筒井康隆のレビュー一覧
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ネタバレ
今までにない読書体験だった。
ラストにとんでもない視点が提示されて、初めて本当の意味でタイトルの意味がわかる。
七瀬は『エディプスの恋人』を演じさせられる為にこの世に再創造された存在である、ということに気づくなんて読者の誰も想像できなかったんじゃないかな。
智広の身勝手に超能力を信頼している人間性に個人的にはずっと注目していたし、七瀬がそれとどう向き合うのか、そして七瀬が一人の人間として、「火田七瀬」として、自分自身とどう向き合うのか楽しみにページを繰っていたわけだけど、ここに帰着させるのかという。
最初は超自然的ミステリー的な始まり方なんだけど、後半の展開がすごい。
七瀬が頼央(智広の父親)から話を聞き終わった後に、アイドルグループが体育館でライブをしていて、隠し芸という名の子供じみた茶番を知性のある男観客が大盛り上がりで本気で感動している姿を見るシーンも素晴らしい。
七瀬がそれを見て思うシーンが以下。
七瀬ははっと座席から身を浮かし、中腰のままでまじまじと周囲を見わたした。これは現実なのか。夢ではないのだろうか。それとも現実そのものが夢のさほど変わらぬのであろうか。自分たちにとっての現実とは宇宙の対極に存在している「彼女」の夢の舞台、その舞台上での、「彼女」によって紡ぎ出された幻のようなうたかたの群像劇なのか。今、七瀬の急激な動作にも、彼女の方を向く者はひとりもいず、観衆はすべて熱狂し、歓声をあげ、舞台に向かって拍手している。非現実感が七瀬をとり巻き、彼女は自分の存在が根抵から切り崩されていくような恐ろしいほどの不安に苛まれ、またしてもじっとしていることができなくなってしまった。(p.259)
演目に従って、茶番劇のようなパフォーマンスをするガールズ・グループの舞台を見て、彼女は自分のいる世界を疑い始める。女の「性」としての役割を消費して、知性ある男たち観客のために茶番劇を演じるアイドル・グループを見て、七瀬は自分自身が置かれたこの現実世界すらも、この夢現な舞台と同じなのではないか?と。
彼女は会場を抜けて、雑踏を歩き続ける。自分自身の存在を確かめる、自分のいる足元が現実であることを確かめるために。
しかし、その疑いは遂にラストシーンで確信に変わってしまう。確実に死を迎えた仲間たちの再創造とその消失を決定的に悟ってしまった七瀬は、自分でマリオネットとして『エディプスの恋人』を演じることに首肯した。
この劇を終幕させるために。
「意志」によって再創造された存在である主人公が、「意志」に逆らえない運命を悟り、「意志」に押し付けられる理不尽を受け入れて、『エディプスの恋人』を終わらせるために。
七瀬個人が女性であるからこそ、エディプスの恋人として選ばれて、その役を演じさせられる理不尽には本当に舌を巻いた。特に恋人として、女性として一番大切な破瓜の痛みさえ感じさせられず、代替させられてしまう理不尽はあまりにもえげつない。
筒井康隆にあっぱれ。伊達に文壇で好き勝手やってない。
にしても、自分はこの作品を単独作品だと思って読んでたんだけど、七瀬三部作の最終作ということに、読み始めてから気づいた。
最初のテレパスの描写とかわからんかった。
でも、この順番で読んでて良かったのかもしれない。
家族八景、七瀬ふたたびも当然読みます。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ評価が難しい作品で、レビューでも色々突っ込まれています。なぜ★5にしたかというと、初心者にもやさしいことと、ミステリを趣味にしようと思うなら、できるだけ早い段階で読んでおいた方が良い作品だからです (名作だからというよりミステリ好きならどうせ一度は読むのだからという感じです)。あと個人的にはロートレックを選んだセンスが素晴らしいと思います。
他の人の感想を聞いたりサイトのレビューを見る前に、先ず読んでしまいましょう。
低評価の多くは、この作品のトリックを使った際の弱点にあるのですが、その後、その弱点に対応を効かせた作品が、色々な作家により産み出されています。個人的にはそれらが総合的にこの作品を超えているとは思わないのですが、かと言ってこの作品にも突出した魅力のようなものが足らない印象もあります。
ミステリは書き慣れていない作家のためか、建物の間取りの描写や伏線などがとても丁寧に書かれているので、初心者の方にはおすすめです。 -
Posted by ブクログ
七瀬シリーズの第二弾
前作の家政婦の視点での家族ドラマの短編集とは打って変わり今作はサスペンスタッチのエンターテイメント小説へと変化している
作中で登場する超能力による駆け引きはジョジョ4部や岸部露伴などの異能力ものを彷彿させるが、テレパシーという意識感応能力がゆえに視覚演出としてはかなり地味ではある
だがそれが小説という媒体だからこそ伝わるスリリングかつエキサイティングな演出に我々読者の心を魅了させる事に成功が出来てると言える
しかもただハラハラドキドキする娯楽小説ではなく闇の組織や超能力者の苦悩や差別などを実社会の人間の暗部をオブラートに伝えているところは作者の力の入りようも凄まじく最終的には哲学的な語りにも繋がる事からもありとあらゆる情報の渦が作中の感応される意識の様に怒涛に広がってくる様に感じ取れる
