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「そうだ、死ぬんだ!……死ねば全部が消える」。すべてをなげ捨ててヴロンスキーとの愛だけに生きようとしたアンナは、狂わんばかりの嫉妬と猜疑に悩んだすえ、悲惨な鉄道自殺をとげる。トルストイの魅力を凝縮した代表作であり、愛と理性、虚飾と現実、生と死、そして宗教と社会を壮大なスケールで描いた19世紀文学の最高傑作、ここに完結! 繊細かつスピード感あふれる新訳で。
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Posted by ブクログ
若き将校との許されない愛に走るヒロイン・アンナと、神を信じることができない地主貴族リョーヴィンの、交差しない二人の主人公の人生が描かれる。この大部の小説を通じて、トルストイは同時代(1870年ごろ)のロシアという国全体を描き切る野心を持っていたのではないか--そんな風に思える。 首都の貴族社交界の...続きを読む華やぎから田舎の農夫の草の刈り方まで、あらゆるディテールがおよそ想像で書くのは不可能な詳細さで描き込まれ、トルストイの筆致の巧みさに感嘆せざるを得ない。 しかしそれだけで終わってしまっては、この作品は最高の風俗小説であるという結論になってしまう。この作品を傑作ならしめる深みは、登場人物それぞれの苦悩や恐れにこそある。 といっても、その苦悩は観念的思弁的なものでなく、もっと俗っぽいものだ。アンナは愛を貫くために、この時代のロシアでは絶望的であった離婚を願う。やがてその願いが叶わないとなると、今度は愛人の愛が失われることを狂わんばかりに恐れる。リョーヴィンは、信仰を持てないことにひとり悩みながら、出産に苦しむ妻の姿に、思わず神の助けを求める。 こうした、諸生活の悩み苦しみ絶望、そこに同時代ロシア社会の矛盾が見え隠れする。そしてやはりこの作品はロシア全体を描き切ろうとしたのではないか、という思いが再び浮かんでくるのである。
初トルストイ長編 幸せな家族はどれもみな似ているが、 不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。 圧巻の世界観 登場人物がみんな生きている 熱情や妬みに翻弄されていく貴族たち 確かに昔存在していた時間たちが蘇り、 そこに生きていた人間たちの鼓動が感じられる。 本筋だけを追っていけば、 今日目新...続きを読むしい展開は特にないのだが、 一つ一つの挿話によって、 人物像だけでなく、彼らの生活の香りが浮き彫りになっていく。 アンナとリョーヴィン アンナは恥辱との戦いであり、 リョーヴィンは自己との戦いであった。 地に足をつけて、自分と対話しながらなんとか生きていく。 それって、いつの時代も通用する教訓なんだと思う。 自分が何者で何のためにこの世に生きているのかを知りもせず、また知る可能性さえも持たず、その自らの無知に苦しむあまり自殺さえも恐れながら、同時に自分独自の、はっきりとした人生の道を、しっかりと切り開いていたのであった。
長いけど訳が重厚すぎず、何より面白くてどんどん読み進められた。自分が恋愛に依存気味の時期の思考の流れにありがちな視野の狭さがアンナの一人称語りによく出てたりと人物の心理描写も素晴らしい上、リョーヴィンと対になる構成も面白い。タイトルロールなのにアンナは冒頭もなかなか登場しないし、死んでからも物語が結...続きを読む構続くんだよね。
完結編。第7部と第8部を収録。2つのカップルの圧倒的な結末に魂が震撼する。そこに見出したある一つの答え。 前巻の新婚生活から続いて出産シーンへ。リョーヴィンの慌てっぷりがユーモラス。お互いに何でも話し合い、隠し事をしない理想的な夫婦像ともいえるリョーヴィンとキティも、時々は細かいことでぶつかったり...続きを読む悩んだりするところがリアル。 二人の主人公が一瞬だけ交差する出会いのシーンは胸が熱くなるものがある。ここから物語はクライマックスへ向かっていく。 第7部の終盤にいたる展開は、その不穏さとスピード感に読んでいるほうも追い詰められる感覚になる。男女の愛を理想的な結婚の姿という形で見せてくれたリョーヴィンと対比して、最後まで愛を求め続けたアンナの姿も、ある意味で女性としての究極的な何かを表現しているといえるかもしれない。最後のシーンの文章が本当に上手いというか、映像的でありながら文章でしか表現しえないものがあって、翻訳も含めてすごいと思った。 第8部はエピローグ的な展開と、リョーヴィンの思索がメインになる。一般的には第7部のラストに目が行きがちだし、物語としてはあそこで終わっても不自然ではない。だがこの第8部こそ、本作の結論でありキモとなる部分といえ、本作を単に恋愛小説として読んでいる人には見出だせない、より大きなテーマが提示されている。 リョーヴィンが抱き悩み続けている本源的な問い―― 「自分はいったい何者か?自分はどこにいるのか?なぜここにいるのか?」 それは生と死についての疑問であり、リョーヴィンはこれについて明確な答えを見出す。アンナとリョーヴィンという、別々に展開し一見つながらないように見える2つのプロットは、すべてこの一点のテーマに集約されて大きなカタルシスをもたらすのである。 自分の若い頃にこれを読んでもピンとこなかっただろう。百姓ヒョードルの些細な一言で気づきに至る流れ、答えは理性の外にあり、「われわれはすべて知っているのだ」と納得する顛末に、うんうん、そうだそうだとうなずきながら、この何年かで学んできたこと、考えてきたことが微細に書かれていて驚いた。特筆すべきなのは、これらのことが単に思索の結果としてだけではなく、日常生活の細々した雑事と密接にからみながら描かれているところ。リョーヴィンの悟りは、よく言われるふわふわしたスピリチュアルではないのだ。悟りに至ったあとも、あまり変わらない現実の如実な姿にニヤリとするラストの一文が最高だ。また、キリスト教の信仰に立ち返った彼は、他宗教へのスタンスについても、子供たちのいたずらと天文学者のたとえから明確に結論づける。 表向きは恋愛と結婚を題材にしながら、また当時の生活や社会を詳細に描きながら、より深い生命の次元から万事を見つめ、多層的な観点から人間の本質に迫っていく本作は、個人的にも人生でベストといえる作品の一つとなった。これから映画も見てみたいと思う。
