし、全体構成がサスペンス重視というようになっていて、多層構造の時間軸がヒロインを取り巻く仕掛けだらけのびっくり箱構造というのが、ぼくの本書に対する印象である。謎や仕掛けやミステリーとしての楽しみ、ということに拘る読者であれば、この作品は作者の中でも最大級にトリッキーな作品と言えるかもしれない。
ヒロインの周囲に何人も事件や事故の死者が出ているという、まずもって偶然ではあり得ないような状況そのものが本書の特徴であり、その謎解きそのものが最後まで読者を引っ張る作品であるように思う。ヒロインに密接な関係のある夫と姉が、それぞれ銃殺され死んでいるという状況。さらに他の謎めいた死者たちが順を追って登場する。
何よりも夫の死すら疑わしくなる状況がスタート後すぐに登場する。死んだはずの夫が隠しカメラに映っていたのだ。ヒロインの目の前で暴漢によって銃殺されたはずの夫が。
以上の一見解けそうにない状況がヒロインを正常ではない状況に追い込んでゆくのだが、それでも異常の側に踏み込まずあくまで冷徹に真実を探ろうとするヒロインは、実は中東で度重なる戦闘経験を積んだ歴連の兵士なのである。彼女の経験したいくつもの理不尽な死と暴力の世界。サバイバルに長けた特殊能力の数々。クールさ。冷徹な知性。そうした彼女自身が捜索マシンであり武器であるというところが本書の特別な軸となってストーリーを引っ張ってゆくのだ。さすがコーベン・ワールド全快のエンタメ魂、と喝采を送りたい作品なのである。
後半はページを繰る手が止まらなくなり、一気に真相に向かって雪崩れる。夫の属していた貴族一族(ついボライター・シリーズのウィルを想起する)という権力というパワーの裏に控える闇の奥へと、読者はヒロインとともに導かれてゆく。沢山の家族や親子の姿が活き活きと暮らす中で、独り真実に向けて闘うヒロインの姿が頼もしい力作アクションである。
ちなみにネットフリックスでドラマ化(12回完結)されているようなので、メディアを変えた二度目の楽しみを求めてみようかと思っている。 -
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ネタバレ映画に詳しくないし、タランティーノ作品は2作品しか見ていない。本書のタイトルはタランティーノが撮った映画のものであると知ってはいても、映画は見ていない。
そんなんでなんで読んだのかといえば、『キル・ビル』で勘違いだったかなと思わせられたにせよ、『パルプ・フィクション』の衝撃が鮮烈であったからだ。あの衝撃を再びと願ったからだ。
それは叶った。
物語の結末あるいは本書の完成度を見定めるためには『対決ランサー牧場』を見なくてはならない。本作品が結末において焦点をあてているシーンだけは、すくなくとも。
それを知らぬゆえに満点を与えられないが、『パルプ・フィクション』で覚えた「らしさ」が満載で、とてもよかった。