トルストイのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
昨年夏にみた映画「生きる」カズオ・イシグロ版がとても良くて気に入る→お正月にそのオリジナルである、黒澤明の「生きる」を見る。なんかすごい話だな、志村喬の目の演技すごいな…。これの元になった小説があるんだ、しかもトルストイなのか→この本に辿り着く。
こんな流れで読み始めた。
トルストイは実ははじめて読んだ。
戦争と平和、アンナ・カレーニナ。
ドストエフスキーと並ぶ長大重厚露文作家である。
私は長大も重厚も得意ではなく、読めた露文は、ツルゲーネフ(でももう忘れた)、チェーホフ(同じく)、プーシキン(面白かった)くらい。
本書はトルストイの後期の中編が二本という構成。
◯イワン・イリイチの死
倒叙スタイル。ひどい葬式だなと思うも、イワンの人生パートに入ると面白くて目が離せなくなる。
結婚って、妻に子供が生まれることって、男にはこんなふうに見えるのか、さすがに今どきこんな考えの人はいないだろうけど身勝手150%でいろいろ不快。
でも、死というものを描くもろもろがとても手が込んでいて、面白かった。
死を前にした世界には、有無を言わせぬ迫力がある。
というか、映画と全然違うのね?!
公園もブランコも出てこないぞ。
◯クロイツェル・ソナタ
これも倒叙。列車という舞台装置が楽しい。
男女のもつれ、恋愛、結婚とは。謎のじいさんの告白。
みんなをドン引きさせたその発言の真意は。
というところから始まる、やはり現代とは倫理観の違いすぎる結婚すれからし物語。
幼稚で身勝手な男の論理にムカムカと腹が立つし、情けなくてなんだか泣けてくる。
でもやはり話はすごく上手い。こまかなボタンの掛け違い、ちょっとした関係改善と、またケンカ。
あー、あるある、と読者を納得させる力がある。
印象的だったのは、
p294
《妻ですか?そう、妻はいったい何者だったのでしょう?彼女は神秘です。昔も今もね。私には彼女が分かりません。私が知っているのは、動物としての彼女だけです。でも動物を押さえつけるなんてことはどうしたって不可能だし、またそれで当たり前なのですから。》
女をこんなに他者だと思ってるんだな。
その感覚が怖すぎる。
クロイツェル・ソナタはタイトルのとおり、音楽とその作用が物語のキイ。
いったいどんな曲だろうと思っていると、この本を読み終えた翌朝、ラジオ音楽の泉でベートーヴェンのクロイツェル・ソナタが掛かってびっくり。
こんな曲かあ、たしかに狂おしい。
-
Posted by ブクログ
1巻と同じく相変わらず戦史ものとして読むとしたら物足りない。前半はアウステルリッツ戦なのだが、全く戦いの進展も両軍の作戦も分からないうちにどちらが勝ったかもよく分からず終わってしまう。
しかしながら、1巻よりロシア文学(トルストイ?)特有のどろどろとした人間の内面を描くという部分は面白くなってきている。人間の多面性を描くという点では、俊逸だと思う。所詮人間一人が知りえることは自分の周りのことだけであり、周りのことを意図的に作られてしまうと真実は分からないという当たり前のことが上手く描かれている。ロシア人のしたたかさ、当時の皇帝に対するロシア人の憧憬が良く分かる。 -
Posted by ブクログ
最終巻である
後半から最後にかけてトルストイの独白の分量がさらに増え、
ああ、トルストイはこれほどの思いを伝えるために血肉を削いでこの小説を描いたのだ!
