トルストイのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
19世紀後半のロシア。ひとつの不倫から始まるドラマを軸に、貴族社会の多様な人間模様を描く恋愛小説の名作。
「幸せな家族はどれもみな同じようにみえるが、不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある」
有名な書き出しから始まる第1部は、不倫から始まり不倫に終わる。『出会ってしまった!』という感じ。美しいロシアの情景と細やかな心理描写が読みやすく、冒頭から興味を引く展開が連続して続いていくので、面白くない部分がないというか、ダレることなく一気に読めた。主役となるアンナ&ヴロンスキーだけでなく、青年貴族リョーヴィンと、彼に関わる令嬢キティの物語もそれぞれ独自に進み、人間関係のバランスが絶妙に設定さ -
Posted by ブクログ
最終巻。第4部第3~4編とエピローグ第1~2編を収録。フランス軍との決着、生き残った主人公たちのその後。
立場が逆転し、逃げるフランス軍と追うロシア軍。戦場ではそれぞれが過酷な状況のなかで、人間の醜さが露呈し、親しい人たちが死んでいく。捕虜に対しての「やっぱし、おんなじ人間なんだな」という言葉が印象深い。
捕虜生活を通してピエールが得た境地。「話す人」から「聞く人」へ、「誰もがそれぞれの考え方や感じ方やものの見方をする可能性を認め、言葉で人の信念を覆すことの不可能性を認める態度」、「まずやむくもに人々を愛しては、後から愛するに足る疑う余地のない理由を見つけていたという現象」といった変化は、 -
Posted by ブクログ
第3部第3編と第4部第1~2編を収録。ナポレオンのモスクワ占領から放棄までの多様な人間ドラマが描かれる。
迫るナポレオン軍、逃げるモスクワの人々。脱出間際の騒動のなか、ロストフ家がとる決断が感動を呼ぶ。
負傷したアンドレイが到達する「魂の本質としての愛」――すべてを愛するということは、すなわち神をそのすべての現れにおいて愛することだ――最近のスピリチュアル風に言えば「無条件の愛」ともいえる境地。ここからのナターシャとの再会劇は魂が震えるほど感動した。小説で泣くというのはめったにないことなのだが……。
ニコライとの出会いによって覚醒するマリヤの女性的な魅力。みにくいアヒルの子が美しい白鳥に -
Posted by ブクログ
第3部第1~2編を収録。ついにモスクワに迫るナポレオン軍――ロシアの一大危難に立ち向かう人々を描く。
軍務に復帰したアンドレイは、悲しみと憎しみのためか、例の「空」のことも自由を満喫した生活のことも忘れていく。多言語が入り交じる軍務会議のなかで、「戦争の科学」など存在しないという結論に達するのは作者の信念でもあるのだろうか。いっぽうで父との軋轢が重なるマリヤは、それでも許しと信仰を兄に主張する。言動がひどい父親も決して悪人というわけではなく、この家族は本当にせつない。
黙示録の獣の数字とナポレオンの関係は知らなかった。ピエールがそれを自分に当てはめるのはさすがにこじつけすぎて笑ってしまう。 -
Posted by ブクログ
第2部第3~5編を収録。舞台は戦場から貴族社会へと移り、青年たちの恋愛と結婚についての騒動が描かれる。
人生の新たな局面に取り組むアンドレイとピエールだったが、虚飾に満ちた社会にぶち当たり、それぞれに行き詰まっていく。直接からむ場面は少ないものの、この二人の友情は強いものに育っており、アンドレイが旅立つ際、ピエールのことを「黄金の心の持ち主」と言って評価するのが印象深い。
本巻で最大の見どころはナターシャがとる行動とその顛末。オードリー・ヘップバーンの映画ではナターシャの行動が唐突で意味不明に思えて、彼女が軽率で悪い女にしか見えなかったのだが、原作ではそこに至るまでの状況の経緯や心境の変化 -
Posted by ブクログ
第1部第3編と第2部第1~2編を収録。戦場から戻ったアンドレイとニコライ、遺産相続後のピエールの苦悩。
ボルコンスキー家における求婚騒動では、マリヤの下す決断に感動。美人の軽薄さと、不美人の美しい心根。人間、何が幸せなのかと考えさせられる。
