トルストイのレビュー一覧

  • 戦争と平和3

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    ネタバレ

    アンドレイ、ナターシャ、ピエールが変転する。そこに長編の良さを見出す。人を長いスパンで捉えた時、変わるものが描けるからだ。

    <メモ>
    2-3-3 楢の木の変化は、アンドレイの見方を変える。古木も若芽を出す。老成から青春への回帰。ピエール、ナターシャもきっかけに。デタッチメントからコミットメントへ。孤独から人とのつながりへ。煩瑣な人間関係の中で、わたしも孤独を求め突けたが、本当に孤独になったときに、反転してつながりを求めた。犬を飼いたいとも。退職から仕事への意欲も。

    2-5-13 アナトールがナターシャにキス。そこから彼女はアンドレイ公爵に醒める。ソーニャは阻止を図る。破談になってしまうのか

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    2025年04月30日
  • 戦争と平和2

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    ネタバレ

    展開が俄然面白い。不謹慎かも知れないが。名文も多い。
    ・ピエールとドーロホフの決闘。そして、ピエールとエレーヌとの離婚。
    ・アンドレイの奇跡の帰還。産科医とともに。
    ・出産に伴う、アンドレイの妻リーザの死。
    ・恋に破れたドーロホフがニコライに賭を挑む。見事に負けるニコライ。そして借金の返済。賭にのめり込んでいく描写が見事。
    ・デニーソフのナターシャへの求婚。接近はダンス。

    ※アンドレイとピエール。あとニコライ少し。彼らの内省、思索も興味深い。

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    2025年04月18日
  • 戦争と平和1

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    最初はサロンでのやり取りが延々と続く。人物造形に特徴は出ているが、物語に動きが少なく、退屈に感じる。遺産を受け取ることになるピエールの存在がちょっと面白い。

    第二編に至って、集団が軍隊に移ると俄然、物語は動き出す。激しい戦闘シーンが続くわけではないが、戦争の位置付けをめぐって、様々な視点が交錯するのが興味深い。兵士であるアンドレイと外交官であるビリービンのやり取りなど。

    最後のニコライの高揚感、負傷、惨めさ。アンドレイ侯爵のやりきれなさ。戦い抜いた、また、人間性を失わなかったトゥーシン大尉(砲兵隊長)の姿にしみじみしたものを感じた。

    戦争の諸相を今回だけでも、思う存分描いていた。

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    2025年04月15日
  • アンナ・カレーニナ 4

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    ネタバレ

    善をなそうという、素朴な信仰の大切さを訴えて終わる。理性の限界を悟った上で。人間くささは否定せずに。アンナの物語であり、リョービンの物語であった。その2人で対立されているのは、エゴイズムの解釈だろう。つまり、エゴに振り回されるか、エゴに誠実に向き合い続けるか。リョービんが絶大な人気や好感を誇るわけではないのがミソだ。

    アンナの自殺の場面。そこに至るまでの焦り、怒りが延々と綴られ、自殺しか帰結がない描きだ。ヴロンスキーの時もそうだったが、死なないだけの浅さがそこにはあった。

    ヴロンスキーが戦争に赴いてしまうのも、それが讃えられるのも、悲しかった。彼は後半、人格の深化が見られたような気がしたか

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    2025年04月05日
  • アンナ・カレーニナ 2

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    リョーヴィンとキティの偶然の再開。彼女がこちらを見つけた時の一瞬の輝いた目を見てもう一度確信する。自分には彼女しかないと。このシーンがとてつもなく好きだった。

    リョーヴィンを軸とした田舎の描写、恋愛描写は、ナボコフをはじめとした一定数の読者から不評とのことで、確かに一理あると思った。アンナを取り巻く環境に比べ、リョーヴィンの恋愛は生ぬるい。確かにアンナとカレーニン、そしてヴロンスキーらのそれぞれの心情描写、何に悩んでいるかを考える方が有意義なように見える。

    カレーニンはアンナの不倫を離婚などという、かえって妻が得するような形で罰するのではなく、別の形で、しかも世間に知られることなく罰したい

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    2025年04月04日
  • アンナ・カレーニナ 3

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    ネタバレ

    ここでもトルストイの筆は冴えている。
    巻末の読書ガイドも素晴らしい。今回は読み方。マインドマップと象徴性に注目していて、こういうのを知ると長編の名作を読むのがやめられなくなる。

