筒井康隆のレビュー一覧
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「非常におもしろかった」と言えば、その人間性を疑われ兼ねないが、非常におもしろかった。筒井康隆氏の作品はいくつか拝読したが、『シルバー世代のバトルロワイヤル』というあらすじを読んで本作『銀齢の果て』を本屋で探し続けた挙げ句、見つけることは叶わず、結局はネットで購入して読むに至った。
本作は場面転換や日付の移り変わりがあるにもかかわらず、章で区切ったりはされておらず、そのせいで読む手を止めることができなかった。これ程、1作を早く読んだのは初めてである。
内容は至って分かりやすい、老人の殺し合いであり、酷く趣味が悪いことであると思う。しかし、狂気じみた殺し合いだけでなく、しっかりとした設定や殺し -
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ジャンルとしてはSFファンタジー小説になるのでしょうか? 文明レベルとしては移動手段は馬や帆船、炭鉱が栄えている程度の世界。科学は発展していない代わりに瞬間移動や他人や動物の心を読めるなどの能力を有するという、ありがちな設定なのですが、今作はそこには重みを置いていません。
どちかというと、1人の男の生き様が描かれてた作品といえます。生き様というと哲学的に思われるかもしれませんが、「こうあるべき」というような押し付けがましさは皆無です。というか主人公の心情描写が少ないです。その理由としては、男に悩みや葛藤があまりないことがあげられます。更に性格もすごい善人であるとかカリスマ性があるとか、逆に残虐 -
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めちゃくちゃ癖のある短編集(はちゃめちゃSFってジャンルらしい)。
表題作の「笑うな」は、読んで爆笑した。本を読んでここまで笑い転げたことはないくらい笑った。
他の作品も、面白かったり面白くなかったり、色々。ちゃんと面白くない作品もあるから、この作品は面白いのかどうか分からないギャンブル性みたいなのも楽しかった。
個人的には、「傷つけたのは誰の心」、「ある罪悪感」、「赤いライオン」、「駝鳥」、「トーチカ」あたりが面白かった。「産気」は、最後の方まで面白かったのに、オチが本当に残念。
本全体で見たら、色んな感情になれて面白かったから星5。
そういえば、世にも奇妙な物語っていう番組に世界観が似てい -
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非常に面白かった。
本書は日本語の音(おん)を少しずつ消していきながらもストーリーを破綻させずに書かれた小説である。例えば「あ」が消えたら、以降「あ」を含む単語は使えなくなる。
私もブログを中心に文を書くし、日常会話でも多く言葉を発している。
しかし客観的に自己を顧みると、割合限られた語彙しか使っていないことに気づかされる。
本来は日本語はこれだけ多くの語彙や言い回しがあるのに、無意識に使い慣れている僅かな言葉しか使っていない。
これはなんとも勿体なく、また文体としても彩りに欠けてつまらないものとなっているに違いない。
本書は半ばに差し掛かった時、かなりの音が消えていてかなりの制約があるの -
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ぼくが最初に手にとった小説であり人生に欠かせない小説。もはや人生そのものといっても過言ではないのがこの本『旅のラゴス』
あらすじは、空間転移という能力をもつラゴスが、とある理由からひたすらに旅を続けるというもの。
世界観はシンプル。ただ風景描写が異様に精彩でもはや自分が旅をしているようにしか感じません。
故に、この本は、読むものじゃなくて旅そのもの。
空間転移の能力をみなが持っている世界なのに基本的に徒歩で旅するラゴス。いく先々で起こる事件や異文化の人々との交流に、心揺さぶられます。
この本に出逢えたこと、読めたことがもはや幸せです。筒井さん素敵な作品、本当にありがとうござい -
Posted by ブクログ
名探偵が大富豪なのである。主人公は神戸(かんべ)大助、まだ若手の、一介の刑事に過ぎないのだが、とにかく家が金持ちなのだ。時効真近の五億円強奪事件の犯人逮捕に、社長密室殺人事件のトリック解明に、五百万円の身代金のかかった誘拐事件の解決に、敵対関係にある暴力団同士の一触即発合同食事会の警備に、私財をいくら投じても良いのだ。
…という設定を生かした大助さんの人物像と捜査手腕を拝むだけでもじゅうぶん面白いのに、奥行きを感じさせるサブキャラ陣の描き方、実験性すらある思い切った省略話法、大胆にメタフィクションで遊ぶ語り口、そのどれもが効果的過ぎて、めちゃめちゃ楽しかった。
さらに、推理小説界に対して