トルストイのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
特に印象的なのは当然物語のクライマックス、母親が死ぬシーンになるが、トルストイが書きたかったのは、その後の主人公の心理、思考描写だろう。おれも最近ばぁちゃんが死んだが、そこには悲しい人の役をどれだけうまく演じられるか競っているような面があって、本当に自分が考えていることを見つめるのが怖かった。トルストイはそれをあっさり書いていて、彼の鋭い眼差しは自分にも容赦がない。ただ宗教的な面で彼だけ見えてる部分があったが、それでもおれからしたら宗教的な面で本当にそうだろうかと思う部分もある。幼年時代の終わりとして、誰しも母親なるものの死が必要になる。しかしおれはトルストイが好きだ。アンナ・カレーニナなど他の作品では人の心をいきいき、時に残酷なまでに描き出すのに、この作品ではその文体のままあどけない主人公の目線をみずみずしく描いている。
再読。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ第一巻で整えられた舞台と、大きな大きな予感とが交錯し、絡み合って、目にも綾な物語が織りなされる第二巻。
本当にどれも素晴らしいエピソードばかりで、何から、そして誰から言えばいいのかわからない。
だがあえて言えば、前半がピエールで後半がナターシャ、だと思う。
ピエールがフリーメーソン会員になるのには本当に驚いてしまった。一体彼はどうなってしまうのだろう、宗教的なものに目覚め、彼と言う人間は変わってしまうのだろうか、ととても心配した。
しかし、ピエールはやはりピエールのままだった! 彼は苦悩し、求め、そして行いをするが、それは彼にとって結果を生まない。物事は常に彼の思い込みを嘲笑うかのように、彼に自身の無力さを突きつける。
けれど、ピエールはそれでも理想を捨てないし、善意を尊いものと考え、そして人を愛そうとするのだ。そして、わかる人にはそれがわかっている。わからない人が大半だけれど、そういう人たちは彼を滑稽な人間だと思いまたそう扱うけれど、それでもピエールのその温かい気持ちと人柄は必ず伝わる人には伝わっている。
彼は不器用で全然実際的な物事には向かないけれど、それでも彼という人間にしかできないことを感じさせてくれる。彼が唯一の人物であると。
そして、ナターシャである!
いやはや、びっくりしてしまった。第一巻を読んだ時から、「この子は絶対美人になるだろうなぁ」とは思っていたが、まさかここまで美しくなるとは思わなかった。
彼女がアンドレイ公爵と踊る場面の、なんと美しいことだろう……
それだからこそ、この巻の最後のエピソードで全く筆を滑らせなかったトルストイに驚嘆する。
ナターシャがアナトーリに見つめられ、そして話しただけで良心の呵責を感じるということの、この説得力……どうしてトルストイはそんなことがわかるのか? どうして美しい女性の葛藤、それも輝かんばかりの、この上なく魅力的で、しかも若い(!)ナターシャの気持ちが、こんなにもわかるのか?……
誰もが自分の気持ちのために笑い、話し、愛し、そして葛藤する。けれどもそれは決して利己的なものではなく、それが生きるということ、それこそが生きる原動力であるということ。私達は自分の感情のために動く、そしてそれが世界を作る。
素晴らしいものを読んでいるなぁ、という幸福感を抱きながら、第三巻へ。 -
Posted by ブクログ
秋なので、思い切って大長編に挑戦!! ということで、かなり背伸びしてみるのもいいだろう、と思い『戦争と平和』を手に取る。
しかし、意外や意外。思っていたよりも、全然、難しくない!! むしろ、すごく読みやすーい!!
描かれているのが19世紀初頭、ナポレオンのロシア侵入ということと、俗にいう「登場人物500人超」に読む前から尻込みしていたのが嘘みたい。登場人物はいきいきしており、展開がスムーズで、雰囲気は明朗である。
特に人物描写の素晴らしさには、目を見張るばかりだ。いろいろ言ってはキリがないのだが、とにかく、膨大な数のそれら登場人物が、ことごとく第一印象を裏切らないのである。
これは別の言い方をすれば、それぞれのキャラクターが、読者にはっきりと第一印象を与えるように書かれているということだろう。読んでいるうちに、確かにこの人物「なら」こう考えるだろう、この人物「なら」このキャラクターとはウマが合うだろう、ということがまるで当然のように書かれている。驚くしかない。
私は『アンナ・カレーニナ』を読んだ時に、この作品で描かれているのは「自分の人生に戸惑い続ける私」なのではないかと思ったのだが、この『戦争と平和』を読んでいる今も、そう感じている。
誰もが自分の人生に、確固たる自信など持っていないこと。どんなに立派で勇敢な軍人でも、どんなに美しくかわいらしい美女でも。
けれど、それを雄大に、堂々と、明朗に描くのがトルストイの素晴らしいところ。この偉大な作家が生まれたこと、書いてくれたことに感謝しつつ、読み進めている。 -
Posted by ブクログ
ベートーヴェンのクロイツェル・ソナタを聞いてから気になって手にとった。
トルストイの作品の中でも”性”について扱う中編二作品を収録。どちらのタイトルも抗いがたい欲望の引き金を象徴している。
特に『クロイツェル・ソナタ』で行われる、列車の長旅の中で行われる人物たちの対話はとてもおもしろく感じた。
どちらの作品もazuki七さんが常日頃感じているように、愛というものをどんな形にするのか、よくわからなくてイライラしてしまう。人間の動物的欲求を克明に描き出していると共に、そんな中でも清くあれと叫んでいるような感じがそれでもしてしまう。
トルストイ自身も愛というものを探していたのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
これを一人の人間が書いたのか!とおもう。500人を超える登場人物をひとりひとり緻密に書き分け、みな血が通った人間にしたてあげている。友人から「どういうストーリー」ときかれてうーんとうなってしまった。ピエールのことをいえばいいのか、アンドレイか、ナターシャか、ナポレオンか・・・一人一人の人生が生き生きと、そして丁寧にえがかれている。いくつもの物語が交錯して、まったくどう説明していいか見当もつかない。これはその時代のロシアを偉大な文豪が鋭利な刀で切り取ってきた作品ですとでもいえばいいのか。
歴史はどうしてつくられるのか。一部の有名人によって形成されるのか。作者はちがうという。目に見えない動き、とくに民衆の動きが歴史を決定していくと。
読むのに時間がかかるのだけれども、人間がかきうる最高傑作だとおもう。 -
Posted by ブクログ
『クロイツェル・ソナタ』の方は光文社文庫で読んだので、こちらは『悪魔』のみの感想をば。
エヴゲーニィという真面目な青年の悲劇。
人間なら誰もが抱くであろう感情に苦悩し敗北してしまった人。
こんなにも苦しんだのに誰一人彼の苦悩を理解しない結末。
もしかしたら、それは現代人にも通用することで、今現代で同じ悩みを持つ人間がいたなら、恐らくその人も誰にも理解されないのではないだろうか…。
エヴゲーニィはあの女性を“悪魔”と言っていたけど、悪魔は常にエヴゲーニィの中に居たんじゃないかな。それは誰の中にも居るだろうものだと思う。
エヴゲーニィとリーザは良い夫婦だと思う。身重のリーザをお姫様抱っこしたシーンが好きです。
表面的な描写しかないけど。
エヴゲーニィが終始かわいそうだった…。
真面目が故に苦しむ人。そして現代ではとても生きていけない人。