トルストイのレビュー一覧

  • 光あるうち光の中を歩め

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    宗教色の強い難解な本です。それでも多くの日本人が手に取っているのは魅力的なタイトル(元は聖書の言葉ですが)とこれくらいなら読めそうと思わせる本の薄さのせいでしょうか。
    作中のパンフィリウスのような生活を送るのは、個人としても集団としても、とても難しいことです。そもそもパンフィリウスの説明には理解に苦しむ箇所もあり、一方で、キリスト教に傾くユリウスをたびたび引き戻す老人の言うことの方が合理的で正しく思えるところもあります。
    いつかこの老人の言うことがすべて欺瞞だと感じられるようになれたら、その時はじめてこの物語が、すなわちトルストイの思想が十全に理解できるのだと思います(そうなりたい、とか、そう

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    2024年07月19日
  • イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ

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    ▼えぐいです。トルストイさん。

    ▼「イワン・イリイチの死」は、俗物の役人(貴族なんだっけな)が結婚して働いて子供もできて出世もするけど中年?初老?で病を得て死ぬ。なんだけどこの人がもう、なんのためにどう生きてきたのか、人生が絶望至極の中で病にもだえ苦しむ姿が、もう圧巻‥‥。実にひやりとじめっと冷たくて絶望的な強烈さと突き放したユーモアに包まれる衝撃。

    ▼「クロイツェル・ソナタ」要するに「嫉妬の余り妻を殺害しちゃった男の回想物語」なんです。19世紀?20世紀初頭?のロシア社会のなかで、この人は別段死刑にならずに数年して社会復帰している。そして、たまたま列車で乗り合わせた若者が、知識ゼロから彼

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    2024年04月14日
  • イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ

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    ネタバレ

    『イワン・イリイチの死』が特に好きだった。
    私もとある病気で、この苦しみから逃れられるくらいなら死んだっていいって思うくらいのお腹の痛みに苦しんだことがあるので、イワン・イリイチの苦しみの描写はとても共感できた。
    病気になると、周りは最初は心配してくれていても、そのうちこの嫁のように疎ましく思ったり病気になったことや苦しんでいることが他人への当て付けなんじゃないかと思われたりすることは本当にあるし、病気のせいで周りを暗い気持ちに引きずり込んでしまうこともよくあることだと思う。

    自分の人生は間違いだらけだったんじゃないか、こんな時に甘えることができるのは使用人だけなのかとか、なぜ自分だけがこん

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    2024年03月30日
  • 戦争と平和 (二)

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     少しずつ話が動いてきて、歴史上の出来事も、話の中に絡んでくる。ピエールよりも、アンドレイの方が波乱万丈な人生のような気がする。

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    2024年02月04日
  • 復活 下

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    シベリアへ送られるカチューシャをネフリュードフは追うとともに官憲に奔走する。功を奏するが、二人の運命は意に沿うとは限らず。著者晩年の作。裁判所や官庁、刑務所の扱いに非難を浴びせながらもドストエフスキーと違って弾圧を受けなかった。時代の風潮とともにトルストイがすでに著名な大作家であったことが、国際的に非難されることを国は避けたようだ。2023.12.26

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    2023年12月26日
  • 復活 上

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    裁判所で目にした被告人は、かつて関係を持った女性だった。最上層階級の主人公が苦悩し行動を開始する。自省が世の矛盾の気づきに広がり領地の整理にも着手する。読みやすい小説。2023.11.16

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    2023年11月16日
  • 復活 下

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    初めてのトルストイ。
    重い内容だったけれど、リアリティな描写、豊かな感情表現で、100年以上前の世界が迫ってくる。においまで伝わってきそう。

    今の時代がいかに恵まれてるか。人の尊厳を大切にする社会に近づいている国であればそう。でもこの本のような社会で生きている人たちもたくさんいる。

    人間を人間的に扱わなくてもいい立場なんてない。身体的なことだけでなく、精神的なことでは、今の社会でもたくさんの非道がある。

    1人ひとりが子どものように純粋に、自分の喜びのために生きるのではなく、神の国と神の義を求めるそんな生き方をすれば、もっと世界はよくなるのか。
    自身が復活できる日はくるのだろうか。

