トルストイのレビュー一覧
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モスクワへ移ったリョーヴィン夫妻。臨月を迎えたキティはみんなからあたたかく見守られながら幸せな気分で妊婦生活を満喫している。
一方のリョーヴィンはいよいよ自分が父親になるのだという重圧で押しつぶされそうになっており、いざ出産という段での慌てっぷり、狼狽ぶりはもはや喜劇のようでおかしかった。
キティの分娩がなかなか進まず何度もしつこく医者に進捗を確認しては、「もう終わります(もう産まれます)」という返事を「ご臨終です」という意味に勘違いする始末。
出産という偉業を成し遂げたキティを見て、歓喜の慟哭と滂沱の涙を流しキスをするリョーヴィンの姿はまさに愛そのもので、でもその後に息子と対峙して「子供は何 -
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読むぞー!と意気込んで全巻まとめて購入したのは何年前だったか、すっかり書棚の番人となっておりましたが、突然のこのタイミングで読み始めることにしました。
「幸せな家族はどれもみな似ているが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。」という書き出しが与えるインパクトがいきなり鮮烈だ。
1870年代ロシアの貴族社会での愛憎劇で、うまく物語に入り込めるか少し不安だったけど全然問題なかった。徹底したリアリズムの小説なので、それこそ登場人物の全員に感情移入しながら読める。
猛烈な吹雪のなか汽車を降り、追いかけてきたヴロンスキーとアンナが再会、そこに生まれてしまう愛を確信するシーンのなんと美しいことか!今 -
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いよいよ、ロシアがナポレオンとの戦争に突入する。
作者の歴史感を書き留めておきたい。
・人間の中には2面の生がある、その利害が抽象的であればあるほど自由が多くなる個人的な生と人間が予め定められた法則を必然的に果たしている不可抗力な群衆的な生である。
・人間は意識的には自分のために生きている。しかし、歴史的、全人類な目的の達成のための無意識的な道具の役をしている。
・歴史=人類の無意識的、全体的、群衆的な生
・歴史上の偉人はその事件を示すレッテルに他ならず、レッテルと同じように事件そのものとは最も関係が小さい。
歴史とは抽象化された一面的な解釈である。ある概念を宙吊りにして眺めたとしても真理 -
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ネタバレ私が読んだのは、新しい「藤沼 貴訳」の方です。
どうして、みんな、ナターシャが良いのでしょう。どうも、私は、世間知らずなわがまま娘のような気がして、イヤですね。
マリアやソーニャには、けっこう感情移入して読んでしまいます。マリアは、一生を老いた父と、母のいない甥の世話ために捧げてしまうのでしょうか。ソーニャは、やっぱりニコライとは結婚できないのでしょうか。
それにしても、アナトールとエレンの兄妹は、本当にイヤなやつです。ピエールとエレンとの結婚生活は、今後、どのようになるのでしょう?
そして、時代背景的には、ナポレオンのフランス軍とロシア軍との対決が避けられなくなる状況です。4巻は、き -
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転職後の夏辺りに購入。短いが読後感は爽やかで好き。
主人公の王様が権力や金等の欲望を楽しむが空しさを感じ、最終的にキリスト教の信者たちが営む小さな村で幸せに暮らす話。トルストイのキリスト教礼賛思想がよく見える。
ただ、キリスト教を抜きにしても教訓的な話であるので、暖かい気持ちになれる。最後、老人となった主人公がキリスト教の村でぶどう畑に居場所を見つけられず「すべき仕事をするにはもう年を取りすぎた」と泣いた時、別の老人が「別の畑にはあなたも取れるぶどうがある、年齢ではなく気持ちが大事だ」と諭すシーンが特に好き。
ご都合主義的なストーリーの運びではあるが、これくらいライトな進行の方が読後感もさ -
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ついにトルストイの最高傑作の一つで大作の『戦争と平和』を読み始めてしまった。最初、新潮文庫と岩波文庫のどちらで読むか迷ったが、登場人物の紹介や家系図、小説の途中で入る「コラム」のある岩波文庫の藤沼貴氏の訳の方を読んでみた。
結論的に言うと藤沼氏の新訳は非常に読みやすい訳で、注釈なども適度に入っており、かなり分かりやすかった。「コラム」が小説の筋を遮ってしまうというようなこともなく、当時のロシアの背景を分かりやすく解説してくれて、ロシア史の専門家以外の人には絶対に役に立つと思う。
さて、物語の方はというと、最初の100ページくらいは登場人物がやたら多く、話の筋をたどるのが非常にやっかいだった( -
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岩波文庫赤
トルストイ 「 イワンイリッチの死 」
死をテーマとした良書。哲学や宗教を用いずに 死の境地を表現。
一人の男性の人生を通して、生の自己満足→死の恐怖→死の喜びを 追体験できる凄い本。死顔の表現力に驚く
「アンナカレーニナ」は よくわからなかったが、これは面白い
「死とはなんだ〜恐怖はまるでなかった。なぜなら 死がなかったから〜死の代わりに光があった〜何という喜びだろう」
死顔
*在世の時より美しく、もっともらしかった
*その顔は 必要なことはしてしまった、しかも立派にしてのけた とでもいうような表情
*この表情には 生きている者への非難、注意が感じられた
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ネタバレ人生論というよりも、トルストイ個人の視点から「生命」というものを分析した論文のような文章です。
生命を構成する分子、更にもっと細かい物質まで科学によって研究を重ねていけば生命を理解できるというのは誤った視点であるという問題提起から始まります。
そもそもその分子レベルでの研究を重ねっていく目的自体はなんなのか?今、我々にある苦悩や幸福は本当にその科学的な分析で明らかになるものなのか?今自分にある「生命」とは本当にそんなものによるものなのか?
という問いかけが常になされます。
そこから人間の中に存在する「動物的個我」と、「理性」についての説明や対比を述べ、いち個体の幸福の追求、つまり「動物的