筒井康隆のレビュー一覧
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筒井康隆は日本SF第一世代メンバーである。2013年に同じ豊田有恒が亡くなった後、最後の日本SF第一世代として孤軍奮闘、現在もなお執筆活動を続けている。昨年、自宅で転倒して頸椎を痛めて以来、不自由な生活を続けている。現在、リハビリ設備に入っているものの、毎月どこかしかの月刊文芸誌で作品が掲載され、本の表紙で筒井康隆の名前を見ない日は無い。流石に2~5ページの短い文章となっているが、この文学に対する執念は目を見張るものがある。この本以降、来たるべき日までの作品が今後必ず出版されると思うが、たぶん泣きながら読むことになるだろう。
自伝と言うだけあっていろいろな出来事が驚くほど詳細に記述されている -
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主人公の小説家・佐治勝夫が「世界から文字が一つずつ消えていく」という虚構の世界に閉じ込められる物語。
文字がなくなり、言葉がなくなった虚構世界が迎える顚末とは。
世界から1つずつ文字が消えていく。どんどん消えて、周りの人も消えていく。家族が1人…また1人と消えていく。
時が過ぎて次はなんの文字が消えて、どのような言葉がなくなるのか、ページを重ねるごとにワクワクした。
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【小説紹介】
「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。
世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。愛するものを失うことは、とても哀しい……。言葉が消滅するなかで、執 -
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家族八景後の七瀬シリーズ2作目。
前回の話とは違い、心の汚い人間達の話ではなく、打って変わった雰囲気。
まず夜汽車に乗っているシーンからよかった。
はじめて自分と同じ心が読める子供のノリオと、初めて自分の能力とはちがう予知能力をもった恒夫に出会う。
これから起こる大事故を予知し、この3人で汽車を降りる。これから始まる物語にドキドキした。
次に七瀬がノリオを引き取り、一緒に暮らすため平穏な生活を脅かす、また違う能力を持った強欲の西尾。西尾との心理戦はワクワクした。
続々と異能力者と出会い、ピンチを乗り越え仲間ができた七瀬。ヘニーデ姫のところは見えない敵に恐怖した。
そして待ち受けていた最後 -
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とにかくモテる旅好きラゴスさん。どこに行っても、いくつになっても、旅ゆく先々でモテまくります。しまいには、旧ドラクエV天空の花嫁のビアンカとフローラのように、かつて子供たちを苦しめた“究極の二択”に対して、反則まがいの“第三の選択肢”をズバッと選び、なおかつ自分の大好きな「読書最優先生活スタイル」は崩さないという、傍若無人ぶりを見せつけてくれます。
こんなラゴスさんの一生を、嫉妬を覚えるどころか憧れのまなざしで一気に読み切れたのは、良質な短編集のような構成のうまさと、ラゴスさんが自由を求めて自分のしたいことを存分にしながらも、極力まわりに迷惑をかけないという、僕の理想の生き方を体現してくれて -
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第1作ブラックホームドラマの『家族八景』、第2作ハードSFの『七瀬ふたたび』に続くシリーズ完結編。といっても昔は「七瀬シリーズ」なんて括りはしてなかったけど。テレパスの主人公というのが同一なだけで、前2作はまったく毛色の異なる作品だし、本作もまたそれらとまったく異質な作品である。SFジュブナイル小説を思わす学園ミステリーな導入から、画家とその妻の謎を冬の田舎の山村に追うミステリーへと展開し、後半は、広大な宇宙の意識の中で繰り広げられる母と子のエディプスな恋愛を通し、私という意識、私の中の無意識というものの在り様を肌で感じさせてくれる。これをとてもわかりやすくエンタメ小説として感じさせてくれると
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『旅のラゴス』は、表面的にはSF(超能力・失われた文明・異空間の移動)を題材としながらも、
その実体は人生そのものを描いた寓話です。
ラゴスは、文明が崩壊した世界で生まれ、常に「知」を求めながら旅を続けます。
しかしその旅の果てにあるのは、文明の再興でも、絶対的な真理でもない。
そこにあるのは――「歩み続けること」自体が意味になるという発見です。
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人は、生涯をかけて“何かを求めて歩く”。
だが、目的地にたどり着くことよりも、その過程で何を感じ、どう変わるかこそが生きる意味である。
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この思想は、
「結果を重視する社会」への批評でありながら、同時に人間の存在への肯定でもあります。