トルストイのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【愛こそ人間のすべて】
「人間が生きる目的はなんなのか?」「生物が生きる目的はなんなのか?」そんな答えを見つけたくてたどり着いた一冊。
人間、生物、無生物に分類するあたりや、人間は「自分の幸せのために生きている」という点は同意する一方で、「愛」によって「死」はなくなる、という点などは納得できない。
訳者が記述しているが、どうもトルストイ自身が60歳になり、自分の死に向き合うにあたって、自己の精神の安定を求めて書いたように見える。
自分の幸せではなくて、相手の幸せを願うことこそ、「愛」であり、それをすることで死が怖くなくなる。自分というものを破棄し、人間というコミュニティ/カテゴリに収まることで、自分の死は人間という単位では死ではなくなるために、恐怖から解放される。
意識は寝るときも、死ぬときも無いわけで一緒なのだから、怖くないでしょ?っていう独自の論理は、なかなか面白い。
が、そんなこと気にせず、つまるところ大事なのは「自分の幸せ」なのであると私は思う。 -
Posted by ブクログ
訳が読みやすくて、良い。
一人の男と一人の女がひたすらに愛し合うことを望んだ夫たちの破滅。
片方は妻の殺害に至り、片方は自殺を遂げる。
「クロイツェル•ソナタ」で、美しい妻が二枚目の男と合奏を披露するシーンがある。
そんな二人を、じっとりと憎悪を込めた目で見つめながら、クロイツェル•ソナタについて、こう語る。
「たとえばこのクロイツェル•ソナタにしても、それを作ったベートーベンは、なぜ自分がそういう心境にあったかを知っていたわけですし、その心境が彼を一定の行為にかりたてたのですから、彼にとってはその心境が意味を持っていたわけですが、こっちにとっては何の意味もないんですよ。」
なるほど、と思う。
それもトルストイがそう言い切れることに。
結婚が如何なる束縛であろうと、男と女には読めない心の揺れがあるものだと思う。
その揺れを見つめ続け、貞淑さを追うことによってもまた、ある種の破滅を起こしてしまうのだなあ。いやはや、難しい。。。 -
Posted by ブクログ
率直な感想としては私はキリスト教徒にはなれないだろうなということだった。
というかパンフィリウスや晩年20年のユリウスの生活の具体的なところが何も書かれていないのがずるいなと思った。
世俗的な生活を送っていたころのユリウスの苦悩や葛藤が詳細に追われているのに、パンフィリウスがあまりに霧に隠れていて、そりゃこれだけならパンフィリウスの生活のほうが素晴らしく見えるわと。
パンフィリウスの人生における苦悩や葛藤がキリスト教の思想によってどのように乗り越えられるのかが知りたい。
トルストイが理想を外から眺めている状態=トルストイはパンフィリウスの仲間達の一員ではないんだろうなという気がした。
なんとかしてユリウスになろうとしている医者=トルストイと感じる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「イワン・イリイチの死」では、
重篤な病に倒れたイワン・イリイチが
自らの「死」を確信してから鬼籍に入るまでの様々な葛藤が描かれる。
病に冒されるまで、
イワン・イリイチの人生は法に則り、
そつなく順調に歩まれてきたものだった。
しかし、「死」は自身も周囲も呑みこみ、
あらゆる状況を一変させる。
恐怖、孤独、嘘、軋み、無力、神の不在、生への渇望――。
本作は、自身の死を前にしたトルストイが、
その恐怖を描き出したものだという。
確かな生を送る者には、
死の定めを背負った人間の苦悩を窺い知ることはできない。
死にゆく者と同期することの不可能性。
それを強く認識しながら遡行的に彼らと接すること。
そこにこそ、「虚偽性」からの逸脱が生じうるのかもしれない。
トルストイからの教訓に学び、
多くの死に対して誠実な目を向けたい。