受け止めきれないほどの重厚な内容を紐解くのだが…
注)ネタバレあります
■ヘズーホフ家
大資産家メガネ太っちょのピエールの家
フランス兵の捕虜となったピエール
目の前でロシア人捕虜がフランス兵に処刑されるのを目の当たりにし、常に死の恐怖と向かい合わせの状況を経験
しかし究極の貴い精神と素朴な心を持つ大した地位のない元百姓カラターエフと出会い、心が洗われる
ピエールはこの劣悪な状況下とカラターエフとの出会いにより「苦悩の限界と自由の限界は極めて近い」ことに気づき、「安らぎと完全な内的自由」を得る
生まれ変わったピエール
ロシア軍により解放されたのちは、人の話を聞けるようになり、自分の話に夢中にならなくなる
ピエールの善良さに周りの皆、あらゆる人が好感を持つように
ようやくピエールの真の心がきちんと生かせる術を身につけた
良い素材に添加物だらけの調味料を塗りたくられ(時には自分から浴びに行っちゃって)、
最後に高級トリュフか何かをトッピングされたように資産家になってしまったピエール
やっと素の状態になれたのだ
ピエールの良さはわかっていたけれど、ようやくしがらみ(添加物)から解き放たれる感じですね
本当にうれしいなぁ
(そしてあの奇抜な妻のエレンは病死)
■ボルコンスキー家
頑固老父とエリート男子アンドレイ、Mっけたっぷりマリヤちゃんのいる家
瀕死の兄アンドレイに会いに行く妹マリヤ
アンドレイは死の、最期の、恐ろしく苦しい恐怖感から解放される
「たえず万人を愛し、常に愛のために自分を犠牲にすることは、結局だれも愛さぬことであり、この地上を生きぬこと…」と悟りの境地へ
そんな精神的徴候を理解したナターシャとマリヤ
厳粛な死の神秘を心の目でみとどけ、敬虔な感動に胸をふさがれる二人…
こちらもピエール同様、アンドレイが真の精神境地を掴み取った!
この辺りはやはりキリスト教の影響が大きいのであろう
二人とも何かを越え、解放され、開眼し、生死を越えた自由と幸せを手に入れる
この辺りは「夜と霧」を読んだ時にも感じた
でも人は死に近づかないとそういうものを得られないのだろうか…
なんだか寂しい気もする
■ロストフ家
ニコライ、ナターシャ兄弟のいる破産寸前の貴族の家
マリヤと再会したニコライ
やはりマリヤに惹かれていることを改めて実感
ニコライにはマリヤの精神世界の奥深さが神がかって見えているようだ
一方で元カノ、ソーニャのことは、「未来は簡単に想像できてしまう」という(失礼しちゃう)
弟のペーチャがとうとう連隊に入り少し出世する
大人になった喜び、真の勇気を示すんだ!という熱に浮かされたような焦燥感
その焦りが仇となりフランス兵に撃たれ死亡
当然のように半狂乱となる母
全力で献身的に支える母への愛情により、アンドレイの死により半死状態だったナターシャは生き返る
マリヤの家でピエールとナターシャが再会
3人でペーチャの死、アンドレイの死、そしてピエールの体験
たくさんのたくさんの話をする
ピエールとナターシャの二人は「相思相愛」とマリヤは認識
アンドレイの死以来、ナターシャとアンドレイの妹マリヤの二人はほとんど語り合わなかったものの、
二人は気持ちを共存し合い、友情より強い絆で結ばれる
反発していた二人アンドレイの死を共存し、真の姉妹のように変化する
悲しみの中にも救いは必ずあるのだ
そんな希望を私たちに見せようとしてくれるトルストイ
そしてソーニャの立場は最初から最後まで何とも物悲しい
あれだけ良い素直な娘であり、ロストフ家に献身に仕えながらも、
最後は「完璧すぎる」がゆえ愛するニコライからの愛情は減り、結局小間使いでいいように使われることが当たり前になり、彼女一個人に何かスポットライトが当たるようなことはないようだ
しかし脇役ながら最後まで目の離せない存在であった
■エピローグ(「登場人物」編)←勝手に命名
200頁近いエピローグ
物語とトルストイの独白の2本立て
まずは物語から…
ナターシャとピエールはめでたく結婚
ナターシャは打って変わって割烹着の似合いそうな素朴なおっかさんになる(ロシア人に割烹着は変だけど)
天真爛漫な娘が恋をし、寂しさからロクでなしに翻弄され、愛する男性と死別、そして結婚し子供を授かる
最後は驚くほど平凡な女性に…
いいと思うよナターシャ
人生に素直に向き合った結果、彼女の幸せをつかんだ
これだけ翻弄されながら、よく頑張って生きた!
