筒井康隆のレビュー一覧

  • ビアンカ・オーバースタディ

    安定の筒井品質

    白眉は俗物図鑑、七瀬sや旅のラゴスも割と好き
    な立ち位置の自分にとっては、十分に楽しめる内容でした。
    のいぢさんのイラストも素敵です。
    ハルヒより質感が良い。
    描き手の気合が入っているのが伝わってくる。
    中味は、比べちゃ失礼ってもんです。
    お好みで。
  • 残像に口紅を
    1、2文字づつ使える文字数が減っていく言葉遊び的な要素の強い小説。
    使えなくなった文字を含む単語が存在しなくなるため、主人公が娘の名前、妻の名前と忘れていき、段々と孤独になっていく心情変化が良かった。
    1章の範囲では言葉遣いに違和感がほとんどなく、どのように文を構成しているのかが興味深かった。
    終盤...続きを読む
  • 聖痕
    筒井康隆さんの作品は短編集しか読んだことがなく、初めて長編作品を読みました。
    ページにびっしりと書き込まれた難解な日本語たち。でも読んでいて全く苦ではない。(注釈の量すごいのにね)
    京極夏彦作品で何度も挫折している私でも、最後まで夢中で読み切りました。
    2月に村山由佳の二人キリを読んで、3月にこの本...続きを読む
  • 家族八景(新潮文庫)
    著者の卓越したというか達観したというか、その人間観が現れた描写に舌を巻いた。テレパスによっていかにまありそうな家族模様が如実に表現されていて、とても面白かった。
  • 富豪刑事
    あーーーおもしろ!最高。ミステリーにコメディを捻じ込んでるのに、力技かと思いきやかなり精密。さすが筒井さん。

    主人公の刑事・神戸大助はホテルオーナーの父である神戸喜久右衛門の財産を使って、難事件を解決していくという一風変わったミステリー。「富豪刑事の囮」「密室の富豪刑事」「富豪刑事のスティング」「...続きを読む
  • わたしのグランパ

    真似できないカッコよさ

    表紙の女の子がかわいくて読みたくなった。
    今よく見るとグランパがその後ろにいる。
    気がついてないわけではなかったろうが眼中になかった。
    読後はグランパの方が心の大半を占めている。
    真似できそうにないカッコ良さだ。
    孫娘もなかなかしゃんとしていて、
    その目を通して語られるグランパはさらに魅力的だ。
    ...続きを読む
  • 旅のラゴス(新潮文庫)
    傑作としか言いようがない。

    あるときは奴隷に、あるときは王に、あるときは教授として、男は旅をする。魅力的な人間と、出会い、別れ、旅は続く。
    主人公ラゴスの完璧とも言える人間性、奇妙で、しかしどこか懐かしい世界と人々。それらが筒井康隆の美しくもポップな文体で綴られる。

    初めは独特なリズムの戸惑うか...続きを読む
  • カーテンコール
    「文学やるなら常識捨てて、世間の糾弾身に引き受けて、何でも書くのがまともな作家」(コロナ追分より)

    「これがおそらくわが最後の作品集になるだろう」帯に大きくそのように書かれている筒井さんの作品集。1934年生まれの89歳。2020年末~23年、86歳〜89歳までの25作品が収録されている。
    巨匠で...続きを読む
  • ロートレック荘事件(新潮文庫)
    マジでやられたミステリ リスト作品