    以下、メモ。ネタバレあり。

    ・キティ(カーチャ)のニコライの看病。理屈としての死と女性から見た死の違い
    ・ドリーの妊娠、出産、子育ての苦悩。P390。転じてアンナの生き方への評価のまなざし。
    ・快活なアンナ。人生の大事な部分に関して、眼を細めてしまう。これは小○今日子や他の不倫した女性にもあてはまる印象だ。あくまで印象だが。
    ・公爵令嬢ワルワーラの都合のいい、アンナ評。社会的に不健全でも、うわっつらだけ合わせること

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    2025年04月02日
  • アンナ・カレーニナ 2

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    ネタバレ

    *リョービンが農民と共に草刈りをするシーンは、のびのび、活き活きとしている。田舎でのドリーの子どもとのやりとり、通りすがりの人々とのやりとりものびのび、いきいきしている。その二人が村で出会う!

    *リョービンとキティの決裂してからの熱愛ぶりの描き方。

    *アンナの出産に際しての死の間際にまでいってしまうことに、夫カレーニンと愛人ヴロンスキーの大変化。そして、その人間的な皮相ぶり。自殺の衝動性の描き方の傑出。

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    2025年03月28日
  • アンナ・カレーニナ 1

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    恋に落ちたり、不倫をしたり、それをたしなめたり、噂したり、不信に落ちたり。あまりにもその過程の描写が迫真だ。翻訳もいいのだろうが、やはり古典恐るべしである。

    メモ:
    ・冒頭の列車での事故は、何かの暗示だろうか
    ・オブロンスキーの不貞は、何かの暗示だろうか
    ・ウマの背骨が折れたのは、何かの暗示だろうか
    ・ウソをつかないことの両義性。欲望に正直。しかし、世間体は無視できず、正直に従いたい。良心以上の倫理の存在の主張か。

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    2025年03月18日
  • イワン・イリッチの死

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    無意味で穢らわしい人生への総括。誰もが必ず向き合うことになる「自分だけの死」についての簡潔なリポート。腹痛や頭痛など誰でも身近な痛みで体感し得る「痛みに耐える時間は長く、救われた時間は短く感じる現象」とその間に冷えた頭の中で痛みと闘うことを強いられている自分以外の人や物への憎悪、過去の己との対峙、後悔と自己憐憫、否定と肯定。主人公の痛みに終わりはなく、戸口から僅かに差し込む外の光に眼球を痛めながら圧縮された絶望を少しずつ舌先で舐めるような話。

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    2025年01月26日
  • 復活 上

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    貴族階級の若者と関係した後に棄てられ、失意のまま娼婦へ身を落とした元小間使い。十年の時を経て彼らは或る事件の陪審員と被告の立場にて再会。書き手次第で三文小説に成り兼ねない題材も文豪の筆に掛かれば重厚なドラマへと昇華する

    人間は自分の中にあらゆる性質の芽をいだいており、その変化によっては自分と似ても似つかないものになることがよくある(四百頁記述の要約)

    人間の本質を的確に捉えたトルストイの見識に改めて感心。若かりし頃の崇高な理念は忘却の彼方へ消し去られ、俗世にまみれたエゴイストへ成り下がったネフリュードフと、彼に尊厳を踏みにじられ堕落したマースロワの二人がどう「復活」していくのか、下巻の展開

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    2024年09月21日
  • クロイツェル・ソナタ 悪魔

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    この作品は嫉妬に狂った夫が不倫疑惑の妻を殺してしまうという筋書きなのですが、これがとにかくやりきれない小説なんです・・・

    この悲劇的な作品は、いかにして生まれてきたのか

    それには、実はトルストイ自身の家庭崩壊や理想と現実との乖離が大いに関係していたのでありました。

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    2024年08月19日
  • イワン・イリッチの死

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    この作品は読んでいてとにかく苦しくなる作品です。心理描写の鬼、トルストイによるイワン・イリッチの苦しみの描写は恐るべきものがあります。

    幸せだと思っていた人生があっという間にがらがらと崩れていく悲惨な現実に「平凡な男」イワン・イリッチは何を思うのか。その葛藤や苦しみをトルストイ流の圧倒的な芸術描写で展開していきます。

    そして、私はこの作品を読んでいて、「あること」を連想せずにはいられませんでした。

    それがチェーホフの存在です。チェーホフの『退屈な話』という中編がこの作品と酷似しているのです。

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    2024年08月19日
  • クロイツェル・ソナタ 悪魔

