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官僚としての体面と世間体を重んじる夫の冷酷な態度に苦しみながらも、アンナはヴロンスキーとの破滅的な愛に身を投じていく。愛するゆえに苦しみ悩んだ結論は……。一方、新しい農業経営の理想に燃えるリョーヴィンは、失意から立ち直ったキティと結婚生活を始めるのだった。登場人物たちの微妙に揺れ動く心理と時代背景を、端正かつ抑制の利いた訳文で鮮やかに抽出した新訳。
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Posted by ブクログ
リョーヴィンとキティの偶然の再開。彼女がこちらを見つけた時の一瞬の輝いた目を見てもう一度確信する。自分には彼女しかないと。このシーンがとてつもなく好きだった。 リョーヴィンを軸とした田舎の描写、恋愛描写は、ナボコフをはじめとした一定数の読者から不評とのことで、確かに一理あると思った。アンナを取り巻...続きを読むく環境に比べ、リョーヴィンの恋愛は生ぬるい。確かにアンナとカレーニン、そしてヴロンスキーらのそれぞれの心情描写、何に悩んでいるかを考える方が有意義なように見える。 カレーニンはアンナの不倫を離婚などという、かえって妻が得するような形で罰するのではなく、別の形で、しかも世間に知られることなく罰したいと考えていたが、我慢できなくなる。 しかしアンナが死にそうになった際、いっそアンナが死んでくれれば良いとさえ願ったものの、いざ妻の姿を見ると、自分がアンナを心から憎むことができないと悟り、そんなことを願った自分を悔いてアンナとその不倫相手ヴロンスキーをも許す。 ここのシーンがあまりにも深い。議論の余地を多分に残している。実際、この時のカレーニンにヴロンスキーは驚き、どう対応して良いかわからなくなってしまい、銃で自殺未遂するほど追い込まれている。 世間体で離婚したくないという単純なものではなく、「離婚してしまえば妻が本当の意味で破滅してしまう」ということを懸念して離婚できずにいたのがカレーニン。リョーヴィンではなく、カレーニンこそ第二の主人公に相応しいように思えてきた。 アンナとヴロンスキーがいくら逃避行しようとも、この後も誰も幸せにならない未来が見える。
第3部と第4部を収録。農業経営の理想に燃えるリョーヴィンと、妻の不貞行為に苦悩するカレーニンを描く。 第3部はほぼリョーヴィン編。農業の労働の描写は新鮮。いっぽうかなりのページ数が割かれる経営の話は1861年の農奴解放という背景からくる難しい状況があり、巻末の読書ガイドに頼らないとわかりづらい。し...続きを読むかしここで、欠点も多いが魅力的なリョーヴィンという人物像が明確になり、第4部に続く彼の新しい人生展開の伏線ともなるので、軽く読み飛ばさないほうがいいだろう。 第4部では妻に裏切られた夫カレーニンの、ある意味では当然とも思える反応に男性としては少し共感。さらに土壇場で、『戦争と平和』のアンドレイにも見られた、信仰と許しという至福の力による霊的な成長に感動。しかし、当時のロシア社会における「離婚」の難しさが事態を複雑にしており、ありえない展開に「これはひどい」と思わず声に出して言ってしまったところで2巻終了。どうなんねんこれ……。
1巻に引き続き、引き込まれる展開であった。登場人物の考え方や気持ちの変化の模様を絶妙に表現している。また、貴族や官僚、農民などロシアの生活様式が興味深い。どの階級でも、夕食後にいろいろな活動をしていることは新たな発見であった。面白い。 「牛馬に引かせるプルークのほうが人の手でやる鋤よりもよく耕せるし...続きを読む、速耕機を使えば効率が上がるということは彼ら(農民)も心得ているのだが、いざとなると彼らはいずれの道具も使うわけにはいかなぬという理由を無数に見つけてくるのである」p268 「ロシアには素晴らしい土地があり、素晴らしい労働力がある。そして場合によっては、あの道中で立ち寄った農家のように、働く者と土地の力で大きな収穫を上げている。だがヨーロッパ流の資本投入をするならば、たいていの場合生産性は低い。それはひとえに、農民たちがひたすら自分たち固有のやり方で働くことを望み、またそのほうが成果が上がるからだ。こうした外国流への抵抗は単なる個別事例ではなくて一貫した、国民の精神に根ざした現象なのだ」p274 「「汝憎む者を愛せ」ドリーがつぶやいた。そんな教えは先刻承知だったが、この場合には当てはまりようがない。「自分を憎む者を愛するのは結構ですが、自分が憎む相手を愛することは不可能です」」p402