うんうん
ロストフ伯爵(ニコライ父)の死により、ニコライは多額の負債返却のため退役
何も望まず期待せず、自分の苦境を耐え地道に借金返済をし、知人との付き合いも避けるように…
紆余曲折はあったものの、なんとかマリヤと無事結婚
ニコライは母親とソーニャを連れ、あの禿山へ
負債の返済がようやく終わり経済も安定してきた頃、領地の経営に乗り出す
百姓に注目し、百姓から学び、彼らの心を掴み管理するように…
この辺りは広大な領地を相続し農地経営を行ったトルストイの実生活をうかがわせるようだ
(広大な領地を相続し農地経営するトルストイの場合は農民に受け入れられず…)
お坊ちゃまんニコライも大変身だ
かなり皮肉屋になり、愛嬌はなくなったものの、堅実に働くことを知る
そして農地経営に夢中になるのだが…
マリヤに対してちょっと当たりがキツいんだよねぇ
マリヤも気を使い過ぎてるしぃ…
やっぱりマリヤちゃんてM体質なのかなぁ(笑)
でも個人的にマリヤは大好きなんだ!
いざとなるとぶっ飛んじゃうほどカッコいいからねぇ!
そしてアンドレイと亡き妻の子であるニコーレンカが最後を飾る
(アンドレイ妹のマリヤが養母のように育てる)
最後希望の星のように未来に向かう象徴のようだ
■エピローグ(「トルストイの独白、そしてクトゥーゾフについて」編)
・皆がロシアのため「献身、祖国愛、絶望、悲嘆、英雄的行為」という精神ではなかった
命をかけて祖国を救うだの、祖国の悲運に涙を注ぐと思われがちだが、
実際はたわいもない個人的関心しかないとシビアに唱える
・すべての偉大な功績がフランスの歴史家たちによってのみ書かれたもの
ナポレオンの天才的手腕がどの程度事実かは正確にはわからない
・戦力は兵数だけでは測れない未知なもの、その未知なものとは軍の「士気」だ
・民族の目的はただ一つ「自国を侵略から解放すること」
・クトゥーゾフだけが激動した戦局の意義を理解し、ボロジノ会戦の勝利を信じ続けた
さらに彼だけがロシア軍を無益な戦闘からおさえることに全力を傾けた
自己犠牲と未来の意義を洞察できる模範的かつ素朴な謙虚な偉大な人物(…とトルストイ大絶賛)
・歴史を動かすのはナポレオンやアレクサンドルのような英雄ではなく、民族一人一人だと強く訴える
ナポレオンが英雄に仕立てられたのは、数多くの偶然というニュアンスでその理由づけを延々と語っているトルストイ
そしてクトゥーゾフとは違うのだ!というアピールに感じた
兎にも角にもこの独白部分は非常に分量が多く、読み切るのはかなりしんどい!
小説にこれだけ独白をくっつけるのも、いかがなものかと思いつつも、それだけの熱い思いがマグマの如く流れ出ておりものすごい圧を感じた
そして私が「戦争と平和」を読みたかった一番の理由
「歴史はを動かすのは英雄でもなく傑物でもなく名もなき民衆それぞれの生活なのだ」というトルストイの宣言通り(?)