作者が最も脂が載っていた時期に書かれた本書は娯楽小説として最高の一作である為時かけしか知らない人にこそ知っておくべき名作である -
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「非常におもしろかった」と言えば、その人間性を疑われ兼ねないが、非常におもしろかった。筒井康隆氏の作品はいくつか拝読したが、『シルバー世代のバトルロワイヤル』というあらすじを読んで本作『銀齢の果て』を本屋で探し続けた挙げ句、見つけることは叶わず、結局はネットで購入して読むに至った。
本作は場面転換や日付の移り変わりがあるにもかかわらず、章で区切ったりはされておらず、そのせいで読む手を止めることができなかった。これ程、1作を早く読んだのは初めてである。
内容は至って分かりやすい、老人の殺し合いであり、酷く趣味が悪いことであると思う。しかし、狂気じみた殺し合いだけでなく、しっかりとした設定や殺し合いのルールもあり、終わりまで飽きることはなかった。また、老人であるが故の「死への選択」が様々である点が非常におもしろい。ところどころリアルな点もおもしろい。死にたくない者、死にたい者、美しく死にたい者、最後のやりがいとする者、気の狂った者、、、人の生きてきた過去によって、選ぶ死の姿はそれぞれで、考えさせられる部分もあった。
普通、思いついたとしても書かないであろう本作を筒井氏が完成させてくれたことに感謝したい。
おすすめの読み方は最初の見取り図のページを印刷して、生存者をチェックしながら読む方法だ。 -
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ癖のある短編集(はちゃめちゃSFってジャンルらしい)。
表題作の「笑うな」は、読んで爆笑した。本を読んでここまで笑い転げたことはないくらい笑った。
他の作品も、面白かったり面白くなかったり、色々。ちゃんと面白くない作品もあるから、この作品は面白いのかどうか分からないギャンブル性みたいなのも楽しかった。
個人的には、「傷つけたのは誰の心」、「ある罪悪感」、「赤いライオン」、「駝鳥」、「トーチカ」あたりが面白かった。「産気」は、最後の方まで面白かったのに、オチが本当に残念。
本全体で見たら、色んな感情になれて面白かったから星5。
そういえば、世にも奇妙な物語っていう番組に世界観が似ているな。 -
Posted by ブクログ
名探偵が大富豪なのである。主人公は神戸(かんべ)大助、まだ若手の、一介の刑事に過ぎないのだが、とにかく家が金持ちなのだ。時効真近の五億円強奪事件の犯人逮捕に、社長密室殺人事件のトリック解明に、五百万円の身代金のかかった誘拐事件の解決に、敵対関係にある暴力団同士の一触即発合同食事会の警備に、私財をいくら投じても良いのだ。
…という設定を生かした大助さんの人物像と捜査手腕を拝むだけでもじゅうぶん面白いのに、奥行きを感じさせるサブキャラ陣の描き方、実験性すらある思い切った省略話法、大胆にメタフィクションで遊ぶ語り口、そのどれもが効果的過ぎて、めちゃめちゃ楽しかった。
さらに、推理小説界に対してはきちんと仁義を切ってみせる律儀(?)な一面も感じられ…全方面抜かりなし。
短編四作で完結というこの規模感も、コンパクトで読みやすい反面もっと欲しくなってしまう物足りなさがあるが、この四作で変化するところと変化しないところのバランスが絶妙で、これはこれで完成なのだという説得力がある。完成とはいっても、何かの「原作」にしたくなる余地がたっぷりあって、ドラマ版もアニメ版も楽しそう(未見)。
筒井康隆ってよく知らなかったけれど、すごい人だということはわかった。 -
購入済み
こっちの表紙ものいぢさん
角川のビアンカもそうだけど、こちらの表紙もいとうのいじさん。
ヒロインはJC、のいぢさんたいへんよくわかっていらしゃる。女性ならではですね。
中味は小気味いい系の筒井品質、嫌なことの一つ二つ忘れられます。程度によりますが。
お好みで。
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購入済み
安定の筒井品質
白眉は俗物図鑑、七瀬sや旅のラゴスも割と好き
な立ち位置の自分にとっては、十分に楽しめる内容でした。
のいぢさんのイラストも素敵です。
ハルヒより質感が良い。
描き手の気合が入っているのが伝わってくる。
中味は、比べちゃ失礼ってもんです。
お好みで。 -
Posted by ブクログ
ネタバレあーーーおもしろ!最高。ミステリーにコメディを捻じ込んでるのに、力技かと思いきやかなり精密。さすが筒井さん。
主人公の刑事・神戸大助はホテルオーナーの父である神戸喜久右衛門の財産を使って、難事件を解決していくという一風変わったミステリー。「富豪刑事の囮」「密室の富豪刑事」「富豪刑事のスティング」「ホテルの富豪刑事」の4本からなる。
金はめちゃくちゃ使うが業務には真面目。富豪じゃないと思い付かない解決法ばかりで笑える。
あと、時々筒井さんが読者に話しかけてくるのも掟破りで最高。このキャラクターも本当は濃密に紹介したいのだが、本筋と関係ないので割愛する、とか普通に書いてる。
2005年にドラマ化した時には、なんと主人公の男女を変えて深田恭子さんが主演。 筒井さんも出演していたらしい。
———紹介(公式)———
湯水のように金を使って事件を解決!