ロシアの広大な自然も、貴族達の愛憎模様も、実に活き活きと描かれている。 アンナとリョーヴィンの、見事に対比されたダブルストーリー。 2人ともどこか「あやうさ」が漂い、見ていてハラハラしてしまう。 続刊もあっという間に読み終わってしまいそうである。
はじめはこのページの多さに辟易しちゃう。 でもいったん読み始めてしまうと そのコメントはどこへやら、になっちゃう不思議さ。 扱っている世界が社交界という 貴族の世界なのもやはり惹かれる理由かな。 普通では体感できない世界というのが。 私はメインのアンナよりも 不器用で、時に意見を言うときにも 何...続きを読むかと後悔ばっかりしている リョーヴィンが好きです。 農業経験のある私は この描写は全然退屈じゃなかったなぁ。 人によっては退屈かなぁ。
これがロシア革命前であると思いながら読むと、リョーヴィンの思想がいかに危ういものだったか分かってしまう。今回は幸福のうちに終わったが、善良ゆえに、一手に大衆の悪意も担ってしまいそうで、続きがなんだかおそろしい…。とはいえ、共産主義たりえなかった白樺派がトルストイを精神的支柱とした理由は分かった気がす...続きを読むる。
物語が進むにつれますます面白くなっていく! ただこの巻の終わりの方の登場人物の言動がイマイチ掴みきれず。何故あんな変化をしたのだろう。 ぐちゃぐちゃになっていく人もいれば、急に全てが上手く行き始める人も。これからどうなるかな。楽しみ。
髭を蓄えた世捨て人のようなトルストイがここまで繊細で機微ある愛を描けることに感嘆。特に13章のキティとリョーヴィンとの愛が通じ合う瞬間は、これまでのリョーヴィンの葛藤や苦悩や自尊心を深く描いただけに、何とも言えない感動を覚える。一方で寛容が破滅を呼び崩壊が自由をもたらすアンナとカレーニンのさまは面子...続きを読むを重んじる帝政ロシアの貴族社会の世相を映し出しているように感じる。
この巻ではリョーヴィンが百姓と草刈りをする場面が1番好き。疲れと清々しさがよくわかる。 この巻の前半ではリョーヴィンの農業に対する考えや場面が展開され、その後はアンナの問題。 巻末のガイドでは、リョーヴィンの農業の話は退屈に思う人が多いようだと書かれていたけれど、私は退屈に思えなかった。 結婚...続きを読むや離婚の考え方が複雑。 アンナも今まで結婚生活についてはかわいそうだったので…というのを踏まえて、だからこうなっちゃったんだよ…みたいに読めばいいの? アンナ、どっちやねん!ってツッコミ入れたくなる。 時代背景がわかれば、こういう複雑なことが起こりうるということがわかりました。
アンナの物語とリョービンの物語が好対照。 アンナの物語よりもリョービンの物語のが好きだけど、農業については良くわからない……。 「読書ガイド」を読み飛ばしてしまっているのが原因だとは分かっているけど、読み始めた勢いを削ぎたくないんだよなー……。 カレーニンのように自分の感情を素直に表せない人もい...続きを読むれば、オブロンスキーのように極めて自然体で上手に人と付き合える人もいる。 人生これからだ!な弟と人生これまでだ……な兄の対照や、人を愛することで明るい方へ行けるキティと愛することでどんどん苦しくなるアンナの対照が面白い。 (簡単に二項対立の構図にしてしまうと浅い読みになってしまうけど、楽しんで読むんならこれが一番わかりやすい、と思う) 色々な人がいて、それぞれがいきいきとしているのは凄いなあ。 カレーニンが善玉になってしまって、これからますますアンナとヴロンスキーの物語を読むのがつらくなってくるぞ。 これでようやく半分か!
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