まるで証拠提出のように形を変え何度も繰り返し、表現してくるトルストイ
生々しい戦争体験の表現、侵略した兵士の略奪、あらゆるものを失ったロシア市民と彼らの生活
多くの災難と悲しい運命に見舞われた彼らはその運命を受入れ、何を感じ、何を思い、そしてどう生きるのか…
歴史というのは本当に記録ではなく記憶だと感じる内容が至る所に…
ピエールもアンドレイも、ニコライもみなトルストイであり、そして我々でもあるのだろう
長い時間かけて(かかって)読んだのでこの世界にどっぷり入ってしまい少々疲労が…
(でも頑張って読んだ甲斐はある、得たものも大きい、知った世界は広く深い)
いつかトルストイの他の作品を手に取ることがあるかもしれないが…
それは恐らくずいぶん先の話になりそうである
-
Posted by ブクログ
3巻は今までとは違い随所にトルストイの肉声をハッキリ感じる場面が多い
物語を登場人物たちに任せておけず、どうにも我慢できず本人が思わず登場しちゃったの⁉︎…という感じから始まり、もう我慢できない!とばかり彼の強い思いがあふれ出る
ナポレオンの登場回数もかなり増え、いよいよ大詰めの「ボロジノの戦い」が始まる
非常にリアルな戦場描写と百姓から商人から貴族から兵士から官僚からあらゆる立場の人たちが描かれており、彼らの心情の変化などが読み手を巻き込んでいく
■ヘズーホフ家
大資産家メガネ太っちょのピエールの家
私生活では相変わらずの放蕩男ピエール
妻のエレンのイカれぶりもエスカレート(同時に2人の男と結婚したがり、ちっとも悪びれずどちらを選んだらいいか真剣に考えている)
そんな精神状態のピエールだが、戦争未経験の彼が戦場に行き、すべてを見たいと切望する
緊迫した戦場に現れる場違いなピエール
彼はここで何を見て、何を感じるのか…
ある決意をし、変装したピエール
彼の決意とは…
なんとナポレオン暗殺!?
相変わらず思い詰めるとブッ飛んでしまうピエール
そんな中、フランスに侵入されあちこちに火の手が上がるモスクワ
火事から子供を救い出し今までの枷になっていた何かが吹っ切れる
…とここまではいいのだが、フランス兵の強奪にカッとなり暴力沙汰となり独房へ入る羽目に
相変わらず気持ちはすぐ揺れるし、何かしたいという思いばかりが先行し、正しい行動に結びつかない
そして追い詰めると何をしてかすかわからないピエールなのだが、純真なところがやはり憎めない男だ
こちらも彼にすっかり慣れてきたので飛んでもない行動をしても愛おしく見ていられるように(笑)
ピエールはドストエフスキーに出てきそうな悲劇と喜劇が紙一重のキャラクターかも…
■ロストフ家
ニコライ、ナターシャ兄弟のいる破産寸前の貴族の家
ニコライ
戦争体験談は往々にして過大表現されることを学び、さらには戦争に対する恐怖心が薄らいだ
が、これは経験と時間によってしか得られないことも知る(このように着々と成長しているニコライ)
病に臥したナターシャ
もちろんアンドレイへの裏切りと別れによる精神的なもの
そんなナターシャの傷心にそっとよりそうピエール
ピエールの純真さがナターシャを慰める
ピエールとナターシャの距離がグッと縮まるのだが、ピエールは一応妻帯者だからか距離を縮めまいと踏ん張る
モスクワが危険になってきたためロストフ家もようやく退去準備
荷物をまとめているさなか、負傷者の士官たちに部屋を提供する一家
実はここにアンドレイが担ぎ込まれる
■ボルコンスキー家
頑固老父とエリート男子アンドレイ、Mっけたっぷりマリヤちゃんのいる家
ボルコンスキーの老父に死が迫る
マリヤは父を看病しながらも自分の自由を夢見る心を抑えられず苦しむ
虐待まがい(いや、虐待そのものだな)の歪んだ愛情、言葉の暴力が止められない老父
しかしその陰の愛情を理解しているマリヤは老父に自ら縛られる人生を選んだ
そんな老父の最期はマリヤにやさしい愛情を見せるのだ!
(ここの親子は本当に現代では問題となるような(ある意味DVの夫とその妻のような)関係であるが、不思議と読者にも嫌悪感なく二人の愛情が伝わる 最後はなんだかしみじみ…)
とうとう老父が亡くなるのだが、ある出来事でマリヤがピンチに
そんな時マリヤは兄や父や家の名誉を守るため、勇気を振り絞ってある行動を起こす
(やっぱりカッコいいなぁマリヤ いざとなると凄いのよ!このお嬢は)
そしてこのピンチを助けたのがなんとあのニコライ
マリヤはニコライのことを「美しい高潔な魂の持ち主である」といい、
ニコライはマリヤのことを「表情が柔和で気品がみなぎっている」という
まさかのこの組み合わせ!