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    教育の現場において「政治」「宗教」「性」はどれもいまだにタブーだ。中でも「性」は語りにくい。古文の授業で、恋愛の場面を十代の人に詳しく説明するのはやはり憚られる。しかし、芸術や文学において、それは、避けて通れないどころか、むしろ主題とも言うべきものだ。そしてそれが人間にとって普遍的根元的である以上、「性」を抑圧し封印していてはかえって危ない。「性」を自分の中でどのように位置づけるか、常に誰もが問われている。◆トルストイは、十九世紀から二〇世紀はじめを生きたロシアの作家。代表作は、『戦争と平和』『アンナ・カレーニナ』『復活』など。キリスト教的な人間愛と道徳的自己完成を説いた大作家として知られる。

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    2024年04月11日
  • イワン・イリッチの死

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    死へ望むしかない状況で、生とは何かを考え、自分の答えを出していく。その姿勢、それに対する周囲の姿勢が描写される。取り巻く環境は様々ある中で、一人で考えていくのだ。自分として「これから何を考えるのだろうか」と考えるきっかけとなる本。

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    2024年01月21日
  • 光あるうち光の中を歩め

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    トルストイの晩年の思想をよく表している佳作。私有財産を否定する、アナーキズム的要素の強い原子キリスト教的価値観を主張するストーリーから、肉欲や功名心と言った肉体的な欲望に終始することで人生を破滅させていることを伝える。肉体的世界はあくまで他人の葡萄園なのである。そこで得られる葡萄は人のものであり、主のものであることを理解し、善業に務めるべきである。霊を満足させるために、勤労に勤しみ、人と物を分かち合い、質素な生活を勤しむという、原子的なキリスト教価値観が、現代のキリスト教的世界にどれだけ受け継がれて残っているのだろう。

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    2024年01月03日
  • イワン・イリッチの死

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    クリスマス本読み2冊目。トルストイの後期の作品で、重い。死ってこういう風に訪れて、死を直前にした人間の心の様がありありと描かれている。死を迎えるハイステータスの男の生き方と、典型的?なロシアの農民(百姓と表現されているのだな)の素朴な生き方が所々で交錯し、トルストイの晩年の生き方が反映されているのだ。

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    2023年12月25日
  • 戦争と平和 (三)

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    ここ(3巻)まで来ないとこの本の良さが理解できなかった。1巻の時にさんざんに酷評したことを反省しているが、あの時点ではこんなに引き込まれることになるとは思っていなかった。この本は単なる小説ではなく、トルストイが考える戦争というものを表現している本だとやっとで理解した。ナポレオン戦争はナポレオンの英雄的な天才性によって勝ち進んだものではなく、戦争の中で一人の人間が担える役割や与える影響はたとえそれが皇帝であろうとも極わずかどころか皆無であり、人間の集団性とその中の個々人の動きの総和によってすべてが左右されるというトルストインの戦争観に全く賛成である。途中に入る訳者の解説も大変的を得ていて、本当に

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    2023年07月02日
  • アンナ・カレーニナ 4

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    初トルストイ長編

    幸せな家族はどれもみな似ているが、
    不幸な家族にはそれぞれの不幸の形がある。

    圧巻の世界観
    登場人物がみんな生きている
    熱情や妬みに翻弄されていく貴族たち

    確かに昔存在していた時間たちが蘇り、
    そこに生きていた人間たちの鼓動が感じられる。

    本筋だけを追っていけば、
    今日目新しい展開は特にないのだが、
    一つ一つの挿話によって、
    人物像だけでなく、彼らの生活の香りが浮き彫りになっていく。

    アンナとリョーヴィン

    アンナは恥辱との戦いであり、
    リョーヴィンは自己との戦いであった。

    地に足をつけて、自分と対話しながらなんとか生きていく。
    それって、いつの時代も通用する教訓

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    2023年06月19日
  • アンナ・カレーニナ 4

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    長いけど訳が重厚すぎず、何より面白くてどんどん読み進められた。自分が恋愛に依存気味の時期の思考の流れにありがちな視野の狭さがアンナの一人称語りによく出てたりと人物の心理描写も素晴らしい上、リョーヴィンと対になる構成も面白い。タイトルロールなのにアンナは冒頭もなかなか登場しないし、死んでからも物語が結構続くんだよね。

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    2023年04月24日
  • 復活 上

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    小説と哲学書の間にあるような感じ。よく考えればすぐにおかしいと分かることが、どうして平然と行われ、またそれを自分も行ってきたのか。随所にトルストイの主張が張り巡らされていて本当に面白い。1899年の本なのに読んでいてこんなにも共感できるのは不思議な程だと思った。

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    2023年03月02日