トルストイのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
私の読んだ文庫は『イワン・イリイチの死』と『クロイツェル・ソナタ』の二篇が入っているが、どちらともトルストイ後期の重要な中篇小説。
『イワン・イリノチの死』は、実在の裁判官メーチニコフの死を知って着想を得たもの。
トルストイは、イワン・イリイチが、はっきりした死に向かうために生きている数ヶ月を驚くほどリアルに描写している。
トルストイはリアリティをもって人間の心の奥の穏然たる汚濁を表出させて小説を書く。
弱って立つことさえもできなくなって威厳もなにもなくなったときでも、妻には頼らず、ゲラーシムという下男だけには素直になり、感謝していた。イワン・イリイチは最悪の孤独をこの健康な下男によって最低限 -
Posted by ブクログ
間違いなく読んで良かったと思える小説でした。
物語がひと区切りする時にはトルストイの哲学的な考察が挟まり、正直1回読んだだけでは総てを理解し受け止めることは出来ません。
戦争の場面は読んでいて集中力が途切れることがしばしばあったし、読んでいて退屈を覚えるくだりも結構あるけれど、物語の緻密な構成と豊かな人物描写が実に魅力的。
読み進めていくうちに登場人物達に対する愛情が深まり、愛を知る喜びも、大切な人がこの世を去る時の喪失感も、今までの人生で感じてきた総ての感情が作品を通じて呼び起こされて、自分自身の過去についても振り返らずにはいられませんでした。
この作品を読んでいる間、私の心は1800年 -
Posted by ブクログ
長い、とにかく長い。
別に登場人物のかけあいや心理描写は長くてくどくて結構なのですが
エピローグの二部の所が死ぬほど長く感じました。っていうかくどい・・・
回りくどい説明口調で更に読みにくい。トルストイ自身の考えを述べているのでしょうけど、殆ど頭に入りませんでした。
要約すると10ページくらいでまとまるのでは?
読後感がそこで全てそぎ落とされた感じです・・・ちょっと切ない。
それでもこの作品はすごかった。最初から最後も良い意味でも悪い意味でも。
今は同じ作者のアンナカレーニナを読んでいますが、そっちの方が断然読みやすいです。私自身が歴史にあまり興味が無いというのもありますが・・・
こんなに -
Posted by ブクログ
非常に恥ずかしながら、21年の生涯初のロシア文学。
心のどこかで、いつかは触れるべきだと思っていながら漸く今回、読み終えることが出来た。
今までの他の作品であれば、読み終えたあとは何らかの気持ちに加えて、読み終えたという達成感のようなものを感じていた。
しかし今回は違う。
達成感も感じてはいたが、それ以上に「もうこの作品の世界を味わうことはできない」といった寂しさを感じた。
本作「アンナ・カレーニナ」を読むにつれ、アンナ、リョーヴィン、オブロンスキー、キティ・・・といった登場人物たちが私の日常生活の一部となっていった。
彼らと共に過ごした時間をもうこれ以上共有できないと考えると、やはり寂しさ -
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ネタバレ全4巻、2500ページ余りからなる巨作です。19世紀初頭、ヨーロッパに吹荒れたナポレオンの嵐、そしてナポレオンによるロシア遠征(ロシアでの呼称は「祖国戦争」)とその失敗、アウステルリッツの戦いなどの歴史的背景を盛り込み、戦争に関わる貴族、軍人、そして農民たちを描いています。登場人物は550人を超えるが、それぞれの人を人間味溢れ、魅力的に描くのがトルストイの特徴でもあります。
実は、学生のときにチャレンジしたのですが、1巻を読み終えることができずリタイアした思い出があります。今回も1巻には苦戦しましたが、1巻の後半になると、アウステルリッツの戦い、三帝会議など歴史物のテンポの良さが出てくるので -
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ネタバレ前巻から思っていたのですが、やっぱりニコライ老公爵は私は嫌いです。
今巻で亡くなりましたが、その最後もマリヤと和解しているように描かれていましたが、私としてはうーん。という気持ちです。
アンドレイとナターシャがまさかの元鞘。
私がアンドレイだったら絶対に許さないし、私がナターシャだったら絶対に赦してくれなんて言えない。
二人はアナトーリの事で色々と面倒くさそうだなあ。死んじゃったのに。
ピエールは最後においおい!って感じで終わりましたが・・・
あと一巻だと思うと名残惜しい気がします。皆どのようにして平和を掴むのか・・・
戦争の一番の被害者は民衆だなー、と、略奪行為をする兵士たちを見ながら -
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ブロンスキーとの愛に生きようとしながらも、苦悩し、葛藤するアンナ――。『アンナ・カレーニナ』完結編。
随分前に読み終わっていたのだけれど、卒論に気を取られていたせいもあって、感想を書くのが遅くなってしまった。
読み終えたときの感慨をすっかり忘れてしまったことに、自分が一番がっかりしているところ・・・。やはり、感想は本を読んだらすぐ書かなくてはいけませんね。
とはいえ、『アンナ・カレーニナ』は凄い小説であった。これは多分、間違いないと思う。
ストーリーだけを見ると、全巻読み終わった今、納得のいかないところも多々ある。
特にアンナのラストには、やりきれない気持ちが残った。こういう終わり方なの -
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ヴロンスキーとのイタリア旅行から帰国したアンナは、どうしても息子に会いたい一心でかつての我が家に戻る――。一方、新婚のリョーヴィン夫妻は、新しい生活をスタートさせるが――。
2巻の感想で、アンナの心情がさっぱりわからない、と書いたけれど、3巻を読んでいくうちに、それも当然のことだったのかもしれない、と思うようになってきた。
この巻でも、やはりアンナの行動ははっきりしない。自分が心の内で思っていることと矛盾した行動を取り、時にヒステリックなまでに感情を高ぶらせ、それでも輝くばかりに美しく聡明である。
彼女自身も混乱しているのだ。どうしたらいいのか、ほんの数時間、数十分先のことさえわからないでい -
Posted by ブクログ
一見すると「死」をテーマにしているようだが、本当のテーマは「心の目覚め」だ。
主人公は病床で肉体的苦痛に苛まれながら、苦痛、死、人生の意味など答えのない自問が次々に湧き起こり、精神的にも苛まれていく。
死の直前になって、ようやく地位、名誉、世間体、経済的な富裕、他者との比較評価など、自分が当たり前のように信じていた人生の価値尺度が全て「間違い」だと気づく。
凡人を主人公にしたのは、この主人公こそわれわれ読者であり、他人事ではないという著者のメッセージだ。
死の間際に、まだ「すべきこと」ができると気づいた主人公は、息子が手にしてくれたキスで心が目覚める。
最後に自分のことを忘れて家族の