ソーニャはどうなっちゃうのよ(ソーニャも良い子なのよ!)
家柄とお金の面ではニコライママは大喜びしそうだけど、そんな部分もチラっと頭を横切るニコライ…
複雑
いよいよ戦闘が激しさを増し、明日死ぬかも…覚悟を決めた長男アンドレイ
極限の精神状態の中、突如気づくのだ
崇高に思われた名誉、社会の福祉、清らかな恋愛、祖国…これらが色褪せた粗雑なものに過ぎないことに
そして彼の予想通り負傷をおい、重症に瀕す
前線の包帯所に運びこまれるものの、そこで片脚を切断され弱り果てた哀れなアンドレイの天敵アナトーリ(妻帯者の身分でナターシャと駆け落ち未遂をやらかした成金クラーギン家の息子)に会う
さらに瀕死の状態のアンドレイはナターシャとの愛とやさしい思いやりがめざめる
そして妹マリヤに教えられた家族だけではなく、敵味方も関係なく「あらゆるものを愛すること」に気づく
「インテリ・エリート」アンドレイにようやく血が通った!
冷静沈着に物事を対応するアンドレイ
心より頭が先に動いてしまうアンドレイ
器用なんだか不器用なんだか…
ナターシャに裏切られたときもナターシャに対する愛情には蓋をしアナトーリに対する憎しみだけは持ち続けた
そうすることで心の平穏を保とうとしたのだろうが、やはりハートが足りない男だった
でもここにきてようやく…アンドレイが涙する!
瀕死のアンドレイは運命的にモスクワのロストフ家へ避難することに
「おれの前には人間から奪うことができぬ新しい幸福が開かれたのだ」
意識を何度も失いながらも夢うつつの中、憎む相手を愛せたよろこびがよみがえる
そして誰よりも愛し憎んだナターシャの苦しみをようやく理解し、自分の拒絶の残酷さに気づく
そしてドラマティックなナターシャとの再会
ナターシャは許しを請うが、アンドレイは愛を語る
(キャー感動的!)
■「ボロジノの戦い」とナポレオン、そしてトルストイの考えについて
「ボロジノの戦い」
両軍合わせて、約8万人の死者、負傷者、行方不明者を出したものの、決定的な勝利は得られず、ロシア軍の戦略的撤退によって戦いは終息
ボロジノの会戦は、第一次世界大戦までの歴史の中で、最も凄惨なものと言われている
後年ナポレオンが「かつて自分の経験したもっとも激しい戦い」と語った
トルストイはフランス軍敗因の原因について、
フランス軍が冬の行軍の準備なく冬のロシア奥深く侵入したこと、ロシアの諸都市を焼き払いロシアの民衆の胸に憎悪を植え付けたことだと冷静に分析する(だが当時は誰も予見出来なかった)
この戦いの実情についてトルストイの目線から多く語られる
そんな中トルストイの主張は実際の現実とはこうだ!と語る
・皇帝のために!と立ち上がった人たちはみな、意志を奪われた歴史の道具に過ぎなかった
・戦闘の最中にすべての必要な命令がナポレオンから出され、その通りに実行されたわけではない
なぜならナポレオンは始終戦場からあまりにも遠くに位置していたため戦闘の経過を知り得なかったし、戦闘のあいだ彼の命令は実行される状態になかった
・ナポレオンは誰にも発砲しなかったし、だれも殺さなかった
実行したのは行軍に飢え、服は破れ、疲れ果てた兵士たち全軍
が、前方に街を塞いでいるロシア軍をみて「ワインの栓は抜かれた、飲まねばならぬ」と感じたに過ぎない
・食事も休息もとらずへとへとに疲れ切り傷ついた兵士たち
彼らは「まだ殺しあわなければならないのだろうか なんのため、だれのために?」
自分のしたことに戦慄し、すべてを投げうって逃げ出したらどんなにほっとするだろうと感じつつも、
それでもなおある不可解な不可思議な力が彼らを動かしつづけていた
もはや人々の意思ではなく、人々と世界を動かすものの意思によっておこなわれる恐ろしい事態に
・歴史の法則の研究のためには、われわれは完全に観察の対象を変え、皇帝や大臣や将軍たちはそっとしておいて、
群衆を動かしている同種の無限小の諸要素を研究しなければならない
トルストイが正しい歴史を語ろうと躍起になる気持ちが伝わる
確かに人は歴史というものを薄っぺらい紙に要領よくまとめたがる
でもそうじゃないのだ!と強く訴えてくる
それがこの書「戦争と平和」なのだ
と素晴らしい!