悲しみと驚きの第7部 心に残る第8部 読み終えた瞬間の私の感想… え?これは? 『アンナの終わりとコンスタンチン・ワンダーランド』じゃないの! なぜ?なぜトルストイは、この小説のタイトルを『アンナ・カレーニナ』としたの? トルストイ先生、もっと他のタイトルあっただろうに…と考えつづけていた...続きを読むところ、巻末の、訳者望月先生の解説の中に、ゲイリー・モーソンという人の解釈が紹介されていました。 _題辞は 彼女が自分自身に下した捌きの言葉だとも取れる_ 『アンナ・カレーニナ』だからこそ、彼女と相反するその周りの人物や思想、またリョービンの物語に光が差すのです。 悩めるリョービン、悟りを開くリョービン、まるで、青春時代に帰ったかのように、一緒に悩んでしまった! 私はどうしてここにいるの?神とは?生とは?精神、意志、自由、実体? …と でも、リョービンは自分の生活の中から(穀物番フョードルから)、答えを見つける。 答えがあるんですね、トルストイ先生✨ 光と闇、リョービンの世界と、アンナの生き様。二項対立という言葉も解説にあったけど、、 私にとっては、かなりのリアリズム小説で、好みではないはずなのに、すっかり面白くよまされてしまった! 作家が亡くなって100年以上も経ったいまも、こうして私たちの心を捉えて離さない作品であることが、 これが文学なんだなぁと、よくわかりました
よかった。××××が最終章で最後に出した結論は半分共感できるが半分は茶番だと思う。でも嫌いじゃない。
トーマス・マンが完璧な小説といった意味が分かる。紛れもなく、今まで読んだ本の中でベスト。 カラ兄のように宗教臭くない。難しい小説、ではなく、全てが書いてある小説、と思った。 何より面白い。し、細部が本当にリアル。 心理過程の描写が、プルーストほどには長くない。
4巻の長編だったけど、読み進めるほどどんどん面白くなった。またいつか読み返すだろう。 生き生きと描かれている。説得力のある心理描写や比喩が面白い。 それぞれの性格からはっきりと人生が分かれ、その人の個性と思考が露呈していく。 リョーヴィンの気持ちがその時あった出来事によってころころ移り、かわいい...続きを読む感じもする。素直と頑固。 義父のクラブの話で、ぶよぶよ卵というのを表現がおかしかった。 リョーヴィンは生きる意味とは何かと哲学的に考えようとしたりする。でも答えが出ない。そしてある時、知る。 リョーヴィンは生きる意味とは何なのかを知る。だからといって生活は今までと同じだ。だけど、知ったことでリョーヴィンは喜びを感じる。 アンナは自分が招いたことだけど、人のせいにして、自分のマイナス思考は被害妄想に近く、自分で自分を追い詰める。だからヴロンスキーなどが何か言っても全部アンナは気に入らないのだ。周囲が間違った考えを正そうとしても嫌がり、フォローしても疑ってかかる。つまり、周囲は全てはアンナのおっしゃる通りですよと否定なしに肯定のみ、愛を捧げなければならないのだ。周囲は間違っているし誤解を解きたいけど、それをするとアンナはまた被害妄想で怒るのだ。早く精神科に行くべき状態。 なぜそんなに追い詰められていくのか、その心理描写の移ろいがうまい。 それにしても、最後、了と文字があった時「あら!ここで終わりなんだ!」ってビックリした。 この小説でリョーヴィンの自分はいったい何なのかの考えを読んでて、私も「あぁ!なるほど!」と思った。そんな話は聞いたことがあるし、そう考えてる人には当たり前のことなんだろうけど、何だか実感したのは初めて。リョーヴィンがぱぁーっと喜んだように自分も同じ気持ちを共有した感じだった。 多分、リョーヴィンに好感がもてるからだと思う。 この小説は私の中でインパクトの強いものになった。 またいつか読み返そう!
ロシア文学に早く出会えなかったことに 本当に損をしたな、と感じました。 人生における事柄が網羅されています。 恋、苦悩がそこに。 確かにアンナのとった行動は 世間一般では相容れられない行為です。 だけれどもそれを頭ごなしに批判することは 出来ないと思います。 誰しも、アンナほどではないですが 大...続きを読むきい、小さいに関わらず 道に外れてしまう、というのは 少なからずありますので。 目先の出来事からの逃避も その1つかと思いますので。 そしてリョーヴィンに関して。 彼の苦悩も本当に分かります。 でも、それに気づいたのは 大きな成功ですね。
アンナの他人からみた時の美しさの描写、猟の描写、リョーヴィンキティの掛け合い、リョーヴィンの最期の悟りの部分、特に良かった。ありとあらゆるテーマが緻密に書き込まれていていながらわかりやすいダブルプロットでとても読みやすく☆5を付けざるをえない。とても楽しかった。
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