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    2023年10月28日
  • 戦争と平和 (六)

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    ネタバレ

    トルストイの歴史観が最後や途中に展開されるあたり、司馬遼太郎感ある。最後の解説にあった、丸くなって輪になって平和、というのはなるほどなと思った。アンナカレーニナと違って、ナターシャは女性らしい魅力を失って太った幸せな母になる。プラトン・カラターエフは丸く表現されている。主人公ピエールも肥満。
    アンドレイやペーチャは死んで、マリアとナターシャはそれぞれニコライとピエールと結婚して幸せになる。ソーニャがかわいそうすぎる気がするけどそこはあまり描かれない。ギスギスしないんだろうか。ソフィアは賢さを表すから、感情の争いには無縁なんだろうか。

    関係ないけど、トルストイという名前は太っているという意味だ

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    2023年07月05日
  • 戦争と平和 (五)

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    ネタバレ

    ピエールやアンドレイやナターシャがそれぞれに成長というか、精神的な悟りに近づいている感じがした。トルストイが老子の影響を受けているというのに納得。アンドレイは死の床で福音に目覚め、敵を愛す境地に至ってナターシャを赦し愛する。独特にキリスト教にストイックに思えるトルストイの姿が投影されているような気がした。トルストイの考えとアンドレイのそれがどれくらい同じなのか知らないけど。
    一方ソーニャの純愛は報われないどころかニコライに心変わりされて伯爵夫人にもニコライと別れるよう迫られて可哀想。

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    2023年06月04日
  • 戦争と平和1

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    ネタバレ

    (2023-05-10L)(2023-06-03L)(2023-06-28L)(2023-07-18L)

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    2023年08月04日
  • 戦争と平和 (三)

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    ナターシャみたいな若い派手な人には、一年アンドレイを待つことができなかったんだろう。それは愛じゃないと思うけどな。ソーニャみたいに静かに待てる人がニコライと婚約できてよかった。最初の、アンドレイがナターシャに出会う前と後で古木のナラの木の見え方が変わる場面は授業で昔読んだ気がする。

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    2023年05月05日
  • 戦争と平和 (二)

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    ネタバレ

    ニコライやアンドレイが一旦家に帰って、彼らの家の話が展開されたりするのでまだ話についていけた。最後に、ロシアとフランスが講和していて、アレクサンドルとナポレオンが勲章を交換しあっているの、世界史を知らないからか急展開で、何があった?って驚き。ニコライを一途に愛しているソーニャが良い。

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    2023年04月30日
  • 人生論

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    非常に難解な文章だった。人生論とあるが、幸福論としたほうが相応しいような気がする。

     人間は動物的自我によって自分個人の為の生き方に疾走ろうとし、それこそが幸福であり生活の凡てだと思い込む。しかし、あらゆる人間が自分個人の為に生きると考えると、その為には他人を排除しようとする者が出てくる。とすると、自分個人の幸福とは容易に手に入るものではない。ましてや病気、衰え、死などが刻々と近づいているわけである。それを避けることはできないし、そうなると自分個人の幸福はまやかしのようなものであることに気づき、人生の矛盾にぶち当たる。
     したがってほんとうの幸福の為には自らの動物的自我を理性的意識に従わせ

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    2023年04月26日
  • イワン・イリッチの死

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    金持ちで地位の高いイワンイリイッチが死ぬまでの過程を描いた話。
    序盤は退屈だったけど、後半からはイワンイリイッチの心理描写にのめり込めて面白かった。
    別に心の中では悪い事しようとしてる訳じゃないのに、周りの家族から蔑まれるのが辛いね。最後の力が出なくて「許してくれ」って言えないシーンが悲しい。
    最後は死の恐怖を克服し、幸せな気分で消える事が出来て良かった。
    あとイライラとかだんだんとかの単語を、「むらむら」って表現するのがちょっと気になった。

