あらすじ
不吉な彗星の到来。軍務に戻ったアンドレイは父と妹に敵の接近を知らせるが、退避目前で老公爵は死去、マリアは領地農民の反抗に遭う。戦争の本質を探ろうとピエールはボロジノへ発つ。今や貴族も農民もなく全ロシアの危機が始まろうとしていた。新訳(全6冊)
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Posted by ブクログ
この巻は前半はマリアの父ボルコンスキー公爵の死 後半はナポレオンのロシアでの初めての敗北のボロジノ戦が描かれています。読んでいてじわじわ来たのは、私のように戦争経験のない人間にはわからない、軍事進攻の残酷さです。特に前半のアンドレイの故郷の荒廃ぶり、彼らが土地を転々としている事実、むろん彼らは裕福な何ヘクタールも農場を所有している豪農の領主なのですが、しかし物語で語られている時間経過でそれは感覚として理解できました。いわば都落ちです。後半の戦場の残酷な描写も克明であり、この時代の戦争ではあるのですが、指導者と現実の戦場の乖離など、読んでいてそうであろうと納得させられました。そんな中でアンドレイがナターシャと別れる原因となったアナトールの負傷した姿を見て、憐憫の情にかられるあたりが、この小説のヒューマニズムの肝なのだと思います。同様の場面はピエールとドローホフの和解の場面でもありました。アナトールと言えばアナトール・フランスを思い浮かべますが、おそらくそれでつけられた名前でしょう。トルストイの理想が掲げられた描写なのだと思いました。
Posted by ブクログ
いよいよ、ロシアがナポレオンとの戦争に突入する。
作者の歴史感を書き留めておきたい。
・人間の中には2面の生がある、その利害が抽象的であればあるほど自由が多くなる個人的な生と人間が予め定められた法則を必然的に果たしている不可抗力な群衆的な生である。
・人間は意識的には自分のために生きている。しかし、歴史的、全人類な目的の達成のための無意識的な道具の役をしている。
・歴史=人類の無意識的、全体的、群衆的な生
・歴史上の偉人はその事件を示すレッテルに他ならず、レッテルと同じように事件そのものとは最も関係が小さい。
歴史とは抽象化された一面的な解釈である。ある概念を宙吊りにして眺めたとしても真理にたどり着けないことと同様に、あまりにも多くの諸原因の集合的な結果であり、その真相を多くの歴史家は分かったように言うが真実を示すことは不可能である。
Posted by ブクログ
“大佐はバラショフの任務を国王陛下にうやうやしく伝えたが、バラショフという名が発音できなかった。
「バル・マシェーヴ卿!」王は(大佐が直面した難関を、持ち前の思い切りのよさで克服して)言った。” (49page)
括弧のなかのちょいちょいした描写がいちいち楽しい。おもしろい文体ではまるなあ。
Posted by ブクログ
後半のフランス、ロシアの戦い、一気に読んだ。
戦争でのみんなの心理はこうかもしれないなって思った。状況はコロコロ変わって、指示も追いつかないし、みんなその場で勝手に決めて…
それにしても、ピエール危ないし、邪魔だと思うんだけど。
Posted by ブクログ
1〜3巻と比べ、難しいと感じた。
ロシア帝国の地理に暗いからだろう。
(簡単な地図が載ってるのだが、それでも理解が追い付かない。)
世界史の教科書などでは、ナポレオン軍は寒さにやられて敗北と載ってるが、
この本ではフランス軍の死傷者が多くなり、それによってナポレオン並びにフランス軍の士気が低下し敗北色になったとある。
それとも、次巻で寒冷による敗北を迎えるのかな?
Posted by ブクログ
ナターシャの件でアナトールを憎んでいたアンドレイが、負傷して脚を切り落とされているアナトールを見て敵への愛を自覚するところがキリスト教っぽいなと思った。敵を含め全てのものへの愛が生への喜び。アンドレイはナターシャに裏切られたり故郷を失ったり散々なのに、生きていたいという生への愛が強いところがすごい。