トルストイのレビュー一覧
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ベートーヴェンのクロイツェル・ソナタを聞いてから気になって手にとった。
トルストイの作品の中でも”性”について扱う中編二作品を収録。どちらのタイトルも抗いがたい欲望の引き金を象徴している。
特に『クロイツェル・ソナタ』で行われる、列車の長旅の中で行われる人物たちの対話はとてもおもしろく感じた。
どちらの作品もazuki七さんが常日頃感じているように、愛というものをどんな形にするのか、よくわからなくてイライラしてしまう。人間の動物的欲求を克明に描き出していると共に、そんな中でも清くあれと叫んでいるような感じがそれでもしてしまう。
トルストイ自身も愛というものを探していたのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
これを一人の人間が書いたのか!とおもう。500人を超える登場人物をひとりひとり緻密に書き分け、みな血が通った人間にしたてあげている。友人から「どういうストーリー」ときかれてうーんとうなってしまった。ピエールのことをいえばいいのか、アンドレイか、ナターシャか、ナポレオンか・・・一人一人の人生が生き生きと、そして丁寧にえがかれている。いくつもの物語が交錯して、まったくどう説明していいか見当もつかない。これはその時代のロシアを偉大な文豪が鋭利な刀で切り取ってきた作品ですとでもいえばいいのか。
歴史はどうしてつくられるのか。一部の有名人によって形成されるのか。作者はちがうという。目に見えない動き、とくに民衆の動きが歴史を決定していくと。
読むのに時間がかかるのだけれども、人間がかきうる最高傑作だとおもう。 -
Posted by ブクログ
『クロイツェル・ソナタ』の方は光文社文庫で読んだので、こちらは『悪魔』のみの感想をば。
エヴゲーニィという真面目な青年の悲劇。
人間なら誰もが抱くであろう感情に苦悩し敗北してしまった人。
こんなにも苦しんだのに誰一人彼の苦悩を理解しない結末。
もしかしたら、それは現代人にも通用することで、今現代で同じ悩みを持つ人間がいたなら、恐らくその人も誰にも理解されないのではないだろうか…。
エヴゲーニィはあの女性を“悪魔”と言っていたけど、悪魔は常にエヴゲーニィの中に居たんじゃないかな。それは誰の中にも居るだろうものだと思う。
エヴゲーニィとリーザは良い夫婦だと思う。身重のリーザをお姫様抱っこしたシーンが好きです。
表面的な描写しかないけど。
エヴゲーニィが終始かわいそうだった…。
真面目が故に苦しむ人。そして現代ではとても生きていけない人。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ何年も前から新潮文庫の方を何十回も本屋で開いては文章に謎の拒否感を感じて本棚に戻していたこの小説。
他の人の訳なら、脳が突っ張ねることもないかと、この岩波版を購入してみました。結果としては、他の方のレビューある通りにこちらも決して読みやすい訳文ではありませんが、それでも内容にぐいぐい引き込まれて最後まで(と言ってもまだ一巻だけですが)読み通すことができました。
この巻に収録されているのは第一部の第一遍と第二編。第一遍はモスクワの貴族社会が舞台で、主人公挌の青年ピエールの遺産相続の顛末。第二編は一転して対ナポレオン戦争の最前線で、主人公格の一人アンドレイを軸に戦場での日常風景から始まり、侵攻してきたフランス軍をアンドレイの所属するロシア軍の一部隊が食い止めるという壮絶な戦いをクライマックスにして終わります。
第一遍は正直、退屈でした。かなり進んでから出ないと誰が主要人物なのか掴みにくいし、公爵やら伯爵やら色んな地位の人が入り乱れて相関関係の把握も大変。ちょっと読んだだけで、この小説から脱落する人が多いのもすごく頷けます。ペテルブルグからモスクワに視点が移ったあたりでなんとなく話の筋が見えてきて、ドルベツコイ公爵夫人が自分の借金の心配がなくなる辺りからはよくある遺産相続争いのストーリーとして読めました。といっても、悪役であるワシーリー公爵とエカテリーナが何を考えてるかは最後まですごい掴みづらかったです。
第二編は、全く逆の感想で、読んでる途中は興奮しっぱなしでした。なぜ、これを第一遍にしなかった(笑)
トルストイは従軍経験もあるそうで、その経験を十分に生かして、当時の戦争の最前線で兵士たちが何をしていたのか、何を考えていたのかを非常に生々しく描けていると思います。特に自分のお気に入りは、はじめの方のロシア軍の兵士たちが橋の上を押し合いへし合いしながら渡っていくシーンです。雄大なオーストリアの大地の風景描写から始まって、無数の人間が川のように流れていく、その場所にまさにいるかのような臨場感があります。例えて言うなら気合の入った映画の導入部のよう。もっというと、テレビシリーズのアニメが劇場版になった感じ、でしょうか。デティールのある描写が散りばめられていて、自分の頭の中には実写映画のイメージとジブリアニメのイメージの二重写しで再生されました。
将軍から一兵卒まで、みな人間臭い思考形式で、戦争中なのに流れている空気にはユーモアを感じます。
クライマックスの一場面、準主人公のニコライが興奮のあまり砲撃を受けて馬が負傷して動けなくなっているのにしばらく気づかず突撃している気になっていて、はっと我にかえって、命からがらフランス兵から逃げ延びるシーンは滑稽さと暴力の恐ろしさが同居していて作者の現実に対する深い思慮を感じます。戦争は非人道的な行為ですが、戦争しているのは紛れも無い人間一人ひとりなのだな、というのがすごく伝わります。
総合すると、この作品を読まないでいたのはすごく勿体無い! といった感じです。幸い、まだ今年は時間が作れそうなので、最後のチャンスだと思いあとい五冊、読み切ろうと思います。