著者初のミステリ作品、伝説的ミリオンセラー!
キャデラックを乗り廻し、最高のハバナの葉巻をくゆらせた“富豪刑事"こと神戸大助が、迷宮入り寸前の五億円強奪事件を、密室殺人事件を、誘拐事件を……次々と解決してゆく。金を湯水のように使って。
靴底をすり減らして聞き込みに歩く“刑事もの"の常識を逆転し、この世で万能の金の魔力を巧みに使ったさまざまなトリックを構成。SFの鬼才がまったく新しいミステリーに挑戦した傑作。 -
購入済み
真似できないカッコよさ
表紙の女の子がかわいくて読みたくなった。
今よく見るとグランパがその後ろにいる。
気がついてないわけではなかったろうが眼中になかった。
読後はグランパの方が心の大半を占めている。
真似できそうにないカッコ良さだ。
孫娘もなかなかしゃんとしていて、
その目を通して語られるグランパはさらに魅力的だ。
とんでもない展開とも思えなくもないが、先を読みたくさせる。
『旅のラゴス』は読んでいた。冒険ものはおもしろい。
それを日本の今ですると、ヤクザまがいになりそうだが、
グランパは普通の人がなれないくらい真っ当な人だ。 -
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ネタバレ「文学やるなら常識捨てて、世間の糾弾身に引き受けて、何でも書くのがまともな作家」(コロナ追分より)
「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」帯に大きくそのように書かれている筒井さんの作品集。1934年生まれの89歳。2020年末~23年、86歳〜89歳までの25作品が収録されている。
巨匠であり、文豪。書き上げ、出版していただけたことがファンとして嬉しい。
SF、ブラックユーモア、ドタバタ劇など、多彩な“筒井ワールド”がギュッと詰め込まれている。
「書いている最中から、『もうこれ以上ないな』と思った」
「書いたら面白そうだという着想はあるけど、書く前や書きかけて、『ああ、これ前に書いてるわ』って」
そう語る筒井さんが最後に書き上げたのは、昔知り合った小料理屋の女将が出てきたり、劇団の女優が久しぶりに公演を行ったり、人生を振り返って書いたのだろう。哀愁を感じるものが多かった。
特に好きだったのは、楽屋では役作りに専念してくださいと助監督に厳しく言われ、復讐を試みる『楽屋控』、時間航行し、古代人を連れてきて環境整えて現代の美食を食べさせる『美食禍』。最高のショートショート。
そして以下の3作を語らずには、この本を読んだことにならないだろう。
『コロナ追分』では、コロナ禍の日本・世界の出来事をめちゃくちゃリズミカルな文体で茶化しながら綴った。めちゃくちゃ面白い。そして最後には今を生きる作家へのメッセージが付いている。本当に筋が通った不良作家のままずっと生きてこられたんだなあと、感動した。直木賞選考委員を批判して暴れ回った『大いなる助走』から何一つ変わっていない。最高。
『カーテンコール』は名前+セリフの脚本形式で書かれていて、若いころに見て影響を受けた映画の記憶を、監督や俳優らの奔放な会話を連ねることで想起していく。過去の名作に明るくないから理解できない部分も多々あったので、後で調べて視聴したいと思う。
『プレイバック』では検査入院中の筒井さんのもとに、『時をかける少女』の芳山和子、唯野教授、富豪刑事、パプリカら、過去の作品の主人公が訪れ、筒井さんに向けて「よくもそのように書いたわね!」と非難めいた言葉を残して去っていく。筒井さんしか書けないようなすごい設定。筒井さんは言い訳したり、受け入れて謝ったり。面白いなあ。
そして最後、なんと小松左京と星新一が筒井さんのもとを訪れる。
小松左京は「おれの日本沈没の、たった三十枚のパロディで儲けやがって」
星新一は「そもそもおれのアイデアだ。おれの言ったことやしたことをそのまま小説に書きやがって」と言うために出てきたのだ。
そして最後「なんでそんな長生きなんだよ」と言われた後の筒井さんのセリフ、粋だったなあ。
———紹介(公式より)———
巨匠、最後の挨拶(カーテンコール)は25篇もの怒濤的傑作掌篇小説集!
著者曰く「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」(編集者「信じていません!」)。
筒井文学の主要登場人物が打ち揃う「プレイバック」をはじめ、巨匠がこれまで蓄積した技倆と思索の全てを注いだ、痙攣的笑い、恐怖とドタバタ、胸えぐる感涙、いつかの夢のごとき抒情などが横溢する圧倒的傑作掌篇小説集爆誕!