いっぽう兄のアンドレイはアウステルリッツの戦いで負傷する際、至高体験のような精神的な啓示を得る。戦争と死を目の当たりするなかで、見上げていたナポレオンを俯瞰するまでに至る心の変化に目を見張った。
陰キャで目的観のない青年ピエールは、転がり込んできた金と権力で美女と結婚はするものの、うまくいかず結局すべてが行き詰まることに。自らの生き方を見出すべく根源 -
Posted by ブクログ
19世紀初頭、ナポレオン率いるフランス軍との戦争を背景に、国難に立ち向かうロシアの人々を描く長編小説。
全6巻ある本訳の第1巻は、社交界を舞台に5つの家族の人物紹介が行われる第1編と、ロシア軍とフランス軍との交戦が描かれる第2編を収録。
第1編では、社交界を描いた小説ではありがちだが、とにかく登場人物の数が多くて把握するのが大変。本作では500人以上の人物が登場すると事前に聞いていたので、最初からメモを取って読んでいくと、混乱することなく楽しめた。個性的なキャラクターと興味をひく人間関係、そして井戸端会議的な会話がリアルで面白い。群像劇的でもあるが、未だ将来を決められない青年ピエールくんの -
Posted by ブクログ
クロイツェルソナタとは、ベートーベン作曲のバイオリンソナタ第9番イ長調作品47のこと。私は聞いたことがなかったが、動画を検索して聞いてみると、バイオリン1台とピアノ1台が互いに調和しながら進行していく優雅な曲だった。そう、まるで仲睦まじい男女が目配せながら言葉を交わし合うかのように。
ところで収録2作品のうち「クロイツェル~」のほうは文庫本で173ページ。だが、ある男が列車に乗り合わせた初対面の男性に対し、性欲はすべてに勝るという主張を自分の半生を織り交ぜて語る文体は、サスペンスの要素濃い内容とあいまって、長さを感じさせない。
内容を見ると、ある男の妻の前に若くて気障なバイオリニストが現れ -
Posted by ブクログ
難しくて全4巻読み切るのに日数はかかったけど、内容の濃い、面白い作品だった。読んで良かった、この時期(混沌としたコロナ禍の時代、かつ個人的にも悩み多い時期)に読めたことにも意味があるかと。
第4巻について言えば、『エピローグ』は良くも悪くも意表を突く展開だったな、と。特に最後の方は難しすぎて読むのがしんどかったけど、著者の主張をできる限り受け止めたつもり。
登場人物が多い(しかも主人公レベルが複数人いる)中で、ある時はナターシャに共感し、ある時はマリアに自分を重ね、でも結局自分に一番近いのはピエールかなぁ…なんて思ったり。アンドレイも通ずるところ大アリだなぁ…。 -
Posted by ブクログ
戦争はクライマックスを迎え、ナポレオンがモスクワを占領してから退却していく様子を描いている。さまざまな関係者がさまざまな思惑を持って行動している様子が面白い。立場の違うそれぞれの人物を詳細に描いている筆力はすごい。
「リンゴが熟すまでは木からもいではいけない。熟せばリンゴはひとりでに落ちるのに、未熟なうちにもぐと、果実も木も傷めてしまい、おまけに自分も酸っぱい思いをすることになる」p521
「(人は期待にそぐわぬ情報は無視してしまう)だからクトゥーゾフは、自分が望む情報であればあるほど、それをあえて信じまいと自制していた。この問題に彼は自己の精神力のすべてを注いでいた」p524 -
Posted by ブクログ
華やかな上流社交会で繰り広げられる、人々の付き合いの中での人間関係や登場人物の気持ちの変化が面白く、絶妙な物語展開に引き込まれた。
「自分にはかかわりのない事柄については、冷静なる観察者であるべきなのだ」p68
「私は自分がこの相手より上だと意識しているので、そのせいで相手よりはるかに劣った振る舞いをしてしまう。こちらが無礼な言動をしても相手は寛大に聞き流しているのに、こちらは逆にますます相手を見下すという始末だ」p72
「(狩猟犬)私なんかの出る幕かね! あんたがたの犬ときたら、犬一頭の値が村ひとつというような、何千ルーブリもする奴ばかりじゃないか」p239
「敵の砲火を浴び、何もできない