トルストイのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
最近死についてよく考える。そこで遥か昔に読んだこの本を再び手に取ってみた。ある裁判官が不治の病に罹り、死に至るまでの過程が極めて鋭く描かれている。
文庫でほぼ100ページの短い作品なのだが、さすがはトルストイ、様々なことを深く考える機会を与えてくれた。以下、特に印象に残ったテーマを列挙し、考察してみよう。
すべての人は人間が必ず死ぬことを理解しているはずだ。だが『自分も必ず死ぬ』ことまでしっかり認識している人が、果たしてどれくらいいるだろうか。
トルストイの提示はこうだ。
それぞれの人は、人間が死ぬことを理解していながら、その『人間』の範囲から自分をこっそり外している。それゆえ自分だけは死ぬ -
Posted by ブクログ
ナターシャとピエールの甘い結婚生活を見ているのは気持ちが良い。エピローグに入ると、しばらく息を潜めていた語り手が登場し、ナポレオン戦争、ひいては戦争についての考えを述べる。
『戦争と平和』の「平和」の部分はこの巻の中に詰まっている。ナポレオンやルイ14世のような、影響力が大きかった指導者、君主1人が歴史を動かしたように思われるが、そうではなく、それを取り巻く当時の諸国民の動きや関係性にも目を向けるべきであるという主張をしている。
読み物としては高く評価しているのだが、フィクション(虚構物語)としては(個人的には)それほどグッと来る感じはない。
ただ、本作を学生時代に読めていたら、違う感想 -
Posted by ブクログ
フランスから帰ったばかりのピエールと悪友たちは、酔った勢いで警察署長に乱暴を働き、ペテルブルクを追放される。ここで、ピエールの「軸がしっかりとしていない危うさ」を感じた。ピエールが周囲の空気を読めない、浮いた存在であることも相まって余計に不安になる。
ピエールが現時点で優れていないのにも関わらず、庶子から嫡子へ昇格し、莫大な財産を1人で相続することとなる。これもまた不安要素である。
『戦争と平和』(2016年、英国放送協会製作)のテレビドラマを先に見たことがあって、ピエール役(ポール・ダノ)の印象が強く、少し太った感じ、根暗そうな雰囲気のイメージがどうしてもある。 -
Posted by ブクログ
苦しい。ひたすらに苦しい。不治の病に身体と精神が蝕まれていく苦痛。死へと確実に向かっていく恐怖。そしてそれを誰も理解してくれないという孤独。これらが刻銘に描かれているだけの物語。トルストイは、なぜこんなに苦しい物語を書いたのか。
というより、なぜこれを私は読んだのか。本はほかにいくらでもある。どうせ読むなら、心が躍るような、知らなかったことが知れるような、仕事の役に立つような、そんな本を読んだほうが、客観的に、有意義ではないか。それにもかかわらず、この本を選び、時間を掛けて、私は読んだのだ。このことがとても大事なことのように思える。
自分のものでない苦しみを読むのはなぜか。この問いはペンディン -
Posted by ブクログ
保育園時代、人がいずれ死ぬことがわかってから「どーせ死ぬのになんでみんな一生懸命生きてるの?自分も生きていかないとなの?」とたまに思うようになり、それを考えた日は一日中両親や先生がロボットに見えてました。
大人になるにつれトルストイの言う矛盾に当たり、ずっと悩み続け大学で哲学の授業をいくつかとってみたりしましたが、答えは出せず。
と思ったらこの本でまず初めに自分のこの感覚についてこてんぱんにやられました笑
まだここに書かれている全てを肯定する気にはなれませんが、納得せざるを得ないことや完全に同意できる部分が多々あり、影響を受けたのでこれからもあーだこーだ考えながら生きていきます。
ちなみに普