が、「坂の上の雲」を読んだ時感じたのと同じ感覚に陥る
読みだせば夢中で読めるのだが、他の書籍に何となく手が伸びてしまい、ちょっと離れたくなったりと時間がかかった
内容がぎっしり詰め込まれ過ぎていて消化不良を起こす
ずっしりタルトよりふわふわシフォンケーキが好きな身としてはなかなかしんどい
が、逆にそれだけこの出来事によりロシアで何が起こったのかを残したいというトルストイの熱い熱い思いが特にこの3巻からは
ビシビシ肌にまで伝わってくる
その圧がたぶん受け止めきれないからなのか?
さて次回はいよいよ最終巻へ
-
Posted by ブクログ
ナポレオンのロシア侵攻によって引き起こされた世界史の大きな流れと、
ロシア貴族の家庭(主に三家若しくは四家)の出来事を2つの軸とした壮大な物語
こちらは以前読んだ「20の古典で読み解く世界史」で
トルストイ曰く「歴史を動かすのは英雄でもなく傑物でもなく名もなき民衆それぞれの生活なのだ」というこの一文に心惹かれ
これは死ぬまでに絶対読まなくては!と意気込んだのだ
が…
予想はしていたものの、読み始めは辛くちっとも進まない…
相変わらずの長ったらしい「ロシア名+〇〇侯爵、〇〇子爵、〇〇伯爵夫人…」
そんな彼らのサロンで繰り広げられる噂話もりだくさんの会話(はぁ…)
ブツブツ文句言いながら頑張って進めるうちに、あれよあれよとフランス軍のロシアへの侵略が始まる…
流れが出来ていたので読む辛さは半減したものの、今度は回りくどい言い回しが多く、何か嫌味を言っているんだろうけど理解できない…
さらにこちらの感受性が弱いのか、読解力が不足しているのか、あまり心に響いてこない…(涙)
文句はこれくらいにして、とにかく長いので気長に淡々と進めていこう思う(意地でも最後まで読むぞー!)
さて抑えておけばいい主要人物を主要貴族の四家とともにまとめつつ、(なんてったって登場人物500人以上ですからね!)
うーんとラフにまとめてみることに…
■ベズーホフ家
ロシア有数の富豪
伯爵がなかなかの女性好きのためあちこちに庶子が20人ほどいる
私生児:ピエール…主人公、伯爵が亡くなり莫大な財産を相続する
ピエールはねぇ、人は悪くないんだけど、眼鏡かけてちょっと太っていて…
うん、ダサい感じね
素直な感じはするけど不器用だね
社交界にも馴染めないし、悪友と悪ふざけするんだけど、どこにいても何をしても居心地が悪そう
自分がどうしたいのか、何がしたいのかまだよくわからないのかなぁ
そんなピエール 伯爵の死により、うっかり莫大な財産を相続(伯爵のお気に入りだったみたい)
そして成金貴族クラーギン親子がピエールを標的に(もちろん親子揃って財産目当て)
クラーギンの娘はかなりの美女だけどとっても性格が悪いし品もないわ!
だけど、世間知らずで優柔不断で流されやすいピエールは結婚することにしちゃうの
何か間違っている気はするものの運命にあがなえないのよ
どうなるピエール!?
