トルストイのレビュー一覧
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第1部第3編と第2部第1~2編を収録。戦場から戻ったアンドレイとニコライ、遺産相続後のピエールの苦悩。
ボルコンスキー家における求婚騒動では、マリヤの下す決断に感動。美人の軽薄さと、不美人の美しい心根。人間、何が幸せなのかと考えさせられる。
いっぽう兄のアンドレイはアウステルリッツの戦いで負傷する際、至高体験のような精神的な啓示を得る。戦争と死を目の当たりするなかで、見上げていたナポレオンを俯瞰するまでに至る心の変化に目を見張った。
陰キャで目的観のない青年ピエールは、転がり込んできた金と権力で美女と結婚はするものの、うまくいかず結局すべてが行き詰まることに。自らの生き方を見出すべく根源 -
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19世紀初頭、ナポレオン率いるフランス軍との戦争を背景に、国難に立ち向かうロシアの人々を描く長編小説。
全6巻ある本訳の第1巻は、社交界を舞台に5つの家族の人物紹介が行われる第1編と、ロシア軍とフランス軍との交戦が描かれる第2編を収録。
第1編では、社交界を描いた小説ではありがちだが、とにかく登場人物の数が多くて把握するのが大変。本作では500人以上の人物が登場すると事前に聞いていたので、最初からメモを取って読んでいくと、混乱することなく楽しめた。個性的なキャラクターと興味をひく人間関係、そして井戸端会議的な会話がリアルで面白い。群像劇的でもあるが、未だ将来を決められない青年ピエールくんの -
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クロイツェルソナタとは、ベートーベン作曲のバイオリンソナタ第9番イ長調作品47のこと。私は聞いたことがなかったが、動画を検索して聞いてみると、バイオリン1台とピアノ1台が互いに調和しながら進行していく優雅な曲だった。そう、まるで仲睦まじい男女が目配せながら言葉を交わし合うかのように。
ところで収録2作品のうち「クロイツェル~」のほうは文庫本で173ページ。だが、ある男が列車に乗り合わせた初対面の男性に対し、性欲はすべてに勝るという主張を自分の半生を織り交ぜて語る文体は、サスペンスの要素濃い内容とあいまって、長さを感じさせない。
内容を見ると、ある男の妻の前に若くて気障なバイオリニストが現れ -
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難しくて全4巻読み切るのに日数はかかったけど、内容の濃い、面白い作品だった。読んで良かった、この時期(混沌としたコロナ禍の時代、かつ個人的にも悩み多い時期)に読めたことにも意味があるかと。
第4巻について言えば、『エピローグ』は良くも悪くも意表を突く展開だったな、と。特に最後の方は難しすぎて読むのがしんどかったけど、著者の主張をできる限り受け止めたつもり。
登場人物が多い(しかも主人公レベルが複数人いる)中で、ある時はナターシャに共感し、ある時はマリアに自分を重ね、でも結局自分に一番近いのはピエールかなぁ…なんて思ったり。アンドレイも通ずるところ大アリだなぁ…。 -
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戦争はクライマックスを迎え、ナポレオンがモスクワを占領してから退却していく様子を描いている。さまざまな関係者がさまざまな思惑を持って行動している様子が面白い。立場の違うそれぞれの人物を詳細に描いている筆力はすごい。
「リンゴが熟すまでは木からもいではいけない。熟せばリンゴはひとりでに落ちるのに、未熟なうちにもぐと、果実も木も傷めてしまい、おまけに自分も酸っぱい思いをすることになる」p521
「(人は期待にそぐわぬ情報は無視してしまう)だからクトゥーゾフは、自分が望む情報であればあるほど、それをあえて信じまいと自制していた。この問題に彼は自己の精神力のすべてを注いでいた」p524 -
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華やかな上流社交会で繰り広げられる、人々の付き合いの中での人間関係や登場人物の気持ちの変化が面白く、絶妙な物語展開に引き込まれた。
「自分にはかかわりのない事柄については、冷静なる観察者であるべきなのだ」p68
「私は自分がこの相手より上だと意識しているので、そのせいで相手よりはるかに劣った振る舞いをしてしまう。こちらが無礼な言動をしても相手は寛大に聞き流しているのに、こちらは逆にますます相手を見下すという始末だ」p72
「(狩猟犬)私なんかの出る幕かね! あんたがたの犬ときたら、犬一頭の値が村ひとつというような、何千ルーブリもする奴ばかりじゃないか」p239
「敵の砲火を浴び、何もできない -
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第1巻よりはだいぶ読みやすいと感じられた。そして、一層面白いと感じた。
登場人物の個性がかなり際立っていると感じられた。
とは言え、同じ人物でも、ある時には人生に絶望していたかと思えば、ある時には人生にまばゆいばかりの光を見出したり。この第2巻では、メインキャストのナターシャもアンドレイもピエールも、その両方を経験している(…と記憶している、ロストフもだったか?)。
それがとても「人間臭さ」を感じさせるし、自分にとって身近に感じてしまう。ずっと昔のロシアと21世紀の自分が、近くに感じられる。
あと、描写も相変わらず素晴らしい。特に、ロストフが狩りに出かけた時の描写がいいと思った。 -
購入済み
さすがです。
自分の読みたい中心人物は丁寧に、あとはとばす位にしました。
考察がしっかりしていて、さすがです。
ハムレットは「死ねば夢を見るだろう」と言ったが
死後新しく目を覚ますといった考えは思い及ばなかった。
キリスト教的なのか。
ピエールに関しては、伸るか反るかで、決闘や、暗殺計画、
フリーメーソン、銃殺まで出てくるとは思わなかった。
農業経営の改革については手腕の良しあしが比較できる。
ピエールは表面的だ。
夫婦は論理ではなく、それを飛び越えてわかりあっているとか
おおお!って思った。
最後、戦争論が延々とあったがとばしたので
いつかしっかり読み直せるかな? -
Posted by ブクログ
悲しみと驚きの第7部
心に残る第8部
読み終えた瞬間の私の感想…
え?これは?
『アンナの終わりとコンスタンチン・ワンダーランド』じゃないの!
なぜ?なぜトルストイは、この小説のタイトルを『アンナ・カレーニナ』としたの?
トルストイ先生、もっと他のタイトルあっただろうに…と考えつづけていたところ、巻末の、訳者望月先生の解説の中に、ゲイリー・モーソンという人の解釈が紹介されていました。
_題辞は 彼女が自分自身に下した捌きの言葉だとも取れる_
『アンナ・カレーニナ』だからこそ、彼女と相反するその周りの人物や思想、またリョービンの物語に光が差すのです。
悩めるリョービン、悟りを開く