筒井康隆のレビュー一覧

  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    いつも読まないジャンルだが人に勧められて手にとった。
    どの旅もワクワクして先が気になり一気に読んだ。全く違う世界の話と思いきや、会う人やラゴスの正直で素直な会話を聞いていると、自分の求めるものや冒険心や生き方についてとても考えさせられた。何度も読み返したい本。

    好きなところ
    最初の転移。愛を伝えて故郷を想う。想像力には笑顔と信頼が重要。
    似顔絵描きのザムラ。理想的なおれの顔。理想やこうあらねばならぬという気持ちに触れられて、どきっとした。それをデーデにわたそうとするラゴスが可愛い
    ***
    人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。

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    2026年09月24日
  • 原始人

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    かなり実験的な短編集。

    とにかく表題作『原始人』と、2作目の『アノミー都市』が凄まじい。対になっている2作品の並びは、狂気的で鋭利な思考実験だった。読み終わった瞬間、「人間って何なんだ……?」と足元が揺らぐような心地よい眩暈がした。これこそ読書から得られる栄養だな、とも思う。

    まず、表題作の『原始人』。 舞台はタイトル通り、太古の地球で、原始人が暮らしている。ほとんど文明が発達していないので、彼らには知能も言葉も存在しない。そこにあるのは生きるための捕食と、原始的な恐怖、欲望、理由なき残虐さだ。まさに弱肉強食の世界だけれど、確かに人間にもそんな時代があったんだと、思い起こさせてくれる。凄いのは、原始世界を感動的な歴史ロマンや美しい自然描写として描くのではなく、徹底して、生き物の観察として描写し切っている点にある。善悪も道徳もない世界での暴力や死は、凄惨でありながらどこか純粋さを感じた。ただただ圧倒される。

    そして、その余韻も冷めぬまま『アノミー都市』へ。
    舞台は一転して遥か未来の超高度文明社会。生産も流通も自動化され、人間は働く必要すらなくなっている。そこは法律や道徳といった社会を縛る規範が完全に消滅し、無規範——つまり「アノミー」状態にある都市だった。

    暴力も賭博も許され、唯一の禁忌は「他人に自分の価値観を強制すること」だけ。満たされきった人々が、退屈を紛らわすために本能と欲望のままに蠢いている。

    太古の野蛮と、洗練された未来。一見真逆の世界を並べることで恐ろしい事実を突きつけてくる。「人間は、規範がなければ、太古の原始社会であっても未来の超高度都市であっても、全く同じように残虐で愚かな存在に行き着く」ということ。テクノロジーや知性がどれだけ発達しようが、言葉や世界の理解が未熟な世界であろうが、人間の根底にある狂気や無慈悲さは何一つ変わらない。

    普段自分が頼っている「道徳」や「理性」、「法律」までもがいかに脆いものかを思い知らされる、刺激的な読書体験だった。

    お笑いの劇場やネタ作りの現場でも、コンプライアンスやらポリコレやら、社会のルールや規範に縛られてモヤモヤすることはよくあるけれど、文明の先に現在辿り着いている「規範」をすべて剥ぎ取ったら、自由すぎて、面白いことが減ると思う。

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    2026年09月17日
  • パプリカ

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    昔アニメを観たことがありなんとなく面白かった記憶があったので、原作を読んでみた。夢か現実か ー 何重にも鉤括弧された感じがしてずっと試験を受けてるような気分。さらに夢の中で人称がぶつかり合うので誰の夢かも曖昧になる。そんなフワフワした状態のなかでもそこまで混乱もなく読破させる著者が1番天才では。。改めてもう一度アニメを観てみたくなった。

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    2026年09月09日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    文明が失われ、いわゆる超能力を得た人々が暮らす世界を旅するラゴスの半生。
    夢中で読み切った。
    作中、超能力や架空の生物が出てくるのに何故かどこかで見聞きしたことがあるように情景が浮かぶ。
    ラゴスの体験した夏の暑さ、砂漠の砂埃、淹れたての熱いマテ茶、先々で出会う女性たち、スカシウマの手触り、そしてデーデの笑顔。
    過度な筆致ではないのにまざまざと感じることができた。ラゴスの旅は最後の最後まで素晴らしい。
    筒井康隆は作者自身のイメージが強過ぎて今までちゃんと著作を読んだことがなかったのだけれど、得難い読書体験だった。

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    2026年09月08日
  • 農協月へ行く

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    これほど農協の社会的存在感高かった時代があったとは。似た者同士、厚顔無恥、類は友を呼ぶ、結果オーライ、アタマで考えたことはうまくいかない。

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    2026年09月07日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ラゴスの旅、旅のラゴス。

    世界やラゴスの旅の目的について小さな説明のみで話が進んでいく。他の惑星から人類が来たが文明は失われたようだ。ラゴスが膨大な人類の蔵書を読み進めるにあたっての工夫も面白かった。哲学や詩などを理解することは難しいということ、歴史を土台として人文的な理解を深めていったこと。

    また、最後、死出の旅に出るであろうラゴスへの呼びかけで終わり、氷の国の有無も定かではない、最期まで旅人であったろうラゴスの人生を思い、大きな余韻を残し実際に鳥肌が立つほどであった。

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    2026年09月15日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    壮大な旅の物語。とても良かった。主人公の半生を描く旅。そこにはSFっぽい奇想天外で想像力を掻き分ける物語もあれば、より現実的な旧時代を旅しているような苦労さ楽しさがある。