    主人公は今までの人生振り返り、歳をとるにつれ、加速度的に辛くなる事に気が付いた。そこそこ楽しいと感じていたこれまでの人生だけど、振り返ってみると、無意

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    2023年05月07日
  • 戦争と平和(四)

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    「戦争と平和」を読み終え、なぜこれだけの字数をトルストイは必要としたのか分かるような気がした。歴史を作るのは人であり、人の暮らし、会話や感情の表出こそ重要だと。他の歴史小説を読んでいても、多くの場合、書かれている人物の心の内、心の襞に入って語られることは少ない。ボロジノの会戦やモスクワ炎上を主にナポレオンのロシア遠征が詳細に語られる中で、パラレルに進捗する五つのロシア貴族の浮沈は迫力満点であったし、その人物の動きと物語の展開は秀逸であった。ピエールとナターシャ、ニコライとマリアに収斂する愛の物語の起結に深い感動を覚えた。

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    2023年04月22日
  • 戦争と平和(三)

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    ナポレオンのロシア遠征、ボロジノの会戦からフランス軍のモスクワ入城までが第3巻の主要な舞台だ。ボロジノの戦いを第三者的な目で見るピエール、彼の心の中にはナターシャがいるが、その行動は因循だ。一方、ナターシャの放埒な行動に傷ついたアンドレイは軍隊に戻りクトゥーゾフと共に戦いに臨む。瀕死の重傷を負ったアンドレイはその心の中にナターシャが棲むことを知る。二人はモスクワのロストフ家で偶然再開するが、この場面は本作品中、最も美しいシーンではないかと思う。ピエールはナポレオンの暗殺を志向するが、放火の疑いでフランス軍に逮捕される。ピエールの行動、ナターシャの恋の行方、ロシアから撤退するナポレオンの思い、第

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    2023年04月11日
  • 戦争と平和(二)

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    5つのロシア貴族の家、ストーリーの展開が次第に明確になり、方向付けられてくる。ロストフ家の狩猟のシーンは美しいロシアの自然にトルストイの愛情が向けられているようで好きだ。また終盤でのナターシャの愛の躓きとそれに関わるピエールの心の動きは面白い。今後の展開を期待する。

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    2023年03月31日
  • 光あるうち光の中を歩め

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    某所読書会課題図書:ユリウスとパンフィリウスが人間としての生き方を議論するなかで、様々な命題を投げかけて読者をけむに巻く論説も出てきて、何度も読み返すことが多かった.ユリウスは普通の人生を歩んだ人と言えようが.パンフィリウスはキリスト教徒の共同体で清廉な生活を実践している.やや理想論がちだとは思うが、揺れ動くユリウスに対して、ある男がタイミング良く登場する構成は楽しめた.トルストイは初めて読んだが、哲学的な文章が嫌味なく現れるのは良いなと感じた.

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    2023年03月24日
  • 戦争と平和(一)

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    この高名な大河小説のプロローグ、1805年の7月から12月のアウステルリッツの会戦までが描かれている。ロシアの貴族、ベズーホフ伯爵家、ボルコンスキー公爵家、クラーギン公爵家、ロストフ伯爵家、ドルベッコイ公爵家の人々を中心に物語は進捗する。長大な物語、今後の各家の浮沈が予想され、以降3巻の展開が楽しみである。

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    2023年03月20日
  • イワン・イリイチの死/クロイツェル・ソナタ

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    黒沢明監督の現代映画『生きる』がイシグロカズオ氏の脚本でリメイクされたと聞き、改めて生きるを視聴しよう!と思った矢先に出会った一冊です。

    黒沢監督はこのトルストイの短編から着想を得て、死を間際にした男が何を考えるか、説こうとしました。
    本作品はその原型として読んでみたのですが、似た展開をしつつ、違うものです。

    黒沢映画は、作中で主人公の死を突然挟むことで、観るものに驚きを与える効果を狙ったようにみえます。
    前半だけ観ていたら『もしかしたら彼は助かるかもしれない』と思うこともできる。

    対して、トルストイはそういった驚きよりも、不可避の死を冒頭数ページで描写します。
    助かるかどうかという可能

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    2023年03月01日