トルストイのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
大変ディープな内容を扱ってはいるが、よく読むと納得できる部分が多く、さらに同じ内容を折に触れて反復している。深い作品だけにしっかりメモをとりながら読めば良かったと、読み終わってからしばらく経つ今になって後悔。
人間の生命は幸福への志向である。しかし、人間は理性という天性の特質ゆえに、動物的個我の追求によっては真の幸福を達成できない。なぜなら、不可避な死を認識してしまう以上、生きている間のいかなる個人の快楽も結局は無に帰す虚しいものであるという事実から逃れることができないからだ。根源的には満たされえない個人の快楽を追求する人々は、不可避な死から必死に目を背け、それに常に怯えながら生きていく -
Posted by ブクログ
【愛こそ人間のすべて】
「人間が生きる目的はなんなのか?」「生物が生きる目的はなんなのか?」そんな答えを見つけたくてたどり着いた一冊。
人間、生物、無生物に分類するあたりや、人間は「自分の幸せのために生きている」という点は同意する一方で、「愛」によって「死」はなくなる、という点などは納得できない。
訳者が記述しているが、どうもトルストイ自身が60歳になり、自分の死に向き合うにあたって、自己の精神の安定を求めて書いたように見える。
自分の幸せではなくて、相手の幸せを願うことこそ、「愛」であり、それをすることで死が怖くなくなる。自分というものを破棄し、人間というコミュニティ/カテゴリに収まる -
Posted by ブクログ
率直な感想としては私はキリスト教徒にはなれないだろうなということだった。
というかパンフィリウスや晩年20年のユリウスの生活の具体的なところが何も書かれていないのがずるいなと思った。
世俗的な生活を送っていたころのユリウスの苦悩や葛藤が詳細に追われているのに、パンフィリウスがあまりに霧に隠れていて、そりゃこれだけならパンフィリウスの生活のほうが素晴らしく見えるわと。
パンフィリウスの人生における苦悩や葛藤がキリスト教の思想によってどのように乗り越えられるのかが知りたい。
トルストイが理想を外から眺めている状態=トルストイはパンフィリウスの仲間達の一員ではないんだろうなという気がした。
なん -
Posted by ブクログ
ネタバレ「イワン・イリイチの死」では、
重篤な病に倒れたイワン・イリイチが
自らの「死」を確信してから鬼籍に入るまでの様々な葛藤が描かれる。
病に冒されるまで、
イワン・イリイチの人生は法に則り、
そつなく順調に歩まれてきたものだった。
しかし、「死」は自身も周囲も呑みこみ、
あらゆる状況を一変させる。
恐怖、孤独、嘘、軋み、無力、神の不在、生への渇望――。
本作は、自身の死を前にしたトルストイが、
その恐怖を描き出したものだという。
確かな生を送る者には、
死の定めを背負った人間の苦悩を窺い知ることはできない。
死にゆく者と同期することの不可能性。
それを強く認識しながら遡行的に彼らと接