    現代から見たらどうなのか?旅はどこへと続くのか?そんな答えが分からないからこそ感慨深い。

    知識は薬にも毒にもなる。そうとも感じられた。

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    2026年08月31日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    場面展開が多い割には劇的な展開があるわけではないけど、その単調さに味がある作品。難しいとも思うけれどスラスラ読める。異能も多くはフォーカスされていないから、SFやファンタジー要素に挑戦したい人の入門に良いかも。

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    2026年08月19日
  • 筒井康隆、九十歳のあとさき―老耄美食日記―

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    生命力の強さ。とにかく食。80超えてフルコース食べるには体力と気力と欲望だと思うのだが、さすがです。

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    2026年08月16日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    ネタバレ

    すごく面白いどんでん返しがあるわけじゃないけど、ずっと手元に置いておきたい本1位。紛失したり引っ越したりして計4冊は購入している。
    ドラクエ5を思い出す。主人公の数十年間がこの本に詰まっていて、私は応援せず軽蔑せず追いかけるだけ。
    あ!約10年手元に置き続けるくらいこの本を愛しているいちばん大きな理由は、ラゴスが知を追い求めるからだと思う!やっぱり学ぶっていいよね。ラゴスが感情で動くところは筋通ってなくない?って思うけど、その矛盾が人生における寄り道だったりするのかなー

    皆も、自分にとって唯一の本があるのかな。

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    2026年08月10日
  • パプリカ

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    映画のリバイバル上映を気に。筒井氏の知識量に圧倒されながらも、どんどん進んでいく物語にワクワクした。映画も楽しみだ

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    2026年08月10日
  • 誰にもわかるハイデガー 文学部唯野教授・最終講義

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    唯野教授の語りは空談的で頽落的。
    でもパンピー向けの足掛けとしては十分なのかも。

    それから、補遺がとても良かった。本編で生じた疑問を、開かれた読み方の一つとして(大澤氏の場合は主にキリスト教をベースに)、一定回収してくれた。

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    2026年08月09日
  • 残像に口紅を

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    極上のメタ。こういう小説に出会いたかった。
    日本語の美しさにも、どっぷり浸かれる。

    世界のルールごと疑ってしまう、ゾクゾクするようなメタが好きな私にはたまらなかった。
    突飛な世界観に反して、登場人物の心理描写が妙にリアルで現実臭いのも最高だった。

    不気味で美しくてメタくて最高。人生で出会ったトップレベルの小説。

    数冊追加で購入して友達に送った。

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    2026年07月27日
  • 笑うな(新潮文庫)

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    筒井康隆氏の世界に対する観察眼とそれを文章に叩き込む際のユーモア、遊び心に胸打たれた。
    読んでいると、本当につい笑ってしまう。その度に表題の『笑うな』が効いてくるような短編集だった。
    創作という世界の自由さ、新鮮さ、それを筒井さんが気取らずにスッと差し出してくれているようで、とても温かく希望的な気持ちになった。
    全ての息苦しさは、そのままユーモアになるのだと、そう筒井さんが語り掛けて下さった気がする。

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    2026年07月08日
  • 旅のラゴス(新潮文庫)

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    めっちゃ面白い。ラストも希望もあるし、切なさもあるし良い。筒井康隆の世界に連れて行く文章力が◯。旅物短編集だけど、そうじゃなくて、ちゃんとストーリーとしてラゴスの人生が、この小説の世界への影響が絵が描かれている。もう少しこの世界に浸りたかった

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    2026年06月20日
  • ロートレック荘事件(新潮文庫)

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    30年前の小説ですが本当に最後まで面白かったです。最初の車での会話シーンは何か違和感があるなと思ってましたが、話が進むに連れてそれも薄れていき、最後の方で「えっ」となって何回もページをめくりました。

    最近の叙述トリックはハイレベルなものが多いですが、これは今読んでも良くできているので、当時なら更に衝撃を受けそうです。

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    2026年06月19日
  • ジャックポット(新潮文庫)

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    小川哲の解説で正気に戻り、言葉を取り戻す。

    筒井のことを「常に前衛でいなければならないという古臭い執念に取り憑かれた人」と評した親友も、もう十三回忌も過ぎてしまった。

    濃厚な死。言葉遊び。諧謔。

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    2026年06月12日
  • 残像に口紅を

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    音が消え、言葉が消え、存在が消える。
    前半は何が消えたのだろう、と前のページに振り戻りながら、消えたものを推察しながら読み進めた。
    後半はもはや消えすぎているので、哲学的というか詩的な文章。それでも、言葉ってこんなにもあるんだと驚き。

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    2026年06月09日
  • 七瀬ふたたび(新潮文庫)

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    1巻よりも、より疾走感があり面白かった。
    敵が謎すぎる。
    「タイムトラベラー」「テレパス」「テレキネシス」の最強無敵の超能力者集団に勝てるのは何故??何者?
    次巻も気になる。

    七瀬と、恒夫が相思相愛だったの悲しかったなあ……

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    2026年06月08日
  • 筒井康隆、九十歳のあとさき―老耄美食日記―

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    ネタバレ

    おどろきの日記文学。9歳年下の奥様との美食の毎日は食欲の深さとしての業を感じる。都会の高級料理店での相場は理解できないが、毎日の料理代としてはあり得ないレベル感。こんな食事を摂っていて長生きできるのはほんと羨ましい。老耄の境地での美食の極地を感じた。合間に入るエッセイ等も深い味わい。長年のファンとしてこの本を読めたことに幸せを感じた。

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    2026年05月19日