■ボルコンスキー公爵家
前皇帝重臣だったが、田舎(禿山)に引きこもる
秩序正しい生活を送り、その厳しい態度のため、周囲の人々に恐れられている
長男:アンドレイ・ボルコンスキー…野心家、ナポレオンに憧れている
長女:マリヤ・ボルコンスカヤ…父を恐れながらも離れられないMっけたっぷり、禁欲的で信仰深い
ここの家は独特よ
厳格なお父様が禿山(って呼んでいる田舎)に引きこもってるんだけど
それはまぁ、毎日同じ決まったことを規律正しく繰り返す日課を娘にも強要しているの
娘はマリヤっていうんだけど、見た目がよろしくないみたい
そしていつもビクビク父の顔色を窺っていて、何が楽しくて生きてるの?っていタイプ
あ、今のところ信仰が彼女のすべてなのかなあ
そんな彼女に縁談が
そう、さっきも出てきたクラーギンよ!ここの狸親父は本当に政略結婚が大好き
こんな家だから、息子もお下品よ
この息子、なんとマリヤの家にいる同居侍女のフランス娘を誘惑するの
クソ過ぎて腹立たしいでしょ?
でもマリヤは凄いの
フランス娘と父親の気持ちを察して、結婚をきっぱりお断りするのよ
見直したわマリヤ!
そしてこちらの長男はエリートタイプのアンドレイ
彼はねぇ、知識も度胸もある野心家で、頭の回転が速い冷血漢といった感じかしら
時々性格の悪さが露出しちゃうの
妊娠している妻がいるんだけど、冷たくあしらってる
そしてナポレオンに憧れてる
これ不思議よね
敵国なのにね
でもアンドレイは戦争で負傷してしまうの
意識が朦朧とする中、なんとあのナポレオンに会うんだけど…
ここで大空を仰ぎながら大切なものを履き違えていることに気づくのよ
ナポレオンの陳腐さに目が覚めるの
どんな青年になっていくのか楽しみだわ
■ロストフ伯爵家
モスクワに屋敷を持つお人好しな貴族
裕福な生活を続けていたものの、贅沢な生活により、徐々に家庭の財政状況を傾かせる
長男:ニコライ・ロストフ…親しみやすい顔立ちの美男子、士官候補生
末娘:ナターシャ・ロストワ:天真爛漫な娘
もてなしを大事にし過ぎるのか、見栄っ張りなのか、羽振りがいいのか…
とにかくここはそんなお家柄よ
子どもたちも素直な良い子たちが多い印象ね
まずは長男のニコライね
彼はねぇ、いかにも坊ちゃまタイプ
まだ世間も酸いも甘いも知らない青二才くん
戦闘中の負傷も、見たこと聞いたこともちょっと盛っちゃう若気の至りに溢れた子ね
皇帝に会えた時に、異常にときめいてまるで恋する少女のよう
一応彼女がいるんだけど、今は女どころじゃない…って心のどっかで思ってる
あと末娘のナターシャね
この子光るのよ
特に見せ場があったわけじゃないけど、生き生きしてる、キラキラしてる
これからきっと中心人物に躍り出るわよ
覚えておかなきゃ
■クラーギン公爵家
地位と名誉のためなら何でもする成金貴族
次男:アナトール・クラーギン…社交会でさまざまな浮き名を流し、放蕩を繰り返している
娘:エレン・クラーギナ…美貌と堕落した内面を持ち合わせ、社交会のトップに君臨する
さっきから登場してるわね
地位と名誉を履き違えている成金タイプでねぇ、政略結婚を仕掛けまくるわけよ
まだ子供たちもそれを当たり前に思ってて計算高いったらありゃしないの
いかにも!とわかりやすいお家よ
さっき紹介したとおり、次男のアナトールは厳格なおうちのマリヤ
エレンは莫大な財産を相続したピエール
やーね
ここのお家
とざっとこんな感じ
この辺りを押さえておけばなんとなくストーリーについていける
ロシアの貴族たちが戦争に巻き込まれどうなっていくのか…
この段階で彼らは本当にゴシップ好きで見栄と権力とお金が大好きな強欲どもだ
コネをつくる根回しに翻弄し、財産を守り一族の保身を第一に考え、他人のことは使えるコマかどうかで判断
そんなことにうんざりする若者は戦争に行くことがなんだかカッコいいと勘違いしている
どうしようもない貴族どもだ
彼らがロシアの侵攻により何に気づき、どう変わるのか
恐らく2巻以降から盛り上がっていくのだろう(と大いに期待)