    読みたい本も積読本も多すぎる
    それゆえ再読というものを基本的にしないタイプだけれど、筒井康隆作品を集めるついでに買い戻した

    前に読んでからゆうに10年は経っている
    メイントリックは覚えている程度
    どんな話だったか気になったのと薄めの文庫なのでサクッと読んでみた...続きを読む
  • 旅のラゴス(新潮文庫)
    あたかも自分が長い長い旅を、波瀾万丈な人生を歩んだかのような壮大な体験を得られた。同じ場所に留まり続けずに生きている間に旅をして、この広大な地球をもっと感じたい。
  • 夜を走る トラブル短篇集
    町田康氏の講演録で取り上げられていたので購入。自分はあまり熱心な読書家ではなく、筒井氏の書籍はこれが初めて。
    作者を隠して読んでいたら町田氏の作品と勘違いしていたかもしれない。各ストーリーのラストでドリフの盆回しを流したくなる短編集だった。移動中に読んでいたので、周りには気持ち悪い顔をしていると思わ...続きを読む
  • 時をかける少女
    テレポ、タイムリープ系物語か。
    この手の、2周目の人生とかデジャヴ系の設定は、よくある手法として珍しくもなく色々と見かけるけど、1967年の新作としては斬新なSFだったことでしょう。
    しかもこの、時をかける少女は、メインではなく短編集の中の1作品なのに(知らんかった!)、漫画化され映像化され、
    カタ...続きを読む
  • 時をかける少女 (角川つばさ文庫)
    言わずと知れたSFの名作。挿絵の和子の制服はセーラー服ではなく、ブレザーとリボンだが、まるで違和感がない。一夫の説明も今の時代でも納得いくものだし、これが昭和に書かれたものだとは信じられない。「時の女神」もタイムトラベルもので、時間移動を繰り返す一人の娘。謎も残しつつ、余韻が味わえる。「姉弟」と「き...続きを読む
  • 短篇小説講義  増補版
    かなり前に書かれた筒井さんのこの小説執筆論が、令和の時代に小説家になろうとする人間に、とても参考になる。

    昨今、小説投稿サイトの増加などに伴い、小説を書く人は激増している。新人向けの小説コンテストも多く、規模の大小を問わなければ、投稿できるコンテストは毎月十件くらいあるのではないか、と思う。

    ...続きを読む
  • 文学部唯野教授
    筒井康隆のブラックユーモア小説。架空の大学「早治大学」文学部英米文学科の唯野教授を中心とする露悪的な大学組織のドタバタ劇と、唯野教授による文学理論の講義が交互に進んでいく。

    文学理論目当てで手に取ったが、筒井康隆のナンセンスで下品なユーモアが面白くかなり自分好みの内容だった。

    文学理論の方は、印...続きを読む
  • パプリカ
    Wikiによれば、筒井康隆は1965年に関西から東京に転居し、そこから本格的に作家活動を展開したらしい。第一短編集「東海道戦争」は1965年の発行ということなので、かれこれ60年近く前のことだ。最新の短編集「カーテンコール」は、2023年11月の発行、60年近くを経て、なお現役の作家であるという怪物...続きを読む
  • 富豪刑事
    タイトルと”筒井康隆の推理小説”に興味を惹かれて読んでみた。富豪刑事と聞いてなんでも金で解決する成金の卑しい刑事を想像してたけれど、自分の予想を遥かに超えた大大大金持ちで拍子抜けするような展開ばかりでおもしろかった。推理小説にしては怪しい犯人は常に1人しかいないんだけど、そのトリックを解く過程が好き...続きを読む
  • 七瀬ふたたび(新潮文庫)

    面白かった

    面白かった。
    前作では、人間の心理を描写するための表現上のツールとして
    テレパスが使われている印象だったが
    今作では、打って変わって、
    能力者バトルのような活劇
    超能力者の葛藤、超能力者同士の協力と対立などがあり
    とても面白かったです。
  • 堕地獄仏法/公共伏魔殿
    モナドの領域同様、こっちも御書印巡りのときに買ったやつだったはず。モナドよりだいぶ昔のはずだが。
    こっちはSF短編集だった。小説の背景設定を見ると、だいぶ昔に書かれたものっぽくはあった。1964年から78年の作品。

    ・いじめないで
    出力が穴開きテープというだいぶ古いタイプの人工知能と、世界崩壊後に...続きを読む
  • 聖痕
    素晴らしい読書体験だった。

    幼少期に生殖機能を暴漢に奪われ、煩悩を知らずに育つ貴夫と周囲を描いた、一族の栄枯盛衰ストーリー。

    古風な語彙が非常に多く、最初は戸惑うが、段々とその文章に引き込まれてこうあるべきだと錯覚させられる。日本語の奥ゆかしさと、貴夫の聖人伝が融合して、難解だが居心地の良さを与...続きを読む